提督も艦娘もお年頃 作:dn88k
この日、書類を抱えながら鎮守府の構内を歩く霞はいつもにも増して気分が良かった。昨日のデートが最大の要因であるのは間違いないが、しかし気分が良い事自体はそれ以前からで、途切れる事無く続いている現象でもある。本人の性格を考えれば珍しい事とも言えようが、もはや霞は浮かれてしまっているのかもしれない。
しかしながら、果たして霞自身にはその自覚があったのだろうか。
「あっ、と」
抱えていた書類の一部を落とした事に気が付いて、のんびりとそれを手に取ろうとする。その時であった。
「落としたけど」
自分以外の誰かが先に落とした書類を床から拾い上げた。
「あー、ありがとう」
途端、あからさまなため息が聞こえる。何かと思って顔を上げると、そこにいたのは朝潮であった。ただし、その表情に浮かんでいるのは極めて無機質なそれである。
「あはは、何だかゴメン……」
苦笑いしつつ霞は書類を受け取る。だが、それに応じて朝潮から出た言葉には不機嫌さが含まれていた。
「霞が、ここまでいい加減になるなんてね」
書類を渡した後、ちゃんとした子だと思ってたのに、と呟いていた。
「え、と。姉さん、どうかした?」
「私は、どうもしてない。問題はあくまで霞、貴方よ」
「……?」
流石に霞は訝しむ。どういう訳か、苛立ちをぶつけられているようにも感じたが、姉が何故そんな態度を自分にとっているのか、その理由が分からないのである。
「ええっと、私の問題って?」
「いやらしい所で、いやらしい事して随分と満足だったようね?」
霞は驚き、朝潮の顔を改めて見る。その表情は相手を心の底から見下し、軽蔑したかような代物に変化していた。こんな表情をする朝潮など霞は見た事が無い。
「何の、事……?」
怯えを含んだような表情でそう問う霞。
「しらばっくれるの? あの街で司令官と島風と遊んでたクセに」
思わず霞はその顔を引きつらせた。そしてその顔面からは血の気が引いていく。朝潮は霞が無言なのをよそに更に畳み掛ける。
「で、そういうお泊まりする所? そこに入っていったでしょ? 司令官が嫌がってたのに、あなたが強引に背中を押してあの人の事を連れていったって感じかしら?」
そう言って更に、島風はあの人の手を引っ張っていたけど、と付け加えた。
昨日の一件を見られてしまっていたのだ。それも、よりによって姉の朝潮にである。すっかり青ざめた表情で震えたままの霞は、
「何で、あんな所に……?」
と、そう聞くのが精一杯だった。
「私はたまたま道に迷ったの。執務室に観葉植物でも置いておけば、少しはあの部屋の雰囲気も和むかなって思って買い物に行ったら、あんな場所まで行ってしまったってだけ」
鼻で、フッとため息を吐きながら回答する朝潮は、その口すらも曲がっていて自分に対する不快感が伝わってくる。恐らくは霞に叱り飛ばされてばかりの提督を気遣った朝潮が、自分の判断で執務室向けの小物類を購入する為にわざわざ街へと買い物に出ていたのだろう。しかし、恐らく朝潮の事だ。歓楽街のあるような賑やかな街など不慣れであったろうから、戸惑いながら歩き回っているうちに訳も分からないまま、いつの間にかそういったエリアに立ち入ってしまっていたといった所か。そして、本人達にとっては非常に不幸な事に、その場面と鉢合わせする羽目になったという訳である。
「私がさっさとこんな所離れようと思って慌ててたらアレだもの……。あんなに無理矢理なんて、司令官が本当に可哀想だわ」
侮蔑するような朝潮の表情も口調も変わらない。
「無理矢理なんて……。あいつは、別に嫌がってなんか……!」
と、辛うじてそんな言葉を絞り出す。
「さあどうだか? あなたが勝手にそう思ってるだけでしょ、それって?」
「何で、そんな決めつけ……」
「あなたが司令官の事散々罵ってるのなんて知ってる! 『これがあの子なりの教え方なのかな』って、嫌われるの覚悟でやってるのかもなんて考えてたから、我慢してたけど……むしろそんな事で好かれるなんて考えるのはおめでた過ぎるんじゃない?」
ある意味理にかなった言い分ではあった。実際に当初の霞も「嫌われるくらいでいい」と思っていたのだから、その時点では朝潮の推測は的を射ていた事になる。ただし、誰も想定していなかったのは、当の霞自身が無意識の内に提督に惹かれていってしまったという事である。
「確かにおめでたいかも。でも、受け入れてくれたのも本当……」
どうにか霞はそう返すが、朝潮の尋問は終わらない。
「ふうん、そういうフリをしてくれてるだけなんじゃないの? 霞に怒られるのが怖いから」
「何でいちいちそこまで否定されなきゃなんないわけ? いくら姉さんでも言って良い事と悪い事があるでしょ!?」
流石に霞も苛立ちを覚え、朝潮に反発し始めるが、それで彼女が引くわけでもない。
「そう、言っちゃいけない事言ったって言いたいのね? 私が?」
実に冷え切った朝潮の声。既に彼女が霞に対して大いに疑心を覚えているのは明らかであった。霞の記憶にある限り、彼女を含めた他人に対して、ここまで辛辣な態度を取る朝潮など見た事が無い。今、目の前にいるのは本当に姉さんなのか、霞はそう思いたくすらなった。そんな彼女に対して、
「正しい事言ってるつもりなのよね? むしろ私は疑問に思ってるだけなんだけど」
ゆっくりと近づいて覗き込むように言う朝潮の声はかすれたような、そして少しだけ震えたようなものに変化していた。
「ねえ、教えて? あなたがあなた自身の言っている事を正しいと思ってるその理由」
眼球だけを動かし、何とか霞は朝潮の目を見た。
「そんなものはあなたの思い込みでしかないはず。どうすればそんなおめでたい考えが出来るのか、教えて欲しいの」
そう言われた時点で、霞の内部にあるどこかの留め金が外れたようだ。
「別に姉さんにとって私が嘘吐きだと思われても十分っ!! 私が言えるのはあいつが私の事好きでいてくれてるって事だけよっ!! そんな事言う姉さんなんて姉さんなんかじゃないわ!!」
「ええ、あなたに姉なんて思って貰わなくて結構よ」
カウンターでそんな事を言われたから流石の霞も絶句し、ますます大いに傷ついた。
「でもね……」
一呼吸おいた後、朝潮が強く言い放った。
「あなたが正しかったら、司令官の事心配してた私はどうなるの!?」
「え?」
意外なセリフが耳に届いた霞は唖然とする。
「秘書艦の役目だって私で良かったはずなのに!! ただ叱るだけのあなたが良くて、何で私がダメなの!?」
そう言った朝潮は霞に掴みかかっていた。ようやく霞も朝潮の気持ちに気付く。
「あり得ない! 絶対にあり得ない!!」
普段とはかけ離れ、激昂している朝潮を見つめているうちに、霞の内側では却って動揺が収まってきた。
「手、離して。あり得ないのはいいから、とにかく廊下で掴み合いはダメ」
霞が低い声で言い、朝潮はグッと言い淀む。霞は自分を掴む朝潮の手を書類を持っていない方の手で片方づつ外させていく。
「全く、おめでたいのはどっちよ。結局、姉さんは遠くから見てただけじゃないの。それで全部分かったつもりで文句言うなんて、言いがかりもいい所じゃない」
朝潮にとっては意外な台詞だったが、痛い所を突かれたとも言えた。その怒りで流石の彼女も我を失いそうになる。
「……例え朝潮姉さん相手でも、これだけは譲れないわ」
今度は先ほどとは反対に、霞が朝潮に対して冷ややかな視線を送っていた。彼女は姉妹や他の親しい艦娘に対しては穏やかな態度で接してきた。ところが、朝潮が嫉妬心をあらわにした途端、その一切を受け入れないかのような態度へと転じたのである。それは普段の態度とは裏腹に提督への想いが極めて強い事を示していた。
少しばかり睨み合いが続いたが、そこでふと朝潮が言った。
「島風には、譲るのかしら?」
途端、霞の表情が変わる。端的に言えば、焦りがあった。
「島風は大切な友達だし、別にそういうのも良いかなって……エッチな事とかもしてくれるし……」
「愛人、という事?」
朝潮が更に言うと、霞は引きつった表情のまま一瞬黙り、
「愛人とかそんな酷い事言うつもりは……!」
と霞が言いかけたところで、
「どっちにしろ大切な人って事なんだ? 司令官と変わらないくらいに」
と朝潮が言った事で霞はもうそれ以上何も言えなくなってしまった。
「いい? 私はあなたの事を大切に思ってる」
人差し指を霞の顔に突きつけるようにして、朝潮はそう切り出した。
「でもね、それ以上に司令官の事は大切なのよ! なのに司令官は私の事なんかちゃんと見てくれなくて、よりにもよってあなたと島風の事で一杯で……!」
悔し涙を浮かべて霞を睨み付ける朝潮。愛憎入り交じるとはこういう事をも言うのかもしれない。自分なりに大事に面倒を見てきたつもりであった妹が、想いを寄せる相手をいつの間にか奪っていた泥棒猫でもあったからだ。
「もういい。私が何とかするわっ! 結局あなたは司令官の事をそうやって不純な飴と鞭の使い方で縛りつけてるだけっ!! それが良く分かったものっ!!」
そう霞を怒鳴りつけて去っていく朝潮の姿は、かつて心に刺を張り巡らせていた頃の霞のそれを彷彿とさせるものであった。
戻ってきた霞を見て、一人執務室で作業を続けていた島風は不審げな顔つきをした。霞の表情が見た事も無い程虚ろなものだったからだ。不機嫌そうな表情をしてばかりというイメージが先行しがちな霞であるが、その時々によってその表情がコロコロと変わる、そんな可愛らしい女の子である事はそれなりに付き合いが長くなれば分かる事である。それどころか、より深い関係にあると言っていい島風すら見た事の無い今の霞の表情はまるで魂が抜けてしまったかのようで、何があったのかと問いたくなるのはごく自然な事であった。
聞かれた側の霞は、死んだ魚のような目付きのまま、ゆっくりと島風の方を向き、
「姉さんに、バレた……司令官の事……」
とだけ、言った。
「えっ……!?」
流石にこれには驚かざるを得ない。
「姉さんって、その、朝潮……?」
「そう……喧嘩、しちゃった……」
と相槌を打つ霞は吐き気を催しているのか、いかにも具合が悪そうな青白い顔色のまま、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「ええと、何で?」
「昨日のデート、見てたって。エッチしてたのも、知ってる……」
「……!」
ますます驚いてすぐには言葉が出ない。どうにか何かを言おうとしても目の前にいる霞の深刻さがそれを塞いでしまう。
元々精神的にはタフなはずの霞が、その体を支えるように部屋の机に手を置いて俯いていた。相当に気分が悪いであろう事は見ていても分かる。
「ん、と。そう、なんだ」
とりあえず言えたのはそれだけだ。詳しい話を聞きたい所だが、当の霞には質問に答えられるだけの余力があるとはとても思えない。大袈裟ではなく、その経緯について聞いていたらいきなり胃の内容物を部屋の床に撒き散らしてしまうのではないか。それくらいの憔悴ぶりであった。
「私、朝潮と話してくる。霞はちょっと休んでて」
相当に不味い状況にあるらしい事を悟った島風は霞にそれだけを言って、そのまま部屋を飛び出して行った。辛うじて息を整えた霞は、部屋のドアが閉まってから大分経った後にゆっくりと振り返り、不安げに島風の去った後を見つめた。
執務室とは全く別の、事務用の机が置かれた小さな部屋で、朝潮は何かに取り憑かれたように書面の作成に取り掛かっていた。提督と艦娘が不純な関係にあるという海軍上層部向けの告発の文書である。何故か、提督がホテルへ連れ込まれる様が連続して写っている紙もプリントアウトされていたが、撮影した朝潮にはどういう訳かその写真を撮った記憶が残っていない。そもそも目撃した後にどうやって鎮守府に戻ったかすらも覚えていないのだから、ショックのあまり記憶が飛んでしまっているものと見える。
メールを送信してしまえばすぐに終わる話なのだろうが、方法次第では少なくとも送付したという法的な記録が残る事を意識したのだろうか、彼女は紙の書類による郵送にこだわった。
「これで、終わり……」
告発の文書と、その証拠となる写真を印刷した紙を重ねて折り畳み、それらを封筒に入れて閉じようとした。
その時である。
朝潮の手が、他の何者かの手によって押さえられた。顔をあげると、そこにあったのは島風の姿だ。
「それ待って、くれる……?」
朝潮は無表情のまま島風を見つめ返す。ただし、その目は先程の霞と同様に虚ろだ。
「……ダメ。これは上に報告しなきゃ」
そう機械が喋るかのような口調で返してくる朝潮に、
「何でそんな事までするの?」
と、暗さを含んだ声と表情で島風は聞く。
「あなたと霞が、司令官をたぶらかしてるから。そんな艦娘は、この鎮守府には、いらない……」
もはや朝潮は霞と島風を排除しなければならないという衝動に駆られてこんな行動をとっているようだ。しかし、今現在最も冷静と言っていい島風がそれを聞いて真っ先に考えたのは、それに伴って何が起こるかである。
「確かに、それを上に提出すると私も霞も処分を受けてここからは居なくなるかもね。でも、提督はどうかなあ?」
途端、朝潮はハッとしたような表情をした。
「流石に分かるよねえ? 提督だって処分の対象になるかもしれないんだよ? もしかしたら、この鎮守府から提督も居なくなるかもしれないよ?」
無言のまま見つめてくる朝潮に視線を合わせながら、更に島風は言う。
「そうすると、鎮守府の他のみんなは朝潮の事どう思うのかな? ある事ない事上に言いつける艦娘って思うんじゃない?」
「私は、どうでもいい。あなた達さえ、居なくなったら」
「そう。で、私達が居なくなったら、提督はあなたの事どんな風に見るんだろうね? 『嫌なヤツを消してくれた』って感謝してくれるのかな? それとも『余計な事して』って恨むのかな?」
朝潮は、答えられなくなった。当然前者と答えたいが、そう言い切れる自信が全く無い。それどころか、告発などしてしまえば、提督をも巻き込んでしまうという事にここへ来てようやく気が付いた。
彼女は真面目さが過ぎるのか、猪突猛進タイプとでも呼べるような行動を取るケースがあるらしい。つまりは今回のように、こうだと思ったらそれへと向かって突き進み、その代わりに周りの事が見えなくなるのである。
「どうしたら……」
相変わらず虚ろな目のまま正面を向き、文書が半ば入れられた状態の封筒を力無く置いた朝潮はそう呟く。必死に頭を働かせようとするが、どれほど考えても妙案など思い浮かばない。
そんな朝潮の姿を黙って見つめていた島風は静かに、落ち着いた声で、聞く。
「朝潮って、提督の事すっごく好きなんでしょ?」
少しだけ俯いた朝潮は、
「関係ないわ……」
とだけ答える。ところが、島風は更にこんな質問をした。
「霞と私に取られちゃってる気がして、悔しいんでしょ?」
その反応は素早かった。険しい顔を島風に向けた朝潮が、
「奪ったのは事実じゃない! どうせあなた達が無理矢理に……!」
と、言いかけて言葉を続けられなくなる。逆に、わざとのんびりとしたかのような態度をとった島風は、その頬に人差し指を当て、宙を見つめながらこう言った。
「んー、きっかけはそうだったかもしれないけどお、提督って意外と私達の事自分から欲しがってくれるんだよねえ。ま、それはそれですっごく気持ち良いんだけど」
朝潮の島風を睨む目付きがますますギロリとした、殺意のこもったものになる。激しい嫉妬に駆られているのは明らかで、その体が震えていた。島風はその事を気にした様子も見せず、言う。
「提督が私達の事気にするようになったきっかけ、知りたくない?」
「な、何を……」
敵意を剥き出しにしつつも、相手の発言内容に動揺も見せる朝潮。
「今は提督とエッチな事もたくさんしてる。興味ない?」
「な、無いわ! そんな、はしたない事……!」
激しく首を横に振って否定はするものの、朝潮は怯み始めていたのかもしれない。
「でもそれだと、貴女は提督の事を奪い返せない。追いつけないよ?」
もはや朝潮はそれ以上の反論が出来なくなる。自身が慕ってやまない上官が、妹や目の前にいる同僚の体に魅了されているかもしれない事を否定しきれないのだ。でなければ、島風のこのやけに落ち着いている上に自信たっぷりな態度は何なのか。
「私達だって、最初は体を張ったんだもの。提督が欲しいんなら同じくらいの事しないと」
自分の顔を覗き込むように、そう言う相手の表情は真剣だ。
「騙されたと思って試してみても良いと思う。霞とギスギスしてるのも見たくないし」
しばらく懊悩していた様子の朝潮であったが、やがて真っ直ぐな目を島風に向け、聞いた。
「それで司令官は、私の事、見てくれるの?」
「朝潮が全部投げ捨てて、思い切りぶつかればだけどね」
朝潮の返答を聞き届けた島風はやはりどこかで緊張していた部分があったのか、安心したかのようなため息をホッと吐きながらそう返答した。
これから提督の元を訪ねるという連絡が入った。それを聞いててっきり、いつものように島風が霞と共に遊びに来るのだろうと思っていたところ、部屋に備え付けられたインターホンのチャイムが鳴る。
普段通りにドアを開けると、提督は思わず「え?」という声を上げてしまった。確かにそこには島風と霞はいた。
「えっとさ、島風って二人もいたっけ?」
ポカンとしたような表情で間の抜けたような質問をする提督。そこにはいつもの二人に加え、島風の衣装に身を包んだ謎の少女がもう一人。
「あんた本気で言ってる? そんな訳ないでしょ」
霞が呆れたように言うと、
「ほら姉さん、顔上げて。このバカったらそのままだと姉さんの事誰か分からないみたいよ?」
と、その少女に声をかけた。
(姉さん……?)
提督が霞の発言に疑問を覚えていると、おずおずとその少女は顔を上げた。
「え、と……ええっ! 朝潮っ!?」
提督は驚愕した。着ている服はともかくとして、その顔自体は流石に見間違えようがなかった。
「あの、何してんの……?」
動揺した提督が朝潮に聞くのも当然だが、彼女からはいつもらしい凛々しい顔付きは失われ、真っ赤な表情で顔を左右に動かし、両側にいる霞と島風に助けを求めるような視線を送った。
「とりあえず部屋に入れてくれない? そうしたら説明するから」
いつになくシリアスな表情をした島風がそう言った。
呆けたような表情の提督はぎこちなく頷くだけだ。
「それで、これってどういう事……?」
部屋に三人を迎え入れた提督は訳が分からないといった様子で聞いた。すると、霞が気まずそうな表情を浮かべ、
「私達の考えが甘すぎたみたい。ほら、昨日三人でデートしたでしょ? あれでホテル入っていくところ姉さんに見られちゃってて……」
「え、マジ!?」
流石に提督も驚きを隠せない。しかも、よりによってその目撃者は朝潮なのである。彼女の性格を鑑みる限り、そんな場所にいる事自体がまず考えづらいケースであった。
「なんか、たまたま道に迷ってたらしいの。で、私達の事偶然見ちゃったって事らしくて……」
島風が経緯を簡単に説明する。
「そ、それは、うーん、と……」
提督はそう言ったまま黙り込み、三人から視線を逸らした。自分達がやらかしてしまった、という事実がなんとなく理解出来ただけである。が、少しばかりのタイムラグの後、提督はある事に気が付いた。
「でもさ、なんでそれで朝潮が島風の服着るって話になってんの?」
当然の疑問に至った提督がそれを問いとして発する。
「うん、今日の本題はそれなの」
島風が両手をそっと重ね合わせるようにしながら真顔で言う。
「そういう所を見たら、提督と私達がエッチな事するような関係だってすぐに分かる訳じゃない? それで、朝潮と霞が喧嘩しちゃったの。だって、朝潮も提督の事大好きだから」
「…………!?」
提督は一言も発する事が出来ない。島風と霞のみならず、まさか朝潮までもが自分の事を好意をいだいていたなどとにわかに言われても、今の彼には無理があった。
「でも、霞と朝潮が喧嘩したままなんて嫌じゃない? それに、朝潮の気持ちも叶えてあげたいし。だから私、朝潮も提督とエッチしちゃえばいいと思ったの」
「はあっ!?」
普通に考えればとんでもない発想である。現状でさえ男の子一人に対して女の子二人なのである。更にそこに女の子が一人追加されるなど許されるのだろうか。
「……本気?」
と、唖然とした提督が聞いたところ、
「思いっきり本気よ。多分、これが私達の出せる一番マシな答えだし」
と、霞が腕を組みながら難しげな表情で言ってくる。
「で、でも」
と、なおも提督が戸惑いを見せた所、
「……私って、やっぱり魅力ありませんか?」
と、そんなか細い声が聞こえた。見れば声の主は朝潮である。
「そうですよね。こんな私みたいな、つまらないのを相手になんかしたくないですよね……」
朝潮はすっかり震えて小さくなってしまっていた。彼女の卑屈すぎる発言を思い切り否定したい所だが、霞には朝潮の気持ちがよく分かる気がした。以前は自分だって提督に対する気持ちを叶える事など不可能と思っていたからだ。その時に提督が性の対象として見ていたのは島風ばかり。自分の事は単なる同僚程度にしか思われていないと思い込んでいたのである。ところが、礼号組の手によって強引にマイクロビキニを着せられて以来、事態は一気に好転してしまった。これは提督が思春期真っ盛りの男の子であるという点も大きく、霞の水着姿に惹き寄せられたという部分もあるにはあるが、それをきっかけとして提督がそれまで見えなかった霞の魅力に気付いたという点も大きい。
そんな経緯があるから、あえて自分と同じ格好を朝潮にさせている島風の狙いも霞にはよく分かった。いつもとは大きく異なった大胆な格好をさせてしまえば、常日頃から心に分厚い装甲でも貼っているかのような朝潮に変化を促す事は可能ではないかと踏んだのだろう。更に言えば、その格好によって朝潮自身に提督を誘惑する効果も期待出来る。
「ねえ、朝潮姉さんって本当につまらないと思う? 相手なんかしたくないって思う?」
霞は朝潮に寄り添い、その肩を抱いて真っ直ぐな視線で提督に問う。
「そ、そんな事は……」
提督は反射的にそう呟いていた。普段の服装が服装だから、朝潮の体のスタイルが元々分かりづらかったというのはある。しかし、露出度の高い島風の服を着ている今の朝潮はどうだろうか。もちろん、大人の女性と比べたらそれは当然見劣りはする。しかし、肉体年齢を考えれば十分に魅力的な体型を備えていると言っていいだろう。そのあたりはやはり霞の姉と言ったところか。更に言えば、今の朝潮が浮かべているその心細そうな、実に不安げな表情。それは普段の気丈な顔付きからは想像も出来ない程弱々しいものであった。
(怖いんだ、俺に嫌われるの……)
今の朝潮の姿は提督の庇護欲を大いに刺激した。今はとにかく彼女を大切にしたい。彼にそう思わせた。
「なあ、本当にいいの?」
これは朝潮ではなく、その左右にいた島風と霞に向けられた問いである。途端、二人はホッとしたような表情を浮かべ、当の朝潮は驚いているかのような顔をした。
「いいに決まってるじゃない!」
「ダメだったらこんな事してないもん。じゃ、続きだね」
島風の言葉に朝潮は「えっ?」と声を上げるが、提督は心配そうに、
「こんないきなりってのはちょっとまずくね?」
と言っている。
「こういうのは一気に行かないとダメなの!」
「私達の時もそうだったでしょ?」
三人のやりとりの意味が分からなかったようだ。朝潮は、
「ね、ねえ、一体何が……」
と言いかけ、そしてその直後に、
「あっ、くう……!」
と呻き声を上げてしまった。朝潮を左右から挟んだ霞と島風という二人が彼女に対して愛撫を開始したのである。
さわさわとその皮膚をそっと撫でるかのような二人の愛撫はくすぐったさを伴ったもので、更には顔をはじめとして、チュ、チュ、という音と共に唇のものと思わしき感触さえ感じられた。当初の朝潮にとっては得体の知れない気持ち悪ささえ覚えるものであった。
「ち、ちょっと、変な事は止め……!」
朝潮は体をよじりながら二人に抗議するが、それで二人が止めるはずもなかった。
「だーめだよ。朝潮には我慢してもらわなきゃ」
島風は熱っぽい声色で朝潮の耳元に囁く。
「変って思うのは最初だけ。姉さんだって私達がこんな事しちゃう理由がすぐに分かるわ」
同様に、反対側からは霞がそう囁いてくる。
嫌だ。ホントに気持ち悪い。こんな気持ち悪くてはしたない真似をするような子にはなりたくない。朝潮はそう思った。相手が嫌がっているのにこんな行為を続けるなんてイジメそのものではないか。しかも、その内の片方は妹なのだ。
しかし、そんな朝潮の思考はその実、本質を見誤ったものであったろう。霞と島風は提督との性行為の他に、その一環として同性同士のペッティングも既に何度も繰り返している間柄であった。いや、本気の時の彼女達のじゃれあい方はまさにレズセックスと呼ぶに相応しい。まだまだ幼いにもかかわらず、そんなレベルにまで至ってしまっているこの二人は明らかに規格外だが、そんな二人が朝潮の堅牢な意思と道徳観をその愛撫によって崩していくのはそれ程難しい事でもなかったのかもしれない。当然、朝潮にある意識とは異なり、この行為がイジメだと言うつもりなどない。とにかく、提督を受け入れる為にその快感の初歩だけでも知って欲しい。今はそれだけなのだ。
(し、司令官っ! た、助け……!!)
朝潮はせめてもの可能性を求め、目で提督に救いを求めた。しかし、彼が止めに入る様子は無い。じっと彼女の姿を見つめながら、
「痛いのはやめろよ?」
と、横にいる二人に声をかけるだけだ。
(そ、そんなあ……!)
そんな風に心の中で朝潮が叫んだ次の瞬間、そっとその両手が提督の手によって握られた。不安を覚えながら愛撫に堪える朝潮に対して彼が出来る、現状ではほぼ唯一の配慮だろう。それだけだからと言う訳でもあるまいが、提督に対する失望など覚えなかった。当初感じていた愛撫に対する気色悪さがいつの間にか何処かへと吹き飛んでしまっており、その全身が火照り始めると共に、その息がフー、フーと荒い物へ変化しつつあったからだ。もしかしたらその最大の理由は、提督の自分に対する眼差しであったのかもしれない。いつものように自分を見つめる優しいそれではなく、何かに飢えたかのような真剣そのものの視線が彼女を貫いていたのだ。
「くあああっ!!」
朝潮からさらに一段階、甲高い声が上がった。霞と島風の、全身を撫でるかのような手の動きが、揉み解すような動きへと変わっていたのである。上着がはだけさせられ、半ば露出された、膨らみ始めたばかりの乳房にも念入りなマッサージが加えられる。
「はっ、はあああっ……!」
朝潮は自分の身体が覚えているその感覚の正体がすっかり分からなくなってしまっていた。少なくとも気持ちの悪いものでない事は確かで、反射的にその肉体がひくつく理由もその感覚によるものであり、自分が変わってしまうかもしれない、そんな危険性をも伴っているかもしれないという、そんな恐怖感だけがおぼろげながら朝潮の頭の中に浮かんだ。
「キャウッ!!」
更に甲高い声が朝潮から放たれた。霞がその股間に対して、パンツ越しに指をはわせ始めたのである。
「あんまり強いと痛いかも、って思ったんだけど、まだ強かったかしら?」
霞が朝潮にその体を密着させながら、不安そうに朝潮の股間部への愛撫を継続している。
「多分驚いただけじゃないかなあ? ねえ、朝潮。ここって、弄ったりした事ある?」
「は……へ……?」
島風の問いに対して、もはやまともに答える余力さえ朝潮は喪っているようだ。今や彼女は二人の手練手管に悶絶するだけだ。
「うーん、無いっぽいね。霞、このままどんどん馴染ませていってあげるといいかも。この子、知らないんだよ」
「そ、か。じゃあ悪いけど姉さん。我慢してね」
ぼんやりと二人の会話を聞いていた朝潮は彼女達が果たして何を言っているのか分からなかった。しかし、自身の股間部に対して優しく触っていた霞の指は、徐々にその力が強くなり、まるでそこを揉み解すようになり始める。
「やああっ!! やめええっ!!」
今や両足を震わせながら立っているのがやっとという状態になってしまった朝潮。彼女は霞が触れているその部分に、それまで感じた事の無い不思議な感覚を覚え始めていた。
「ふううー……ふううー……!」
歯を食いしばりながら、その感覚に懸命に耐える。しかし、霞がここに来て容赦などするはずもなく、また、それ以外の部位を刺激して回る島風の手からも奇妙な感覚が発生し始め、その全身を襲う。
そして、次の瞬間、朝潮の全身が軽く弾けたかのようになった後、痺れのようなものが走り、無意識にブルリと、その身体が震えた。
「はうっ!」
島風の服を着たまま、島風と霞の愛撫を受けて朝潮はすっかりと腰を抜かしてしまった。
すっかりふやけたような表情となってしまった朝潮は全身の力が抜け、後ろにゆっくりと倒れて尻餅をついてしまった。ただし、霞と島風が辛うじて支えていた上、提督も正面から痛くない程度に彼女の腕を引っ張っていたから衝撃はさほどではなかったようだ。
「……? えっ?」
自分の身に何が起こったのか分からなかったらしい朝潮は、焦点の合わない目で部屋の天井を見ながらコロンとひっくり返った。思わず足を大きく広げてしまうが、そうなると当然そのパンツの股間部分の大半が見えてしまう。そしてその中央部にはうっすらと液体の分泌を示す染みが広がっていた。
「これ、濡れてる……」
腰をかがめて朝潮の様子を観察していた提督が座り、朝潮のパンツのクロッチ部分を覗き込んで凝視しながら言った。
「濡れ……え、何?」
朝潮は状況が理解出来ていないらしい。むしろ、理解不能な事象の連続だ。
「姉さんの体がエッチに備えて興奮してるのバレてんのよ。身体がそういう反応しちゃう訳」
霞の解説が横から加えられた。
(エッチ……? エッチ、って性行為の事?)
ぼんやりとした意識の中、そこまで考えて朝潮はハッとする。
(せ、性行為っ!? 確かにそういう話したけど、でもやっぱり私まだ!!)
半ば現実を離脱していたかのような朝潮の意識が一気に引き戻される。
「ま、まままま待って下さい!! 私はそのような事は決してっ!!」
大慌てで体を起こし、どうにか釈明を試みようとする。しかし、島風がそのタイミングでこんな台詞を口にした。
「恥ずかしがってる場合? 確かにあなたもここに来る前ごねてたけどさあ、その服着て提督誘惑しようとしてる時点で説得力無いよ?」
それに続いて霞もその顔を朝潮に寄せて言う。
「今更ヘタれるなんて姉さんらしくないわねー。それに姉さんだけじゃなくって、司令官もエッチな反応しちゃってるんだけど?」
「……?」
朝潮が不思議そうな表情となり、よくよく提督の事を改めて見た。すると、彼は恥ずかしそうにしている。それでも性知識が不足し過ぎているのだろうか、朝潮には提督の体に何が起こっているのかが分かっていないようだ。
「ほら、ここ。おっきくなっちゃってるでしょ?」
島風が指差したのは提督の股間の部分だ。それまではなんともなかったその部分だけ、ズボンの生地を突き破るかのように隆起していた。
「こうやって男の子のが硬くなると、初めて女の子のアソコの穴に挿れられるようになるわけ」
霞が反対方向から朝潮に説明した。流石にそれが何を意味するかは朝潮にも分かる。
「い、いわゆる、せ、セックスという物ですよね!? や、やはり私達にとってそういった行為は早すぎ……」
と言いかけたところで、
「私達、とっくに提督とそういう事してるんだけどなあ」
と、島風が言ったせいで、一瞬ハッとしたような朝潮は彼女の方を勢いよく向いた。そこにある表情をどう表現すればいいのか、とにかく目をこれ以上なく大きく開いて島風を見つめていた。続いて、逆方向からこんな言葉が続いた。
「司令官ったら夢中になってくれるのよね。私達とするセックスに」
表情だけは変えず、今度はゆっくりと霞の方を見る朝潮。
「最初はね、私達が襲っちゃったの。提督のエッチなところに誘惑されて」
耳元で島風がささやいた。
「でもね、そんな私達の事好きになってくれたの、提督って」
正面を向いた朝潮の目が果たしてどこに焦点を合わせているのかは分からない。だが、赤面し切った彼女が、
「はぁー……はぁー……」
という荒い息を繰り返しながら震えている事から、強烈な興奮に襲われている事はまず間違いなさそうだ。
無意識ながらも、提督という可愛らしい男の子が自分の性欲を刺激するような存在である事には、朝潮も薄々感づいていたのだろう。彼女の意識は水面下では既に提督との交合に許可を出していたのかもしれない。だから、勃起してしまった彼の股間から目を離す事が出来なかったし、「いい加減、それを出しなさいよ」と霞に言われて提督が恥ずかしそうに陰茎を露出させ、その昂りを目の当たりにした時にはますます自分が興奮している事を自覚せざるを得なかったのである。
「こ、こんなに……」
腫れ上がったかのような提督の剛直を直接見た朝潮は驚きを隠せなかった。どういう訳か、尿とは異なるらしい透明な粘液が滴っている上、提督の顔を見れば、恥ずかしそうにしながらもいかにも苦しそうだ。
「これを、私のアソコに……?」
朝潮がそう言った瞬間、島風のこんな声が聞こえた。
「その前に、オチンチン舐め舐めしてあげてもいいかもね」
「えっ? えっ?」
その発言の意味が分からず、すっかり混乱した朝潮。
「クスッ、それもいいかも。コイツ、口で舐めてあげるとすっごく喜ぶのよ? 私達も最近知ったんだけどね」
霞も楽しそうに言う。性交に用いる部位に対して口を用いて刺激を与えるなど彼女の常識の範囲外であった。しかし、大きく開かれた朝潮の目は、提督の勃起したペニスを凝視し続けていて、「舐めてあげると喜ぶ」という霞の言葉がますますそれを加速させていた。
「こ、これを、舐めるの……?」
「そうそう、提督はちゃんと洗ってるから別に汚くなんかないよ?」
島風の言葉をきっかけとして、まるで吸い寄せられるかのように、朝潮の口は提督の剛直に接近していった。その様子はさながら彼女の本能がそうさせているようにも見える。
「咥えても歯は当てちゃダメよ? 相手が痛いから」
霞が事前に忠告する。ハアハアと荒い息を繰り返し、体を震わせながらも最早それ以外を視界に収めてしまうのを忘れてしまったかのような朝潮は、とうとう提督の逸物をカプリと咥え込んだ。
まるで飢えていたかのように提督のペニスに吸い付き、飲み込むように口の奥へと導いていく朝潮。
「ひ、ひうう……」
刺激が強いのだろう。提督は彼女の肩に優しく両手を乗せ、立ったまま腰を引き気味に震えていた。
「ゆっくり舐めてあげて。それだけでも十分気持ちいいと思うし」
「唇でしごいてあげてもいいよ? アソコに入れてこすってるのと同じくらい気持ちいいみたいだから」
蕩然とした表情の朝潮は、しかし霞と島風のアドバイスは耳に届いていたようだ。チュプチュプと音を立てて提督の陰茎を舐めるだけだった彼女は、やがてその頭部を前後させて本格的に提督のそれへ刺激を与え始めた。
「んっ、んっ、んっ!」
うっとりとしたような表情で目を瞑り、提督の剛直に刺激を加え続ける朝潮。元々我慢していた事もあったのか、提督が限界を迎えるのもあっという間だった。
「ね、ねえ、朝潮! 出るから、離れて! ねええ!」
提督から上がる悲痛な声。だが、何故か朝潮が止まらない。すっかり蕩けた表情の彼女は提督の腰付近に自身の腕を回し、まるで吸い付くように爆発寸前な彼のペニスをしゃぶり続け、ひたすら首を前後に動かしていた。
「…………ああっ!!」
提督が甲高い声で呻いたと同時に、朝潮の口の中に何やら熱い物がばらまかれた。どうもその感触から、やたらと粘り気の強い代物のようだ。
「…………!?」
そこでようやく我に帰った朝潮は、しかし提督の剛直から放たれる物をひたすらに受け止め続けた。
「……くっ! …………うう」
声を漏らしながら悶え続ける提督の事が朝潮には、やたらと可愛らしく見えてしまう。そんな彼女は彼による粘液の放出が収束するまで、その剛直をトロンとした目つきで咥え続けた。
朝潮がようやく提督の股間部から顔を離した。その口を開けた途端、白い粘液がそこから溢れ出る。
「……? これは……?」
朝潮は唖然とした表情で、流れ出た液体を眺める。
「精液。赤ちゃんのもと」
「あと、司令官が気持ち良くなった証拠よ」
自分の左右両方にいる二人の解説で、朝潮は提督に何が起こったのかを知った。敬愛する提督が自分の口で快感を覚え、子種を放出してしまったという事実は彼女に密かな喜びをもたらした。しかし、霞と島風にとってはこれからがむしろ本番である。
「ほら、次」
二人が朝潮の体をひっくり返した。
その際どいデザインのパンツが朝潮の体から脱がされていく。
「ま、待ってえ!!」
「何で?」
「だ、だって、男の人に、ア、アソコを、その……」
「さっきまでその男の人のアソコを舐め舐めしてたのに?」
「〜〜〜〜っ!!」
朝潮はもはや何も言えなくなってしまった。慕っている提督の剛直にフェラチオを行った上、射精までさせてしまった時点で、自分だけダメという理屈は通らないだろう。
緊張したような表情で朝潮の股間を覗き込む提督。
「ピッタリ閉じてるけど、やっぱり興奮してるみたいだな」
朝潮の陰裂を観察していた彼はそんな感想を口にする。
「興奮しているだなんて、そんな……!」
朝潮は否定するが、提督はそっとそんな彼女の陰唇に触れる。
「あっ!!」
反射的にそんな声が出て、驚いた朝潮は自分の口を塞ぐ。
提督は丁寧に朝潮の陰裂を撫でていく。
「うう……あうう……」
あまりに恥ずかしいのだろう、両腕で自分の顔を隠しながら喘ぎ声を漏らす朝潮。しかしながら、彼女が覚えたのは羞恥心だけではなかった。優しくその陰部に触れてくる提督の指が、先ほど霞に施されていた愛撫よりも強烈な感覚を発していたのである。しかも、それは決して不快ではなく、痺れと浮遊感をないまぜにしたような、いつまでも飽きの来ないかのような奇妙なそれであった。
(はああ……一体これ、何なの……)
その感覚の正体が分からない朝潮だが、そんな事を考えているとまた別次元の感覚が彼女を襲った。
「あああああっ!!」
朝潮からより一層甲高い声が上がる。提督がそっと彼女の陰部に口付け、その唇と舌で刺激し始めたのである。慌てて自分の下半身を見た彼女はその状況を見て悲鳴をあげそうになる。
「し、司令官っ!! そこは、汚なっ……!!」
ヒイヒイという吐息と共にそんな言葉だけが辛うじて彼女の口から出た。しかし、そんな言葉を否定したのは彼女の両側からその体を押さえ込んでいる二人だ。
「姉さんならそこもちゃんと洗ってるでしょ? 別に気にする必要ないわ」
「提督ってこれ好きなんだよねえ。なんか嬉しくなっちゃうんだって」
実際、提督は朝潮に対するクンニリングスに夢中のようだ。止まる気配が全くと言っていいほど見えない。その刺激はクリトリスをもかすめた。ピリッという痛みのような甘美な感覚が朝潮の身体を走る。
「ヒッ……! ヒッ……!」
もはや朝潮は刺激に応じて反射的にそんな情けないような声を上げる事しか出来なくなってしまった。下半身全体がひくつき、快感を伴った気怠さのような物がそこにまとわり始めた。
と、次の瞬間、提督が朝潮の股間から口を離し、彼女の目を見ながら言う。
「多分、十分だと思うんだけど、続き、する?」
「…………」
どう答えればいいのだろうか。確かに、当初自分がこの部屋を訪れた目的は提督との性交であった。しかし、ここに来て今自分がその直前の段階にいるのだという事を自覚して怖くなる。初めてが痛いらしいというのは知っていた。霞や島風とは経験を積んでいるようだが、果たして自分にそれが通用するのだろうか。それ以前に、提督だって性交の相手ならば普通に気持ちの良い相手の方がいいはず。提督が自分との性交で不快感を覚え、それが原因で嫌悪されてしまうのではないか、それが何よりも彼女にとって怖かった。
「止めても提督は文句言わないと思うよ?」
島風がそう言った。続いて、霞も言う。
「ま、その時は次がいつになるか分からないけどね」
一見、挑発のようにも思えるが、これは二人が朝潮の背中を押したと考えた方がいいだろう。ここで朝潮に撤退されるなどこの二人も望んでいないのだ。焦点が合ったか合わないかのような眼差しで、「ハァー、ハァー」と荒い息を繰り返しながら提督を見つめていた朝潮は、やがてゴクリと唾を飲み込んでから、言う。
「お、お願い、します……」
「そっか。やっぱり、ゴムはいるよな」
その答えを聞き、納得したような提督は一旦その場から離れた。
「ゴム……?」
「コンドームの事。避妊具。流石に赤ちゃん出来るのは困るでしょ? それを避ける為の道具」
「そのままだったら、司令官の赤ちゃんが出来る、って事?」
一瞬だけ期待したかのような表情を覗かせた朝潮を見て霞は苦笑する。
「私達、やっぱり姉妹みたい。私、初体験の時対策無しでして島風に怒られちゃってさ」
「そうそう、お腹に赤ちゃんいても出撃するみたいな事言ってたんだよ」
(赤ちゃん……司令官のが、私のお腹に……)
二人の会話を聞いていて、そんな妄想が自動的に脳内を走り始める。朝潮にとって、提督の子供を身籠る事はとても魅力的に感じられた。そんな妄想に意識を取られていると、いつの間にか提督が戻ってきていた。そして何やら薄い包みを破り、そこから出てきた伸縮性のある素材で自身のペニスを包んでいく。
「準備完了?」
「ん、一応」
島風と提督がそんな会話を交わしている。
(完了……? と言う事は……)
そんな事を朝潮が考えているうち、
「ホラ、ここに挿してあげて!」
と彼女の股間付近に軽く触れた霞が提督に指示を飛ばした。いよいよなのである。
(え、司令官のアレが、本当に入ってくるの!?)
改めて提督の剛直を凝視した。こんな大きさのものが自分の身体を貫いても大丈夫なのだろうか。そこから発生したのは一気に膨れ上がる恐怖感だ。
「せっかくの初体験だし、後は二人きりで楽しんでみる?」
島風はそう言いながら、霞と共に朝潮から離れようとする。
「待って!!」
それを、朝潮が呼び止めた。
「一緒に、いて。何だか、怖いから……」
それは嘘ではなかろう。元々嘘をつく性格などではないが、今の朝潮は実に不安に満ちたような表情であった。
その有様を見た島風と霞はお互いに目を合わせ、そして頷いた。
朝潮を島風と霞が後ろから抱え込むような体勢になった。朝潮は大きく足を広げてその女陰を晒しているが、その表情はすっかり怯え切っていて、よほど怖いのか、目尻に涙すら浮かべている。全身そのものも震え続けていて、それが提督にも分かるレベルだ。
そんな彼女を支える島風と霞も提督に視線を送っているのは同じだが、それは「お願いね?」という、朝潮の望みを叶える事に期待を託す物であった。
(俺がちゃんと、しなきゃ……)
コンドームを付け終わった提督はゆっくりと三人に近づいていった。
クチュリ、という音がして、提督の先端が朝潮の陰唇に触れる。
「ぁ……」
快感がその身体に走ったのだろうか、朝潮から小さな声が漏れた。
「じゃあ、挿入れるからな?」
提督が真剣な顔付きで朝潮に言うと、彼女は震えながらもゆっくりと頷いた。
片手で自身の剛直を握り、位置を合わせた提督は、ゆっくりと朝潮への侵入を開始した。
「ん、ぐうううっ!!」
目をきつく閉じ、歯を食いしばった朝潮がそんな苦しげな声をあげる。やはり相当辛いようだ。
「ここだけ! ね? 辛いの、ここだけだよ?」
島風が心配そうに声をかけている。
「大丈夫、大丈夫だから、ね?」
霞も朝潮の頭をゆっくりと優しく撫でながら、彼女を励ましていた。
とは言え、提督には自分から相手の初めてを奪った経験なんて無いから、朝潮だけではなく、彼にとっても極めてプレッシャーを与える瞬間であったのは間違いない。霞や島風の時には一方的に襲われたと言う事もあって気付かなかったが、男を知らない膣肉の抵抗は彼の想像を超えていた。
(くっ、キツイ……!)
途中で引き返したくなる。だが、そんな事をしてしまえば朝潮はおろか、他の二人の期待をも裏切る事になりかねない。提督は先に進むしかないのだ。
何かを引き裂くような感覚を覚えつつ、ようやく提督は朝潮の最奥部に達した。キュ、キュ、と彼を包む肉が不規則に締め付けてくる。
「挿入った、よ……」
提督がその時言えるのはそれだけであった。苦悶したかのような表情で目をつむっていた朝潮はゆっくりとその瞼を開き、
「なんだか、分かります……私は、司令官に初めてを捧げる事が出来たのですね……」
と言った。辛そうでありながら、実に嬉しそうだ。
「なんか、流石にお邪魔虫みたいな気がしてきたんだけど?」
そんな声が聞こえた。霞であった。
「んー、ここから先の最後まではさあ、やっぱり二人でじっくりシてもらった方がいいかもね?」
島風もそんな霞に同意する。
「え、と。どういう事……?」
朝潮が訳が分からないといった表情で聞く。
「もう余計なものとか無しに司令官の感覚を覚えてって事。ここまできたら私達が手伝う必要ないでしょ?」
そう言って、霞は島風と共に、ゆっくりと朝潮から離れた。床に横たえられた朝潮は不安げに離れていく彼女達を眺めた後、そのまま提督を見つめた。
「ゴメン、俺もあんま自信無いけど、朝潮の事どうにかしてみたいんだ。辛かったら言って? 二人も部屋にはちゃんといるし」
提督はそう言ってゆっくりと腰を動かし始めた。激しく前後に動かすような事はせず、朝潮の内部をさながらマッサージしてほぐすような動きであった。自分とそう歳も変わらないはずの少年にそんな事が出来るのは不可解ではある。しかし、性知識がそれほど無い朝潮がそれに気づく事はなく、むしろ自分の胎内から発生する感覚に困惑した。
「はっ……! はっ……! えっ? ……えっ?」
破瓜による強い痛みはまだ残るものの、朝潮はむしろ提督がもたらす奇妙な刺激をどう受け止めていいのか分からない。不快で無い、という事が辛うじて分かる程度だ。
そんな時、フワリと彼女の唇に柔らかい物が触れた。提督が自身の唇を重ねたのである。丁寧に、そっと優しく、その角度を変えつつ強弱を交えたそれに気付いた朝潮は緊張状態のさなか思わずときめく。
(ああ……これがキス……キス……)
股間に男の逸物を挿入されている事など忘れそうになる。
「ごめんな。これ、先だったよな」
ようやく顔を離した提督は照れたような、どこかバツの悪そうな顔で言った。
「いえ、司令官からこんなに優しい口付けを頂けるなんて、この朝潮、光栄です……」
対する朝潮は先ほどまでの痛さに堪えていた姿が嘘のような優しい表情であった。何故かこみ上げてくるような感覚を覚えた提督は言う。
「もっと、していい?」
「はい。口付けの感覚を知らなかった私に、もっと教えて下さい……」
「キスも初めてだったんだ」
「は、い。申し訳ありません」
「謝る事なくね? 男にしたらそういうの自慢出来るし」
再び二人の唇が重なる。今度は提督の側からチロチロと舌が覗き、相手の唇の表面をなぞる。一瞬驚いたような表情をした朝潮だが、彼女もまた舌を覗かせ、その先端を提督のそれとこすり続けた。
「ん、ふ……んうう……」
提督とのキスをしながら声を漏らす朝潮。実は彼女、提督の腰の動きが次第に大きくなり、まれに奥を強くこねるような動きになっている事に気付いていなかった。
「あー、すごい気持ち良さそう」
傍で見ていた霞が実に羨ましそうにそう呟いていた。そんな彼女の手をとった島風は、
「私達は私達で気持ち良くなっておこうよ」
と言った後、相手に対して口付けをし、濃厚な愛撫を開始する。霞もまた抵抗なくそんな島風を受け入れていく。
(これ、何……? おかしい……体が……!)
提督とのキスの途中からまたも朝潮は混乱し始めていた。当然破瓜を迎えたばかりだから股間部の痛みは相変わらずある。しかしそれとは別に、今までに経験の無いような、不思議な感覚が彼女の身体に新しく一つ、芽生え始めていたのである。ちょうどそれは、霞と島風に撫で回されていた際の物にも似ているが、それと同時に、提督の硬直しきった肉棒を自分の口で咥えていた時のような、嬉しくも、楽しくもなりそうな感覚も同時に含まれていた。
不安そうに朝潮の事を見つめる提督はゆっくりと腰の動きを継続していて、恐らくは自分の事を最大限気遣っているであろう事は精神的に余裕の無い朝潮にも辛うじて理解出来た。胎内をじっくりとこねるその熱い剛直の動きは、痛覚を差し置いても味わい続けていたいとさえ思えてくる。
一体自分の身体に何が起こっているのか。それが分からないのが相変わらず不安だが、何故か悪い方向へは向かわないだろうという予感が彼女にはあった。
「んん……んん……ん……ぁぁ」
朝潮の口からはか細い声がこぼれ出る。そんな彼女は提督の体にその腕と足を使ってしがみつき、提督はこのままではもう彼女から離れる事が出来ない。
「ね、朝潮……俺、出る……」
提督が囁くように言った。
「ん……出る……先程の、ように……ですか?」
息も絶え絶えな朝潮はそう聞き返した。
「うん、無理、気持ち良くて、ゴメン……!」
そう言い終えると、提督は朝潮の体を強く抱きしめた。
「……っ……ん……ん……」
自分を抱きしめている相手から、何かを耐えるような声が漏れているのを聞くと同時に、朝潮はその股間の奥深くで何かが一定の間隔で蠢いているのを感じ取った。これが何かと思っていると、
「あー、提督がイってるー」
「ん、姉さんで出してくれたみたいね」
という、外野二人の声が聞こえた。どうも提督は自分の膣による刺激で射精に至ったようだ。
(え、本当……? 司令官が……私で……)
自分の肉体が慕ってやまない男の子の身体を快感に追い込んだ事は、朝潮に何とも言い難い喜びをもたらした。
「流石に血が出ちゃったか……」
ペニスを引き抜いた提督が、割れ目から血液を滴らせ続ける朝潮の股間を見つめながら複雑そうな表情で言った。
「うん、私達の時より多いかも」
同じく覗き込んでいた島風もそれに同意する。
「こういうのって、血が出るものなんですか?」
それが不安になったのだろう、朝潮が提督にそう質問した。
「人によるみたいだけどな。全然出ない人も結構いるって話だし」
朝潮の出血については体質の問題であろうが、いずれにしろ彼女にとって初めてのセックスだったのである。これ以上無理強いするのはまずいだろう。
「ま、姉さんは流石に今日は休憩ね」
霞はそっと労わるように朝潮の女性器に付着した血を拭き取っていく。
「じゃあ次は私かな? 霞、いい?」
島風が言う。ニーソックスを除けば既に全裸であった。
「ん、いいわ。どうせ司令官の事だからこれくらいじゃ終わらないもの」
霞はそう答えて、クスリと笑った。
「ね、提督? そーゆー事なんだし、いーよね?」
島風は尻を振りつつ四つ足で提督に迫っていく。
「んー、いい、けど……」
そう彼が返答した途端、島風に抱きつかれた。続いたのは彼女によるチュ、チュという口付けの嵐だ。提督による朝潮の初体験を見ていた事に加え、霞とのハードなペッティングがとうとう彼女を我慢出来なくさせてしまったようだ。
すっかり仕上がっていた島風と、まだまだ余力がある提督が結合するまでにはほとんど時間を要さなかった。
島風の片足にその体を乗せ、大きく開かれたその足の間から、提督はいきり立ったその剛直を島風の潤んだ割れ目に突き込み、もう片方の足を両腕で抱え込んで、激しい往復運動を繰り返している。体位としてはいわゆる松葉崩しである。
攻め立てられ、喘ぎ声を上げてよがるその様は提督と霞にはお馴染みではあったものの、朝潮にしてみれば衝撃的ですらあった。元々、彼女は時たま朗らかな笑顔を見せる事はあるものの、それ以外では柔らかくも真面目そうな表情でいる事が多い。例外があるとすれば戦闘時において険しい表情を見せる事くらいである。別に表情に乏しい性格という訳でもないのだが、少なくとも朝潮の印象はそうであった。
ところが、今の島風はどうであろう。すっかりだらしのない表情となり、よだれさえ垂らして提督の攻めを悦んで受け入れていた。
「あ゛ーっ!! あ゛ーっ!!」
島風は片足を真っ直ぐに上へとあげ、爪先さえもが天井を向いた形でひたすらに全身をひくつかせ、聞いた事のない嬌声を上げ続けていた。
「すごい……」
朝潮は島風のそんな痴態を見てそう呟いた。
「羨ましい?」
隣にいた霞が覗き込むようにして彼女にそう問いかける。
「分かん、ない……」
そう答える朝潮はしかし、提督と島風のまぐわいから目を離す事が出来ないようだ。
「ねえ、ていとくだしてっ!! わたし、イっちゃうからあっ!!」
呂律も回りきらなくなり始めた島風がそう叫んだ。
「出るからっ! イってっ!! 島風もイって!!」
苦しそうに言う提督。それからしばらくして島風も提督もその声の性質がますます焦りを伴ったようなものへと変わり始め、突如として、
「あああああああああああーーーーーーっ!!」
という長く甲高い声と共に島風の身体が激しい痙攣を始めた。
「あっ、うう……」
提督もまた目をつむって何かをこらえながら震えていた。
朝潮には何が起きたのか分からなかったが、しばらくして二人からは力が抜けたようだ。島風は天井に伸ばしていた片足をゆっくりと下ろし、提督もそっと挿入していたペニスを彼女から引き抜いた。ただし、それは未だに硬度を保っていた。
「ンフフ、ていとくったら、気持ち良すぎ……」
ふやけたかのような表情と声で、島風は言う。
そんな島風の姿がたまらなくなったのか、提督は無言で彼女に唇を重ねた。
「じゃ、次は私ね」
いつの間にか裸になっていた霞はすっと立ち上がった。それと同時に、島風はのそりと起き上がり、移動して霞に場所を開ける。
「流石に疲れたでしょ? アンタは動かないでいいわ。私が気持ち良くしてあげる」
霞は慈しむような表情で提督に言い、そっと彼の肩を両手で押してゆっくりと押し倒した。
硬いままの提督のペニスを優しい表情でゆっくりとさするようにしごいていた霞はやがて、彼に跨いだままその先端を自身の淫裂にあてる。そしてそのままゆっくりと腰を沈めていき、提督の剛直が彼女の女性器に埋まっていった。
「んっ……んんっ」
少々息が乱れたが、その時点では霞の提督を慈しむような表情にほとんど変化はなかった。やがて提督のそれが霞の奥へと到達したのだろう。霞はハア、と実に心地良さそうな甘いため息をつく。
「ホント、相変わらず大きいんだから。何回出せば気が済むのかしら?」
蕩けたような笑顔でそんな憎まれ口を叩きつつ、霞は提督の手をとった。両手が握り締め合わされたのち、彼女はゆっくりと腰を動かし始める。
お互いの両手を握りしめ合い、騎乗位の姿勢で結合している霞と提督。霞が愛おしげに提督と見つめ合いながらその幼い身体を上下させていた。見上げる提督もそんな霞に優しい眼差しを送っている。二人ともとても気持ちよさそうにしているばかりか、まるで性交を通じてお互いを癒し合うかのようでもあり、先程の島風のような激しいものとは別の形で、相手の心地よさに浸り、無言でその気持ちを確かめ合っているようにも見える。
卑猥であるには違いないが、同時に朝潮にはそんな二人の姿が何故か神秘的なものとしても映った。
「やっぱり、ウズウズしちゃう?」
隣にいた島風にいきなりそう問われて何の事かと思う。それを察したのか、島風が、
「アソコ、触っちゃってるけど?」
と言われた途端、自分が何をしているのか朝潮は気付いた。股間を両手で撫で回していたのである。
「えっ? あ、これは……!」
朝潮は慌てて股間から手を離した。どうやら霞と提督の行為に見惚れているうちに、無意識下で弄り始めてしまったらしい。
「ま、いけない事じゃないけどね。そういうのって、エッチの練習も兼ねてるらしいし」
「…………」
自分で自分の股間を弄り回すという、はしたない行為をいつの間にか行ってしまっていた事が恥ずかしくて仕方がないが、それでも次の瞬間には提督と霞の交合へと再度目を向け、そして釘付けになったように見つめていた。
当初はゆっくりと、提督の剛直をなだめるかのようであった霞の腰の動きも次第に激しくなっていった。今や聞こえるのは肌がぶつかり合う音や、より激しくなった霞の甘い喘ぎ声だけではなく、ジュプジュプという、何かの液体が掻き回されるような音である。
「霞……! 俺、出ちゃう……!!」
提督がまずギブアップの宣言をした。だが、霞の肉体は提督のそれとほぼ同じ状態に追い込まれていたらしい。
「出しなさいっ!! あんたが出さないと、私が先に……!」
その時の彼女には何故か焦りが浮かんでいるようにも見えた。そして、
「っ!」
と、呻き声ともつかない声と共に提督がその体を震わせると同時に、
「あっ! ああっ!! あああああっ!!」
霞もその全身を痙攣させ始める。
「やっぱり相性いいのかなあ。また一緒にイってる」
島風は楽しそうに言った。
「え、相性……? 一緒……?」
朝潮は島風の発言の意味が分からなかったようだ。
「うん、イクって言って、エッチの時にすごく気持ち良くなる瞬間っていうのが女の子にも男の子にもあるんだけど、普通ってそのタイミングなかなか合わないらしいんだよね。なんか知らないけど、霞も私もタイミング合っちゃうんだけど」
「……?」
不思議そうな表情を浮かべた朝潮を見てクスリと笑った島風は、
「まずはそこからみんなで教えないとダメかな? でも、イかなくても気持ち良かったでしょ?」
と聞いた。
「え、と。そ、それは……」
目を泳がせながら言い淀む朝潮。そんな彼女の姿を見る島風の眼差しは実に優しげであった。
「……ていう訳だから、これからは姉さんもエッチの相手に加わるからね?」
一連の行為が終わって全員が服装を整え終えた後、霞が提督に対して、更に提督の恋人に朝潮が加わる事を通達した。ついでながら、朝潮に貸していた島風の服はいくつかある予備の内の一つで、それとは別に本来朝潮が着ている服もこの部屋を訪れた時に霞が持ち込んでいた事から、この時点ではその服装を纏った、いつもの姿の朝潮がそこにはいた。
「ふ、不束者ですが……」
何故かペコリと頭を下げる朝潮。
「まあ、みんなが良いなら、良いけど……」
そんな事が許されるのかと考える提督は当然の事ながら困惑の表情を隠さなかったが、むしろここで拒絶した場合、主に自分にとって悲惨な結末 ── 具体的には、霞と島風による説教である ── が待っている事が何となく予想出来るだけに、それを受け入れざるを得なかった。
提督の部屋を出て、各自の部屋に戻る三人。その途中で島風がふと振り返り、朝潮に向かって聞く。
「良いよね? 朝潮も提督とああいう感じで?」
いきなりそう問われた朝潮は一瞬ポカンとしたような表情を浮かべたが、やがて真面目な表情に戻ってゆっくりとうなずき、
「ん。あれで司令官が私を見てくれるのなら……」
と答えた。そこに対する不安を覚える必要は無いと感じている島風と霞はホッとしたような表情を浮かべる。そんな空気のせいか、霞がらしくない悪戯じみた表情を浮かべて朝潮に向かって言う。
「姉さんもアイツとしちゃったんだからこの先大変よお? 変な場所でオナらないでね?」
ところが、朝潮には霞の発言の意味そのものが伝わらなかったらしい。どうやら性知識については元々妹の方が遥かに先へと進んでいたようだ。
「え、オナ……?」
何だそれはと言いたげな反応を示す朝潮に対して、島風が言う。
「オナニーの事だよ。さっき朝潮だって自分で自分のアソコ弄ってたじゃない? あれ」
霞と提督がまぐわっていた際の自分を思い出した朝潮の顔が一気に赤面した。
「そ、そんな事はしないわ!!」
と、朝潮は否定するが、
「さあ、どうだか」
と、霞がニヤニヤ顔で言ってくる。
「……っ! とりあえず、今日はもう失礼するから!」
朝潮は真っ赤になった顔を伏せ、早足でその場を去ってしまった。
その場に残されたのは霞と島風の二人である。霞が島風に対して穏やかな表情で、言う。
「島風、ありがとう。おかげで姉さんに嫌われないで済みそう」
それに対して、
「最初はあなたが私を巻き込んでくれたから上手く行ったんじゃない? それをちょっと応用しただけだよ」
と、島風は悪戯っぽく舌を出してそう返した。
それから数日もしないある日の夜の事である。提督の私室に備えられた固定電話が突如として鳴った。番号を見る限り内線である。こんな時間に何だろうか、まさか敵襲とか。そう思いつつも取り敢えず受話器を手に取る提督。
すると、電話口からは朝潮の切実そうな声が響く。
『夜分遅くに、大変申し訳ありません司令官。誠に勝手なお話で恐縮なのですが、今からそちらへ伺っても宜しいでしょうか?』
何か急を要する深刻な話でもあるのだろうか、提督はすぐに了承した。
程なくして玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けると、そこにはやはり朝潮がいる。
「どうかした?」
元々一目見た瞬間から不穏さとは程遠い表情をしている事は分かった。そんな朝潮は若干赤面して俯き、
「ええっと、その、非常に申し訳なく思っていますし、言いづらい事なのですが、そのう……」
そう言って何故か自身の股を擦り合わせつつ、何やらモジモジとした状態のまま、ボソボソと言葉を続ける。
「せ、僭越ながら、司令官に、何卒この朝潮の為のお時間を、たった今から頂きたく……」
その際、チラリと提督を見た朝潮のその目は情熱と劣情に満ちていた。それだけで全てを察した提督は、クスッと軽く吹き出した後、
「そっか、じゃあほら、来な」
と言って優しい微笑みを浮かべながら朝潮を室内へと誘う。提督が自分の願いを聞き入れてくれたと分かったその時の彼女の表情はあどけなく、フワリとした柔らかい笑顔でありながら、そこにはどこか淫靡さまでもが含まれていた。
朝潮が入室した事でそのドアが閉じられる。その際、歩みながら彼女が見せた腰のくねるような動きはぎこちないながらも、女としての悦びに目覚めた者特有のそれなのであった。