※この作品はR-18です。

英雄戦姫WWX二次創作(エロ回)   作:シベリア!

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第一回人気投票にてランスロットの順位が少しでも上がることを願い、英雄戦姫二次創作を書きました。
本当は投票期間中に完成させたかったのですが、間に合わず、お蔵入りするのももったいないので投稿します。
(作者は第1回人気投票で120003票を投票しました。)

どうか寛大な心で見てやってください。
もし面白いと思っていただけたら、第二回人気投票にてランスロットに一票をお願いします。
(pixivにも同じ内容の作品を投稿しています。)



裏切らない呂布なんて呂布じゃないやい

(注)裏切る呂布、裏切るランスロット、悪巧みするボールスとパラメデス、原作キャラのNTR展開が受け入れられない方はプラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

「人気投票だあああぁぁぁーーーっ!!」

 

葉に霜が付き、池の水に氷が張るある冷えた朝……

太公望呂尚がふすまをドカーンッと蹴っ飛ばしながらジパング王の執務室に乱入してきた。

風圧でばさぁーっと書類が舞い散り、黙々と政務に勤しんでいたジパング王の手が止まる。

 

「やぁ、太公望」

 

ジパング王ことチハヤは全く動じず、朗らかに微笑んで軽く手を振る。

仕事中に誰かが急に飛び込んでくることなんて、彼にとっては日常茶飯事である。

特に太公望は神出鬼没と言うか、良くわからないタイミングで良くわからない事を捲し立ててくるのだ。

 

「人気投票だよ人気投票っ! 6年ぶり9回目の人気投票!」

 

「え~っと……人気投票の話なら聞いてるけど、9回目って?」

 

「前回はGOLDまでの登場キャラだから全68人、今回はキミ含めて151人での総選挙!

 いやぁ増えたものだねぇ、ポ〇モンかって位だよ」

 

「ぼ、ぼっけもん? 薩摩隼人かな?」

 

「いくら任〇堂が黒いからって、誤チェスト上等のゲームは作らないよ、たぶん。

 まあ、赤と緑とか、金と銀だった頃はともかく、

 剣と盾のポ〇モンが今何種類いるのかは実は知らなかったりなんだったり」

 

妙なテンションの太公望に、チハヤは若干引き気味だ。

 

「……ま、それはそーとして」

 

……と、ここで急に太公望のテンションが下がる。

 

さっきまでの言動が演技だったのか、思考の切り替えが異常に早いのか、その両方か。

常人ならぎょっとする状況であったが、チハヤは驚く様子が無い。

その位ジパング王の周囲には変人奇人が……いや、彼の名誉のためにこれ以上の言及は避けよう。

 

「キミ、ちょっとお嫁さん作りすぎじゃない? しかも世界中に分散して」

 

太公望呂尚は真顔でそう告げた。

 

「多いかな?」

 

記憶喪失者らしく、チハヤはイマイチ呑み込めていない。

 

「誰がどう見ても多いと思う。 ハーフ在〇だよ、1日1人抱いてっても半年に1回だよ」

 

「流石に1日1回はしてないな、最近は週1か週2……」

 

「織姫と彦星より会えない正妻って斬新じゃない?」

 

「うぐっ」

 

真顔のツッコミにチハヤは心臓を抑える。

 

今まで危機感というか、違和感を抱かなかったチハヤがちょっと揺らいだ。

割と気ままに嫁を増やしていった過去の自分の行いを多少顧みる……原因の何割かは姉と龍馬のような気もしたが、残りの何割かは良く言えば素直で他人の良い所を見つけやすい、悪く言えば惚れっぽい自分の性質が原因だ。

 

「良い機会だから自身の言動を少し顧みるのも一つだと思うよ、真面目な話。

 シモ関係の縺れで滅びた国は1つや2つじゃない。

 知っているだろう、秦の始皇帝はち〇こを車軸替わりに車輪を回せる男に謀反を……」

 

……と、太公望呂尚の話が終わらない内に、

再びドカーンッ! と派手に音を立てながら何者かがチハヤの執務室に飛び込んできた。

 

「な、何だ今度は!?」

 

「はぁーはっはっはっはっはっはぁっ!!」

 

謎の高笑いと共に、妙に肌の露出が多い黒いバニースーツを着た女性がチハヤを組み伏せ、その喉元に黒曜石のような妖しい輝きを放つ漆黒の剣を突きつけた。

 

「それがーっし!!」

 

直後、チハヤの姉(自称)こと伊達政宗が謎のバニー女を追いかけて執務室へ飛び込んだ。

 

「何者だ貴様! 某の弟に手出しはさせんぞ!」

 

「ガラハド……じゃあ無いか、誰だいキミは?」

 

謎のバニー女がチハヤを人質に政宗、太公望と距離を取る。

その姿はブリタニアの円卓の騎士ガラハドに瓜二つ……髪の色が真っ黒な所を除けばそっくりだ。

 

「私は悪の大怪盗っ! ブラックバニーッ!」

 

謎のバニー女がチハヤに漆黒の剣を突きつけながら名乗りを上げる。

 

「何っ? ブラックバニーだとう!?」

 

「認識阻害の魔法……それも相当高度な……」

 

政宗が昔借りパクした燭台切光忠を、太公望が脳天カチ割り系宝貝打神鞭を構える。

 

「(政宗、当然わかってると思うけど……)」

 

「(この状況下でこの落ち着きよう、相当な手練れよな)」

 

「(そうだね、ボク達2人じゃ敵わないかも)」

 

「(仮にも古代英雄だろうにっ!)」

 

「(ボクは頭脳労働担当、荒事担当のジークフリートやクー・フーリン程強くないの)」

 

政宗と太公望がアイコンタクトで通じ合う。

2人とも相当な戦闘経験を有する英雄故に、目の前の乱入者の実力はかなり正確に把握している。

 

「(冗談ではない、冗談ではないぞ! あの時のような事がまた……)」

 

政宗の足が震える、腕が震える。

決して表情には出さないが、冷や汗がぽとりと畳を濡らし、ほんの僅かにではあるが額が青ざめていた。

畠山義継に人質に取られ、乱戦の中で命を落とした伊達輝宗の事が嫌でも脳裏に蘇る。

政宗の目の前で喉元に刃を突き立てられ、目の前で物言わぬ屍となった……

 

「(今は考えるな! 思い出すな! しっかりせい、弟が死ぬぞっ!!)」

 

政宗が自身を奮い立たせる。

ガラハドに似た姿に油断していた。

なんやかんやで自称創造神を打倒し、これまで上手くやってきて呆けていた。

政宗は自身の迂闊さを呪った。

 

「キミは一体誰なんだ? ガラハドじゃあないのか!?」

 

人質にされているチハヤが剣呑な状況を察し、声を上げる。

自分を捻り上げる人物がバニーアイス……円卓の騎士ガラハドの下手糞な返送ではない事は辛うじて分かったが、その正体がどこの誰なのかはまるで分らなかった。

 

「あまりまじまじと観察されると困るので……ノッキング!!」

 

直後、ブラックバニーがチハヤの首筋にトンッ! と当身を食らわせる。

脳にガツンと衝撃が伝わり、チハヤの意識が瞬時に刈り取られ、ブラックアウトした。

 

「貴様っ! 某の弟に何をするかっ!?」

 

「ちょっと気絶させただけですよ。 当面、死なれると困るので」

 

「どこかへ連れ去るつもりか!?」

 

「ご明察……カモンッ! ブラックハンマー! ブラックポイズン!」

 

ブラックバニーが盗聴防止措置付きの小型通信石に声をかけると、巨大な鉄球が仙台城の壁をブチ抜く。

 

「政宗! 危ない!」

 

呂尚が即座に政宗を背後に隠し、飛んできた破片を衝撃波で防御する。

 

「ぬぐ! す、すまぬ……」

 

「ジークフリートには負けるけど、一応古代英雄だからね、頑丈なんだよ」

 

「はーはっははっはっ! 私は悪の戦士、ブラックハンマー!」

 

「わたしは悪の教授(プロフェッサー)……ぶらっくぽいずん……」

 

壁に空いた穴から2人の着ぐるみウサギが入り、それぞれ自己紹介を始める。

一方は妙にノリノリで、一方はやる気が無いのかノリについていけないのか、微妙に棒読み気味だ。

その声をどこかで聞いたような気がすると呂尚は訝しむが、流石にどこで聞いたかまでは特定できない。

 

「くくく……今、ジパング王に睡眠薬を嗅がせた……これで丸一日は目覚めない……」

 

「さぁ諸君、我々が逃げるのを止められるかな?」

 

自称ブラックハンマーが鎖付き鉄球をブンブンと振り回しながら政宗達を威嚇する。

 

「貴様ら、某の弟に手出ししておいてタダで帰れると思うなよ」

 

「比較的弱い方とはいえ、これでも古代英雄なんでね。

 打神鞭の人間の頭蓋骨をカチ割る程度の能力、久々に見せてあげようか」

 

「ブラックハンマー、ポイズン、分かっているな?」

 

「はいはい、事前の打ち合わせ通りにだね」

 

「合流は……ポイントBで……」

 

「い~ち!」

 

「2のぉ~」

 

「「「散開ぃっ!!」」」

 

合図の掛け声と共に、ブラックバニー、ブラックハンマー、ブラックポイズンの3人が同時に、かつ別々の方向に全力ダッシュで逃げ始める。

 

「逃がすかっ! 者共ぉ! 出会え出会えぇ~いっ!!」

 

……

 

…………

 

………………

 

城というのは敵と戦うために作られた軍事施設だ。

基本的に道順が分かりにくいように作られており、内部構造を知っている者は動き易く、知らない者は道に迷い、思うように動けないようになっている。

 

しかし、ブラックバニーら3人はまるで何度も何度も仙台城の内部に出入りしているかのように、最短かつ最適な道順で追っ手を撒きながら城外まで走り去っていた。

 

そして仙台城チハヤ誘拐事件から半日が過ぎた。

 

「ランちゃん、もうすぐ迎えの船が着くよ」

 

「ししょーのカモフラージュはどんな塩梅ですか~」

 

ボリボリと何か硬い物を噛み砕きながら、ランスロットがそう尋ねる。

 

「抜かりはない……つくね君の着ぐるみに押し込んでおいた……」

 

つくね君とは、坂本龍馬がランツクネヒトの宣伝目的で作ったマスコットキャラクターである。

昔給料日前で金に困ったランスロットがアルバイトで中の人をした時、しれっと着ぐるみを着服しておいたのだ。

 

「ランちゃん、さっきから何食べてるの? おせんべい?」

 

「変装用に作ったアイスソードもどきですよ~。

 運動して小腹が空いたので~、お味噌と醤油をかけて処分してるんですよ~」

 

そう言いながら、ランスロットはアイスソード型の氷の塊をバリボリと噛み砕いていく。

昨晩仙台城の近くの池に魔法剣アロンダイトを沈めて凍らせておき、アロンダイトをアイスの棒のように芯にして成形し、ガラハドのアイスソードによく似た氷塊を作っていた。

 

「こんな寒い日にそんなの食べて良く身体冷えないね。 頭とかも痛くならない?」

 

「焚火のおかげで身体はあったかですよ~」

 

ランスロットが言う通り、彼女達3人の間でちょっとしたキャンプファイアーがあり、汗をかいて冷えた皆の身体を暖めている。

燃料は2人分のウサギの着ぐるみに、おそらく安倍晴明が仕込んだと思われる追跡用の呪符である。

 

「こんな物まで仕込んでるとは、道理で追跡を撒くのがキツかった訳だよ」

 

「過保護というか……何というか……」

 

「単に信用してないだけですよ、ししょーのこと、政宗さんが」

 

「ああ、例のあの話? 昔妹に殺されかけたって……あの話? マジ?」

 

「MI6が入手した……確度の高い情報……」

 

「たぶんあの人は、世界一ししょーから愛されている人で、

 世界一ししょーの事を愛したがっているのに、

 世界一ししょーを信用できない人なんですよ」

 

「まだ半信半疑だけど、だとしたら随分と歪な関係だね……

 この話、アーサー様には伝えたの?」

 

「してない……」

 

「もー何言ってるんですか~、話がややこしくなる確率が150%じゃないですか~」

 

斜め上にカッ飛んだ後、事態の収拾中に再度トンデモ行動をやらかす確率が50%という意味である。

 

「そーなると結局、いつもの3人でやるしか無いって事か。

 ランちゃん、ひと段落ついたら何か奢ってよね」

 

「給料日の後で良ければ~」

 

「お給料もう全部使っちゃったの?」

 

「じゃなきゃアイスソードもどきで腹を満たそうとしませんよ~」

 

そんな中で、長距離通信用の通信石が着信を知らせる音を鳴らす。

 

「はいは~い、こちらジパング駐在任務中のランスロットです~」

 

「ああランスロット、やっと繋がりました」

 

「アーサー様じゃないですか~、ど~したんですか~?」

 

通信の主は彼女達3人の主君にして、ブリタニアの王アーサーのようだ。

 

「今朝ジパングから問い合わせの連絡がたくさん入って大変なのですよ。 なんでも……」

 

「ガラハド様の偽物が現れて、ジパング王を誘拐したって話ですよね~。

 こっちでも大騒ぎですよ~」

 

お笑い番組なら『こいつ犯人です』のテロップが流れることだろう。

 

「ガラハド……? ええっと、こっちではバニーアイスの偽物が出たという話で、

 ガラハドではないのですけど……とにかく、愛しいあの人が誘拐されてと聞いて、

 私はもう居ても立ってもいられない思いです」

 

「そ~ですね~、私も心配で心配で~、ご飯も喉を通りませんよ~」

 

そんな事を言いながら、ランスロットはガラハドに罪を着せて捜査を撹乱するために作ったアイスソードもどきを噛み砕き、証拠隠滅をしている。

 

「ジパングからガラハドの居場所について問い合わせが来ているのですけど、

 今日は有給を取っているのです。 ランスロットはガラハドの予定、知っていませんか?」

 

「ああ、それならイタリアでバカンスを楽しんでると思いますよ~。

 この前オペラハウスの招待チケットが手に入ったって嬉しそうにしてましたから~」

 

「まぁ、イタリアでオペラですか! それは素敵な休日ですわね。

 それでは、ジパングの方々にはそのように伝えておきますわ」

 

「今月のお給料半分吹っ飛ばしたかいがあるというものです~」

 

金欠騎士がアイスソードもどきを口にしながら笑う。

お笑い番組なら『こいつ犯人です』のテロップが流れることだろう。

 

「ああそれと、犯人の1人がエクターのハンマーを使っていたみたいなのですよ。

 それが犯行現場に残されていたとの話です」

 

「そうなんですか~、それは知りませんでした~」

 

なお、ちょっと前にエクターの家からハンマーを盗み出した犯人もランスロットである。

 

「エクターも今日は有給を取っているので行方が分からないのですが、

 ランスロットは……」

 

「エクターならインドでラーマヨガ体験に行ってますよ~。

 この前体験旅行券が手に入ったって嬉しそうにしてましたから~」

 

「まあ、インドでラーマヨガ体験ですか! それは素敵な休日ですわね。

 それでは、ジパングの方々にはそのように伝えておきますわ」

 

「今月のお給料残り半分吹っ飛ばしたかいがあるというものです~」

 

金欠騎士がアイスソードもどきを口にしながら笑う。

お笑い番組なら『こいつ犯人です』のテロップが流れることだろう。

 

「それでは、引き続きこっちで情報を集めておきますね~。

 何かわかったら、都度報告を入れますので~」

 

「ランスロット」

 

通信を切ろうとするランスロットを、アーサーが呼び止めた。

 

「どーしましたか? アーサー様」

 

「あの人の事、よろしくお願いしますね」

 

ランスロットはニカっと笑って答える。

 

「ダイジョーブですよ~! 昔から言うじゃないですか~。

 科学ノ発展ニ犠牲ハ付キ物デースって」

 

なお、この場合犠牲になるのはガラハドとエクターの休日である。

およそ大丈夫とはかけ離れた台詞であるが、アーサーは動じない。

どころか、安心した様子で胸を撫でおろしていた。

 

「……たぶん、無駄骨、無駄足になると思いますけど。

 それでも、アーサー様がやりたい事は、私がやるべき事ですよ~」

 

「いつもいつも、一番大変な役割をやらせてしまいますね」

 

「良いんですよ~、トモダチですから~」

 

『騎士』とは言わないところがポイントである。

他の円卓の騎士にとってはともかく、ランスロットにとって『騎士』という単語はそれなりに思い言葉なのだ。

 

「ツケ払いは、経費で落としておきますわ。 今月はいつもより多いみたいですけれど」

 

「あはは~、色々買わなきゃいけないものが多くなりまして~。

 冬のボーナスも期待していますから~」

 

「ガウェインは今年も棒茄子で乗り切るつもりみたいですよ」

 

「あのチビいつか血祭りに上げます~」

 

そしてランスロットが通話を切ると、まるで示し合わせたかのように、国籍を示す旗が無い密入国船が3人の前に現れた。

 

……

 

…………

 

………………

 

ずきん、ずきんと胸が痛む。

ぐにゃり、ぐにゃりと視界がゆがむ。

ぐらり、ぐらりと頭が揺れる。

 

「(ああ、まただ。 ああ、またあの発作だ。

 最近は随分と長い間治まっていたとおもっていたのだけれど、

 またあの病気が顔を出してきたみたいだ)」

 

大華帝国の将軍、呂奉先が突然崩れ落ちる。

 

「りょー……ちゃん……?」

 

急に苦しそうに蹲るに彼女に友達が……主君が駆け寄ってくる。

 

「(ああ駄目だ、考えるな。 始皇……違う違う、しーちゃんは私の友達だ。

 『主君』と認識しちゃいけない。 今まで何回それで失敗してきた。

 今まで何回それであの病気を再発させてきた)」

 

始皇帝を『主君』と認識しちゃいけない。

 

ぐらぐらと揺れる頭を一発殴りつけ、無理矢理にでも違うことを考えようとする。

皇帝と将軍がやるような会話は駄目だ。

友達と友達がやるような会話でないと駄目だ。

そうじゃなきゃあ……

 

「頭、痛いんですか? 胸が苦しいんですか?

 すぐに医者を呼びますから、少しでも楽な姿勢になってください」

 

始皇帝が心配そうに呂布の顔を覗き込む。

誰が見てもどう考えても皇帝と将軍の会話じゃない。

 

「ああ、ごめんねしーちゃん。 最近は大丈夫だったんだけど……」

 

「何か持病があったんですか!? どうして今まで教えてくれなかったの?」

 

「病気じゃないんだよ、病気じゃ。 しばらく座っていれば治るから、心配しないで」

 

「そう……」

 

侍女の1人が慌てた様子で椅子や水差しを持ってくる。

杯に注ぐのも面倒で、水差しから直接ぐびぐびと喉に流し込むと少し気分が上向いてくる。

水が胃と食道を逆流しかける程に飲んでから、少し行儀が悪いかなと反省する。

 

「……何の話してたっけ?」

 

少しでも気を抜くと頭をよぎるデッドワードから気を逸らすために、呂布が始皇帝に話題を振る。

 

「え、でも……身体の具合が……」

 

「休めば治るよ、だから大丈夫」

 

呂布は思う……そういえば最近、例の発作が起きる頻度が急に増えてきたなと。

 

「(いつからだっけ? 確かきっかけがあったような……)」

 

呂布が記憶を辿り……脳髄の奥の奥から、警鐘のような嫌な気配を感じながらも……少しずつ過去をさかのぼる。

 

「(何かこう……7年越しの願いが叶ったような……

 いや、7年間ずっと避けてた事があったような……)」

 

思い出そうとすればする程、頭痛と吐き気が激しくなって、胸ががくがくと震えるような感覚がした。

絶対に忘れたくないと想いながら、絶対に思い出していけないと感じているような……

 

「(あ……そうだ、何で忘れていたんだろう……アタシ、チヤハと同衾して……)」

 

……瞬間、心臓を直に鷲掴みにされたかのような感覚に襲われた。

頭の奥がグワングワンと揺れ動き、まともに立っていられなくなる。

 

「その……半日だけだけど、あの人と一緒にいられる時間が作れそうで。

 せっかくだから目一杯楽しんでほしくて、りょーちゃんに良いアイディアがあればって」

 

始皇帝が少し顔を赤らめていた。

チハヤの事を……ずっと前に呂布と情熱的な一夜を過ごした男の事を思い浮かべて、愛情の顔を見せていた。

 

昔の呂布は理解していなかったが、今の呂布には良く分かる。

始皇帝は今、恋をしている。

始皇帝は今、呂布を抱いた男に恋慕している。

そしてたぶん……いや100%間違いなく、始皇帝もまた、チハヤと男女の関係になっているのだと。

 

ああそうだ、始皇帝は呂布の『恋敵』なのだ。

 

「(駄目だ……駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ! 見るな! 気づくな!

 考えるな! 思い出すな!)」

 

青銅の水差しを握る手が強くなる。

戦場で、方天画戟を振るう瞬間と同じくらい……いや、その何倍も何十倍も強い、万力のような強烈な握力が出ていた。

 

甘かった、理解が浅かった。

今までずっと『主君』と認識しさえしなければ大丈夫だと思っていた。

しーちゃんは『主君』ではなく『友達』だから大丈夫だと思い込んでいた。

 

だが違った、間違っていた。

自分以外の女を『恋敵』と認識した瞬間、それまで味わってきたものとは比べ物にならない程に強烈な感情の渦が巻きあがるのだと理解した。

 

「お料理でおもてなしをするのは前にやりましたから、

 今回は歌劇団を集めようと思っています。

 歌も、音楽も、西方とは別の良さがあると思ったから。

 太公望さんに聞いたら、『酒池肉林』でもやってみたらって言ってたけど……」

 

楽しそうに、嬉しそうに恋人との時間の過ごし方を想像する始皇帝を前に、呂布は自分がドス黒い感情に包まれていくのを止められなかった。

 

そして次の瞬間……呂布は水差しを大きく振り上げて……始皇帝の顔面目掛けて思い切り振り下ろした。

 

……

 

…………

 

………………

 

梁山泊。

それは水のほとりに築かれた、自然の地形を最大限利用した大要塞。

かつて大陸を無駄に騒がせた108人の頭梁山泊共が拠点として利用していた場所である。

 

そんな梁山泊の前にジパング、大家帝国の混合軍が集められていた。

 

「それで、始皇帝は生きてる?

 ジョルノにボコボコにされた時のチョコラータ位酷い状態って聞いたけど」

 

太公望呂尚が大家帝国の将軍孫武・通称孫氏にそう尋ねる。

 

「チョコラータ程じゃないです、鋼入りのダン位ですよ」

 

「どっちみち、呂布の腕力で殴られたんじゃタダじゃすまないと思うけど」

 

「手当が早かったおかげで、どうにか一命はとりとめました。

 色々と対策をしているのですよ、しーちゃんは暗殺未遂が3回もあったので」

 

「焚書坑儒も阿房宮建設もしてないのに、どうしてそこまで嫌われるんだか」

 

「知りません、分かりませんよ。 りょーちゃん、何で急にあんな事を……

 あんな怖い目を見たの、子胥さんが墳墓から呉王の屍を引っ張り出して時以来ですよ」

 

「日暮れて、道遠しだっけ? 本当、この国は次から次へとヤンチャなのが生まれてくるよ」

 

いわゆるリアル死体蹴りである。

歴史書に書かれるレベルの残虐行為を『ヤンチャ』で済ませられるのは、『炮烙』や『蠆盆』、『人肉ハンバーグ』といったもっと酷いのを見てきたが故にだ。

 

「暗殺と言えば、政宗なんか妹に毒を盛られて……」

 

「……おい」

 

隣で黙って聞いていた政宗が、普段のおちゃらけた声、仕草からは想像もできないくらいにドスの効いた声を出す。

 

「……妹のことは言うな」

 

ほんの少しでも逆らえば、異議を唱えれば即座に殺すと、眼光が雄弁に物語っていた。

 

「あそこか……」

 

「ええ、間違い無くあそこに……梁山泊と呼ばれる要害の地に、

 ジパング王を浚った一味が逃げ込みました。 本当なら今頃しーちゃんが……」

 

「そして同じタイミングで始皇帝暗殺未遂をやらかした呂布が、

 何故か同じ場所に逃げ込んでいますと……」

 

「まず間違い無く、示し合わせた上での行動なのですよ。 あの事件があったせいで、

 大華帝国はブラックバニー一味の捜索に人手を割けなくなりましたから。

 前々から気にはしてたのです、

 しーちゃんは色々な判断を全部自分でやろうとする悪い癖があるって。

 しーちゃん1人倒れるだけで、国政が止まって大パニックになるって……」

 

「陳勝が大暴れできたのも、

 項羽と劉邦が秦を滅亡させたのもそれが原因の1つだからねえ」

 

「今凄く気になる事言いませんでした?」

 

「ああ、ごめんごめん。 こっちの世界とは関係ない話だから、気にする事無いよ」

 

「貴様ら真面目にやらんか!

 弟を一刻も早く取り戻し、ナメた真似をした連中は1人残らず叩き潰さねばならん!」

 

政宗達がかき集めた兵力は、あまり多くない。

大華帝国が始皇帝暗殺未遂で大混乱しており、下手人と思われえていたガラハド及びエクターの捕縛に兵力の一部を割いていたため、兵数も、それを率いる指揮官も分散してしまったのだ。

 

「総員かかれぇーっ!!」

 

……にも拘わらず、伊達政宗はすぐさま総掛かりの攻撃命令を発した。

ジパングから連れてきた兵達が号令に従い、梁山泊へ真っすぐに進み始める。

 

「ああ、ちょっと待つのです!

 敵が待ち構えているところに突撃するのは下策なのですよ!」

 

孫氏が慌てて止めようとしたが、頭に血が昇った政宗の耳には届かない。

 

実際のところ、ジパング王を慕う英雄達が世界中から集まってくる上、今のところブラックバニー一味に援軍が来る様子はない。

梁山泊は自然の地形を利用して築かれた大要塞、下手に攻撃をかければ手痛い反撃を受けかねない……故に短期決戦は不利、長期戦が有利、要塞の周囲を囲い、物資や人員の出入りを妨害しながら時間を稼ぐべきというのが、孫氏の計算だ。

 

そんな彼女の計算を……

 

「……悪いね、そんちゃん。 こっから先は通行止めにさせてもらうよ」

 

大華帝国最強の飛将軍が大きく狂わせる。

弓を持てば百発百中。

方天画戟を振るえば一騎当千。

呂奉先の登場は、ただそれだけで戦場の士気を一変させる。

 

「ブラックバニーは世を忍ぶ仮の姿……闇夜の騎士、シャドウナイト見参!

 貴様らに恨みは無いが、我らが野望のため散ってもらうっ!!」

 

そしてブリタニア最強の騎士・ランスロットが大きく大きく狂わせる。

黒色の全身鎧で顔と体格を隠し、声だけは変声の魔法具でガラハドそっくりにしている。

そんなランスロットは味方殺しの魔剣アロンダイトを躊躇無く、容赦無く振るい、ジパング兵の首を次から次へと刎ね飛ばす。

 

呂布も、ランスロットも、人類の限界を超えた領域……古代英雄の領域に片足を突っ込んだ武人である。

1対1で彼女達を互角に戦えるのはこの場にはいない。

少なくとも伊達政宗や太公望呂尚には無理無茶無謀だ。

 

しかも梁山泊に立てこもる者達は、呂布とランスロットだけではない。

 

「ブラックハンマー改めシャドウナイト2号参上!

 この鉄槌の錆になりたい者は、かかってこーいっ!!」

 

ボールスが呂布とランスロットだけではカバーしきれない部分を防御していた。

さらに治癒魔法で負傷を癒し、戦線を支えていた。

 

「ブラックポイズン改め……シャドウナイト3号……死にたくなければ、近づくな……」

 

パラメデスは敵が密集している個所に毒の罠を作動させ、数の差を武器に押し寄せるジパング大華帝国連合軍に的確かつ効率的にダメージを与えていた。

即死はしないが、半病人同然にさせる毒の効果は、救助と看護の手間と人手を半ば強要する効果があり、攻め手に対する心理的な圧迫にも繋がった。

 

無論、連れて来ている兵士の数はジパング・大華帝国連合軍の方が圧倒的に多い。

ランスロット達が集められたのは金で転ぶ傭兵やごろつきの類が殆どであり、数も練度もたかが知れていた。

しかし、ランスロット達は地の利を得ていた。

梁山泊は天然の地形を利用して築かれた大要塞。

少数で多数を相手にするための設備や罠がこれでもかという程に用意されていた。

 

それ故に……

 

「政宗さん! これ以上は無理です! これ以上いけません!

 進めば進むほどに死体の山ができるだけですっ!!」

 

「だがまだ弟の居場所すら掴めて……」

 

「いい加減にしてください!!

 将兵は貴女の我儘で死ぬためにいるのではないのですよっ!!」

 

「うぐっ……」

 

弓矢や落石が飛び交う中で、ジパング兵や大華帝国の兵達が次から次へと落命する中で、政宗は心底悔しそうに唇を噛み締め……

 

「立て直しだっ! 引けぃ! 引けえぇーいっ!!」

 

ギリギリの所で冷静さを取り戻し、一時退却の指令を発した。

 

……

 

……………

 

…………………

 

「まさかそんちゃん相手に本当に勝てるなんてね……」

 

「あの人が強いのは~、戦争であって戦闘ではありませんので~、

 やりようによっては勝てなくもないですよ~」

 

「そうだね、アタシは人殺しだけは誰よりも上手くやれるけど、

 殺した後どうするかを考えるのは、昔から下手だった気がするよ」

 

呂布とランスロットはジパング・大華帝国連合軍が這う這うの体で逃げ出すのを感慨深く見つめていた。

 

ボールスの治癒魔法で身体の傷は既に癒えているものの、鎧兜に、弓矢に、方天画戟……彼女達の武具は傷だらけだった。

無傷なのは味方殺しの魔剣・アロンダイトだけである。

 

「ボールスとパラメデスは?」

 

「こっちはこっちで立て直しの最中ですよ~。 向こうがもう一度攻め寄せてくる前に、

 投げ落とす岩とか、落とし穴とか、色々直さないといけませんので~」

 

「そうかそうか、じゃあしばらくは戻ってこないね」

 

呂布は武器破損に備えて持ち込んだ、予備の弓矢と矛を手に取った。

 

「そ~ですね~、今ここで殺し合いが起きたとしても、気づくまで時間がかかりますね~」

 

ランスロットはさっきの戦闘で使い切ってしまった投げナイフやマキビシ、煙玉やフックロープといった暗器の類を鎧の各部に仕込みなおした。

お笑い番組なら『どう見ても騎士の装備ではない』とのテロップが流れることだろう。

 

「隠し通路は?」

 

「はい~ここにしっかりありますよ~。

 これを知っているのは私と呂布さんだけなので~。

 ここから脱出すれば追っ手は全員撒けるでしょうね~」

 

「そうかそうか、それじゃあ……」

 

「ええ、それでは……」

 

 

 

 

 

「後はランスロット1人殺せばチハヤを独り占めできるって訳だね」

「後は呂布さん1人始末すれば~、ししょ~は私1人の物にできますね~」

 

呂布が矛を、ランスロットが味方殺しの魔剣・アロンダイトを同時に顔面に突きつけあった。

 

 

 

 

 

「やめろ! やめてくれ2人共! これ以上血を流す必要なんて無い!」

 

直後、部屋の隅に転がっていたつくね君の着ぐるみが叫び声を挙げた……正確に言えば、着ぐるみの中で簀巻きにされている渦中のジパング王・チハヤが叫び声を挙げた。

目の前で今まさに起きようとしている惨劇を止めようと、チハヤは必死だ。

 

「ししょ~が悪いんですよ~、次から次へとお嫁さんばっかり増やして~。

 愛を囁いてくれたのも、唇を重ねあったのも、もう何ヶ月も前の事じゃないですか~」

 

「そ……それは……」

 

思い当たる節はいくつもある。

アーサーや龍馬、ヒミコといった比較的自己主張が激しい人程、頻繁に抱いて、頻繁に声をかけていた。

逆に自己主張が少ない娘は……半年以上放置したままの娘が何人も何人も思い浮かぶ。

 

「そうだね……ああそうだ、アンタの愛を自分だけのものにしたい。

 それを邪魔する有象無象を1人残らず切り刻みたい!

 その中に友達が混じっていようが構うものか、全部全部根切りにしてやりたい!

 それが偽らざるアタシの気持ちだよ」

 

「止めてくれ! 俺に悪い所があったのなら何とか改善していく! だから……」

 

「駄目だよ、もう駄目だ。

 もう自覚してしまったから、もう止まり方なんて忘れてしまったから。

 だけど死ぬまで戦ったってチハヤの嫁全員を殺し尽くす事はできないだろうし、

 仮にできたとしても、

 そんな事をしたら二度とアタシに笑いかけてくれなくなるのも理解してる」

 

呂布は剣を突きつけられているにも関わらず、一度矛を下ろし、チハヤに向かい笑顔を見せた。

まるで人殺しなんて1度も考えた事のない生娘のような、あるいは聖母のような柔らかく暖かな笑顔だった。

 

「だからアタシと一緒に、どこか遠くに逃げてほしい。

 ジパングも、大華帝国も関係無いどこか遠い場所まで2人で行こう。

 そうしてくれるなら、もう二度と人殺しはしないと誓うから」

 

それは人殺しの才能だけはズバ抜けているが、人殺し以外の才能が無い呂布にとって一大決心だ。

それは他人を『主君』あるいは『恋敵』と認識した瞬間、衝動的に人殺しをしたくなる呂布にとって、耐え難い苦痛を伴う提案だ。

 

チハヤは一瞬、考える。

今は嘘でも良いから頷くべきだろうかと考える。

今この瞬間だけ迎合して、隙を突いてこの状況をどうにかすべきだろうかと考える。

 

そして……

 

「……できない。 申し訳ないけれど、それはできない。

 俺には帰る場所があって、俺には姉さんがいるから」

 

それはチハヤの嘘偽りの無い本心からの言葉だ。

どんなに邪悪で、醜悪な提案であろうとも、呂布は嘘偽りの無い心で提案をしてくれた。

そんな言葉に対して、その場限りのごまかしの心からの言葉を返すのは、呂布に対するとんでもない侮辱だと思ったのだ。

 

「ああそうかい、それならランスロットを殺して、政宗を殺してからもう一度聞くよ」

 

呂布の顔から笑みが消えた。

残ったものは溢れんばかりの殺意だけだ。

 

そしてランスロットと呂布がほぼ同時に……後ろに向かって飛びのいた!

 

「フライングナイフッ!」

 

ランスロットがゴロゴロと床の上を回転しながら腕の振りだけでナイフを投擲する。

普段の彼女なら食事用のナイフとフォークを投げるところだが、今回投げたのは投擲用に作られた細身のナイフだ。

 

「この程度じゃ!」

 

呂布は距離を取りながら矛を振り回し、1本残らず叩き落す。

直後に投げ込まれた非人道的兵器マキビシを含めて、呂布は全くの無傷である。

 

「悪いがここは、アタシの距離だ!」

 

呂布が矛から弓矢に持ち替えた。

恐るべき速さで矢を引き絞り、凄まじい速さで狙いを定め……射る!

 

「くっ! この……」

 

回避は……できない。

ランスロットは肩当てや手甲でギリギリ致命傷を避ける。

 

一矢、二矢、三矢と次々と矢が飛び、その度にランスロットの鎧に傷がつく。

 

「フライングナイフゥッ!!」

 

ランスロットが再度手甲の裏に仕込んだ投げナイフを投擲する。

しかし距離が遠い、既に投げナイフの距離ではない。

呂布はランスロットの何倍も余裕を持って、飛んでくるナイフを防御した。

 

「無駄だよ! ここまで距離を取った以上、もうそっちに勝機は無いっ!」

 

呂布が再び矢を番え……射る!

ランスロットは近くを転がっていた樽の裏側に飛び込んで逃げた。

 

「惜しい惜しい、でも……次は外さない」

 

呂布が深呼吸をしながら、全神経を集中させる。

次に障害物から顔を出した瞬間、致命の一撃を喰らわせる……呂布は次の矢に必殺の意思を込めた。

 

数秒……数十秒……互いの息の音、心臓の音すら聞こえそうな静寂が支配する。

 

「(おかしい……何かおかしい……どうして最初に後ろに跳んだ?

 どうして最初に距離を詰めなかった?)」

 

呂布は正直、どうやってランスロットの隙を突いて弓矢の間合いに入るかの勝負だと思っていた。

しかし、ランスロットはその予想に反し、最初に後ろに跳んで距離を離した。

呂布は奇妙な胸騒ぎを感じていた。

 

「(剣の間合いでは全くの互角、弓矢の間合いではアタシが有利……

 ランスロットがそれを見落とすのか……?)」

 

集中が乱れれば、弓の狙いが逸れるかもしれない、矢を射るタイミングを誤るかもしれない……それでも、呂布は自分の胸中に芽生えた疑念を無視できなかった。

 

「(おかしい……妙だ……何か狙って……)」

 

「たああぁっ!!」

 

呂布が考えを纏めるより早く、ランスロットが樽の陰から飛び出した。

 

「ちいぃっ!!」

 

呂布は即座に思考を中断させ、構えていた矢を放つ。

ほんの僅かな迷いがあっても、呂布は一流……いや、超一流の武人である。

放たれた矢は真横に跳んだランスロットに向かって突き進み、吸い込まれるかのように彼女の大腿部を刺し貫いた。

 

「勝ったぁ!」

 

……瞬間、呂布は勝利を確信した。

 

片脚を負傷すれば、普段通りの踏み込みや回避ができなくなる。

ランスロットと呂布の武術の腕は、剣の間合いでは全くの互角……ならば、脚を負傷した方が圧倒的に不利だ。

後は弓矢の間合いで堅実に削るも良し、接近して一気にトドメを刺すも良し。

好きなように料理できると確信した。

 

が……

 

「こっちの台詞ですよ~」

 

……勝利を確信したのは、ランスロットも同じであった。

 

ランスロットは片脚を射抜かれたのを気にも留めず、壁に掛かっていた掛け軸を思い切り引っ張った。

直後、ガタンッ! と大きな音がして、部屋全体が大きく揺れた。

 

「この音……この振動……まさかこの部屋に仕込まれていたのは、隠し通路だけじゃ……」

 

猛烈に嫌な予感がした。

勝負を投げ出して今すぐこの場から離れるべきか、それとも1秒でも早くランスロットにトドメを刺し、チハヤを連れて逃げるべきか……呂布は再び迷った。

 

その直後、ランスロットは素早くチハヤ入りのつくね君を抱きかかえ、ほぼ同時に部屋に多量の水が流れ込んできた。

 

「が、がぼっ! ごぼっ! ちょ、待っ……水は苦手……」

 

呂布は一つ、見落としていた。

彼女達は剣の間合いで全くの互角、弓矢の間合いで呂布が有利……そして水の中ではランスロットが圧倒的に有利だ。

片や物心つく前に泉の精霊に拉致監禁された関係から、生活の中に泳ぎが必須になっていた。

片やだだっ広い草原の中で生まれ育ち、泳ぎとは無縁に生きていた。

その差は歴然……どころか、戦闘以前に呂布が溺れていた。

 

「孫氏曰く、算多きは勝ち、算少なきは負ける。

 最終的に呂布さんと戦う事が事前にわかっているなら、対策位立てていますよ~」

 

滝のような濁流の中で、片脚を撃ち抜かれ、全身鎧を纏い、さらに簀巻きのチハヤを抱きかかえているというのに、ランスロットは全く溺れる気配が無い。

それこそ、この体勢のまま剣を振るって戦える程に余裕があった。

 

「ごぼっ! がぼぉっ! ら、ランスロ……んんんーーーっ!!」

 

そして数分もしないうちに呂布は濁流に押し流され、水が流れ込んでくると同時に空いた排水溝へと吸い込まれていった。

 

「……今の勝ち方は、少々卑怯なんじゃないのか?」

 

「誉れは浜で死にました~」

 

ランスロットは全く悪びれる様子も無く笑っていた。

笑って卑怯殺法を使い、笑って呂布を追い落としていた。

 

「お~いランちゃ~ん、今こっちから凄い音がしたんだけど、何かあった?」

 

「ゴキブリが一匹……便所に流れていった音が……」

 

「何その嫌な表現!? 水が流れる音だったけどさ!?」

 

「ちょ~っと呂布さんには退場してもらいました~」

 

「え、そんな事してたの?

 その割にはあんまり怪我してないみたいだけど……どうやったの?」

 

「そのうちボールスにも使うかもしれないので内緒です~」

 

「ちょっ!? 私ら友達だよね!? 親戚同士で幼馴染だよね!?」

 

「利用できる間は友達ですよ~」

 

「酷い!? あ、でもランちゃんって昔からそういうヤツだった」

 

「冗談冗談、立派な騎士になるって目的の邪魔にならない限りは友達です~」

 

「今の台詞のどこに騎士らしさがあんのさっ!!」

 

お笑い番組なら『こいつ円卓の騎士です』とのテロップが流れることだろう。

 

「ランスロット、ボールス、パラメデス」

 

……と、ここでチハヤが3人の騎士(笑)に声をかける。

 

「俺は……俺はジパングから離れる事はできない」

 

チハヤは3人にそう告げた。

 

「それは、ジパングという土地から離れられない……ですか?

 それとも政宗さんの元から離れられないですか?」

 

その言葉に、チハヤは深く考え込み……

 

「その二択なら……姉さんの元から、だと思う」

 

そう答えた。

決して、ジパングで得た多くの友人や恋人達を蔑ろにするつもりはない。

彼ら、彼女らとの友情や愛情は、チハヤにとって何よりも大切に想っている。

だがその中で一つ、たった一つ大切な何か、絶対に喪いたくない一つを選ぶとすれば……チハヤは姉であり最愛の妻でもある伊達政宗の事が思い浮かんだ。

 

「ししょー、私達はししょーに誰もいない、

 誰も知らない土地に来てくださいなんて言うつもりは無いですよ~」

 

チハヤの前でランスロットが兜を脱ぎ、そう告げた。

 

その顔は笑っていなかった。

どこか寂しそうで、どこか辛そうな、何かを諦めたような、なんとも表現しづらい顔で……少なくとも笑ってはいなかった。

 

「なら、一体何のために今回の騒動を起こしたんだ?」

 

「一個は呂布さんのデトックスでしょうかね~。 あの病気は一生治りませんけど~、

 頭から水を被れば当面、大分マシな状態になりますから~」

 

「何故分かるんだ?」

 

「分かりますよ~、私も同じ病気持ちですから~」

 

通称ギリワン病、罹患者は呂布、ランスロットの他に斎藤道三、松永久秀、真田昌幸等である。

尤も、世の中には義理値が高すぎて親兄弟の仇の墓を暴き、死体に鞭を打った挙句、諫言のし過ぎで処刑された人もいるので、良し悪しかもしれない。

 

「それで、もう一個が……」

 

ランスロットがチハヤの目の前で正座をする。

ボールスとパラメデスもそれに習い、チハヤの前で正座をする。

 

「ししょー、政宗さんから離れてください」

 

それはチハヤにとって予想外の言葉であった。

しかし、ランスロットも、ボールスも、パラメデスも、その目は真剣そのものだ。

 

「それは……」

 

「1日や2日では意味がありませんが、一生離れ続けてくださいとは言いません。

 一言も口をきくなとも、一目顔を見るのも駄目とも言いません」

 

『それはできない』と、呂布に答えたのと同じ言葉を発しようとした瞬間、ランスロットが言葉を繋げる。

それはジパング王としてもチハヤの立場を考慮した譲歩であって、同時にチハヤの思考停止を許さないという意思表示でもあった。

 

「一体何故……そんな事を言うんだ……?」

 

チハヤの声が震えていた。

チハヤの顔からは滝のような汗が流れていた。

 

「結婚許可証を出して、次から次へとししょーのお嫁さんを増やそうとするのは、

 政宗さんなりの愛情表現だと思います」

 

「そう……だな……そうかもしれない……」

 

チハヤには思い当たる節がいくつもあった。

 

「たぶんそれは、かつて愛情を注ごうとして、

 憎悪を向けられた妹さんとのやり直しを……しようとしているのだと思います」

 

「妹……? 姉さんに妹が?」

 

「ししょーはたぶん……死んだ妹さんのやり直しのために、

 死んだ妹さんの代わりを……やっているのだと……」

 

「違う! 俺は姉さんを愛している! 1人の人間、1人の男としてだ!」

 

「でもさ、今みたいなペースでお嫁さんが増えんの、どう考えても異常だって。

 その原因は政宗ちゃん以外ありえないなら……一旦離れるしかないよ」

 

「それも違う! 俺はちゃんと愛している!

 俺の嫁になってくれた人達全員を、嘘偽りなく!」

 

「もしそれが、伊達政宗1人に向けた愛情表現なのだとしたら……危険な状態……」

 

「危険って……そんな……」

 

「共依存……なのかもって事……それもかなり歪で、

 王様と政宗ちゃん以外の全員を振り回して、不幸にするタイプの、

 あんまりよろしくない依存をお互いにしているのかも……」

 

チハヤは救いを求めるかのようにランスロットに、ボールスに、パラメデスに視線をやった。

嘘だと言ってほしかった、冗談だと言ってほしかった。

だがしかし、3人の騎士達はいずれも真剣そのもので、チハヤ自身、彼女達の言葉に思い当たる節がいくつもあった。

 

チハヤは……

 

「俺は……」

 

……

 

…………

 

………………

 

「ごほっ! げほっ! ごぼっ! ううぅ……鼻に水が……」

 

一方その頃、呂布は流れに流され、自然の沼沢を利用して作られた梁山泊大要塞の堀の端にまで来ていた。

 

一生分の水を飲み、本気で死ぬかと思いながら力尽きる寸前まで手足をバタつかせ、気力も体力も限界にあった。

弓矢も矛も水流の中で手放して、護身用の短刀までも失って、今の彼女は丸腰だ。

ハッキリ言って、今の状態ではその辺にいる野良猫にすら負けかねない程、呂布は消耗しきっていた。

 

「ああくそ、惨めだ……本当に惨めだ……」

 

川岸に生えている水草にしがみ付きながら、呂布は今の自分の境遇を嘆いた。

幸か不幸か、ジパング・大華帝国連合軍は部隊の再編に大忙しで、呂布が流れ着いた箇所まで目が届いていない様子だった。

だが今の呂布は、あまりにも惨めで、あまりにも格好悪くて、あまりにも自業自得で、いっそ見つかって打ち首にでもなりたい気分だった。

 

「流石に……今回ばっかりは謝っても許しちゃくれないだろうな……

 しーちゃんも、そんちゃんも……」

 

本気でブチ殺すつもりで殴っていた。

自身の衝動に身を任せて、何度も何度も顔を殴り潰していた。

あれだけ殴ったのだから死んだかもしれないし、名医が何人も常駐していたから、手当が上手くいっていれば生き延びているかもしれないが……どっちにしろ、始皇帝が自身を許す場面が全く想像つかなかった。

 

最後の力を振り絞って陸地に登り、ぜぇはぁと大きく息を吐きながら、これからどうしようかと思案をしていると……

 

「ああ、やっと来たのか。 思ったよりも時間がかかったのだな」

 

……瞬間、呂布は異様な空気を感じて身構えた。

 

気が付けば目の前に1人の男性が現れた。

1秒前には絶対にいなかったと断言できた。

その場所は特に身を隠せる茂みや岩場は無く、人が隠れているような息遣いも無かった。

しかし今は、まるで最初からそこにいたかのように立っていた。

 

何より異様なのはその姿だ。

その男は男性器を露出させていた。

その男性器が……途方も無く『異様』だったのだ。

 

「な……あぁ……」

 

昔、呂布はち〇こを車軸代わりにして車輪を回せる男を斬った事があった。

そいつの男性器を直視した事があるが、特に何も感じなかった。

それは物理的に硬く、長く、太いというだけで、普通の人間のち〇こだったからだ。

 

だが今、目の前にいる男の男性器は『異様』だった。

物理的な大きさがどうこうではない、神々しさを感じた、野獣のような荒々しい迫力を感じた、およそ人間が挑んではいけない、自然災害のような圧倒的な存在感もあった。

 

そして同時に思った……

 

「(あれを『挿入』されたらタダじゃすまない……)」

 

呂布は思わずそう感じ、その恐ろしさに震えてしまった。

まるで新兵のようにビビッてしまい、腰が砕けてしまっていた。

 

「英雄の魂が必要だ……それも唾棄すべき裏切り者の魂が良い……

 お前がその最初の1人だ」

 

その『異様』な男性器を持った男が、呂布を組み伏せた。

 

「く、やめ……やめろぉ……」

 

気力体力を消耗したなりに、呂布は抵抗しようとした。

だがその男は虎や狼のように速く、ヒグマのように重く、力強かった。

普段の呂布ならばどうにか技術で切り抜けられたかもしれないが……苦手な水泳によって酸欠状態になり、力も使い果たした今はどうすることもできなかった。

 

「呂奉先、お前は極上だ、お前は極上の裏切り者で、極上の贄だ。

 これで私はかつての力を取り戻せるだろう」

 

「やめろ……くそっ、離せ……離れろ! 挿れるなぁ!」

 

力の差は歴然だった。

抵抗の力はどんどん衰え、衣服は全て取り払われ、呂布のメスの部分に『異様』な迫力を持った男根が徐々に近づいていく。

 

「次は誰が良いか。 裏切りの騎士モードレッドが良いか、父親殺しのペルセウスか、

 それとも表裏比興の真田昌幸か」

 

男は既に目の前の女は手に入った物と油断しきって、次に手を出し、手に入れる女を思い浮かべていた。

一流……いや、超一流の武人である呂布を前に自殺行為とも言える行動であったが、それでもなお、呂布は目の前の男を跳ねのける力を失っていた、どうする事もできなかった。

 

だが……

 

「裏切り者ならもう1人いるじゃないか。

 殷の下大夫、司天監に任じられ、禄を受けながら脱走し、

 しれっと周王に仕えて殷を滅ぼした裏切り者……太公望呂尚ってヤツがいるじゃないか」

 

……太公望ならば話は別である。

次の瞬間、太公望は杖を振るい衝撃波を発し、呂布を犯そうとした男を空高く吹き飛ばした。

 

「き、貴様ぁっ! どうやって近づいた!?」

 

「やだなぁ、ボクは仙人だよ。 気配を消す術くらい使えるよ。

 と言っても、楊戩や土行孫程上手くは無いけどね」

 

10階建ての塔と同じくらいの高さから落下したが、男は平然と立ち上がる。

 

「それで、君は一体何者で、何を企んでいたのかな?

 素直に教えてくれて、今後ボクらに手出ししないと誓うなら、

 げんこつ2~3発で勘弁してあげるんだけど」

 

太公望は宝貝・打神鞭を構えてゆっくりと距離を詰める。

少しでもおかしな動きをすれば即座に男の頭蓋骨をカチ割って殺すつもりだ。

 

10歩の距離……男は動かない。

5歩の距離……男は動かない。

3歩の距離……男が大きく飛びのいた!

 

「衝撃波ぁっ!!」

 

「覚えておけぇっ! 俺は決して諦めんぞっ!」

 

「覚えてほしいなら名前位教えてくれても…… ああ、逃げられたか。

 思っていたよりも素早いな」

 

男は虎や狼どころか、チーターの全力疾走よりも速く疾走し、あっという間に呂布や太公望の視界から消えていった。

 

「大丈夫だった? 危ない所だったね」

 

太公望が上着を脱いで、呂布にかぶせた。

 

「今のヤツ、誰だったんだろ。 今まで見たことが無いって事は、西洋寄りの怪異かな?

 そういうのはボクよりマーリンかロキの方が詳しいから、後で聞いてみようか」

 

そんな事を言いながら、太公望が下着を脱いで、その辺の草むらに投げ捨てた。

ぷっくりとした恥丘が露になり、その艶めかしい姿に呂布は同性でありながらごくりと唾を飲み込んだ。

 

「まあその辺は後で良いか。 それより……それより君をどうしようかって話だよね。

 一応同郷って事で助けてあげたいけど、やらかした事が事だからなぁ……」

 

そう言いながら、太公望は帽子を脱ぎ、肌着も脱ぎ、その辺の草むらに投げ捨てた。

まるでストリップショーをしているかのように、太公望は一糸纏わぬ姿になった。

しかし、その異常な行動に対し、太公望は一切の違和感を覚えていない。

 

そして……ずにゅり、と太公望の秘所に挿入がされた。

 

「え……あ……?」

 

……その時、初めて太公望は自身の異常な行動に気が付いた。

自分がいかに油断し、いかに無防備な姿を晒してしまったのかを理解した。

太公望の子宮口に、さっき追い払った男の亀頭がぐちゅっと押し当てられていた。

 

「奇遇だな、この俺も不得意ではないのだ……気配と違和感を殺す術はなぁ!!」

 

先ほど呂布を襲おうとした『異様』な男性器を持った男がニタァ~と笑った。

勝利を確信した者の笑みであった。

 

「このっ! 離れろぉっ!」

 

イチかバチかと、太公望が打神鞭を振りかざす。

 

「もう遅い! 喰らえっ!」

 

打神鞭が男の頭蓋骨をカチ割るよりも早く、太公望の全身に雷が落ちたかのような衝撃が奔る。

 

「んんぁああぁっ! いぎぃっ! あがあぁっ!!」

 

その衝撃波は快楽だ。

常人ならば即座に発狂し、廃人になる程の強烈すぎる程の快楽だった。

 

「さぁイけ! イキ狂え太公望! そしてこの俺に魂魄を捧げるのだ!」

 

「んぐぅっ! あ、があぁっ! あ、頭……おかしく……んぎいぃっ!

 だ、だめぇっ! 許してぇっ!!」

 

男が抽送を開始した。

一瞬で太公望を無力化した快楽の衝撃が何度も何度も襲い掛かる。

 

既に太公望の膣内は愛液で溢れ、ぐちゅぐちゅに濡れほぞっていた。

 

「うぁあっ! 駄目、駄目えぇっ!! もう死……死んじゃ……んぎいぃっ!!」

 

そしてそんな廃退的な光景を前に、呂布は一歩も動けずにいた。

その圧倒的な迫力に気圧され、逃げることも戦うこともできなくなっていた。

ハッキリ言って、腰を抜かしていたのだ。

 

「あっ……がぁ……」

 

そして……呂布の目の前で太公望は気絶した。

比較的弱い方とはいえ、古代英雄の1人がセックスの快楽で精神を壊されたのだと理解した。

理解できてしまった。

男根が引き抜かれた瞬間、ぷしゃあぁ……と滝のような、勢いで愛液が漏れ出た。

 

「ああ……力が戻る、想像以上だ」

 

男の『異様』な迫力がさらに強くなっていた。

先ほどまでは、男性器だけからその『異様』な迫力を感じていた。

だが今は、男の全身が、頭の先から足の先まで、肉体の全てから『異様』な迫力を感じていた。

 

「待たせて悪かった。 次はお前の番だ、呂奉先よ」

 

呂布はもう、逃げる気力も、体力も残っていなかった。

 

 

 

 

 

(作者より)第二回人気投票が開催されたら続きを書きます。

 

 

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