識魔法を中断して、二時間ほど――養護室の扉が静かに開かれました。わたしは伏せていた顔をぱっとあげました。先生が入り口で佇んでいたわたしに気づき、びくりと震えます。
「わ、びっくりした! 待ってて、くれたんだ……もう遅いし、先に寝ててもよかったのに――」
「待ってて、いたかったんです」
「そ、っか、ありがと……とッ、とりあえず、ぼくのお部屋、行こっか」
先生は居心地が悪そうに、わたしとほとんど目を合わせません。先生の寝室に移動し、寝台にふたりで腰を下ろしてからも、わたしとの距離感を測りかねたみたいに、先生は少し離れたところでそわそわ、もじもじ。躊躇、羞恥、憂慮――複数の感情が、先生のなかで拮抗しているのが見て取れます。やがて決意の気持ちが勝ったのでしょう、先生は唇を湿らせて切り出しました。
「……最初は、きちんと講義してたんだ。っていうか、今でもまじめに勉強したくて、ぼくを呼んでくれる角ありもいるんだけど、どんどん減ってきちゃって、もう、一月にひとりかふたりぐらい、かな。こういうこと、やめなくちゃとは思ってるんだけど……方針会議のたびに予算減らされちゃうし、みんなにお金返さなくちゃいけないし、普通の座学だけじゃだんだんやってけなくて、ぼくだけ、やめるわけには、いかなくて――」
「先生以外にも、お仕事してるんですか」
わたしが追及して初めて、先生はしまったと表情を凍りつかせました。わたしも掘り下げるべきではなかったと少々後悔します。きっと室長先生も――いえ、室長先生だけではないかもしれません。
「よく、わかったでしょ。幻滅した、よね。ぼくは、先生失格なんだ……ほんとはぼくみたいなシシが、先生をやる資格なんか、ないんだ。ぼくは、タルトを助けたかもしれない……けど、あのお金は、決してきれいなお金なんかじゃないんだ……タルトのこと、穢すようなことして、ごめん、ね」
自虐的に先生はそう謝りますが、わたしは先生の意見には、ひとつとして同意できませんでした。
先生の身体であがなわれた魂。わたしはそれが穢されたとは、微塵も思っていません。むしろ、今まで何の色もなかった生活に、ようやく意味を見いだせた――わたしは、先生に救われたことで生まれ変われたとさえ、思っているのです。だからこそ、わたしの命は先生にこそ尽くされ、砕かれるべきだと、確信していました。わたしはこの血肉の一片から、その一片に宿るいかずちとほむらの一粒まで、先生の魂に捧げ、還元されることを、何より憧憬していたのです。
卑しき我が魂が価値の根源。シシが鉄の天蓋の向こう側にある地平線を信仰してやまないように、わたしは先生を崇拝していました。
穏やかで儚げな輝きをたたえたエメラルドと、わたしの視線が絡まります。
「タルトはきっと、すごい角ありになるよ。ぼくが保証する。だから……だからタルトは、ぼくなんかよりもっとちゃんとしたシシと、角ありと結ばれたほうが、絶対ぜえったい、しあわせなれるから――」
そう先生は主張しますが、わたしはぶんぶん首を横に振って否定します。
「先生じゃなきゃ、いやです! 先生は、先生は、わたしの地平線、なんです……わたしの地平線は、先生しかありえないんです! わたしの魂に、二〇〇アルシーヴという価値をつけてくれたのは、先生なんです!」
「価値だなんて――た、魂は、価値とか、つけられるものじゃなくて! あれは方便というかなんというか、その、タルトの魂の価値が、決して二〇〇アルシーヴだとか思ったわけじゃなくて――」
「違うんです! 価値の重さは、どうでもいいんです! あのとき、わたしはただ候補殿の鬱憤を晴らすためだけに消費され、廃棄物として処理されるはずでした。でも、先生はわたしの魂に価値をくれた――わたしの魂が生きるに値すると、肯定してくれました! だから、だから、うまく言えないですけど、わたしは、先生に使われたい……先生のためだけに魔法を使いたい……先生の役に立ちたい……先生を支えたい……先生に仕えて、先生の一部に、なりたいんです! 今は、何もできなくても、いつかきっと!」
「そッ、そんな、ぼくは、そんなつもりで助けたんじゃ……!」
「それとも先生は、いらないですか、わたしのこと? 使えませんか? 不要ですか? わたしは、がらくた――」
「やめて! もう、やめて! 自分のこと、そんな風に言わないで! タルトはタルトだよお!」
「……無理なんです。わたしはとっくに、そう考えることしかできなくなってしまいましたから。だから、わたしのことが邪魔なら、教えてください。疎ましいなら、教えてください。先生の前には、二度と現れませんから」
「なッ、なんてこと言うのッ! 邪魔なわけないよ! 疎ましいわけ、ないよ! これ以上、ぼくを困らせないでよお……」
先生は絞り出すように訴えます。涙を溜めながら。
「ぼくだって、タルトのことは好き、だよ……タルトに想われてて、すっごく嬉しいし……教え子としても、角ありとしても、タルトはいいひと、だと思うし、気持ちも受け止めたい……ぼくは、きっと、タルトを拒めない……だから! だからこそ! 拒んでほしかった! 嫌ってほしかった! だから、見せたのに!」
「どうして、先生のことを好きになっちゃいけないんですか」
「だって、だってえ……もう、どうしようも、ないんだもん。お仕事が、どれだけ汚くて、不実で、不義理だとしても――ぼくは、やめることができないから……想われ続けてる限り、裏切り続けなきゃならないから……タルトに、そんなひどいこと、したくないよおッ! できないよおッ!」
ぼたぼた大粒の涙が降り注ぐ先生の手の上に、わたしは自分の手を重ねました。
「わたしが認めれば、不貞ではないと思います」
「――ッ!? でっ、でも、それでもお……なんで、そこまでして……ぼくなんかのことを、想うの……?」
「わたし、頑固で強引でわがままなんです、ハートによると。先生に嫌われても、先生のこと、諦めません。ずっと」
鼻をすすり、指で目元をぬぐいながら、先生はたずねました。
「……ぼく、ぼく――きみの倍は生きてるよ? すぐおばさんになっちゃうよ? きっと、タルトのお母さんとそんなに変わんないよ?」
「そんなの、気になりません。どれだけ月を重ねようとも、先生は先生ですから」
「ぼく、勉強しかできなくて……不器用で、縫い物も料理もうまくないし、それでも……いいの?」
「だいじょうぶです。先生に、そういうことは期待してませんから」
「そっかァ……って、ちょっとお、それ、どういう意味っ」
泣き笑いでわたしの肩にこつんと軽く拳をぶつける先生。わたしもつられて吹き出します。
「わたしも、先生が外で仕事をしなくてよくなるよう頑張りますから、それまで待っていてくれますか」
できることなら、先生の代わりになりたかった。先生の代わりに身体を売って、お金を稼いで、先生を助けたかった。そう提案したかった。
実際、その場面は想定していました。でも、思いとどまりました。わたしが花売りして養護室の暮らしが多少増しになりこそすれ、根本的な解決にはなりませんし、第一に先生は絶対に、わたしがお仕事を手伝うことを望まないでしょうから。先生がどんな手を使ってでも阻止しようとするのは、目に見えています。そんな素振りをちらりとでも見せれば、先生はわたしを拒絶するはずです。
牧民になるという贅沢は言いません。わたしにできるのは、一周でも早く魔法の腕を上達させ、予算が少しでも多く降りる部屋に席をもらえるよう努力することです。今しがた先生が抱かれてきた角あり、ペケット候補殿のように。
ちからのある角ありには、それができるのです。経費をいくらか減らしたり、増やしたり、その結果、角なしの授業を受けられたり、生かせたり、殺せたり、思いのまま。
こういう表現は、先生は好まないかもしれません。わたしも、あまりいい言い方とは思いませんが、先生を守るためには飲み込まざるを得ない事実で、真実です。
その程度で、先生の一部になれるなら――わたしは喜んで、その真実を飲み干すでしょう。どれだけこころが咎めるような悪行でも、先生のためになるならわたしはためらいなく手を染めるでしょう。
「待ってる。ずっとずーっと待ってるよ。だから……浮気とかしちゃ、やだよ?」
「し、しませんよッ。わたしは先生一筋ですからッ」
「えェ、どうだかなァ……タルト、たらしっぽいし、言い寄られたら断れなさそうだもん」
くすくす笑みをこぼす先生に、頬を膨らますわたし。と、思い出したように先生が焦燥を帯びた声を上げました。
「あ、やば――垂れてきちゃった」
「……? なにが、ですか?」
問い返せば、エメラルドの瞳があちこちさまよったかと思えば、こほんと咳払いをして。
「あー、っと、その、中で出されちゃったから、さ……いつもなら、精魔法でくだすところだけど、今は新月でうまく使えないから、早いとこかきださないと――たはは、失敗失敗、次からは気を付けないとね!」
先生について、最近発見したことがひとつあります。
癖なのでしょうか、性格なのでしょうか、先生はひどく辛いことや悲しいことがあって気まずくなると、これ見よがしに咳をして仕切り直し、なんでもなかったみたいに努めて明るく振舞おうとします。
そのつくられた笑顔があまりに切なくて痛ましくて、心臓がぎゅっと握りつぶされたかのごとく激痛を発します。同時に、最後まで見なくてよかったという安堵と、見るべきだったという後悔に苛まれます。そしていわく形容しがたい、息苦しいほどの、とてつもない焦燥感と使命感にも。
「……あの! わたしがやります! わたしに、やらせてください!」
「へ……? や、やるってなにを」
「だから、その、候補殿のを――」
「――ッ!? だめだめ! っていうか、無理! そんなこと絶対ぜえったいさせられるわけないよ!」
「どうしてですか」
「だ、だって、ばっちいし、恥ずかしいしィ……」
「わたし、頑張りますから! 任せてください!」
もごもご言葉を濁す先生を突き飛ばし、先生がペケット候補殿にそうしたみたいに、衣装をがばっとめくりあげ、下着をおろします。
「やッ、待ッ!? こらッ! やめなさ――ッ!」
石鹸の匂いとともに目の前に広がるのは、手入れの行き届いた茂みと、一筋の白い液体をこぼれさせる成熟した秘裂――それを目の当たりにして初めて、いったい自分が誰のどこに顔を突っ込んでいるのか自覚し、刹那の間だけ硬直します。ですがもう後には引けません。ここでやめてもますます気まずいだけなので、ままよと思い切って陰毛を鼻でかきわけ、その下に舌を伸ばします。
「んひゃわあッ!? な、舐め――ッ!? わっ、あわッ、もッ、怒るよッ!」
痺れる苦味と青臭さ。そのすべてをすくいとらんと、陰唇を舌でなぞり、優しくすすりました。
じたばた暴れ、わたしの頭を押しのけようとする先生の腕を掴んで抑えこみます。熱い――指先の毛細血管が燃え上がり、脈打つのを感じます。心魔法がひとりでに身体のなかで弾けているのです。
「ちょッ、こんなちからどこから――ん……ッ、ぅうんッ、ほんとッ、だめ……ッ、汚いよッ!」
「んむ……だから、……きれいに、してあげ、ます」
「そ、じゃ、なくてえ……っ、こんなっ、あぅんっ、やり方ぁっ、間違ってるからあッ」
一心不乱に、ただし触れるか触れないかの力加減で、労わるように生殖器を舐めほぐし続けました。候補殿の精液を吸えば吸うほど、熱と潤いを溢れさせます。先生の抵抗もそれに呼応するみたいに徐々に弱まり、いつしか取りすがるかのごとくぎゅっとわたしの手を握りしめていました。
「ふッ、ううう……ッ♥ んッ、んふ……っ、あッ♥ あッ♥ なん、か、これ、あっつ♥ あっつい……し、びりびり、するぅ……っ♥ タルトぉ♥ なにしたのお……ッ♥ なに、してるのおッ♥ これぇッ♥」
過度に興奮しているせいで判然としませんが、何らかの魔法が勝手に働いているのでしょう、先生が切なげに訴える通り、先生のそこは舌が火傷するのではないかと思うほど発熱しており、口内や舌の表面がぴりぴりちくちくしはじめます。
舐めども舐めども次々と泉から湧き出でる愛液ですっかり洗い流されたのでしょうか、味はほとんどしなくなりましたが、念には念を入れてと、いろんな体液で顎がべとべになるのをよそに、ますます秘唇に吸いついていると――。
「――んんんッ! そこッ! だめッ!」
舌先が硬く尖りきった突起に触れた途端、先生はびくんと身体をこわばらせました。わたしもひやりとします。
「すッ、すみません……痛かったですか?」
「ちが、くてぇ……痛いわけじゃ、なくてぇ……感じすぎ、ちゃってぇ……」
ならばとわたしは口腔にたっぷり唾液を溜めて、充血した陰核を口に含みます。
「んやあァッ!? はあああッ♥ むりむりむりむりぃッ♥ それぇッ、やだッ♥ やだッ♥ やだあッ♥」
身体を反らしてがっくんがっくん腰を揺らし、先生は汗ばんだ太ももでわたしの頭をがっちりはさんで痙攣します。たっぷり三〇秒ほどそうしていたかと思うと、くたっと脱力してお尻を寝台に落としました。
「ふぅー……ッ♥ ふぅー……ッ♥ ふぅー……ッ♥」
珠玉の汗が浮かぶ肌は首筋まで紅潮し、薄い胸を上下させながら陶然としている先生――その覗き見慣れた、先生の達する様に目を奪われます。
美しい――やはり美しい。何度見ても、どんなものよりも。でも、まだなのです。わたしは本能的に察しました。きっとまだなのです。まだまだ先生は――。
どっぷり分泌されたねばっこいおつゆに伴って、再度白濁した液体を滴らせはじめた陰唇をねぶります。ぐったりしていた先生がふやけた声を上げはじめます。
「ひぃンッ!? もッ、もおッ、いいよおっ♥ もお、じゅうぶんっ、じゅうぶんだからあッ!」
「でも、まだ……白いの、残ってるみたいですし――」
「それえッ、ちがうッ、たぶんっ、ちがうやつうっ♥ だからッ、もおやめてよおッ♥ びりびりやだあ……ッ!」
嫌がる口ぶりとは裏腹に、先生はわたしの髪を掻きむしり鼻に陰核を押し付けてきます。求められている――胸中に込みあげる熱を感じ、わたしは襞のひとつひとつをまんべんなく丹念に舐めほぐし、わざと盛大な音を立てて蜜を吸い上げました。
「ゆるして♥ もおゆるしてぇ♥ そんなにねちっこく♥ 舐めないでぇ♥ こどものくせにぃ♥ 先生のことぉ、いじめないでぇ♥」
そう並べ立てつつも、わたしの愛撫から逃れようとする意志はなく、耽溺しているようにしか見えません。あどけなさの残る顔が立ち上らせる色香は、触れてもいないのに精を漏らしてしまいそうなぐらいわたしの情欲を極限まで煽ります。
「も♥ だめ♥ あっ♥ こどもに♥ こんなこと♥ させてるなんて♥ 心臓ばくはつしそお♥ こんなのぉ♥ ばかになっちゃ――くぅんっ♥」
先生もまた並々ならぬ昂ぶり方をしている模様で、立て続けに気をやってしまっています。魂が、肉体を制御する影魔法を忘れてしまったかのように、先生は自分の身体の制御もままならない状態に陥っていました。
九度か十度目の絶頂を極めているさなか、先生はおもむろに、股ぐらをむさぼっていたわたしの腕をぺちぺちと叩きました。
「待っへ……も……、いい……、から……もお、むりぃ……しんじゃうぅ……こーさん、こーさんだよぉ……」
はっとして先生を見やると、エメラルドは焦点があっておらず、息も絶え絶えといったていでした。蜜の味に夢中になりすぎて、やりすぎてしまったようです。わたしに初めて口淫をしてくれた先生のように――。
「ご、ごめんなさいッ! 嫌、でしたか……?」
「……いやじゃない、けどぉ……、ぜんぎなんて、してもらったの、ひさしぶりで……、ね……ね、こっち、きて」
太ももを擦り合わせながら、先生がわたしの手を引きます。空いたほうの手の甲で口をぬぐい、誘われるがままに顔を近づけるや、ぎゅっと抱き寄せられ。
「ぅむ――ッ!?」
熱く、あまりにも熱く、柔らかな――接吻。砂糖菓子よりもなお濃厚で、脳みそがくたくたにほどけて溶けだしそうな、懐かしささえ覚える甘さ。突然の出来事に硬直した筋肉も緩み、しっとりした体温に体重を預けます。
どれだけの時間、唇を重ねていたのでしょう、唇がじんじん痺れてきた頃、先生が顔を離して手で覆い隠し、悶えはじめました。
「ああぁ……逸脱しちゃったあ……それも、こどもに手を出しちゃうなんて……悪い先生にもほどがあるよぉ……」
「わたしは、嬉しいですけど――」
わたしがそう言うと、先生はむくれてみせました。
「タルトも悪い子だぞっ、ぼくの言うこと、ちっとも聞いてくれないんだからっ……きみのせいで、ぼく、先生じゃいられなくなっちゃう」
先生の華奢な腕が、わたしの首に絡まります。耳朶を撫でる甘えるような囁き声と熱い吐息に、背筋をぞくぞくしたものが駆け巡ります。
「ね……しよ? 焦らさないで、入れて?」
「いいん、ですか」
「いいも悪いも、ぼくのここ……、勝手にこんなにしたくせに、ほったらかしにするほうがあんまりだよ?」
先生の陰唇へと導かれたわたしの指先は、濡れそぼちほぐれきった体内へいともたやすく侵入を果たします。そこは口内粘膜にも勝る柔軟さと潤いと熱量を備えていました。ゆっくり膣壁をなぞれば、応えるように吸いついてきます。無上の心地よさに、入れている指がぐずぐずにとけてしまいそうなほど。指ではなく陽根を挿入したならば、まもなく果ててしまうことでしょう。期待と興奮にくらくらします。
「タルトは、したくない?」
「し、したいです、でも、その、どうすれば――」
「まかせて」
再度唇をふさがれました。その間に体勢を入れ替えて、先生が上になりました。下着をずりおろされ、汗ばんだ手でかつてないほど滾った肉茎を引っ張りだされます。そして過敏な先端がぐちゅりとぬかるみにひたされ、飲み込まれ――根本まですっぽりと、熟した肉に包まれます。
「あっ、あっ、せっ、せんせえ……っ!」
「はあぁ♥ 深ぁ♥ やっぱり、思ったとおり、これ、立派だぁ♥」
熱い吐息を漏らす先生のいやらしくうごめくそこは予想通り、否、予想以上の感触で、入れたばかりだというのに絶頂寸前にまで追いやられ、陽根がひっきりなしに跳ねてしまいます。
先生は嗜虐的なきらめきをたたえたエメラルドでわたしを見下ろしながら、下腹部を愛おしそうに撫で、ぺろりと唇を舐めました。
「んふふ♥ わかる? ここまで入ってるんだよ。タルトったら、ぼくのなかで、びくびくしっぱなし……もうイキそうになってるんだ♥ せぇっかくめいっぱい鍛えてあげたのに、だらしないぞっ♥」
「だって、だってぇ……せんせいのなかが、よすぎて――」
「そうやってすぐ言い訳するんだから……ちょっとは我慢しなさいっ」
「はあうッ!? せんせっ、ま、まってくださ――っ!」
先生がゆっくりと腰をゆすりはじめました。一往復するたびに肉襞が複雑にまとわりつき、にゅるにゅると陽根を慰めます。膣内に残っていたわたしの唾液でしょう、かすかにちりちりぴりぴり陽根を刺すものがあり、ほどよい刺激となっています。
「はぁッ♥ あはあっ♥ 奥まで♥ ぐっさり♥ かたちも、ほんとにすてきだし……♥ タルトは、どお? ぼくのなか、きもちい? ぼく、ちゃんとできてる? 今度は、いけそお?」
矢継ぎ早に問いながら、汗を滲ませ、甘ったるい匂いを立ち上らせて、わたしの上で真っ白なお腹を波打たせ、穴を開けた痕が残る、かわいらしいおへそを衣装の合間から覗かせる先生。上昇した体温で揮発した石鹸の匂いと甘い甘い体臭に神経をくすぐられ、興奮が頂点に達します。
「あっ、あっ、せっ、せんせっ、でちゃっ、でちゃうッ!」
「えぇ、だめだよぉ♥ なーんにもつけてないんだから♥ 今出しちゃったら、あかちゃんできちゃうよ♥ がまんして♥ がまん♥ がまんだよっ♥」
「だっ、だからあっ、とめてっ、くださっ!」
「どうしよっかなあ……さっきはぼくが何度お願いしても、やめてくれなかったからなあ……言うこと聞いてくれないような悪い子はぁ、先生、きちんとしつけないとだしぃ」
「そんなぁっ、せんせっ、ほんとにっ、でるッ、でるからァッ!」
「はあぁ♥ もお、かわいすぎ♥ 甘えさせたくなっちゃうよ♥ こんなの、なんでもしてあげたくなっちゃうよぉ♥」
先生は悪戯っぽい笑みを浮かべたかと思うと、やおら上半身を倒し、わたしの耳をねぶりつつ、服の上から爪で乳首をかりかり引っ掻いて、きゅんきゅんと肉杭の根元を締め上げます。そんな責め苦に耐えられるはずがなく、わたしは先生のなかに蓄積させていたきもちを盛大に決壊させていました。
「はああぅッ! んんんーッ! んんーッ!」
永遠とも感じられるほどに長く、そしてもう二度と戻ってこれないのではないかと不安さえ覚える深い深い絶頂。見えずとも、今までで最も多くの精を放っているのが実感できます。
「ぁはっ♥ すっごい♥ びゅくびゅく♥ ぼくのなかで、ばくはつしてるみたい――っ♥♥♥」
射精しているときも先生は責めの手を緩めることはなく、終えてからも先生はやめるどころかますますねっとりと柔肉を吸い付かせ、恥骨をぐりぐり押し付けてきました。わたしの怒張もまた勃起をおさめるすべを忘れてしまったようで、絶え間なくどっくんどっくんと体液を迸らせ続けます。もはや吐き出すというよりも、搾り取られる、そういう表現のほうがぴったりでしょう。
お腹の奥が痛くなってくる段になって、ようやく胤が枯れ果て、こわばりがほぐれてきました。にゅるりと先生の胎内から追い出されます。
上気し、満ち足りた面持ちの先生と視線がぶつかります。先生は気恥ずかしそうに、ぺろりと舌を出しました。
「……やらかしちゃったね」
「……やらかしちゃいましたね」
「もう、出しすぎ……どろどろになっちゃった。これじゃ、ほんとにあかちゃんできちゃうよ」
「すすす、すみません! 今すぐ掻きだしますから――」
「じゅ、じゅうぶんだってば! ちゃんと精魔法使ってくれたし……またあんなのされたら、死んじゃうよお」
先生はわたしの上から降りて、隣に身体を横たえました。鼻と鼻がくっついてしまいそうな距離で、しっとりしたエメラルドの虹彩がわたしを映します。わたしの銀髪を指で梳きつつ、先生はぽつりとつぶやきました。
「……ね。双子とするのは、やめるね。あの子たち、さ――ここに来たばっかりのときは、今みたいに明るくなくて、ほっとけなくて……、その、色々慰めてあげてたんだけど、すっかり元気になったし、なんとなく断りきれなくて、惰性でやってただけだし、ずっとやめなきゃって思ってたし、あの子たちのためにもならないし……でも……でも、ごめん、やっぱり、授業は――」
「あの、そのことなんですけど」
わたしはためらいがちにたずねます。
「今度からお仕事に行くとき、あの羊皮紙を持って行ってくれませんか。わたしの名前を記した、あの羊皮紙を」
「へ……?」
「えと、先生がしてるのを、見ておきたくて――」
一瞬、きょとんとしたかと思うと、先生は羞恥と困惑が半々の顔をしました。
「や、やっぱりへんたいさんだあ……」
「あッ、ち、ちがいますッ! 先生が、ひどいことされないか、心配なだけです!」
「ほんとかなァ……?」
たまらなくおかしそうにくすくす笑うと、甘えるみたいにわたしの胸を額にこすり付け、深く息を吸い込んで。
「……いいよ。そのかわり、絶対ぜえったい、守ってね。ぼくの、候補殿」
じんわり涙を浮かばせて、先生はわたしに微笑みました。
「はい、ぜったいに」
わたしはエメラルドの縁を飾る水滴を舌で掬い取りました。
それは甘い、ひどく甘い味がしました。
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