※この作品はR-18です。

英雄戦姫WWX二次創作(エロ回)   作:シベリア!

3 / 4
第一回人気投票にてランスロットの順位が少しでも上がることを願い、英雄戦姫二次創作を書きました。
『第二回人気投票が開催されたら続きを書きます』と書いたのですが、うっかり続きを書いてしまい、お蔵入りするのももったいないので投稿します。

どうか寛大な心で見てやってください。
もし面白いと思っていただけたら、第二回人気投票にてランスロットに一票をお願いします。
感想のコメントがあると作者はとても喜びます。
(pixivにも同じ内容の作品を投稿しています。)



裏切っても、カナヅチでも、命乞いをしても、知力26でも、それでも呂布はカッコイイ

(注1)拙作『裏切らない呂布なんて呂布じゃないやい』の続編です。

 

(注2)原作キャラの凌辱描写があります。

 

~3行で分かる前回のあらすじ~

1 ランスロット他2名、チハヤを拉致。

2 呂布、衝動的に始皇帝をボコボコにして遁走後、チハヤ拉致計画に巻き込まれる。

3 水責めの罠にかかり傷ついた呂布を謎の男が襲う。 太公望が助けに入るも……

 

 

 

 

 

「ししょー、政宗さんから離れてください」

 

その日、チハヤはランスロットからそう告げられた。

 

「共依存……なのかもって事……それもかなり歪で、

 王様と政宗ちゃん以外の全員を振り回して、不幸にするタイプの、

 あんまりよろしくない依存をお互いにしているのかも……」

 

ボールスも、パラメデスも同じ意見だった。

 

「俺は……」

 

チハヤは……何も答えられなかった。

何度考えても、何度考え直しても、伊達政宗は自身にとって最愛の姉であり、最愛の恋人であり、最愛の妻だった。

チハヤにとって政宗の元から離れる事は耐え難い苦痛で、ちらりと考えるだけでも吐き気がして、震えがした。

 

例えそれが周囲を振り回して、不幸にする歪な共依存なのだとしても……

 

「少し……少しだけ、考えさせてくれ」

 

チハヤはかろうじて、それだけ口にする事ができた。

薄々、例えどれだけ時間をかけて検討しようとも、最終的には政宗と共に生きる選択をするだろうと思っていた。

本当は今すぐ、キッパリと断るべきだとも思った。

思っていたが……ランスロット達3人が、真摯に、誠実に、心から自分の事を想ってその言葉を告げたのだと分かったからこそ、キッパリと断る事ができなかった。

 

「もぉ~しょ~がないですね~、ししょ~は~」

 

「まっ、王様にも色々あったし、気持ちを整理する時間はいるっしょ」

 

「しかし……あまり長くは……待てない……」

 

「お嫁さん100人の時点でマジヤバだけど、

 200人とか300人になったら本気で整理がつけられなくなるからね」

 

「あんまり優柔不断だと~、実力行使しちゃいますからね~」

 

チハヤは思った……これからどうなるんだろうと……

自分はこれからどうすれば良いんだろうかと。

 

……

 

…………

 

………………

 

謎の男に犯された太公望が痙攣しながら地に倒れ伏した。

 

「ああ……力が戻る、想像以上だ」

 

男の『異様』な迫力がさらに強くなっていた。

先ほどまでは、男性器だけからその『異様』な迫力を感じていた。

だが今は、男の全身が、頭の先から足の先まで、肉体の全てから『異様』な迫力を感じていた。

 

「待たせて悪かった。 次はお前の番だ、呂奉先よ」

 

呂布はもう、逃げる気力も、体力も残っていなかった。

 

「ああ、もうこっちには這って動く力すら残っちゃいないよ……好きにしな……」

 

既に呂布の心は折れてしまっていた。

 

衝動的に始皇帝を叩きのめし、チハヤに事情を話して助けてもらおうとしたらチハヤと政宗を強制的に引っぺがす計画に引っ張り込まれ、チハヤ独り占め権を賭けてランスロットと戦えばあっという間に負け、謎の怪人に襲われ、人類の限界を遥か彼方に置き去りにした古代英雄が訳も分からない内に倒されて犯された……

 

戦って勝てる気もしなければ、逃げて逃げ切れる気もしない。

仮に生きて戻れたとしても自分にはもう何も無かった。

 

「お前の魂魄も俺が貰う」

 

ビリィッ! と呂布の下着が力任せに引きちぎられる。

男が呂布の上に覆いかぶさり、『異様』な迫力の男根が鎌首をもたげる。

 

「(ああ、ここまでか……)」

 

呂布は観念した様子で目を閉じ……

 

「……あ、ちょっと待った。 魂魄は獲らずに生かして共闘って線は無い?」

 

……急に命が惜しくなって命乞いを開始した。

なんて情けないと思う方もいるかもしれないが、ダメ元の命乞いも含めての呂奉先である。

 

「………………駄目だ」

 

たっぷり10秒くらい考え込んでから男は提案を拒否、再度呂布のワレメに狙いをつける。

 

「待った待った待ったぁっ!! 今ちょっと考えたよね!

 全くありえない線じゃなかったよね! もう少し時間をかけて考えてみようか!

 アタシもアンタに何が提供できるか一生懸命考えるから!」

 

呂布が超早口でそこまで叫ぶと、男は再度考え込む。

 

「あの、アンタ結局何者で、何をしたいんだい?

 それが分からないとどう協力すれば良いのかも分からな……」

 

「お前がそれを知る必要は無い」

 

男が迷いを捨てて呂布のワレメに亀頭を押し当て……

 

「分かった、良く分かった! アンタの名前も過去も目的も詮索しない!

 お互い歩み寄ろうじゃないかっ!!」

 

呂布が必死こいて弁明して男を止める。

これでもかってくらい往生際が悪いが、呂奉先はそれ込みで呂奉先なのだ。

 

「真面目な話、アタシはその辺の英雄よりずぅ~っと強いし、

 ちょっと前まで大華帝国の中枢で働いていたから色々と国の内情も分かるから、

 頑張ればえっと……ええっとぉ……そうだ!

 さっきアンタが言ってた裏切り者の魂を持ってる英雄をアンタに渡せると思うよ!」

 

呂布が必死こいて自分を仲間に引き入れるメリットを挙げる。

ここで聞き入れられなければ脳神経がズタズタになるまで強姦されてぼろ雑巾のように捨て去られるので、彼女は必死である。

 

なんて情けない姿と笑人もいるかもしれないが、この情けなさも含めて呂奉先だ。

 

それに対して男は……

 

「どうする、コレの言う事も一理はある……今の俺の能力は全盛期には程遠い。

 呂布の武力が自在に利用できるなら利用方法はいくらでも……ある、が……

 いやしかし、少しでも能力を取り戻すには裏切り者の魂を収奪せねば。

 命乞いをされる度に収奪を諦めればいつまでも能力を喪ったままで……ぬぐぐ……」

 

物凄く物凄く思索し、躊躇し、考え込んでしまっていた。

正直言って隙だらけで、こっそり逃げようと思えばできなくもなかったが、それに思い至る程呂布の知能は高くない。

 

「………………駄目だ」

 

たっぷり1~2分は考え込んでようやく男が結論を出した。

 

「ではいくぞ……」

 

そして男が呂布のワレメに肉棒を……

 

「わあぁっ!! ちょっと待ったちょっと待った! えっとええと……

 ああ! あんな所に徳川埋蔵金が!?」

 

呂布、こりゃアカンとまた無い知恵を絞り、気を逸らした隙に逃げ出す作戦に出る。

 

「流石に騙されんぞ」

 

当然、男は無視して呂布の両腕を抑えつけ、彼女の秘部を犯しにいく。

 

「分かった! 話し合おう! ぶっちゃけ何回土下座したら許してくれるかなっ!?」

 

「さっきからお前往生際が悪いぞ!」

 

「え? 普通じゃない?」

 

「普通な訳があるかっ!」

 

「じゃあアタシの態度が普通かどうか一回ゆっくりと話し合ってみようか」

 

「そんな時間は無い!」

 

「待って! お願い待って! 土下座するから! 300円あげるからぁっ!!」

 

「少し黙れ」

 

男が完全に呂布の言葉を拒絶して、往生際悪く両足を中空にバタつかせてる呂布を力任せに押さえつけ、まるで湿り気の無いワレメに無理矢理剛直する肉棒を押し当て、ずぶんと……は、ならなかった。

 

まるで色気の無い押し問答をしている内に、男の股間の棒から活気が失われ、前戯無し、潤滑無しの膣奥を強引に割り込む事が出来なくなっていたのだ。

 

「今日は調子が悪いみたいだから、続きは日を改めてという事にはならないかな?」

 

「黙ってろぉっ!!」

 

ついに男は手甲の暗器入れから耳栓を取り出し、自らの両耳に乱暴に押し込んだ。

太公望を犯していた時に見せたミステリアスな雰囲気は見事に吹き飛んでいた。

 

このまま色気を感じられない会話を続けていけば、そのうちジパング・大華帝国連合の誰かがこっちの異変に気付くかもと、呂布はかなり楽観的な希望を抱く。

 

が……その希望はかなり早く打ち砕かれた。

 

「ひぐっ!? ……うあぁっ!」

 

……一瞬、呂布はクリトリスが破裂でもしたかと思った。

現実には、男が萎えかけの肉棒で呂布の膣口を軽く一撫でしただけだ。

たったそれだけで、呂布の脳髄は常識外の快楽が迸り、打算や希望的観測が一気に消え去った。

 

「(ま、拙い……なんとか逃げ……いや、何かして気を逸らして……)」

 

呂布が最後の悪あがきを行おうとする……男はそうはさせないとばかりにもう一度肉棒をクリトリスにこすりつける。

 

「んんーーーっ!! あ、ううぅ……」

 

ビクンッ!! と呂布の全身が痙攣し、両足が斜め上にピーンと硬直し、膣肉は愛液を分泌し始める。

 

同じ攻防が3度……

 

「んああぁあっ! や、やめろぉ……」

 

4度……

 

「が、ああんぁああっ! ま、またイッて……」

 

5度……

 

「やめろっ! やめて……んぎぃいっ!」

 

6度と続く……

 

「んんおおおっ! も、もう……頭が……おかしくなる……」

 

そうして3分と経たぬうちに、呂布は幾度となく絶頂氏、その膣内どころか、周囲の地面も愛液で濡らしてしまっていた。

そして男の股間には、女の子宮を穿つに足る剛直を取り戻し、先ほど呂布を戦慄させた『異様』な迫力をも備えた男根が蘇った。

 

「に、逃げ……られ……な……」

 

この期に及んで、呂布はまだ逃げようと微かに手足を伸ばしていた。

だが、男が呂布の足腰をしっかりと保持しており、その拘束を跳ねのける程の力は残っていない。

 

舌先三寸で丸め込もうとも、男は耳栓までつけて呂布の言葉を無視する構えだ。

ならば誰かに助けを求めようとも、近くには先ほど男に犯され、倒れ伏した太公望以外誰もいない。

 

そしてついに、呂布の秘所に亀頭がずぷりと飲み込まれ……

 

「間に……合えぇっ……」

 

……ずぷりと飲み込まれる寸前で、太公望が鬼気迫る表情で魔法力を振り絞る。

次の瞬間、呂布のワレメにローマ歩兵団が持つ長盾に似た形状の魔法の障壁が現れた。

 

「な……にぃ……!?」

 

男が目を白黒させて振り向く。

太公望が狼狽する男の前でニヤリと笑った。

 

「獲物の前で舌なめずりは3流だけど、獲物の前で耳栓はそれ以下だよ。

 お陰でギリギリ間に合ったし、途中で気づかれる事も無かった訳だ」

 

そう言われ、男が耳栓を外す。

 

「一体何をしたっ!? いやそれより……何故動ける!? 動ける筈がない!

 一部とはいえ魂魄を引きはがされ、収奪されたのだぞ!」

 

「教えない、自分で考え……なっ!!」

 

瞬間、太公望が両脚で地面を蹴って、呂布を組み伏せる男に飛び掛かる。

全体重で男を転がし、押し倒すと、すぐさま硬く熱い肉の槍を自らの秘部に導き、腰を下ろし……挿入する。

 

「くぅっ! な、何を……?」

 

「キミが使っている術式はさ……

 セックス中に相手を絶頂させれば魂魄の一部を収奪できるけど、

 逆に膣内で射精してしまえば、溜め込んだ魂魄を奪い返される……違うかな?」

 

「う……」

 

男が絶句する。

この短時間でそこまで見抜くのかと、太公望に対する認識……その危険性を大きく上方修正する。

 

「さっきは魔法力を性感帯にブツけられてイカされちゃったけどさ。

 それへの対抗呪文は今構築した。

 後はお互いにイカないように我慢しながら腰ぶつけっこって事だね」

 

太公望が膣内に逸物を収めたまま、前後左右に腰を揺すって刺激を与える。

 

「くぅ……なんの、この程度では……なぁっ!!」

 

男が下から腰を突き上げ反撃する。

亀頭がメスの急所を衝き、その勢いで太公望の小柄の身体が上下に揺れる。

 

「ふあぁっ! あ、んんっ! んんぅ!」

 

全身の性感帯を魔法力で隆起させられた影響で、既に一度これ以上無い程に高ぶった身体である。

太公望と男の勝負はハナッから対等の条件ではない。

それに……

 

「(問題は……ボクはエッチの経験が豊富って訳じゃないし、

 特に訓練をしている訳でも無いって事かな……)」

 

奥歯が砕けそうになる程に強く強く噛みながら、太公望は子宮やクリトリスから津波のように押し寄せるメスの快楽に耐え忍ぶ。

 

「ひぅっ! んんぅっ! ま、まだまだ……んんぁあっ! あぁんっ!」

 

しかし、どれだけ耐え抜こうとしても、次第次第に嬌声が漏れてしまう。

 

「(こいつ……魔法力のズルが無くても巧い……ボクの技量じゃ……あぁ……)」

 

太公望も彼女なりに懸命に腰を振り、アソコに力を込めて絞め、少しでも男が気持ち良くなるようにしている。

しかし元の技術と経験が天と地程に違った。

 

「ふあぁぁっ! ああんんっ! んあぁっ! あ、駄目、駄目駄目ぇ……んんうぅあっ!!」

 

嬌声がどんどん大きくなる。

全身を巡る快楽がどんどん強くなり、自身が絶頂に……死に近づいていくのが分かる。

 

「ああん、んぅあああっ!!」

 

そしてついに絶頂する。

イキ潮がぶしゃぁと漏れ、全身が痙攣し、膣肉がぎゅうぅっと締まり、魂魄の一部が剥ぎ取られて全身から力が抜ける。

 

「ま……だだ……」

 

それでもなお、太公望は諦めていない。

事前の対策によって、魂魄が奪われようとも本当に死ぬ一歩前まで、ある程度まで動けるようにしてある。

だから1度や2度絶頂しようとも、死ぬ前に1度相手をイカせ、射精されば逆転の目はある……あるのだが……

 

「(意識が……と、飛びそう……)」

 

既に太公望は限界寸前であった。

本当にギリギリの所で、土俵際一杯で堪えているも同然の状況で、あと1度か2度イッたらそのまま絶命しそうだと思った。

 

「んんんっ! んあぁっ! あぅ、うああぁぁっ! あんんぅ!」

 

自身がどんどん高ぶり、また絶頂に近づいていくのが分かった。

やむなく隠し持っていた小刀で自身の左腕を斬り、痛みで快楽を忘れようとするも……

 

「う……くっ……予想以上にしぶとい……早くイけ、イッてしまえ……」

 

男は容赦なく太公望を責め立てる。

太公望は何度も何度も自身の左腕に新たな切り傷を作りながら、必死になって耐えると共に、腰を揺すって射精を促す。

 

「(く……うぅ……いくら対策済みとはいえ、これ以上魂魄が欠けたら……

 本当に死んじゃうかな……なら……せめて……)」

 

太公望が小刀を強く握り、何度も何度も左腕を斬りつける。

しかしその努力を嘲笑うかのように、彼女の膣はビクンと震え、背骨がガクンと揺らぎ……

 

「ぐ……ぁ……限界か……」

 

……激しく絶頂した。

 

びゅるるるっ! びゅるるるっ! と白濁液が太公望の子宮に……ではなく、お腹の上にブチ撒けられた。

男と太公望は殆ど同じタイミングで絶頂していた。

しかし絶頂の寸前、男は膣内から男根を抜いたため、太公望の魂魄はこれ以上削れず、しかし奪った魂魄も戻っていない。

 

そして……どさぁ、と太公望が倒れ伏した。

今度はやられたふりではない、本当に気力と体力を使い果たして、立ち上がる事すら不可能だ。

 

「(あと少し……あと1文字……だけでも……)」

 

太公望は本当に最後の最後の力を振り絞り、自身の左手に新しい切り傷をつけ、意識を手放した……

 

なお、呂布は太公望が頑張っている間に逃げていた。

 

……

 

…………

 

………………

 

「何ぃっ!? 弟がランスロット達に救助されただと!?」

 

軍の再編に忙殺されていた伊達政宗は、その報告を聞いて飛び上がって喜んだ。

 

「弟は無事なのか? 怪我はしていないか?」

 

「は、はい。 御屋形様は特に問題ない様子であります」

 

「良かった……本当に良かった……弟の身に何かあれば、某は……」

 

急に力が抜けたのか、政宗はその場に座り込んでしまう。

 

「それと、呂布殿が白旗を揚げて投降してきたであります」

 

「む、投降とな?」

 

「ぶっちゃけ土下座何回で許してくれるかと……」

 

「……それは始皇帝に聞けと言う他無いな」

 

「それで……あのぅ……非常に申し上げにくいでありますが……」

 

「なんだ、まだ何かあるのか? まずは弟を安全な場所で保護して、

 それから警備体制の見直し、下手人共の追及もせねばならん」

 

「……太公望殿が大変な事になっているであります」

 

……

 

…………

 

………………

 

「太公望っ!!」

 

チハヤが救護ベッド上の太公望に駆け寄る。

触れてみて、すぐに普段の状態と違うとわかる。

 

まず体温が土くれのように冷たかった。

呼吸が無く、脈も無かった。

血色が異様に悪く、まるで蝋人形のようだった。

そしてその身体には強姦をされた痕も複数あった。

 

「そんな……何で、何でこんな事に……」

 

「御屋形様……拙者達も、何が何やらで……」

 

「ランちゃん、どう? 死んでるの?」

 

「う~ん……死んでるような~……仮死状態にも見えるような~」

 

「駄目元で治癒魔法試してみる?」

 

「下手に触らない方が良いと思いますよ~」

 

「しかし、そうなると一体誰が太公望を襲ったのか……」

 

政宗がそう呟くと、自然と全員の視線が簀巻きの呂布に集まってくる。

ついさっきまで敵対していた相手のため、当然のように第一容疑者となる。

 

「(ランスロットオォーーーッ!! 頼むぅっ! どうにか取り成してくれぇっ!!)」

 

そんな周囲の雰囲気を察した呂布が必死こいてそう訴える。

呂布の声にならぬ叫びを、ランスロットはしっかりと把握している。

これぞギリワン真拳奥義『ギリワンテレパシー』。

要するにギリワンの考えそうな事は同じギリワンであれば概ね理解できるということだ。

 

「(モードレット~、今日の晩御飯はなんですか~)」

 

「(こらっ! ギャグシーンだからって唐突に変な能力に目覚めないのっ!

 いやそれよりも何で私までギリワン呼ばわりされてるのよ!)」

 

「(いやちょっと無視しないでぇっ! こっち切羽詰まってるからぁっ!

 もう本当にギリギリだからぁーーーっ!!)」

 

「(それは今日の晩御飯よりも重要な事ですか~)」

 

「(重要だよ、超重要だよっ!

 こちとら一歩間違えたら斬首で、二歩間違えたら戚夫人アゲインだからなっ!)」

 

「(ランスロット、ちゃんと話を聞いてあげなさい。

 そうじゃなきゃ今度お夕飯減らしますからね)」

 

「(呂布さ~ん、後で満漢全席奢ってください~)」

 

「(え? ちょっとそれは高いような……)」

 

「(モードレット~、極めて紳士的に交渉しましたけど決裂しちゃいました~)」

 

「(待ってえぇーーー! 何でも奢るから堪忍してぇーーーっ!!)」

 

「(こらランスロット! 今のは交渉じゃなくて脅迫でしょうに!

 もっとちゃんと話を聞きなさい!)」

 

「(しょ~がないですね~。 貸し一つ追加ですよ~)」

 

ランスロットは呂布に対する疑いの目を解消する手立てを考え始める。

 

「皆さん聞いてください~。

 呂布さんがあのシャドウナイトと戦ってた所を~、

 私この目で見ました~」←こいつ犯人です

 

「何、そうなのか?」

 

「そ~ですよ~。

 シャドウナイトが秘密の抜け穴を使ってししょ~をどこかに連れ去ろうとするのを~、

 身体を張って止めていました~」←こいつ犯人です

 

「まあ、嘘は、言ってないね」←こいつも犯人です

 

ボールスが『そうきたか』とでも言いたげな表情でそう呟いた。

 

「弟よ、本当の事なのか?」

 

「えっと、まあ……間違っては……ええっと……間違ってはいない、かな?」

 

チハヤも極めて微妙な表情でランスロットの言葉を肯定した。

 

「残念ながら卑怯な手段を使われて負けてしまいましたけど~、

 あのシャドウナイトをあと一歩の所まで追いつめていました~」←こいつ犯人です

 

「ううむ、そうなると呂布への認識は改める必要があるかのう」

 

「嘘は……言ってない……アレは卑怯な手段だった……」←こいつも犯人です

 

「(ランスロットありがとぅっ! 恩に着るよっ!)」

 

「(貸し1個追加です~、ちゃんと覚えておいてくださいね~)」

 

再度ギリワンテレパシーで呂布とランスロットが通じ合う。

 

「(……今、貸し何個溜まってたっけ?)」

 

「(今のでちょうど10個目ですよ~)」

 

「(うえっ!? そんなに溜まってたか? おっかしいなぁ……)」

 

「(じゃあ貸し借りを数えてくださいよ~)」

 

「(えっと、あの件だろ、この件だろ……1、2、3、4……)」

 

「(呂布さん呂布さん、今何時ですか~?)」

 

「(え? もうすっかり日が暮れてるし、8時くらいじゃないか。

 で……9……10で……げぇっ! 本当に10個溜まってる!!

 まだ6個くらいだと思ってたのにっ!!)」

 

「(ちゃんと覚えてないと駄目じゃないですか~)」

 

なお、ランスロットはしれっと時そば作戦で数をごまかしているが、呂布にそれに気づく知能は無い。

 

「となると、あの3人のシャドウナイト達が第一容疑者か……

 あいつらどこに消えたのやら……」

 

「四方に物見を放って探させていますが、今のところ有力な情報は無いのです」

 

「結局、最後の最後まで連中にはしてやられたという事か。

 某とした事が情けない」

 

せめて遺体の様子から敵の情報は得られないかと、政宗はもう一度太公望を注視する。

一目見て分かる、嫌でも理解させられる、明らかに強姦された痕跡があると。

 

「……全く、本当に情けない」

 

自然と語気が荒くなる。

太公望が皆の前から姿を消した時から、遺体が発見された時まではかなり短い。

それはつまり古代英雄である太公望を短時間で、かつ周囲に気付かれぬ程に静かに倒し、しかも強姦までしでかすような相手が敵だという事だ。

 

「何か他には無いのか? 敵の武器や、魔法が予測できるような痕跡は……」

 

こみ上げる吐き気を気力で押さえつけ、目を背けたくなるような光景を凝視する。

すると政宗は、太公望の左腕に複数の、しかもまだ新しい切り傷がある事に気が付いた。

しかもその切り傷を注意深く見ると、何か文字のように刻まれている事にも気が付いた。

 

「L……A……N……C……」

 

政宗が左腕の文字を読み始めると、忠孝や孫氏、チハヤといった他の面々も太公望の左腕の様子に気が付いた。

 

「太公望さんの左腕に……文字……? 何かのメッセージでしょうか?」

 

「LANCELOT……ランスロットと読めるでありますが……」

 

……全員の視線が今度はランスロットに向いた。

 

「ランちゃん、自首しよう。 潔く自首すればお上にも慈悲はあるよ」

 

「さらばランスロット……後で監獄に差し入れを持っていく……」

 

ボールスとパラメデスが即座にランスロットを切り捨てに走った。

 

「ちょっとちょっと~!! ど~して私が犯人になるんですかぁ~っ!」

 

「だってランちゃんだし」

 

「やりかねない……実績は沢山ある……」

 

「今日はずっと一緒にいたじゃないですか~!

 ど~やってお二人の目を盗んで太公望さんをやっつけれるんですか~っ!」

 

「や、望ちゃんってああ見えて古代英雄だし、

 ランちゃんくらい強くなきゃタイマンは無理っしょ」

 

「そうでなければ……不意打ちしかない……」

 

「ランちゃんってぶっちゃけ円卓の騎士最強だし、

 必要なら躊躇無く不意打ちするタイプだし……」

 

「よって犯人はランスロット……QED……」

 

「証明終了じゃないですよぉ~っ!

 動機も無いし、1人だった時間も無いし、何よりおOんちんが無いでしょうが~っ!!」

 

ランスロットは思い切り強姦された痕が残る太公望の遺体を指さしながら講義する。

 

「逆に言えば動機と時間とおOんちんさえクリアできればランちゃんが犯人か……

 パラっち、ちょっと本気で考えようか」

 

「ちょっ!?」

 

ボールスとパラメデスがランスロット犯人説について全力であ~でもない、こ~でもないと検討を開始した。

 

「ししょ~、助けてください~! 私犯人じゃないですよぉ~!」

 

「そうだな……やっぱりこの傷跡、太公望が残したメッセージなんだろうか……

 そうだとしたらどういう意味なんだろう?

 そうだな、例えば……ランスロットが犯人を知っているとか、

 犯人に勝てるのはランスロットだけとか、そういう意味なのか……?」

 

チハヤが彼なりに傷跡の意味を考え始める。

無論、チハヤはランスロットが犯人だとは欠片も疑っていないが、いまいち頼りにならない。

 

「(呂布さ~ん、何か考えてください~。

 このままじゃ私が犯人呼ばわりされちゃいますよ~)」

 

ランスロットは再びギリワンテレパシーを使い、呂布に助けを求めた。

 

「(やっても良いけど、貸し何個消費させてくれる?)」

 

ここで快く頷く前に条件交渉に入るのがギリワンのギリワンたる所以である。

 

「(1個と言いたいところですけど~、大サービスで2個減らしてあげますよ~)」^

 

「(ええ~、5個くらいは帳消しにしてくれよ~)」

^

「(あ、じゃあ良いです~、自力でど~にかしますので~)」

 

「(ちょ、ちょっと待った! 流石に5個は言い過ぎた!)」

 

「(では話題逸らしよろしくお願いしますね~。 貸し1個減らしておきますので~)」

 

「(え? さっき2個って……)」

 

「(こっちの足元見て妙な条件闘争をしなければ2個という意味ですよ~)」

 

「(うぐぅ……し、仕方ないか……)」

 

何かとても大きな損を掴まされている気もしたが、呂布はなんやかんやでランスロット犯人説を否定する手段を考える。

 

「みんなあたしの話を聞いてくれ!」

 

数秒後、呂布が周囲に自信満々といった様子で声をかけた。

 

「りょーちゃん、元同僚として善意100%で忠告しておくのです。

 黙ってた方が良いと思うのですよ」

 

なお、比較的長い付き合いの孫氏はそう呟くと、即座に太公望の遺体に注意を戻した。

 

「呂布、何か知っているのなら教えてくれ。 どんな小さな事でも良い」

 

「今からうんと遠くに槍を刺す。 そしてあたしはその槍を狙って矢を射る。

 外したらランスロットが犯人、

 当たったらランスロットは犯人じゃないというのはどうだろう」

 

……呂布に向けられた期待の眼差しが瞬時に消失した。

 

「あの……その行為に何の意味があるんだ……?」

 

「それは……えっと、それはだな……な、なんとなく……かな……?」

 

「(呂布さんのアホ~、間抜け~、知力26~)」

 

ランスロットから恨みがましい視線とギリワンテレパシーが向けられる。

 

「(劉備と袁術の戦争はこれで納まったんだよっ! 信じてくれぇっ!!)」

 

と、そこで……

 

「太公望がついにくたばったと聞いてっ!!」

 

ずざざざざぁーーーっ! と、凄まじい土煙を巻き上げながら最速の古代英雄・アキレスがその場に駆け込んできた。

 

「アキレス、来てくれたのか」

 

「とりあえず、私が代表で様子を見に来たわ。 どんな状況なの?」

 

「うむ、それがだな……」

 

かくかくしかじかと、政宗がここまでの経緯を簡単に伝える。

 

「……残念、まだ死んでないわ」

 

話が一通り終わった所で、太公望の様子を見たアキレスがそう告げた。

 

「本当なのか!?」

 

「昔、十絶陣っていう不思議な術を使う連中と戦った事があるんだけど、

 その内の1つが落魂陣っていう術だったの。

 太公望の魂魄を少しずつ奪い取って人形に封じ込める術らしいんだけど、

 その時の状態に凄く似ているわ」

 

「助かるのか?」

 

「魂魄を抜かれて死ぬ寸前だけど、まだ完全には死んでいないわ。

 あの時と同じなら、太公望に術をかけたヤツを叩きのめせば、

 奪われた魂魄が戻って助かる筈よ」

 

「そうか、良かった」

 

「そうすると、急ぎ下手人を負わなければならぬな」

 

「そうしたいのは山々でありますが、情報が少なすぎるであります」

 

「ランスロット、君が犯人だとは思っていないけれど、何か知っている事は無いのか?」

 

「そ~言われても困りますよ~」

 

手詰まりの空気が周囲に漂い出す。

一刻も早く犯人を見つけ出して太公望を助け出したいが、情報が少なすぎてどこをどう探せば良いのか誰も分からなかった。

 

「あ、あの……ぶっちゃけ犯人見てるんだけど……これ言って大丈夫かな?

 変な誤解とか招かないかな?」

 

……訂正、呂布だけは犯人を見ていたので、他の皆に比べればいくらか情報が多かった。

 

「りょーちゃん! 何故それをもっと早く言わないのですか!?」

 

「犯人はどんな顔だった? 背格好は? 武器は使っていたか?」

 

周囲の者が呂布に詰め寄る。

しかし、呂布は滝のような脂汗を流し……

 

「……ごめん、覚えてない」

 

……周囲からの視線が冷たくなった。

 

「おい、冗談なら笑えんぞ」

 

「いやいやいやっ! 本当なんだって! ちゃんと顔は見たし声も聴いたんだけど、

 いざ思い出そうとすると全然思い出せないんだよ!!

 なんか……こう、頭に靄がかかってるみたいで……」

 

そう言いながら、呂布はもう一度犯人の顔や声、その他の特徴を思い出そうとする。

しかし、まるでAVに良くあるモザイク処理でもされているかのように、顔も声もその他の特量も曖昧にしか思い出せない。

 

「ランちゃん、これってアレかな?」

 

「十中八九、間違いないですね~」

 

「知っているのか、ランスロット!?」

 

「それでは今から私の額に文字を書きますので~、

 皆さん何の文字を書いたか当ててみてください~」

 

ランスロットは手甲の凶器入れから小さな筆と墨入れを取り出すと、ささっと何かを自分の額に書き込んだ。

 

「なっ!? よ、読めないであります……」

 

「どういう事だ……?」

 

周囲の者が動揺する。

全員ランスロットの額を隠す物は何も無く、文字もしっかりと見えているのだが、何故か頭に入らないのだ。

文字の形はしっかりと頭に入っているのだが、それが何だったのかを思い出そうとすると思い出せなかった。

 

「……肉?」

 

「いや……米かもしれない……」

 

「残念、正解は『無敵要塞ザイガス』でした~」

 

「ありゃ、ランちゃんの性格から肉かな~って思ったけど、違ったや」

 

「要するに誰も額の文字を読めていないという事か……一体どんな手を使ったのだ?」

 

「認識疎外の魔法ですね~。 自分の正体を隠したい時に良く使います~」

 

「つまり……犯人はランスロットと同じ魔法を使う……」

 

「ランちゃん、やっぱり自首しよ」

 

「私じゃないですよぉ~っ!!」

 

……

 

…………

 

………………

 

……その後、周辺の探索、呂布からの聞き取り、世界各国の英雄達への協力要請等、チハヤ達は様々な手段で犯人を追った。

しかし、犯人の手掛かりはまるで集まらなかった。

太公望の体調は悪化こそしなかったが、快復に向かう気配も無かった。

 

そんな中……

 

「今日もしーちゃんには会えずか……」

 

呂布がとぼとぼと力無く街中を歩いていた。

直接謝りたいと、何度か面会を申し込んだものの、毎回毎回門前払いだ。

いっそ力任せに門番を殴り殺して無理矢理謝りに行く事も考えたが、そんな事をしたらかえって状況が悪化する事は知力26にもすぐに分かった。

 

それに……

 

「(むしろ、この方が良いかもしれないな……

 直接顔を合わせたら、また衝動的に殴り倒してしまうかもしれないし……)」

 

呂布はどうしたら良いのかも、自分がどうしたいのかも分からずに彷徨っていた。

そして……街角の小さな本屋の前で足が止まった。

 

「いらっしゃいませ~。 おや呂布将軍ではありませんか、珍しいですね」

 

「いや、もう将軍じゃないんだよ。 この前クビになっちゃって」

 

「それは……大変失礼を……」

 

「それよりさ、ジョジョの奇妙な冒険ってある?」

 

「ええ、ありますよ。 あちらの棚です」

 

店主に連れられ、呂布は漫画本の棚の前に来た。

本を手に取り、パラパラとページをめくり、棚に戻す。

 

「(何か気になるんだよな……あの……『LANCELOT』の文字……)」

 

本を手に取り、パラパラとページをめくり、棚に戻す。

本を手に取り、パラパラとページをめくり、棚に戻す。

本を手に取り、パラパラとページをめくり、棚に戻す。

何冊かその動作を繰り返し……あるページで手を止めた。

 

「あった、これだ……

 だとすると、太公望があのメッセージで伝えようとした事ってもしかして……」

 

……

 

…………

 

………………

 

「……あんたが犯人だ、ランスロット」

 

ザザーン! と高波が打ち寄せる高い崖の上で、呂布はランスロットに対しその言葉を突きつけた。

 

「ちょっとちょっと~! こんな所に呼び出したと思ったらそれですか~っ!

 こっちはガラハド様やエクターから逃げるのに忙しいんですよ~。

 慰安旅行チケット渡したタイミングが良すぎるって、

 シャドウナイトとのつながりを疑われてるんですよ~」

 

「それは忙しい内に入るのか?」

 

なお、太公望の件はともかく、シャドウナイトの件はランスロットが犯人である。

 

「減給されない程度にギリギリ働きつつ行方を眩ませ続けるのは大変なんですよ~。

 内職でプラモ完成させて~、馬券買って~、パチンコに行って~、

 稼いだお金で食べ歩きして~」

 

「お前何で円卓の騎士クビにならないんだ」

 

「画面に映る所では品行方正にやるのがコツですかね~」

 

……と、ここで話がどうでも良い方向に誘導されつつあるのに気づき、呂布は慌てて話を戻す。

 

「ランスロット! お前が犯人だ!」

 

「何の犯人ですか~?」

 

「太公望を襲った犯人だよ」

 

真正面からそう断言されたというのに、ランスロットは少しも動揺する様子が無い。

一瞬、呂布は自分が間違っていたのではと疑ってしまう。

 

「……で、何を根拠にそんな事を言い出したんですか~?

 何も無かったら流石に怒りますよ~」

 

ランスロットが助け舟を出すかのように聞いてきた。

あるいは呂布1人ならどうにでも言いくるめられるという自信があったのかもしれない。

 

「あたしがこの前、うっかり……いや、うっかりじゃないな。

 衝動的にしーちゃんをブン殴った時にさ、

 これからどうしたものかと途方に暮れてただろ?」

 

「見てて面白いくらいに憔悴してましたよね~」

 

「冷静になって考えたら何であんなタイミング良く出てこれたんだ?

 しかもチハヤと2人きりでどこか遠くに逃げられるかもなんて言って」

 

「凄い偶然ですよね~」

 

ランスロットはニコニコと笑ったままだ。

まだまだどうにでも言いくるめられると思っているのだろうかと、呂布は密かに背筋を凍らせた。

 

「じゃあこれはどうだ? 何でお前は梁山泊の抜け道や罠を知っていたんだ。

 お前、梁山泊と特に関わり無かっただろ?」

 

「アーサー様の騎士になる前は~、世界中を回って武者修行をしてましたからね~」

 

「いや、それはそうかもしれないけど……

 つまり、あたしはこういう可能性もあるんじゃないかって思ったんだよ。

 梁山泊の下調べをして、あたしの動向を見張って、

 ランスロットに情報を送っていた『誰か』がいたんじゃないかって」

 

「あ、気づいちゃいました~? 実はいるんですよ~、信用できる腕利きが~。

 孫ちゃん先生も間者は大事って言ってますからね~。

 具体的にどこの誰かは言えませんが~」

 

ランスロットは今でもニコニコと笑ったままだ。

まだまだどうにでも言いくるめられると思っているのだろうかと、呂布は密かに冷や汗をかいた。

 

「太公望はあたしを助けに来たんだよ。

 水に流されて、溺れかけて、もう立つのもやっとって時に、

 ち〇こ丸出しの変な男に襲われたんだ」

 

「出てくるタイミングが良すぎるので~、さっき言ってた間者が犯人かも、ですか~?」

 

「そうそう、そう言いたかったんだよ!」

 

「じゃあ犯人は私ではありませんね~」

 

ランスロットはそう結論付けると、崖の上からさっさと立ち去ろうとする。

 

「待って! ちょっと待ってお願いだから! まだ話は続きがあるんだって!」

 

「ええ~、間者の人がこの場にいないのに、これ以上話したって仕方無いですよ~」

 

「いるよっ! いるんだよここに! あたしの想像が正しければこの場にいるんだよ!」

 

「この場には私と呂布さん以外誰もいませんよ~。

 ど~やって私が犯人だって証拠ですか~?」

 

「この本だ。 この本が動かぬ証拠だ」

 

呂布は懐から1冊の漫画本を出して見せた。

 

「すみませ~ん、流石にジョジョを証拠品として突きつけてくるのは予想外なのですが~」

 

「花京院が夢の中で敵に襲われる話があった。

 敵のスタンド使いは赤ん坊だと仲間に知らせるために、

 花京院は自分の腕に文字を刻む……『BABY STAND』って」

 

「それで~?」

 

「太公望が自分の腕に刻もうとした文字、

 本当は『LANCELOT STAND』だったんじゃないか?

 途中で力尽きたから『LANCELOT』だけ書いて……」

 

「……それで私がスタンド使いって結論ですか~?」

 

「そうそう、そんな感じ!」

 

「流石にその論理は無茶があると思いますよ~」

 

「い、言われてみれば……そうだ、スタンド使いを見分ける方法があるんだよ!」

 

「タバコの煙を吸うと鼻の頭に血管が浮き出る、ですよね~」

 

「そうそう、そんな感じ!」

 

「アレは承太郎のハッタリですよ~」

 

「ありゃ、そうだっけ?」

 

「ウロ覚えの情報を根拠にされちゃ困りますよ~」

 

……と、ここで呂布はランスロットを追及するネタが尽きた事に気が付いた。

ランスロットは今でもニコニコと笑ったままだ。

それが何故か、妙に、寒気がする程に不気味に感じた。

 

ランスロットは今でもニコニコと笑ったままだ。

 

 

 

 

 

「駄目じゃないですか~、犯人と2人きりになっちゃ~」

 

……気が付けば、ランスロットが2人いた。

 

 

 

 

 

「え……あ……?」

 

呂布は何が起きたのかまるで分らなかった。

全くの無音、全くの無動作で、ランスロットが1人増えていた。

全く同じ顔、全く同じ身長、同じ体格……いや、体格は少しだけ違う。

じっくりと注視しなければ分からない差であるが、肩幅が僅かに広く、喉が僅かに太く、全体的の多少筋肉質になっていて……それはまるで……

 

「男……? 男のランスロット……なのか……?」

 

「お前がそれを知る必要は無い」

 

その声を聴いた瞬間、呂布はこの男が太公望を襲い、犯し、魂魄を奪い去った男だと確信する。

 

「一体どっから出てきたぁっ!?」

 

「嫌ですね~、呂布さんが言ったんじゃないですか~。

 私がスタンド使いで~、犯人だって~」

 

「実際の所、ドンピシャでは無いにしろ、ニアピンと言って良い推理ではあった。

 俺も慌てて戻らざるを得なかった」

 

「正直ちょっと焦りました~、おかげで慌てて呼び戻しちゃいましたよ~……」

 

「お前の口封じのためになぁっ!!」

「呂布さんは口封じが必要ですね~」

 

……と、ここで呂布は弓矢も方天画戟も持っていない事を思い出す。

正直言って不注意極まりない所だが、これが知力26である彼女の平常運転だ。

 

要するに……

 

「(……あ、やっべしくじった)」

 

要するにこいつは、ランスロットを追いつめるどころか見事なまでのオウンゴールを決めてしまったのだ。

 

「話せば分かるっ!!」

 

「問答無用ぉっ!!」

「問答無用ぉ~」

 

ランスロットとランスロットに瓜二つの男が漆黒の魔剣を振りかざし、同時に呂布に襲い掛かってきた。

呂布はすぐさまその辺に落ちてた木の棒を拾って応戦するが、当然のようにあっという間に劣勢になった。

 

そもそも、ランスロットと呂布は接近戦では同等の力量なのだ。

片や味方殺しの魔剣・アロンダイト、もう片方はその辺に落ちてた棒きれでは勝負にならない。

 

「……ちぃ、分かってはいたが弱体化が著しいな」

 

一方、男の方は呂布やランスロット程ではないが、それでも2人の戦闘に割って入るには十分すぎる程に腕が立つ。

 

「前衛はこっち! そっちは援護!」

 

「やむを得んか……」

 

男がランスロットの指示に合わせて距離を取る。

そしてその辺に落ちてた手ごろな大きさの石を拾って呂布に投擲する。

 

「あだっ! あだだっ! ちょっとタンマ、タンマッ!!」

 

投石と言っても十分な重さと速度があれば、人を骨折、昏倒させ、当たり所によっては殺害しうる威力が出る。

目の前に魔剣を振り回すランスロットがいるとなれば、投石を躱しきる事も、止める事も不可能だ。

かといって放置すれば出血と骨折であっという間に戦闘不能になってしまう。

呂布の敗北はもはや秒読みといって良い状況であった。

 

「ちょっと待った! 方天画戟持ってくる間だけでも良いから待って!」

 

「戦いの基本は~叩ける時に叩けですよ~」

 

そして一瞬の隙を衝き、ランスロットは新体操選手のように軽やかな動きで呂布を飛び越し背後に回り、羽交い絞めにした。

 

「やばっ!? くぅ、振りほどけない!」

 

「も~ちょっと賢く立ち回られたら~、ちょ~っと危なかったんですけどね~」

 

「後先を考えない所は変わらず……いや、俺が言って良い台詞ではない……か……」

 

「はいはい、昔の知り合いに似てるとか似てないとかは考えずに~、

 ちゃちゃ~と一発ヤッて~、少しでも力を戻してくださいね~」

 

「ドライにも程がある、本当に同一人物なのか……」

 

「女ってのは~男が思うよりドライな生き物なんですよ~」

 

「聞きたくなかったそんな台詞」

 

「それより手早くヤりますよ~っと」

 

ランスロットは足だけで器用に呂布の紐パンを脱がす。

 

「獲物の前で舌なめずりは3流だったな」

 

男の方がいそいそと下履きを脱ぎ捨て、ぼろんと男根を露出させる。

 

「何本目に死ぬかな~?」

 

「何本もあるみたいに言うなっ! 俺のち〇こは1本だっ!」

 

「私も生やしたりできませんかね~? ちょ~っと興味があるんですが~」

 

「知らんし知ってても教えん! 何に使う気だ!?」

 

「そりゃナニにですよ~」

 

「……本当に、本当ぉ~っに、お前は俺と同一人物なんだろうな?」

 

「騎士らしくないとは良く言われます~」

 

「俺もこのくらい開き直れていたらあんな結末にはならなかっただろうか……」

 

「凄くストレスが溜まるのでお勧めはしかねますね~」

 

「おいコラお前らぁっ!

 あたしを無理矢理強姦しておいて関係無い事喋ってんじゃないよっ!!」

 

「あ、続きをどうぞとの事なので~、魂奪って廃人になってもらいましょ~か~」

 

「ごめん今の台詞無かった事にできないかなっ!!」

 

「気持ちは分かるが見逃す訳にはいかん。

 悪いが俺が力を取り戻すために生贄になってもらうぞ」

 

「やめろ悪魔ぁっ! 強姦魔ぁっ! 人でなしぃっ!」

 

「赤兎馬に目が眩んで養父を惨殺した人が何か言ってますね~」

 

「何年前の話だよ! アレはもう時効だろっ!!」

 

惨殺した事は否定しない所がポイントである。

 

「お前ら少し黙れ! ち〇こが萎える!」

 

「サンタの回、外でずっとスタンバってました」

 

「年賀状回は本気でやめろぉっ!! 笑うだろっ!!」

 

「え、年賀状回……? 何それ?」

 

「いや~別世界の私だけあって笑いのツボも似てますね~」

 

「お前はどっちの味方だっ!?」

「お前どっちの味方なんだよぉっ!?」

 

「そりゃアーサー様の味方ですよ~」

 

「なあ男ランスロット、

 いっそ今から力を合わせてこっちのランスロットをブチのめさないか」

 

「くぅっ……流石に、流石に頷く訳にはいかんが、

 魅力的な提案だと思ってしまう自分がいる……」

 

男はもう早く終わらせようとばかりに腰を入れ、ずぷずぷと膣奥深くへと肉棒をめり込ませていく。

 

途中で一度動きを止め、唇を噛み締め……

 

「……すまん」

 

……そう小さく呟いた。

 

呂布は少しでも隙があれば暴れて逃げ出そうと考えていた。

いたが、その小さな小さな呟きを聞くと……抵抗する気持ちが急に萎んだ。

 

「はあぁ~~~……」

 

大きく大きくため息をつくと、呂布は男のモノを受け入れるように、両足から力を抜いた。

 

「……もう観念したよ。 ヤるのも、魂抜くのも、好きにしなよ。

 自業自得とはいえ、もうしーちゃんにも、そんちゃんにも合わせる顔が無いしね」

 

なお、その観念が5秒後に覆るのが呂布である。

 

男はなんとも言えない表情で目を伏せ、数秒動きを止めたが……少しして意を決して、呂布のワレメに亀頭を宛がい……ずんっ! と力任せに挿入した。

 

「はがっ……づうぅ……」

 

まるで前戯もせず、急に膣内に異物を押し込まれた痛みと衝撃に呂布は息を飲む。

数日前は太公望が張った防御結界に助けられたが、結界の効力は既に失われていたようだ。

 

「……そこで『すまん』が出てくるから、色々しくじったんじゃないんですかね~」

 

「だからお前はどっちの味方だっ!?」

「だからお前どっちの味方なんだよぉっ!?」

 

「そりゃアーサー様の味方ですよ~」

 

「なあ男ランスロット、やっぱり力を合わせて女ランスロットをブチのめさないか」

 

「うぐぅ……いやしかし……本当にすまん、断る」

 

一瞬コントのようなやり取りはあったが、再度膣肉をかき分け奥へ奥へと突き刺していく。

 

「んん……あ、んんぅ!」

 

呂布の口から艶めかしい嬌声が漏れ始めた。

 

「(あう、こいつ結構上手い……)」

 

呂布にとって比較対象になる男性はチハヤ1人だけだ。

それもず~っと前に一回だけシたきり、それ以来はご無沙汰になっている。

 

そんな性的経験が乏しい呂布にも一瞬で分かる程、男の行為は慣れていて、しかも女性が感じるポイントを衝くのが巧かった。

 

「ん……あぁう、あん! あぁんんっ!」

 

呂布の嬌声がどんどん大きくなっていく。

絶頂すれば魂魄を奪われてしまうと分かってはいた。

しかし、ランスロットは少しも油断せずに呂布を取り押さえていて、振りほどくのは無理のようだ。

 

「や、だめ……んんっ! んんあぁあ! あ、ふあぁん!」

 

呂布の嬌声がどんどん大きくなっていく。

 

太公望にしたように魔法力で無理矢理絶頂イカせる技は使っていないようだが、それを差し引いても男のセックス技術は隔絶しており、ズンズンとGスポットを先端でこすられる度に、呂布の全身から汗が沸き、へその辺りに電気が奔るような快感があった。

 

「ふぁあっ! うう、あ、あぁん! あぁあんっ!」

 

呂布の嬌声がどんどん大きくなっていく。

こんなメスの顔で、メスの声が出るものかと、自分自身でも驚いた。

そして同時に、自分がもうイキそうになっているのも分かった。

 

ランスロットはやはり油断をしていない。

呂布を羽交い絞めにする力は少しも緩まっていなかった。

 

そして……

 

「てやああぁぁっ!!」

 

猿叫と言うには少々迫力の足りない叫び声、一直線にランスロット達に向かってくる足音。

やや小ぶりな斧を両手で抱えた1人の少女が駆け寄ってきていた。

 

その人物の声と姿を、呂布も、2人のランスロットも知っている。

 

「そんちゃん!? そんちゃんなんでっ!?」

 

「脱出っ!!」

 

「あっコラ……いや、やむを得んか!」

 

このままでは孫氏に頭をカチ割られると、2人のランスロットが呂布を開放して飛びのいた。

 

「そんちゃん! どうしてここが!?」

 

「話は後っ! 走れるならすぐに走って、逃げるのですよ!」

 

「わ、わかった!」

 

呂布は少しも疑わず、躊躇せずに孫氏に従う。

こういう鉄火場における孫氏の判断能力を信用しきっているのだ。

 

「孫武か……裏切り者という意味では、孫臏の方が都合が良いのだがな」

 

「四の五の言ってないで追いますよ~、逃がすと少し面倒です~」

 

ランスロットが即座に2人を追って全力疾走を開始し、ランスロット似の男も一瞬遅れて追走する。

 

「フライングナイフッ!!」

 

ランスロットが手甲の凶器入れから投げナイフを出し、孫氏目掛けて投げつける。

 

「そんちゃん危ない!」

 

すんでの所で呂布が孫氏の襟首を持ち上げて助ける。

 

「あ、こらぁっ! 助けるにしてもやり方があるでしょうにっ!」

 

「ご、ごめんっ!」

 

呂布が慌てて孫氏を下ろす。

 

「次の分かれ道は右なのです!」

 

「りょ、了解っ!」

 

そのまま呂布と孫氏は全力で駆け抜ける。

ランスロット達2人が追いかける。

とはいえ、悲しいかな孫氏は基本文官だ。

呂布やランスロットのようなフィジカルお化け達と比べれば、持久力も足の速さも大きく劣る。

徐々に徐々に逃げる呂布達と、追いかけるランスロット達の距離が縮んでいく。

 

「フライングフォーク!」

 

……当然、距離が狭まる程、ランスロットの投擲武器を回避するのが難しくなっていく。

呂布は走りながら拾った棒っきれでナイフやフォークを叩き落しているが、それも厳しくなっていく。

 

「そんちゃんヤバい! もう追いつかれるよ!」

 

「黙って走るのですよ! もうちょっとなのですから!」

 

呂布達が全力で逃げる。

ランスロット達が全力で追う。

 

逃げる、追う、逃げる、追う。

逃げる、追う、逃げる、追う、逃げる、追う、逃げる、追う……そして……

 

「……あれ、追ってこない?」

 

……ふと気が付くと、ランスロット達2人の気配が消えていた。

 

「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」

 

孫氏が大きく肩を上下させ、荒い呼吸をしていた。

 

「そ、そんちゃん、何で助けに……

 いやそれよりも、ランスロット達どうして追いかけるのをやめたんだ?」

 

「ぜぇ、はぁ……あれ……あれを見て逃げたのです……よ……」

 

大きく荒く息を吐きながら、孫氏は道の脇にある大きな樹を指さした。

その樹は表面が大きく削られ、『ランスロットこの樹の下で死す』と大きく書かれていた。

 

「……もしかして、伏兵とか置いてた?」

 

「そんなの準備する時間無かったのです。

 だいぶ前に臏が田忌を殺すために使った待ち伏せの策をアレンジした、

 偽装伏兵ハッタリの陣なのですよ」

 

孫氏はもう一歩も歩けないとばかりにばた~っと仰向けに倒れ伏した。

呂布はそんな孫氏を背負って、街の方へと歩きだした。

 

「……で、これからどうしよう?」

 

「私達2人でランスロットさんが犯人だと訴えたとして、何人が信じるか……」

 

「素行不良とはいえ、円卓の騎士だしなぁ……」

 

「せめて次に誰が狙われるかが分かれば、

 待ち伏せるなり罠を張るなりやりようはあるのですが……」

 

「次に誰が……か……」

 

……

 

…………

 

………………

 

「姉さん……」

 

「どうした弟よ、今日は随分と甘えてくるな」

 

仙台城にて、1組の男女が抱き合っていた。

2人はごく薄い下着だけを身につけており、殆ど裸に近い。

2人は姉と弟で、城主とジパング王で、同時に夫婦でもある。

 

「それは……」

 

弟にしてジパング王・チハヤが言いよどむ。

ほんの数日前に、ランスロット達は『伊達政宗と離れてほしい』とチハヤに言った。

その回答は今なお保留中であるし、当の政宗の耳に入れるかどうかも決めかねていた。

 

「太公望の事が心配なのか?」

 

そうではないと、チハヤは言おうとして……やめた。

 

「ああ、やっぱり心配になるよ」

 

「打てる手は全て打っている。 やはり怪しいのはシャドウナイト一味だ。

 どんな手を使ってでも見つけ出して引っ立ててやるからのう」

 

チハヤは、本当はシャドウナイト一味の正体も知っている。

本当はシャドウナイト一味=ランスロット達3人であると知っている。

だがそれも……どうしても話せない。

 

今はまだ、ランスロット達からの提案を話せない、話したくない……どうしても、どうしても政宗から離れたくない。

そんな思いがチハヤの口をどこまでもどこまでも重くしていた。

 

「(やっぱり言えないな……なら仕方ない。

 どうにかランスロット達を説得するしかないか)」

 

チハヤは密かにそんな決意を固める。

ランスロットもなんやかんやでチハヤと想いを通じ合わせ、愛し合い、夫婦となった人の1人なのだから、きっと話せば分かってくれる。

チハヤはそんな致命傷ともいえる程に楽観的な気持ちでそう決めた。

 

チハヤは知らない、政宗も知らない、そのランスロットこそが呂布と太公望を襲った犯人である事を……

 

「んんっ……」

 

チハヤが考え事をしていると、政宗の艶めかしい声が漏れた。

僅かな間の後に、ぬぷり……とチハヤの肉棒が濡れそぼった肉壺中へと挿入される。

 

「(あれ……? いつ脱がせて、いつ脱いだっけ……?)」

 

考え事をしていたせいか、まるで時間が飛んだような感覚に陥った。

同居している夫婦なのだから、政務の後でそういう行為に及ぶ事は多々ある。

直前まで真面目な話をしていたが、ふとした拍子でお互いにむらっと来る事も多々ある。

だが、衣服を脱いて脱がせて、愛撫をしたりされたりする時間が、まるでキングクリムゾンされたかのように感じた事は滅多に無い。

 

「(ん……あれ……? 姉さんってこうだったっけ……?)」

 

ここでチハヤが僅かに違和感を覚えた。

嫁が際限無く増え続け、エッチな事の経験も際限無く増え続けている彼だからこそ分かる事であるが、膣肉の弾力や、締まり具合等には個人個人で癖がある。

なんとなく、伊達政宗の癖は、もう少しおっかなびっくりといった調子だったような気がした。

 

『……伊賀の影丸って奴は、自分の膝を短刀で刺して幻術や催眠術の類を破るらしいっす』

 

唐突に、ちょっと前に幸村とした雑談を思い出した。

ほぼ同時に、太公望の左腕に刻まれた『LANCELOT』の文字も思い出す。

 

「(もしかして……太公望も幻術にかけられていた?

 幻術から逃れるために、自分で自分の腕を斬った?)」

 

自分自身、馬鹿げた妄想だと思った。

馬鹿げた妄想だとは思ったが……それでも試したくなった。

 

チハヤは自分自身の尻を摘み……力の限り捻った。

 

「いだだっ!」

 

思わず変な声が出る。

周囲を軽く見回すが、特に変化は見られない。

 

そりゃそうだ、何を心配になっているのだろうと胸を撫でおろし、視線を最愛の姉に向けて……チハヤはぎょっとした

 

「ラ、ランスロ……」

 

……最後の『ト』が出てくる前に言葉が途切れる。

ランスロットが獣じみた反射神経と俊敏性でチハヤに抱き着き、唇で唇を塞いだのだ。

 

自分が抱いていた女性がランスロットだった。

自分の勃起ち〇こがランスロットお〇んこを挿し貫いていた。

ランスロットは普段通りの格好で、パンツだけ右にずらして挿入していた。

文字にすればそれだけの事だが、チハヤにとってはかなり衝撃的だ。

 

「い……な……ど……」

 

数秒して唇が離れる。

一体何故とか、どうしてここにとか、姉さんはどうしたんだとか、色々と聞きたいことがあったが、舌が痺れて上手く喋れなかった。

 

「(これは……毒か!? 今ので毒を飲まされたのか!?)」

 

一瞬ではあったが、幻覚が途切れた直後、ランスロットが手甲の凶器入れから何を取り出しているのが見えた。

単純な身体能力、一瞬の判断能力、周到な準備、小手先の器用さを兼ね備えた彼女だからこそできる芸当だ。

 

「まさかこんなに早くバレちゃうなんて~、

 やっぱぶっつけ本番で使う魔法じゃないですよこれは~」

 

ランスロットがチハヤにコアラのように抱き着きながら頬を膨らませる。

その視線の先を目で追って……チハヤは先ほどの何倍も、何十倍もぎょっとした。

 

「んんっ! あんんっ、ふあぁっ! ああんぅっ!」

 

「ね……さ……っ!!」

 

政宗が自分以外の男……まるで双子のようにランスロットに似た男に抱かれていた。

自分以外の男にとろんとした視線を向けて、喘ぎ声を漏らしていた。

チハヤは声の限り叫ぼうとしたが、先ほどの痺れ薬のせいでその声は小虫の羽音よりも小さくか細いものに過ぎなかった。

 

「すみませんね~ししょ~、ちょ~っと想定外の事態が起きましたので~、

 かな~り過激な手段に走っちゃいます~」

 

政宗やランスロット似の男に聞こえないようにか、小さな声で囁いてきた。

どういう事かと詰め寄りたかったが、口も、手も足も痺れだしている。

 

「なに……を……?」

 

何をする気だという言葉だけ、辛うじて出せた。

 

「政宗さんには~何年か眠り姫みたいに眠ってもらいます~」

 

「なっ!?」

 

「伊達政宗と言えばですよ~、

 領地替えに素直に従うフリをしつつ裏では一揆の扇動をしたり~、

 こ~っそりスペイン国王を巻き込んで天下をひっくり返そうとしたりした人ですよ~。

 もう立派な裏切り者なので~、別世界の私が力を取り戻すのに都合が良いのですよ~」

 

「うら……ぎり……?」

 

チハヤにはランスロットが何を言っているのかまるで分らなかった。

少なくとも、チハヤが知る伊達政宗像とはまるで違う事実の羅列に聞こえた。

 

直後、正常位で政宗を抱くランスロットの似の男がギロリと鋭い目つきでチハヤ達を睨む。

男は無言だったが、『余計な事を喋るな』と抗議しているようにチハヤは感じた。

 

「ああっ、ふあぁぁんぅ! んんっ! んあぁっ!」

 

男が政宗をさらに責め立てる。

喘ぎ声が徐々に大きくなっていく。

 

「ね……さ……あ……」

 

チハヤが姉の名を叫ぶ。

それは俺じゃないと叫ぶ。

しかし、何度声を絞り出そうとしても思うように声が出ない。

 

最愛の姉にして最愛の嫁が自分以外の男に抱かれ、はしたなく喘ぎ、淫らに乱れるのを眺めているしかできなかった。

 

「ん……こ、こら弟よ、そんなに……んぁ! あぁん! ふあぁぁん!」

 

政宗の喘ぎがさらに大きく激しくなる。

何度も何度も政宗と身体を重ねたチハヤには分かる……もうイキそうなのだと。

自分以外の男のち〇こを加えこみ、自分以外の男のち〇こでイカれる光景を見るのは耐え難い苦痛だったが、チハヤは目を逸らす事すらできない。

 

「(くそ、何とかできないのか……何か無いのか……)」

 

チハヤが必死に抵抗をするが、痺れた身体で、しかもランスロットと密着した状態では思うようにはいかない

 

「ししょ~、私のナカでお〇んちんおっきくなってますよ~。

 政宗さんが他人とエッチしてるの見て興奮してるんですか~?」

 

……ランスロットから指摘され、チハヤは自身のモノがガチガチになっているのに気が付いた。

そんな馬鹿な、そんな筈はないと思いたかったが、多量の血流が亀頭に集まり、ランスロットの膣内で大きく膨らんでいた。

玉袋が脈打つように蠢いて、下半身が射精準備に入っていくのが分かった。

 

「それじゃ~色々迷惑かけたお詫びもこめて~……

 良いですよ、思いっきり膣内に射精しても」

 

ランスロットはそう囁くと、挿入したまま痺れるチハヤを押し倒して覆いかぶさった。

 

ほぼ同時に、ランスロット似の男も政宗に覆いかぶさる。

正常位の姿勢から、俗にいう種付けプレスの体勢になって、真上から力一杯政宗の子宮に杭打ちピストンを行った。

 

「あぐっ! んんぅっ! んぁあ! ああんんっ!」

 

ぐちゅり、ぬちゃりと、水音が響く。

政宗のナカは本気汁で溢れ、既に絶頂寸前だった。

 

「ぐ……う、ぅく……」

 

チハヤもまた絶頂に近づきつつあった。

言うなれば逆種付けピストンとでも呼ぶべきか、完全にランスロットに主導権を握られ、ぐちゅぐちゅと肉ヒダの感触に翻弄されていた。

ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! と肉と肉がぶつかる音がするたびに、鈴口からはカウパーが漏れ出し、肉棒が射精したい、子宮に射精して孕ませたいと叫ぶかのように強直した。

 

「ほら、イッても良いんですよ~。

 奥の奥にびゅ~! びゅ~! って射精したら気持ち良いですよ~」

 

そんなランスロットの囁きに屈してしまいそうになる。

心から屈してしまい、何も考えずに射精してしまおうかと考えてしまう。

 

だが……それは政宗への裏切りのような気がした。

チハヤの嫁は既に100人を超え、政宗以外の女を抱いた回数は最早数えきれない程だ。

それがたった一回増えるだけ……ほんの少し、ほんちょちょっぴりだけ、そんな考えがよぎってしまった。

 

……それが引き金だった。

 

「はあぁぁんんうぅうっ!!」

 

「んぐぅ、で……うあぁ!」

 

……偶然か、必然か、政宗とチハヤが絶頂に達したのは同時だった。

 

ランスロット似の男のトドメのピストンに負け、政宗は両手両足をピーンと伸ばして絶頂した。

そしてチハヤもランスロットの膣内でびゅるるっ! びゅるるっ! と多量の精液を吐き出していた。

 

「な……なにぃっ!? お主はランスロット!?」

 

絶頂の瞬間、政宗にかけられた幻術の効力が切れた。

さっきまで愛する弟兼愛する夫とセックスをしていた筈が、自分はランスロットに良く似た謎の男に、弟兼夫はランスロットとセックスをしていた。

それは彼女にとって階段を登ったと思ったら降りていた時のポルナレフ以上に衝撃的な光景であったが、マジックのタネは単なる催眠術の類である。

 

「……すまん」

 

ランスロット似の男が、申し訳無さそうに頭を垂れる。

絶頂の余韻でピクピクと痙攣する政宗のワレメから男根が引き抜かれた。

 

「貴様ら一体どうやって!? 何がもくて……き……な、なん……だ……意識が……」

 

政宗が意識を失い崩れ落ちた。

数日前に太公望がそうなったのと同じように、魂の一部をランスロット似の男に抜き取られたのだ。

 

「ね……姉さん……」

 

特に説明を受けた訳ではなかったが、チハヤには分かった。

政宗はもう目覚める事は無いのだ……少なくとも、ランスロット達の気が済むまでは。

 

「力は戻りましたか~?」

 

「大分、マシになった。 この分ならばあと3~4人……いや、もっとか……」

 

「10人、20人ではなさそうですか~?」

 

「裏切りの質にもよる。 その辺のチンピラでは足しにならん」

 

ランスロットのワレメからチハヤの肉棒が抜かれた。

栓が外れて、膣内からどろっとした白濁液が漏れ出した。

それがまるで自身の敗北か、自身の無為無策の証のようで、意識を失った政宗への罪悪感が何倍も何十倍もこみ上げる。

 

「口封じはいるか? できるが」

 

「やめときましょ~。 ど~せ呂布さんの口から色々漏れますので無意味ですよ~」

 

ランスロットとランスロット似の男が立ち上がり、すぐに立ち去ろうとする。

チハヤは……2人を制止できなかった。

先ほど飲まされた痺れ薬が効いているのもあったが、それ以上に無力感と倦怠感が全身に重くのしかかり、身動きができない上に身動きをする気も起きなかった。

 

分かる事は一つ、自分は心のどこかでランスロットの決意を甘く見ていた事だ。

話せば分かってくれると彼女の想いを軽く見ていた事だ。

 

「おおっと、そんなに急いでどこに行く気だい?」

 

……そんなチハヤの心を知ってか知らずか、その場に1人の女性が入ってきていた。

 

黄金色のチャイナドレスを身に着けて、頭には冠、脚には龍の入れ墨、そしてその手には2振りの方天画戟……大華帝国の飛将軍・呂奉先がそこにいた。

 

「何っ!? 人払いの結界はまだ効いている筈だぞ!?」

 

「人払い? ああ、さっきそんちゃんとはぐれたのはそのせいかな。

 急にいなくなるから、アタシが道を間違えたのかって思って焦ったよ」

 

「たぶん効かなかったんでしょうね~、この人知力26なので~」

 

意訳・バカには精神操作系の魔法は効きにくい。

長所と短所は表裏一体である。

 

「何で来たんですか?」

 

ランスロットがふぅっとため息をつきながらそう尋ねる。

 

「ん? あんたらの次の狙いは政宗だからさ」

 

「へぇ~、良く気づけましたね~」

 

「……って、そんちゃんが言ってた」

 

「ごめんなさい、うっかり知力26だって事忘れるところでした~」

 

なお、孫武の知力は97である。

 

「……状況理解してます? 命を……いえ、正確には魂を狙われている自覚は?

 ついこの間1対1でも私に負けたのに、今は2対1だという事も理解してます?」

 

「そっちこそ状況を分かってるのかい? 今、目の前に完全武装の呂布がいるんだ。

 身の危険、命の危険を感じるのにそれ以上の言葉はいらないだろ。

 それに2対1でもやりようはあるさ……冷静になって考えてみたら、

 張飛と関羽が同時に襲い掛かってきた時だって、どうにかなった」

 

「虎牢関は守れましたか~?」

 

「はいそうでした! 作戦の目的は頓挫してました、実質アタシの負けでした!」

 

呂布がまたもやり込められる。

舌戦では100戦100敗だ。

裏切者で、カナヅチで、急に命乞いをする、知力26……それが彼女だ、それが呂奉先だ。

 

だがしかし……

 

「はぁ、本当に締まらないな毎回毎回……もう良い、もう格好良い事は言わない。

 キザったらしい言葉も使わない。 シンプルに言うよ、何でここに来たのかを」

 

だがしかし……裏切っても、カナヅチでも、命乞いをしても、知力26でも、それでも彼女は最強だ。

千の短所、万の弱点を抱えてもなお輝く『最強』の二文字を背負う英雄こそが彼女だ。

 

「呂奉先がランスロットを止めに来た」

 

シンプルに、ド直球に、呂布はそう告げると共に臨戦態勢に入った。

何千、何万もの戦士達の血を浴びてきた二振りの方天画戟が、ギランと輝いた。

 

「どうする? あまり時間に余裕は……」

 

「聞くまでもないでしょ~……よっ!!」

 

ブォン!! と周囲に風圧がかかる程の素早い腕の振り。

呂布目掛けて同時に3本投げナイフが飛んだ。

 

「この程度ぉっ!!」

 

方天画戟がグルンと回転し、飛んでくるナイフを瞬時に弾く。

 

「うおおぉっ!!」

 

ランスロット似の男が剣を抜き飛び掛かる。

鋭い剣閃が十も二十も煌めいて、夥しい数の火花を散らす。

 

「たあぁぁっ!!」

 

ランスロットもまた魔法剣アロンダイトを手に呂布に斬りかかる。

2対1であるが故の優位、手数の多さで圧倒する算段だ。

 

「くっ、なんのこれしきっ!!」

 

並大抵の武芸者が開いてであれば呂布は軽々と凌いで見せただろう。

だがしかし、ランスロットもまた円卓の騎士の中で最強と謳われる程の使い手だ。

真正面からの斬りあいになれば、例え呂布であろうとも相応に手こずる相手だ。

 

「(こいつ……この前戦った時よりも強くなってるのか!?)」

 

呂布が内心焦りを感じる。

同時に斬りかかってくるランスロット似の男も、決して弱くはない。

1対1ならばともかく、ランスロットと切り結びながらでは対処しきれない。

1つ、また1つと呂布の身体に生傷が増えていく……

 

「ぐ……か、身体が動かない……何か、何かできることは無いのか……」

 

チハヤがどうにか呂布に加勢できないかと力を振り絞るも、全身の痺れはそう簡単には消えてくれない。

徐々に徐々に呂布が追いつめられていった。

 

「……降参してください、死んじゃいますよ」

 

「へっ、やなこった」

 

ランスロットの降伏勧告を拒絶する。

それはつまり、呂布の側に何かしらの勝算があるという事だ。

 

ランスロットとランスロット似の男がさらに激しく攻撃を加える。

防ぐ、防ぐ、防ぐ、斬られる、防ぐ、防ぐ、斬られる、防ぐ、斬られる……

ランスロット達2人は殆ど無傷であったが、呂布には小さな切り傷が何個も何個も付けられ、流血によって部屋が赤く染まりつつあった。

 

「(こいつは……流石にヤバいかな……)」

 

呂布の心に弱気が入り込もうとしたその時……

 

 

 

 

 

「りょーーーちゃああぁぁんっ!! 頑張ってえええぇぇぇーーーっ!!」

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

その声は呂布には聞きなれた声で、もう二度と聞く事は無いだろうと思った声だ。

 

はっと目を見開き、声のした方向を見ると……呂布の主君にして親友、大帝国の皇帝・始皇帝がそこにいた。

つい先日、外ならぬ呂布によって鋼入りのダンと同じくらいボコボコにされ、顔は紫色の痣だらけだった。

にも拘らず、始皇帝ははるばる海を越えてジパングに来ていた……自身をボッコボコにした呂布に声援を送るために。

 

「しー……ちゃん……」

 

「りょーちゃん! りょ―ちゃんはまだ大丈夫だよ!

 顔色も良いし、足腰もしっかりしているから! あと1時間は戦えるよっ!!」

 

呂布の姿は見るからにズタボロで、今にも出血多量で倒れそうになっていた。

いや、肉体の限界の前に心が折れ、自ら負けを認めそうになっていた。

 

そんな呂布の萎えかけた心に、始皇帝の声援が炎のような熱い何かを吹き込んだ。

 

「……全く、大華帝国の皇帝様が護衛もつけずに何やってんだか」

 

「ご、ごめんなさい……で、でも! りょーちゃんが心配で。

 凄く怖い人達に狙われてて、それでも戦いに行くって聞いて、じっとしてられなくて!」

 

「そこをじっとしてるのが皇帝のお仕事だろうに……

 でも……やる気は出た、力が沸いてきた」

 

呂布が方天画戟を握りしめる。

今の自分ならば、今までの2倍……いや、10倍の力が出せるような気がした。

 

「守りに入ったらジリ貧……ならば攻めるまでっ!!」

 

今度は呂布がランスロット達2人に飛び掛かる。

まるで暴風雨の如く方天画戟を振り回し、何度も何度もランスロット達の剣に叩きつける。

 

「くぅ……」

 

ランスロットはある程度余裕を持って防いでいたが、ランスロット似の男は額に脂汗を浮かべながら辛うじて凌いている様子だ。

5回、10回、20回と、何度も何度も剣と方天画戟がぶつかり合い、火花を散らす。

 

それはいわば無呼吸連打のような無理矢理の攻撃、傍から見れば無為無策、破れかぶれの突撃特攻に見える攻撃だった。

 

しかし……

 

「なにぃっ!?」

 

……しかし、それが単なる無為無策ではない事が証明されるまで、そう長くはかからなかった。

ランスロット似の男が使っていた長剣が、長く続いた猛ラッシュに耐えかねて、へし折れてしまったのだ。

 

「ああ、やっぱり思った通りだ。

 あんた普段は、アロンダイトみたいな壊れにくい武器を使ってるんじゃないか?

 あんたが思ってるより、長剣ってのは折れやすいんだよ」

 

当然、剣が折れた瞬間に生じた隙を呂布は見逃さない。

素早く右の方天画戟を逆手持ち替え……柄の部分で男の顔面を全力でぶん殴った。

 

「おらあぁっ!!」

 

「ぐおぉっ!?」

 

男の鼻がひしゃげ、鮮血をまき散らしながら吹っ飛んだ。

ランスロットがすぐさま呂布に斬りかかり、それ以上の追撃を妨げたが、しばらくは1対1を余儀なくされる。

 

魔法剣アロンダイトと二振りの方天画戟が先ほど以上の速度と鋭さでぶつかり合う。

その技の冴えは……全くの互角だ。

 

だが……

 

「い、いけない……このままじゃ呂布が……」

 

チハヤが歯を食いしばり、死ぬ気になって立ち上がる。

腕も足も震え、まともに歩く事も困難だったが、これ以上見ているだけではいられなかった。

 

技の冴えは全くの互角……だが、この戦いにおいて呂布が不利な点が2つあった。

 

1つは最初の攻防での消耗だ。

2対1で切り結んでいる間、ランスロットは殆ど無傷に近いのに対し、呂布は決して軽くない切り傷が10も20も刻まれている。

既に周囲は呂布が流した血で真っ赤に染まっており、失血による体力の消耗は無視できない。

それにランスロット似の男を排除するために無理矢理攻勢に転じたため、呂布の方は若干息切れの様子もあった。

 

もう1つは武器破壊だ。

呂布が持っている方天画戟は、大華帝国の中でも有数の武器職人が打った一点物の武具である。

そこいらの雑兵が持っている武具とは雲泥の差と言って良い程であるが、それでも戦いの中で少しずつ摩耗していくのは避けられない。

 

一方、ランスロットの持つ魔法剣アロンダイトは『壊れない剣』だ。

どれだけ雑に、どれだけ乱暴に取り扱っても折れるどころか刃こぼれ一つしない魔法の剣である。

 

だから当然、呂布は武器破壊を気にしながら戦って、ランスロットは武器破壊を一切気にせず戦っている。

単純な武術の腕が同等であれば、使っている武器の差がモノを言う。

その大きな大きな差は、始皇帝の声援程度でひっくり返る程甘くはない。

 

「りょーちゃん! 頑張って! 負けないで!」

 

しかし、始皇帝は喉を枯らさんばかりに声を張り上げ、呂布に声援を送り続けていた。

 

「全く、負けられないねぇ……」

 

しかし、呂布はどれ程まで傷ついてもなお、諦めなかった。

どれだけ傷つこうが、どれだけ血を流そうが、どれだけ劣勢になろうが……それでも、呂布は方天画戟を振るい続ける。

 

何度も何度も何度も何度も振るい続ける……

 

「(ずっと考えていた……この世界は邪神ニャルラトホテプが作ったゲーム盤で、

 英雄英傑はゲームの駒、精巧にできた模造品だとしたら……)」

 

何度も何度も何度も何度も振るい続ける……

 

「(ゲームの駒に過ぎないあたし達が、

 創造神であるニャルラトホテプを倒せたのだから。……)」

 

何度も何度も何度も何度も振るい続ける……

 

「(『壊れない剣』を壊す事だって……きっと……)」

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……そしてその瞬間は唐突に訪れた。

 

バキィンッ!! という音が響き、呂布の方天画戟とランスロットのアロンダイトが同時に折れた。

 

「………………え?」

 

その時、初めてランスロットの顔から余裕の笑みが消えた。

もしかしたら、初めて見るかもしれない、本気の驚きの顔が確かに見えた。

 

「ぐあああぁぁぁっ!!」

 

次の瞬間、断末魔の叫び声が周囲に響き、呂布とランスロットの手が止まる。

見れば先ほど政宗を犯していたランスロット似の男の胴体が真横に裂け、輪切りになって地面に転がっていた。

 

「え? う、嘘……なんで……」

 

ランスロットは信じられないといった様子で呆然としていた。

チハヤ達の目の前で、ランスロットに似た男の全身が光の粒子のようになって砕け、解け、消失していく。

 

「どうやら俺は……最後の最後までしくじり続きだったらしい……な……」

 

ランスロット似の男は、どこか虚ろな表情で、自分自身を笑うように息を吐く。

 

「お前は……しくじるなよ……」

 

ランスロット似の男はそれだけ言い残すと、消滅した。

まるで最初からいなかったかのように、血痕一つ、髪の毛一本、肉片一つ残さずに消え去った。

 

「違う、こんなの嘘……こんなの無い……信じない、信じられない……信じたくない……」

 

ランスロットは呆然とした様子で顔を伏せ、ぶつぶつと独り言をつぶやいていた。

今ブン殴れば簡単に勝てるかなと思いつつ、呂布は空気を読んでしばらく様子見だ。

 

「お館様ぁっ! 一大事でありますぅっ!!」

 

どうしたものかと呂布が迷っている内に、伊能忠敬がチハヤ達の私室へ飛び込んできた。

 

「今連絡があったであります! 太公望殿の意識が戻ったでありますぅっ!!」

 

そんな大きな声を耳にしたためか、先ほどからずっと倒れたままだった伊達政宗もカッと目を見開いた。

 

「復活のそれがあぁーしっ!!」

 

起床時の謎台詞としては比較的おとなしい方である。

まるで生まれたての小鹿の如くぷるぷると震えていたチハヤは、最愛の姉兼妻の復活に安どして崩れ落ちた。

気力と根性で無理矢理立ち上がっただけで、まだ痺れ薬の影響は強かった。

 

「どうした弟よ! 立ち眩みか!?

 いやそれよりも、さっき弟に抱かれていたら弟ではなかったという衝撃的な夢を……

 って何だこの状況は!? どうしてそこら中血まみれなのだっ!?」

 

「お、御屋形様どんな状況でありますか!? 敵襲でありますか!?

 田村麻呂殿が不在だというのにっ!」

 

なお、田村麻呂不在の理由はインドでエクターと追いかけっこである。

どう状況を説明しようかと悩むあまり、チハヤはこのまま気絶した振りをしてしまおうかと一瞬迷った。

 

「な、なんで……嘘、何かの間違い……こんなのありえない、信じない……」

 

一方ランスロットは完全に戦意を喪失し、その場でぺたりと尻もちをついてしまった。

 

呂布の方はと言えば、右の方天画戟は先ほどポッキリと折れ、左も今にも砕けそうな程にボロボロで、とても戦いに使えそうな状態ではなかった。

だから呂布は左の方天画戟もその辺にぽいっと投げ捨て……

 

「……立ちな、最後はお互い素手と素手、殴りあって最後まで立ってた方の勝ちだ」

 

呂布がそう宣言する。

 

アロンダイトは折れたとはいえ、ランスロットの手甲には手裏剣、マキビシ、フックロープといった暗器の類が多数仕込まれている。

普通に考えれば素手の殴り合いに付き合う必要は無いし、方天画戟を喪った呂布相手ならいくらでも料理できる。

 

だが……ランスロットは立たない、立てない。

 

「違……違う、こんなの……私……私は……」

 

何か虚ろな瞳で虚空を見つめ、ぶつぶつと独り言を呟くばかりであった。

呂布はこんな状態のランスロットを殴って良いものかどうか10秒ぐらい考えて……

 

「……おらぁっ!!」

 

……とりあえず右ストレートを顔面に叩きこんだ。

 

素手とはいえ、飛将軍・呂布の全力の一撃だ。

体重の軽いランスロットは木の葉のように吹っ飛んで壁に衝突した。

 

ランスロットは倒れこんだまま動かない……いや、動けない。

呂布はもう2~3発殴るか、このまま勝利宣言するか迷い始める。

 

「……ランスロット、聞こえますか?」

 

そんな中……チハヤの私室においてある、緊急連絡用の通信石から声がした。

そのいまいち危機感というか緊張感の無い声は他でもない、ブリタニアの国王・アーサーの声だ。

 

「あ、アーサー様……ご、ごめんなさい……わ、私は……ま……」

 

「倒れたら立ってください、ランスロット」

 

自分は負けたと報告しようとしたランスロットを遮り、アーサーからの下知があった。

 

「剣が折れるのは良いです、倒れるのも良いです、負けたって良いんです。

 でも、倒れ続けてはいけません。

 倒れても倒れても、負けても負けても、それでも立ち上がって戦うのが騎士でしょう。

 折れたら折れっぱなし、倒れたら倒れっぱなしの人が、

 貴女がなりたがっていた立派な騎士なのですか?

 そんな人が、アーサーが円卓の騎士に相応しいと認めたサー・ランスロットなのですか?」

 

一瞬、チハヤは誰の声だと思ってしまった。

通信石から聞こえてきた声は、言葉は、普段のぽわぽわとした彼女の声とは、普段のふわふわとした言葉とは違って聞こえた。

一つの国を背負う、国王の声のように聞こえた。

 

ランスロットはその声、その言葉を聞き……立ち上がった、震えながら。

 

「た……立ちましたよ、アーサー様……」

 

その表情には余裕の色が全くなかった。

青ざめていて、震えていて、恐怖とか混乱とか後悔とかといった負の感情で一杯だという事が誰の目からも明らかだった。

 

「では戦ってください。 戦い方は任せます」

 

「なら……それなら……」

 

ランスロットは呂布の目の前で、暗器満載の手甲を捨て、ボクシングのように拳を構えた。

 

「……素手でブン殴ります。

 ブン殴って張り倒して、ランスロットが最強だって所を見せつけてきます」

 

ランスロットの声は震えたままだ。

脚も腕も震えていた。

しかし……震えながらもランスロットは立った。

震えながらも、ランスロットは拳を構え、戦う意思を見せたのだ。

 

「そうでなくちゃあ面白く無いっ!!」

 

呂布が吠える。

そしてブン殴る。

 

「まだ……まだ負けない! まだ負けてない!」

 

ランスロットもまた吠える。

萎えかけて、折れかけた闘志を必死に奮い立たせて殴り返す。

 

「うおおおおぉぉぉっ!!」

 

呂布が殴る。

呂布が殴る。

呂布が殴る。

 

「うわあああぁぁぁっ!!」

 

ランスロットが殴る。

ランスロットが殴る。

ランスロットが殴る。

 

すぐに2人とも痣だらけになる。

特に全身切り傷だらけの呂布は出血もあってあっという間にふらふらになる。

 

それでもなお、呂布は殴るのをやめない。

そしてランスロットも戦いを止めない。

 

殴る殴る殴る殴る。

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

無限に続くかと思った殴り合いだが、当然、人間の気力も体力は有限だ。

どちらかの体力が尽きるか、戦意が萎えて戦いは終わる。

 

その結果は……

 

 

 

 

 

「人類最強はぁ! この呂布だあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 

 

 

 

最後まで立っていたのは呂奉先だった。

再び倒れ伏したランスロットの前で、始皇帝の前で、チハヤ達の前で、高らかに最強宣言を行った。

 

……

 

…………

 

………………

 

顛末は、チハヤが思っていたよりも静かで、穏やかなものだった。

チハヤは正直、もっと修羅場修羅場するかと思っていた。

 

呂布は勝利宣言の直後、始皇帝に対し24時間耐久土下座を敢行。

開始10秒で始皇帝が折れて……元々対して怒っていなかったというか、怒りよりも先に唐突に奇行に走った呂布を心配する気持ちの方が強かったため、呂布は笑える程あっさりと許されて、笑える程あっさりと大華帝国の将軍に復職した。

 

『思いつめる前に、相談して』

たった一つ、それだけが始皇帝の出した許すための条件だった。

 

呂布にしこたまブン殴られて失神していたランスロットは20~30分後に目を覚ました。

目を覚ましていたのだが……チハヤ達がそれに気づくにこっそりと退散していたため、周囲の者にとってはいつの間にかいなくなっていたという状態になった。

 

退散する前に、ランスロットは正妻証明書(伊達政宗作成)を返上していった。

正妻証明書と共にその場に残されていた離縁状には簡潔に『離婚します』とだけ記されていて、チハヤ達は離婚を望む理由も、今回こんな事をしでかした理由も全く分からないままだ。

 

「あばばばばばば……」

 

太公望ならば何か分かるかもと離縁状を見せに行ったところ、頭を抱えながらガタガタと震えだして話にならなかった。

 

「離縁状……離縁状……紂王様に処刑されかかって命からがら逃げだして、

 ようやく家に帰ってきたら第一声が『離縁状を書け』……

 子供どころか一回も同衾も無し、デートどころか手すらも繋がず、

 夫婦らしいことなんて一回もできずに書かされる離縁状……

 そして始まる一人ぼっちの逃避行……」

 

「た、太公望……あの、ちょっと……」

 

「かと思ったら戦争中のクッソ忙しい時にノコノコやってきて

 復縁しようってしつこく詰め寄ってくるし、

 断ったら断ったでロミオとジュリエットよりもメルヘンチックな手紙を

 延々と送りつけてくるし家とか職場にまで追いかけてくるし……」

 

「(どうやら太公望は離縁状に何かしらのトラウマがあるみたいだ……)」

 

結局、太公望が正気に戻るまでかなりの時間が必要になり、正気に戻った後もたいした情報は得られなかった。

 

……

 

…………

 

………………

 

ブリタニアのキャメロットにて、モードレッドは一人静かに政務に勤しんでいた。

他の円卓の騎士共は地味で地道な作業が苦手な者が殆どで、こういう仕事は大体モードレッドが処理する事になっていた。

 

そんな時、ランスロットからギリワン真拳奥義・ギリワンテレパシーが飛んでくる。

 

「(モードレッドさん~、そっちはど~ですか~?)」

 

「え、ランスロット!?

 ギャグシーンだからって脳内に直接話しかけないでって前にも言ったわよね!

 ……じゃなくてっ! 今どこにいるのよ!? みんな探してるのよ!」

 

「(傷心旅行中です~、ちょっと離婚しちゃったので~)」

 

「え、離婚!? 貴女とうとうジパング王に愛想尽かされたの!?

 何をやったか言いなさい、事情によっては私も一緒に謝ってあげるから」

 

「(いえこっちから離縁状を出したんですけど~)」

 

「貴女ねぇ、キリスト教圏じゃ離婚はタブーだって事理解してるの……」

 

「(それは立派な騎士になるために必要な知識なのでしょうか~?)」

 

「むしろ何で不要だと思ったのよっ!?」

 

「(見事なツッコミ力だと感心しますが~、どこもおかしくないですね~)」

 

「はぁ……まあ良いわ、いつ戻ってくるの?」

 

「(次のお給料日までには~)」

 

「無断欠勤する人にはお給料もありません」

 

「(そこは空気を読んで代返しておいてくださいよ~)」

 

「できる訳ないでしょうがっ! 貴女円卓の騎士を何だと思ってるの!?」

 

「(変人奇人の集まりです)」

 

「……あながち否定できない所が怖いわね」

 

「(でも今はそんな事はどうでもいいですよ~。 重要なことじゃないので~)」

 

「何よ? 私をからかう以外に用事でもあるの?」

 

「(私ちょ~っと派手にしくじってしまいました~)」

 

「あらそう、それで?」

 

「(後はよろしくお願いしますね~)」

 

「…………………」

 

モードレッドはしばらくの間無言になる。

そして……

 

「(分かったわ、後は私がやる)」

 

……ランスロットにギリワンテレパシーを送った。

 

 




(作者より)
『第二回人気投票が開催されたら続きを書きます。』とキッパリ言ったばかりなのに……スマンありゃウソだった。
気が向いたら続きを書きます。
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