組合の猟民としての一周目――猟長はご立腹だった。ニッカが検閲室を蹴った件についてだった。
「せっかく席を用意してやったのに、面目丸潰れだ」
素直に詫びを入れた。
「検閲室の次長に、なんの嫌がらせだと嫌味を言われたぞ。お前の知り合いとやらは、特別枠を用意する必要などなかったほど優秀だったそうじゃないか。ぜひとも迎え入れたかったのに、とな。それを、どこぞの下らん部屋に取られて――」
手違いがあったと謝罪を述べた。
「まァ、おまえはちゃんと来てくれたから、かまわんがな」一転して誇らしげ。「すごいじゃないか。あらゆる試験で一番だったようだぞ。理論も文民を凌いでいたとか。わたしも室長も、おまえには期待しているからな」肩を叩かれた。
室長は狩猟室に近い、第一等の個室をあてがおうとした。丁重に辞退した。
名目上、養護室の部屋を賃借りすることにした。部屋代は狩猟室の予算に計上した。怪しまれないが、それなりの額で。養護室の経済状況はやや楽になった。
養護室は狩猟室から遠い。多少不便だが、致し方ない。ニッカの傍にいたかった。ニッカもこどもたちも喜んだ。
猟民としての生活が再開した。だが、聖母の塔にいたときとは大違いだった。
組合の猟民どもの錬度も低く、お粗末――今まで捌いてきた組合の猟民も、ここでは精鋭の部類に入った。
見てくれを気にして、感覚が鈍るとかなんとかと言い訳し、角巻をしないものも多かった。言語道断――猟民と言えど、角にほかのシシの血を浴びれば即死なのは変わらない。
ほかの塔では到底猟民になれそうにない輩がごろごろしていた。貧弱だったエルギンさえ屈強な戦士に思えた。
一部の猟民どもは、角なしの尻ばかり追いかけていた。己の地位と、富と、あるものを使って、角なしを手懐けていた。
それは粉薬だった。痩せるとか、賢くなるとか、能力が向上するとかうそぶいて、角なしに服ませるらしい。未通の角なしでも、肌羊のような盛り方をするらしい。
猟民自身は絶対に手を出さない代物――手を出したものはもれなく再起不能になるらしい。
これか――聖母のエーテル。シシを羊にする薬。
おそらく、これが本来の使い道。組合が多数のシシどもを支配しているからくりのひとつ。
出所は不明――気にかかるが、上層部まで繋がっているだろう。不用意に探りを入れたり近づけば、こちらも危険。
猟民どもが角なしを漁る以外に精を出していることと言えば、担当地区の遊牧民に媚を売り、おこぼれにあずかろうと立ち回ること。
そのため、猟隊同士の縄張り争いが白熱化していた。ときには外敵よりも、他の猟隊のほうが信用ならなかった。
他塔からの侵攻はそれなりにあった。第二一八塔は大きい。そこかしこに、敵対勢力の観測拠点があった。
だが塔全体の防衛状況は把握しきれなかった。
猟隊単位で分断されているせいで、サイマトが発達しているくせ、情報伝達は乏しかった。というよりどこかで阻害、妨害されていた。
古参の猟長が言った――背中に気を付けろ、隠れて味方を狩ってる連中もいるからな。
おそらく上層部の意向だろう。猟民を適度に消費したがっているのだろう。
都合がいい。成果を制御しやすい。目立ちすぎないようにだけ気を付ければいい。
もっとも、火の回路はなにもせずとも一目置かれていた。いずれ室長になるだろうと猟長全員に言わしめた。室長も認めた。
多少遅刻したり、欠勤しても、目こぼししてくれるようになった。それは都合がよかった。
起き抜けは、ニッカがよく求めてきた。
脇机の懐中時計を見ると、第二象限の手前。まだこどもたちは眠っている。塔には冷気が満ちている。
寝具のなかから水っぽい音がしている。「んむ……っ♥ ちゅ……っ♥ ずるる……っ♥ あむ……っ♥」
寝具をめくる。ニッカが屹立しきった外性器を頬張っている。生温かい満月の匂いが鼻をつく。
舐めあげ、すすりながら、触れるか触れないかの感覚で唇をまとわりつかせる、まったりとした口淫――教え直したやり方。下半身全体が湯に浸かっているような温柔な性感に包まれる。
そこにぎこちなさはない。むしろ積極的でさえある。
口でするのは、好きになってきたらしい。
ニッカが息継ぎする。「ぷあ……っ♥ んふ♥ すっごい濃い匂ぉい……♥ 昨周、あんだけしたもんね……♥」唾液にまみれた陽根にニッカが頬ずりする。「ね、思うんだけど――おねえちゃんの、毎周おっきくなってない?」
「……ニッカが舐めるのがうまいから、育ってしまったのでしょう」
いぶかしさ半分、おかしさ半分。「えェ、ほんとォ?」再び股間に頭を埋める。内頬の粘膜を擦りつけてくる。
ニッカの指摘は正しい。長さ、直径、角度、凹凸、反り返り具合――肌を重ねるたびに、微調整していた。ニッカの弱点を正確に刺激しながら、新たな性感帯を開発できるような形状に。
ニッカだけに合わせているため、ほかのシシでははまりが悪いだろう。逆にニッカにとっては、この陽根以上に快楽を得られるものはないだろう。
ニッカの頭を撫でる。口淫を中断させる。「あの、そろそろ」
「んー、もうちょっと、だめ?」
「しかし――」
あまりもたもたしていられない。狩猟室は最下層にある。みなが起き出す頃には出発しなければ間に合わない。
「ん……もう、せっかちさんだなぁ、おねえちゃんは♥」ニッカがのしかかってくる。
「待って、ください。ニッカの準備は」
「新月だから、いーよ。それに――自分でいじくってたから」
完全に勃起しきった一物に、火照った陰部を押し付けてくる――準備万端。陽根をくわえながら、自慰していたらしい。
ぞくぞくする。「う……どちらが、せっかちなのだか――」
ぺろりと舌なめずり。「んふ♥ 要領がいいって言ってほしいなー♥」剛直を入り口に導き、腰を下ろしてくる。「ふぅうぅんっ♥」侵略を待ちわびていた膣襞が歓喜に震えている。
陰部がべっとり張り付く。生え揃いかけていた陰毛は剃らせている――ヘルマの教え。そのほうが密着感が増大する。愛撫もしやすい。
腰から下がぽかぽかする。「……っ、さっきも言いましたが、お互いに、一回ずつ達したら、終了ですからね」釘を刺す。
「わかってるって……んっ♥ あっ♥ あっ♥ かったいっ♥ これぇっ♥ すきっ♥ すきぃっ♥」ニッカが腰を振りはじめる。
ニッカは新月が長くなりはじめていた。月薬を使用している自分と寝食を共にしているからだろう。時間を長く共有する角ありと角なしは、月の位相が対蹠になる。
第四二塔の離塔にいたときは、今ほどの影響なかった。頻繁に交わるようになったからだろう。
ニッカは健康的な月相応の角なしとおなじように、想いびととの交合の魅力にとりつかれた。性器を擦りあわせることが無上の快楽を生み出す事実を馴致させた、その結果。
ニッカはなんでも貪欲に試し、吸収していった。相手を喜ばせるだけでなく、ニッカ自身も己の肉体が生み出す際限のない快楽にのめり込んでいった。
ずっとやりっぱなしだった。部屋にいるときはほとんど常に挿入していた。仕事が休みの周などは、心魔法で勃起を維持し、象限を問わずまぐわいまくった。
交わり疲れて眠りこけ、起き出すなり寝ぼけたまま交わる――本当に粘膜同士が癒着するのではないかと思われた。
行為のときは、相手の快楽をなにより優先した。そのほうが充足が大きかった。それはニッカもおなじらしかった。
ニッカは呑み込みが早い。教えずともやり方を真似するようになった。だから際限がなかった。競うようにして相手に奉仕した。
互いに、自分のもっとも感じるところで、相手のもっとも感じるところを刺激した。それは恐ろしい中毒性を内包していた。
すればするほど互いの存在に飢え、渇いていた。片時も離れられなかった。
対面座位で抱き合う。首に腕がまわされる。耳朶にニッカの吐息がかかる。熱い。
「はーっ♥ はーっ♥ はーっ♥ はへっ♥ っく――っ♥ っふうぅん――っ♥♥」ぶるぶるっと身震いする。膣がぎゅうぎゅう圧搾してくる。
昇天は明白。「今、またイキました、よね」
「……っ♥ ……ふっ、ふーっ♥ ふっ♥ ひって、ない……っ♥ そんなに、ふかくはっ♥ イッて、ない、よぉ……っ?♥」
「しかし、軽くは――んぐっ」唇をふさがれる。
舌を吸い出される。甘噛みされる。唾液をすすられる。顔を離す。
童顔に悪戯っぽい笑みを浮かべている。妖艶と言うより、遊びに夢中になっているこどもさながら。
ずっとこの調子。とっくに五度は気をやっているはず。こちらは早々に一度射精している。
新月のときのニッカは、淫奔というほかなかった。いつになく甘えたがった。
下着はすぐにだめになるらしい。その周は腹が疼いてなにも手が着かないらしい。だから、寝起きにすっきりしておく必要があるらしい――少し開発しすぎたと反省する。
まもなく第二射が込みあげる。「ニ、ッカ、ほんとに、遅刻して、しまいます……っ」
「んっ♥ んっ♥ しゅりょう、しつ、ってっ♥ ここのっ♥ したっ♥ なんでしょっ♥ とびおりればっ♥ すぐだよっ♥」
「何階層、下だと、思ってるの、ですかっ」
「んふっ♥ じょーだんっ、じょーだんっ♥ あんっ♥ ふかぁいっ♥」すっかりさかっている。「おねえちゃんっ♥ おねえちゃぁん……っ♥ しゅき……っ♥ しゅきぃ……っ♥ おねえちゃぁん♥」頬を摺り寄せ耳元で甘えた声をあげまくる。
仕方ない。ちからずくで認めさせるしかないだろう。
ニッカを寝台に押し倒す。「そっちがそのつもりなら――」頭の上で腕を押さえつける。
とろんとニッカの目尻が下がる。エメラルドの虹彩が潤む。「ぁ――♥」うっとりした声を上げる。「はぁああぁ……っ♥♥」熱っぽい吐息。
ニッカが身を縮こませる。恐れではない。瞳は発情しきっている。角ありに隷属する角なし然としている。
「覚悟、してくださいね」
「やぁぁあん……っ♥ 襲われちゃう……っ♥ あっ♥ あんっ♥ やあんっ♥」
腰の動きに合わせて、ニッカが甘く悶える。ただ身を委ねるだけではなく、下からも腰を使ってくる。息はぴったり合っている、すさまじい性感が生まれる。
「あーっ♥ あっ♥ あっ♥ っくうぅうんっ♥ はっ♥ あはっ♥ おねーちゃんっ♥ おねえちゃんっ♥ きもちーねっ♥ あんっ♥」
「ニッカは、本当に、きもちよさそうに、しますよね」
「えへっ♥ だってっ♥ あっ♥ おねえちゃんとっ♥ してるんだもんっ♥ おっ♥ おねえちゃんはっ♥ きもちいーいっ?♥」無邪気な問い。
まぶしい――ニッカはこころの底から交尾を楽しんでいる。
愛らしい。愛おしい。さっきまで懸念していたなにかが頭から吹き飛ぶ。
「つがいと、してるんですから、当然、ですっ」
「えへっ♥ えへへっ♥ あんっ♥ んっ♥ んっ♥ ねっ♥ おねーちゃんっ♥ ちゅーしてっ♥ あっ♥ んちゅっ♥ んむっ♥」
ニッカに覆いかぶさる。ねっとり舌をねぶる。
こなれた粘膜全体が胤を請うて吸い付いてくる。体液がとめどなく溢れている。
外性器がますます強固になる。胎内を引っ掻きまわし、内臓を揺さぶる。
交歓の沼にはまりこんでいく。それは一方的ではなく双方向的な沼――相手を求むるがために求められ、求められるがために求む、共依存の循環そのもの。中断できる道理がない。
ひたすら唇を吸いながら、立て続けに射精する。
腰に足がまわされる。「んうぅううぅっ♥♥ んむうぅうううっ♥♥ ふっぐっうううぅっ♥♥ ――っ♥♥♥ ――っ♥♥♥ ――っ♥♥♥」精を吐き出している最中の陽根を、膣肉が絞り上げてくる。
確か五度目。ニッカのほうは、もう数えきれない。
新月のときに膣内射精するとニッカは必ず頂を極める。射精の合間にも幾度となく果てている。面白いように気をやる。
一息つく。「ふう……そろそろ、満足、しましたか」上体を起こす。
ニッカの乳房のない胸が大きく上下する。「はー……っ♥ はー……っ♥ んぐ……っ♥ まんじょく……っ♥ しまひたぁ……っ♥」呂律が廻っていない。焦点はあっていない。顎から喉元まで、汗と唾液と涙と鼻水でべとべとになっている。
手拭いで顔をきれいにしてやる。全身の汗を拭いてやる。
ニッカが気だるげに起き上がる。萎びた肉管を口に含んでくる。精液と愛液を残らず舐め尽くしてくる――ようやく解放。
「はァ……、すっきりしたァ」ニッカが伸びをする。脱力する。
むっとしてみせる。「おかげで、大遅刻ですよ」慌ただしく着衣する。
ニッカが寝台に肘をついて寝転んだまま見上げてくる。やたらにやついている。「んふ。おねえちゃん、ちゃんと外見た?」
問われて、遮光幕を開ける――陽輪の位置はまだ第二象限をまわったばかり。
首をかしげる。「そんなはずは――」懐中時計を読む。一時間早い。出るにはちょうどいい時間。ニッカをねめつける。「……謀りましたね」
ニッカが寝台の上で笑い転げる。「さすがにそう何度も、ぼくのわがままで遅刻させられないもん」
溜息を吐く。急ぐ必要はないらしい。「しかし、どうしてこのような面妖なことを?」
「んー、おねえちゃんが本当に時間を気にしてるか、実験、みたいな?」
針を戻す。鼻を鳴らす。「時間にだらしがなくて、悪かったですね」
「ごめんごめん、そんなに怒んないでよ」立ち上がって、正面から抱き着いてくる。「試すようなことして、ごめんね。でも、おねえちゃん、ぼくに甘すぎだぞっ」
「最初から計算ずくだったのですから、ニッカのほうこそ、途中で切り上げるつもりなどなかったのでしょう」
ニッカは舌を出して笑う。「ばれたか」軽くくちづけてくる。「いってらっしゃい。気を付けてね」耳元に口を寄せてくる。頬同士が触れる。「帰ったら、またしよーねっ」
ぞくぞくする。「懲りないひとですね」
ニッカのくすくす笑い――耳に心地いい。
ニッカの仮説は正しい。自分の頭には、ニッカ以外を優先するという料簡が微塵もないらしい。
その証明はむしろ好ましく思える。実証するまでもなく、自明だったようにも思える。
もっと突き詰めれば、ニッカに甘いのではなく、ニッカに甘い自分に甘いのだろう。
それはやはり――ニッカもおなじだった。ニッカもつがい相手に甘すぎた。
支障が出はじめた。
ニッカはノート室長に咎められた。
講義に集中できていないと言われたらしい。こどもたちが察しはじめたとほのめかされたらしい。教育によくないと注意されたらしい。
部屋の防音は効いている。気も遣っていた――ほどほどに。
つがいとなったのは周知の事実だった。双子であることは公然の秘密だった。
ノート室長は理解を示してくれていた。ふたりが本当に愛し合っているのならばと応援してくれていた。だがそれとこれとは別問題だと主張した。
ニッカは重く受け止めた。自らの分別のなさを認識した。配慮に欠けていたと反省した。もっとちゃんと先生らしくなろうとした。
ニッカは当面の間、肌の接触を禁ずると宣言した。どうしても辛いのなら月のものは手や口で処理すると譲歩した。まぐわうのだけは厳禁だと戒めた。
厳しすぎると難色を示した。どこかで息抜きしなければ長続きするはずがないと提言した。だが、ニッカが決めたなら従うと受け入れた。渋々。
最初の一月は何とか耐えきった。その三周後には、手で処理してもらった。三回。さらにその三周後には口で。六回。
ニッカは何食わぬ顔をして見せた。気丈に振舞っていた。並外れた我慢強さを発揮していた。
あれだけ甘い交尾漬けにされた上に、月薬を服用する猟民との同調で新月を引き延ばされて、普通の角なしならば一周として交わりを欠かすことなどできないはずだった。
予言通りになった。まもなく許容量を超えはじめた。ニッカはうつけることが増えた。肌はいつもかすかに汗ばみ、頬を紅潮させていた。寝つきが悪そうだった。
だが、講義中は平静を保っているらしい――規格外れの精神力。
ニッカは頭が固い。こちらから発散させてやらねばならない。
床に膝をついたニッカが、股の間で頭を緩やかに揺すっている。「ずず……っ♥ んん……っ、じゅるる……っ♥ んむ……っ♥ んちゅ……っ♥ んぅ……っ♥」いつもよりねっとりしっぽりした舌使いと吸い付き。
唇はほとんど添えるだけ。口内は適度な真空状態が保たれている。粘膜があますところなく肉竿にぺっとり張り付いている。
焦らされているよう――激しい勃起を誘うが、相手を絶頂に導く動きではない。
第一象限の頭。室温は低いが、股間だけほかほかしている。
みなが完全に就寝してからでなければ、ニッカは応じてくれない。
周が切り替わるなり、ニッカのほうから悪い匂いがするぞと言って鼻をすりよせてきた。
「っく……ニッカ……」腹の内で熱がぐるぐる渦巻き、煮詰められていく。
性感が凝縮されているのがわかる。もどかしささえ興奮材料にしかならない。寝台に座っていなければ、腰が抜けている。
ニッカは陶然と目を細め、発情しきった角なしの顔をしている。頬をすぼめて、優しすぎる口淫にふけっている。奉仕に没頭している。
頭を撫でてやると、ますます恍惚として物欲しそうな表情を浮かべる。エメラルドの虹彩が濡れる。きらきらまたたいている。
「ぷあっ、は……っ♥ はふぅ……っ♥ すんすん……っ♥ はぁあぁあ……っ♥」唾液と先走りでどろどろになった剛直に鼻を擦りつけてくる。匂いを確かめてくる。熱い息を吐きかけてくる。
誰がどう見ても、ほしくてたまらないという仕草。
頬に手を添える。「入れますか?」
「ふぇ……?」ぼうっと見上げてくるニッカ。
「ニッカも、溜まっているのでしょう?」
逡巡。「でも……でも……」もじもじ太ももを擦り合わせている。
指でニッカの唇をなぞる。「どこかで息抜きせねば、身体を壊してしまいますよ」
「でも……だめ……だよ……だめ……」尻をくねらせている。
ニッカの唇が指を追いかけてくる。食んでくる。口寂しいらしい。
唇のなかに挿し込む。乳頭を吸う赤子のように、指に吸い付いてくる。舌を這わせてくる。甘噛みしてくる。
「ずっとしないつもりなのですか? 一生?」
「そういうわけじゃ……んっ、ちゅる……っ」
「わたしとは、もうしたくないのですか?」
「そんなわけ……ないっ、けど……」
「ちゃんとわきまえていれば、だいじょうぶですよ」
「うううぅぅぅ……」ニッカは必死に誘惑に抗う。「……だめ、だよ……ぜったい、ぜえったい、だめ……ぼくは、せんせい、なんだから……」
ニッカが手を押し退けてくる。おもむろにそそり立った肉柱を口いっぱいに頬張ってくる。口蓋に擦りつけ、強く吸引してくる。
射精を意識させ、予期させる刺激。こちらを絶頂に追いやるための責め。
上擦った声が出る。「っく、あっ、っふ……っ!」歯を食いしばる。限界まで焦らされ、感度を高められた身にはたまらない。
だがそれはニッカにとっても同様。
「ん……っ♥ んふっ、んっ♥ んっ♥ んっ♥ んんっ♥」
口内の粘膜はすっかり出来上がっていたらしい。舐めしゃぶっているだけでも甘い声を出し、肩を震わせている。明らかに口淫で性感を得ている。
自然と唇や舌の開発が進んでいたらしい。口淫を気に入っていたふしもあるので、いずれ奉仕しているだけで達するかもしれない。
やがて喉奥までくわえこんでくる。もっと強い刺激がほしいみたいに強引に飲み込んでくる。
ニッカがえずく。「おぶ……っ♥ えほっ、おほ……っ♥ んっ♥ んぐっ♥」苦しげだが、むせるたびに瞳はとろけていく。
先端が狭い部分でごりごり締められる。竿に舌が絡みつく。粘稠度の高い粘液が肉茎にまとわりつく。
「うっく、あっ、だしま、す……っ!」思わずニッカの頭を抱え込む。恥骨をニッカの鼻面に押し付ける。
注ぎ込む。ニッカの喉奥に塊のような胤を打ち出す。
「んぐうっ!?♥ ――っ♥ ――っ♥ ――っ♥」ニッカが痙攣する。腰を浮かす。
喉が陽根を捩じ切らんと圧搾してくる。歯が根元にぶつかる。痛みさえ快楽に変換される。目が眩む。今まででもっとも鋭い射精感。
たっぷり一〇秒かけて出し尽くす。ニッカの口腔からずるずると引き抜く。
ニッカが床に手をついて激しく咳き込む。「げほっ、ごほっ、んっ♥ おぇっ、っほ、……んっ♥」
ニッカは酸欠と、そして軽く達したのか、放心している。
ニッカの新月は、その程度で収まる劣情ではない。むしろもっと物足りなくなったはず。熾火だった情欲は、今やニッカの子宮のなかを焼き尽くす業火と化しているはず。
息を整えたニッカは、また陽物を口に含もうとする。一度や二度の射精で収まるわけがないと熟知している。
「ニッカ、待ってください」
「……っ♥ な、に……っ?♥」はやくしゃぶりつきたいという目。
「ニッカのを、見せながら、してほしいです」
「ぇ……や、やだぁ……」
「どうして?」
「はずかし……、もん……」
「ニッカのを見ないと、今周は、何度出しても収まりがつきそうにないのです。ですから、ね?」
「ううぅ……わか、ったぁ……」渋々、というわけではなさそう。むしろ――。
横になる。ニッカに服を脱がさせ、顔の上にまたがらせる。
成熟したばかりのニッカの陰裂は触れてもいないのにどろどろになっている。噎せ返るほどの角なしの臭気。一月ぶりに拝むニッカの性器。陽根に血が集まる。
「ぜったい、ぜえったい……さわっちゃ、だめ、だからね……んちゅっ♥」陽根がぬめったものに包まれる。ニッカが口淫を再開する感触。
ニッカのそこはほころんでいる。鮮やかに色づいている。かすかに息づいている。視線を感じるのか、ひくついている。侵入を待ち望んでいるように見える。
陰核に息を吹きかけると、ニッカは過敏に太ももを震わせ反応する。
「んっ♥ ちゅぅっ♥ ずる……っ♥ んむっ、じゅずず……っ♥ んふーっ♥ ふーっ♥」鼻息荒くニッカが頭を上下に振りはじめる。昂揚に身を任せている。
そっと舌を伸ばす。愛液を掬い取る。入口を舐め上げる。
「んっふぅううっ!?♥ んーっ、んーっ、んーっ!♥」ニッカがもがく。
腰を抑える。唇同士の接吻よろしく、優しく秘部にくちづける。
「んぐぅっ♥ んっ♥ んっ♥ んっ♥ んんっ♥」
陰唇を唇と舌でほぐしていくにつれ、ニッカの抵抗が弱まる。代わりに、陽根への吸い付きが情熱的になりはじめる。下半身が溶ける。
早急に射精させて中断させようとしたのか、あるいは快楽に屈したのか。
お返しに肉壺の縁をねっとり舌でなぞる。熟れた生殖器の存在を自覚させる。それとわかるほど分泌液がこぼれてくる。肉体に交尾の準備を整えさせる。
「ふーっ♥ ふーっ♥ んふーっ♥ ふっ♥ んふっ♥ んーっ♥」
陰核を軽く吸い出してやる。肉茎に口淫するように、唇で柔らかくしごいてやる。
同時に中指で円を描くように秘部をときほぐす。慎重に挿入していく。ニッカの弱点に到達する。ずりずり擦りあげる。ゆっくり、じっくり。
ニッカが陽根を口腔から解放する。「んっおぉおおっ♥ そっこっ♥ そこぉっ♥ だめぇぇえっ♥」
「好きでしょう、ここ?」
「だからぁあっ♥ だめなのぉおおっ♥♥ がまんっ♥ できないのおおぉっ♥ おおぉっ♥ おぉおおんっ♥」
ニッカにとっては久しぶりの巨大な高みの予感――その瞬間への期待に、全身を痙攣させる。
とどめを刺す。指で膣内を押圧しながら、舌先で尖りきった陰核をこねくりまわす。
「いくっ♥ いくっ♥ いくっ♥ いくっ♥ いくっ♥ いくっ♥」
ニッカが頂を迎える瞬間、弱点を外さないが、刺激を弱める――決して深い恍惚は与えないため。
甘く悶絶するように、肉欲の火が吹き消えないように。どう接すればどう達するのかは、手に取るようにわかる。
「――っ♥ ――っ♥ ――っ♥」
汗ばんだ太ももが側頭部を圧迫する。温められた濃密な石鹸の匂いが肺を満たす。
ニッカが小規模な絶頂を味わいながら、尻を突き出してくる。陰核を口元に押し付けられる。さらなる高みをねだってくる。
脚を開かせる。ゆるゆると愛撫を再開する。弱く、しかし無視できない刺激を送り続ける。
ニッカが足を弱々しくぺちぺち叩く。「おねえ……ちゃ……っ♥ も……っ♥ もお、いい……っ♥」息も絶え絶え。
「やめてほしいのですか?」
「ち、が……っ♥ もお、いーから……っ♥ いれて……っ♥ いーからぁ……っ♥♥」
「そういうなし崩し的なのは、気が引けますね。なんだか言外に強要させたみたいで。ニッカがしたいか、したくないかを聞かせてくれませんか」
「ばかぁ……っ♥ そうさせてるっ、でしょぉ……っ♥」
「では、したくないと?」
「うぅぅ……っ♥ ……して、くださいっ♥ おねえちゃんの、ほしーですっ♥ いっぱい、いっぱい、して、ほしーですっ♥」
「なにを?」
言葉を重ねるたびにニッカが蜜を滴らせる。「おちんちんでっ♥ ぼくのおまんこっ♥ なぐさめてほしーですっ♥」
いじらしい。極度の興奮で胸が詰まる。「……わたしも、ニッカとしたいです。一緒に、慰め合いましょう」
上下を交代する。ニッカを仰向けに寝かせる。
ニッカはエメラルドの虹彩に涙を滲ませ、耳まで真っ赤になっている。享楽への想望に浮かされている。
ふと気づく。「もしかして、言わされるの、好きですか?」
「……ばかぁ……おねえちゃんが言わせるの好きなだけ、でしょ……」半泣き。嘘はついていないが、誤魔化している。
やはり――ニッカには被虐性が潜在している。だが過去の体験からして、ここまでひどく昂ぶっているときでなければ傷つくだろう。
ニッカは押しに弱い。もっと掘り下げれば、第四二塔での扱われ方のせいで、ニッカは正当な自己評価を下せない。
必要とされることに飢えている。求められることに無上の悦びを感じている。
それは錯誤を生み出す危険をはらんでいる。利用されやすいことを意味している。つけこみやすさを露呈している。
自分は違う。自分は半身だから。ニッカを渇望するのは当然だから――。
「ニッカに求められるのが、好きなのですよ」
ニッカが頬を膨らます。「……ほんとは、いつだってほしーの、わかってる、くせに」
おかしくなって噴き出す。「ですね」くちづけを交わす。
素肌を重ねる。ゆっくり陽根を押し込む。驚くほどのぬかるみで迎え入れられる。
「んふぅううぅっ♥♥ んううぅうぅぅうっ♥♥♥」交合の喜悦にむせぶ声。
滑らかな膣粘膜がむしゃぶりついてくる。根元から奥にかけていざなうような締め付け。
「……もしかして、入れただけで、イッたのですか」
「ら、って……っ♥ ひ、さし……ぶり、らもん……っ♥」舌が回っていない。「は……っ♥ はー……っ♥ はーっ♥ はっ♥ はっ♥ はひっ♥ どー、しよっ♥ おねーちゃんっ♥ どーしよっ♥」過呼吸気味に。「どきどき……っ♥ しすぎて……っ♥ しんぞぉっ♥ ばくはつしそぉっ♥」
初体験にも勝る昂揚――こちらもおなじ。笑ってみせて虚勢を張る。「おおげさ、すぎますよ。動き、ますね?」
「うんっ♥ うんっ♥ きてっ♥ きてぇっ♥ んっ♥ すきっ♥ すきぃっ♥ おねえちゃぁあんっ♥ んむっ♥ ちゅっ♥ んちゅぅっ♥」ニッカが熱烈に接吻してくる。
舌を絡め取られる。ずるずる吸われる。口内がやたら熱い。
膣内もぐずぐずになっている。出来上がっている。自分勝手な欲望に身を任せたくなる。なにも考えずに射精したくなる。
「おっ♥ おねえちゃっ♥ あぁんっ♥ だしたかったらっ♥ いつでもいーからねっ♥ あっ♥」
「……っ、わかるん、ですか……っ」
淫蕩な笑み。「んっ♥ んふっ♥ あったりまえだよぉっ♥ ぼくのっ♥ おくちとかっ♥ おなかのなかでっ♥ いっつもっ♥ びくびく♥ ぷるぷるしてっ♥ かっちかちになってっ♥ ふくらんでっ♥ はちきれそーにっ♥ なるんだもんっ♥」愛おしげに下腹部を撫でる。
「そんなに、わかりやすかったとは」
ニッカが上目使いで媚びる。「ね……、おねーちゃん……?♥ いっぱい、がまんさせて、ごめんね……?♥ もぉ、がまんしなくて、いーよ……?♥ すきなだけ、ぐぽぐぽって……♥ ずぼずぼって……♥ きもちよくなって……?♥」
ぞくぞくする。「う、ぐ……そんなこと、いわれると、自制できなく、なってしまいます……」
「いーよ……♥ おねえちゃんになら、なにされたって、ゆるしたげる……♥ うけとめたげる……♥ ぼくはおねえちゃんのものだし……♥ おねえちゃんは、ぼくのもの、なんだから……っ♥」
「ニッカ……っ!」
決壊する。尻を振りまくる。あらんかぎりのちからで。
ニッカが仰け反る。「お゙っ♥ お゙っ♥ んお゙っ♥ お゙ねえちゃっ♥ はっ♥ はげしっ♥♥」白いおとがいをさらす。
「すみ、ませっ、とまんな、くてっ」
「い゙っ♥ いーよっ♥ んいいぃっ♥ いーのっ♥ すきにっ♥ してっ♥」
息を切らせながら、ニッカの喉に舌を這わせる。首筋の汗を舐める。塩辛い。「はっ、はっ、はっ、ニッカ……っ! ニッカっ、ニッカ……っ!」何度も何度も名前を呼ぶ。
「あっ♥ あっ♥ あっ♥ あはぁあっ♥ はぁぁんっ♥ あーっ♥ ささってるっ♥ ぐさぐさっ♥ すごいとこっ♥ ごんごんあたってるっ♥ っくうぅっ♥ いっく♥ っく♥ いっく♥」ニッカが寝具をかきむしる。「――っ♥ ――っ♥♥ ――っ♥♥♥」達する。おそらく相当深い。
いつもなら休憩する状況――かまわず陽根を打ち付けまくる。
「んおぉおおおっ♥♥ いっでるっ♥ いっでるっ♥ いっでるのにっ♥ っぐうぅっ♥ いっぎぃっ♥ いっひいぃいいっ♥」ニッカの下半身が不自然に浮く。
腰を掴み抱え込んで、より深く繋がる。内臓を圧迫する。
ニッカが目を白黒させる。「おっご……っ♥ ふか……っ♥ すぎ……っ♥ くちから……っ♥ でちゃ……っ♥」声がかすれている。呼吸できないらしい。意識は飛び飛びになっている。危険な状態。
それでも止められない。内臓を揺さぶりまくる。膣襞を削ぎ落さんばかりに出し入れする。
ひとえに相手のことだけを欲する、愚直で純粋な性衝動をぶつける。
陽根の感覚が消えていく。どろどろに溶けたなにかが、股の間から込みあげてくる。
「は……っ、は……っ、ニッカ……っ、ニッカぁ……っ!」
ニッカの最奥でそれを解き放つ。視界が真っ白になる。
おびただしい量の精液が噴き出ている。腺が脈動するのがわかる。歯の根が合わなくなる。
汗と唾液が顎を伝ってニッカの縫合痕に落ちる。
手足が麻痺している。ニッカを押し潰しかける。
それでも腰が止まらない。
「あ……っ♥ あ……っ♥ お……っ♥ おねえちゃ……っ♥」ほとんど混濁している。
「はーっ、ニッカ……っ、はっ、はっ、はっ、ニッカぁ……っ、ニッカぁ……っ!」
とろとろと精液が溢れ続けている。栓が壊れたように漏出している。
ニッカの膣内で溶解しているからに違いない。ニッカの胎内があまりに具合がよすぎるからに違いない。魂が癒着しているからに違いない。
「おねえ……ちゃ……っ♥ しあ……わせぇ……っ♥♥ ……っ♥♥♥」ニッカはまどろんでいる。陶酔している。
狂おしい。愛おしい。何度ものぼりつめる。
ちからの入らない腕で抱擁する。すがりつく。体温と皮膚の感触を確かめる。ふたりがつがいであることを確認する。
囁く。「あいして……ます……、ニッカ――」
「ぼく、も……あいして、るぅ……っ♥♥」うわ言のように。
体力を使い果たす。陽根を抜く。白濁した液体が逆流してくる。とてつもない量の体液を放出している。一〇〇〇回分はまぐわった気分。
弛緩しきったニッカに腕枕をしてやる。べとべとの乳房に、額を擦りつけ甘えてくる。
ニッカ相手の初めて荒々しい交尾――だが、ただ荒いだけではない。こころの底から相手を求めた結果。ニッカも満ち足りた表情を浮かべている。
ニッカの濡れた金糸の髪を梳いてやる。頭皮が途方もない熱を持っている。
ニッカに息抜きさせるつもりが、なぜか襲わされたような気がする。操作された気がする。ニッカは意識してないだろう。天性のものだろう。末恐ろしい。
「も……くた、くた、だよぉ……」眠たげ。「おねえちゃん……、ほんと……ぜつりんさん……、なんだから……」
「すみません、歯止めがききませんでした」
「んーん……、もとめられてるんだなって、わかって、うれしかった……」はにかみつつ。「それに――はげしーのも……たまには、いいかも」
にやける。「ニッカも、体力がついてきましたね。最初は三、四回でへばっていたのに」
「じゃなきゃ、こーびでしんじゃうよぉ」思い出したように腕に噛みつかれる。「もお、おねえちゃん、接触禁止って言ってたのに」
こそばゆい。「でも、怒ってないですね」
ふてぶてしく。「そりゃあ、ぼくも溜まってたもん」ニッカが困ったように笑う。「おねえちゃんの言うとおり、全然しないのは、だめだね。今度からは、一〇周に一回、あ、やっぱ五周に一回とか、それか、ふたりがお休みの前の周だけとか決めて――」言いさして、ニッカがぶるぶるっと身震いする。顔を伏せる。
「……? どうしました?」
ニッカが顔を上げる。呆然としている。下腹部に手を添えている。「……できちゃったかも」