皇帝、あんたは何者!?
タイガside
兵士達の調練を終えた俺やアリシア、マイア姉は残って3人で実戦形式の練習試合を行っていた。
ルールとしては、マイア姉とアリシアの2人で俺に攻撃を仕掛けて、俺が迎え撃つという物だったが2人とも長時間セックスしたからなのか身体能力も、剣の腕も、かなり強くなり、恐らく実力が高かったことから能力や覇気にも覚醒していった。
何か、俺って抱くだけで相手強くするって何なのだろうか、と考えてしまう。
けどまぁ、少なからず役に立てるのなら嬉しいがな。
「たっだいま〜〜!!」
「ただいま戻りました。」
どうやら、テュルルに行っていたルー・ルーと、フクスヴァルトに行っていたカグヤが帰ってきたらしい。
「あ、ルー・ルー、カグヤ。お疲れさん。
テュルルやフクスヴァルトはどうだった?」
「もう疲れたよ〜〜!メル・メルに泣きつかれちゃってさぁ!
けど、約束取り付けて4日後にはここに来れるって!」
「フクスヴァルトの方も復興が進んでいて、今の所は問題ないそうです。あと、明日にはこのアウレリアに到着するとの事です。
ルー・ルーさん、イリス殿に報告に行きますよ。」
カグヤとルー・ルー、付き添いの兵士たちと共にイリスに報告に行き、アリシアとプリム、マイア姉も城へと戻っていき、俺も戻ることにした。
近いうちに大きな戦争が起こる。
最近はこの国や周囲の村や小さな町なども警戒が強化されて、物々しくなってきており、簡単には出歩けなくなった。
けどまぁ、心做しかウキウキしている自分がいるんだよなぁ……鷹の団にいた頃もそうだったが、俺って戦闘狂なんだろうか?
「あ、そういえば……あのミスティオラって人は大丈夫なのか?もしオリガやクロエが来たんなら、再会できてたら良いんだが。
……考えても仕方ない、俺も戻るか。」
俺は皆の後を追って、用意された客間へと戻ったのであった……。
その数日後、神聖アウレリア王国に来訪者が訪れた。
魔術師の郷キミアから次期グランドマスターにして、代表であるアストリット・フラメル。
東国に近い狐人の里フクスヴァルト公国から公主であり、密偵集団くノ一の頭であるコハク。
そして、商業都市国家テュルルの宗主代行であり、やり手の商人であるルー・ルーと同じハーフリングの少女、メル・メル。
有力かつ実力を持った国の代表が、そして、過去から来たかつての英雄達が、まもなく一堂に会する。
ーーーーーーーーー。
その頃、アルファディオスの皇帝の部屋では、その部屋の主である皇帝が赤獅子の頭であるグレンを呼びつけていた。
そして、その話の内容にグレンは驚いていた。
「陛下、それは本当なのか!?」
「あぁ、今回の戦で総大将は俺がやることになり、そして先鋒をグレン、お前に任せることにした。
ハリベル、バラン、コク、シュタインはグレンと共に戦ってもらうように話してあるよ。
……星の力も使ってくれて構わない。」
「へへっ!そいつぁ、願ってもねぇ!
その大任、必ずや成功させます!!」
「うん!」
皇帝から戦の先鋒を命じられ、喜び頬を緩ませるグレンとそれを見て楽しげに微笑む皇帝、それを見ていたラドミラは若干退屈そうであった。
そんな中、"アウレリア王国との内通者"であり、教会の司教である女性、エレオノーラ・ベルンは内心安堵していた。
「(黒犬ではなく赤獅子が戦に。
これは大変な戦になるでしょう……。
しかし、陛下は相手を無下にはしないお方、必ずや良い方向へと事を運んでくれるはず。)」
エレオノーラは皇帝の非情すぎる面を知っているが、逆に他者や敗者をぞんざいに扱わず、人として扱う事を彼女は知っている。
困っている方には手を差し伸べ、スラムの民達からも絶大な信頼があり、何より相手を思いやれる。それが、エレオノーラの知る皇帝である。
"以前に比べて"、残酷かつ非情ではあるがそれでも他人を思いやる人物で、女帝を抑えれている人物である為に彼女は皇帝を信じている。
その手の優しさと温もりも……。
『大丈夫!?』
『だ、誰……?』
『僕は■■■■!』
かつて、乱暴に犯されて穢れてしまった自分を抱き締めて、支えてくれて、その上に教会という新しい居所をくれた彼に、エレオノーラは心から感謝している。
今は名を呼ぶことが出来ないが、それでもエレオノーラは皇帝を信じている。
「(陛下、お優しい皇帝陛下……。
反心を抱く私を、どうかお許し下さい。)」
エレオノーラが皇帝を見つめていたときであった。
「陛下!お待ち頂きたい!!」
「なんの用かな、ディレク。」
部屋に扉を乱暴に開けて入ってきたのは、ディレク・ロンドであった。
「陛下、此度の戦の先鋒……どうか我らにお任せ下さい。」
「あ?お前何言ってんだ?横から出てきて、何ナマ言ってんだ、あぁコラ?」
「黙れ、俺は陛下と話してるんだ。
お願い致します!必ずや陛下に勝利を!!
どうか、我ら黒犬にお任せ頂きたい!」
「……ふぅん?僕に勝利、ねぇ。
自分達が良い思いしたいからでしょ?
それに、こっちが何も知らないと思ってる?」
「陛下は我が忠心をお疑いですか。いささか……」
「"こんなガキに従うなんざゴメンだ"。"俺が皇帝の座に"……だったっけ?」
ディレク・ロンドは自身の心の本心を言い当てられ、流石に汗をたらりと流し、皇帝を見上げるが、そこには自分を冷めた目で見るグレンや皇帝がおり、ディレク・ロンドはすぐさま頭を下げる。
「随分とまぁ、結構失礼だったな。
そんなことを思ってたとは。」
「申し訳ございませんでした!
陛下へ無礼を働き、何より不愉快な思いをさせた事、
このディレク、心よりお詫び申し上げます!!
ですが、今回はどうかお許し下さい!!」
深く深く頭を下げたディレク・ロンド、その姿を見て、皇帝は深くため息を吐くと、彼に命じた。
「分かった。なら、今回の戦に参戦は出来るように手配はする。」
「っ!?陛下!」
「但し、命令は全てグレン達や僕の物を聞け。
勝手な事は死罪だからな。」
「……承知いたしました。」
ディレクは深く頭を下げると、皇帝は、はぁとため息を吐き、そんな彼にグレンは呆れたように話しかける。
「あのカスを本気で許すのか?
あんな裏切るのを隠してない奴に戦をさせたら、それこそどうなるか……。」
「……良いんだ。裏切ったら裏切ったで。
その時は、その時だから。」
「お~~怖っ。んじゃ俺は、用意に戻るわ。
じゃあな〜〜。」
「私も失礼いたします、今日はスラムの子達にお勉強を教えますので。」
「私も、偶には外の空気でも吸ってくるわ。」
「そうですか。では、宜しくお願いしますね。
…………っ!!」
皇帝はグレンとエレオノーラ、ラドミラが部屋から出ていくのを見送ると、身体が脱力して玉座から倒れるように滑り落ち、胸を抑えながら粗く呼吸する。
「はぁ、はぁ……頭、割れそう……!
体、痛い……!もう限界……!
早く、早く助けて……!!」
ーーーーーーーーーー。
キミア、フクスヴァルト公国、商業都市国家……その3つの国から来た3人の女性達。彼女たちは今、神聖アウレリア王国の広間にて席に着いている。
そこには、今回の戦の代表主導者である騎士、イリス・アルケーディアの姿があった。
「皆、ここにこうして集まってくれた事を心から感謝する。本来ならエルドニア王にも来てもらいたかったが、それは叶わなかった。」
「居ない者に拘っても仕方ないわ。
私達で始めましょう。」
「アストリット、ありがとう。
今回の戦……我々は"皇帝"、"女帝"、"五神将"、"黒犬"と戦う。この戦は類を見ないほどに激しいものとなるだろう。」
「それは曾祖母ちゃんから聞いたよ!それでそれで?
曾祖母ちゃんたちは?」
「儂らも巫女神カグヤから話は聞いたが、此度はその者らも参戦するのだろう。戦力は足りるのか?」
「ねぇ?曾祖母ちゃんとか巫女神カグヤとか、2人は誰のことを言っているの?」
「うむ、それについては私から話そう。
……入ってきてくれ!」
イリスが扉に向かって声を掛けると、そこからタイガ、アリシア、ルー・ルー、カグヤ、マイア、プリムが広間へと入ってきた。
5人が入ってくるのを見た後、イリスが話を続けた。
「鷹の剣士、タイガ。
姫騎士、アリシア。
華姫、プリム。
巫女神、カグヤ。
獣姫、ルー・ルー。
そして、傭兵剣士、マイア。
この5人も戦に加わる。この中でタイガ、アリシア、ルー・ルー、マイアが共に前線に立ち、カグヤ、プリムは後方を護ってくれる。
何か、気に掛かることがあれば何なりと聞いてくれ。」
イリスの言葉にアストリットは驚いたように、息を漏らしながら、タイガに語り掛ける。
「タイガ、あなた過去から来たの?
しかも、鷹の剣士って……まさか天鷹の団長?」
「まぁそうなんだけど……それについては後で話す。」
「そう、過去から来た英傑達、そして私達の集めてきた軍……それらを合わせれば勝ち目はあるでしょうけど、問題は"皇帝"と"女帝"なのではない?
特に女帝と下手に対峙すれば"魅了"の力で台無しになるわ。」
「確かに、あやつの力は恐ろしい。それに皇帝も側にいる……儂の弟を助けようにもこれでは。」
「確かに"皇帝"などの存在を除けば、あの女帝の力は厄介だ。だが、策はある。
……セラフィーナ様。」
イリスが女神像のある噴水に向かって声を掛けると、そこから光に包まれて、裸のエルフの女性、セラフィーナ・レナトゥースが姿を現し、全員が息を飲む。
特にセラフィーナを知らないタイガ以外の面々、セレスティンに似ている彼女に驚く。
「かの女帝、ティーフリングの存在と力は世界の均衡を崩す物。ですが必ず私が、神の魂を受け継ぐ者として、女帝の力を浄化します。
その為にどうか、皆様の力をお貸しください。」
「まさか、神の御業で世界を救うとされたエンシェント・ハイエルフ、あの"女神"セレスティン・ルクルスの再来と言われた存在をこの目で見るとは……。」
「もうこうなったら勝ちも決まったようなもんじゃん!!もったいぶっちゃって〜〜!このこの〜〜!」
セラフィーナの姿と言葉を聞いたアストリットとメル・メルは勝ちを確信しているが、過去から来た面々、特にタイガとアリシアは疑問に思っていた。
何故そこまでの事が言えるのか、その自信は本物なのか、女神セレスティンの再来と言われる由縁は何なのか……。
2人はそれが気掛かりであった。
そんな中でコハクがさらなる疑問を口にする。
「女帝の対策は分かった。だが、敵の情報はどうする?
儂らくノ一でもあの国は深くは探れん。
何より、皇帝の"相手の心と未来を視る力"の前では容易には行かぬ。」
「そんな力があるのか?」
「あぁ、どんな戦でも奴はそれで勝利を手にしている。生半可では勝てぬ。」
ここでタイガは再び疑問を抱いた。
相手の心と未来を視る力、それは恐らく見聞色の覇気に似た物であると、それがどんなものなのかはわからないが、タイガはますます皇帝に疑問を抱いた。
「タイガ殿、コハク、安心してくれ。
かの国にも我らに賛同してくれる者が居るのだ。」
「?どんな奴なわけ?信用出来んの?」
「あぁマイア殿、我らに情報を教えてくれる者、それはアルファディオスの教会の司教、エレオノーラ殿だ。
彼女が多くの情報を伝えてくれているのだ。」
「まさか、教会の司教が?役に立つわけ?
皇帝ってのと裏で繋がってんじゃない?」
「それはないと言える。彼女は腐敗したきの中で、かなりの地位にいる。
何より皇帝は彼女に全幅の信頼を寄せている。」
イリスの言葉にマイアは、ふぅん、とだけ言うと黙った。
「あの国にまさか、そのような勇士がいようとはな。
イリスよ、話してくれた事、感謝する。
細かいことが気になってしまうので、ついな。」
「いや、貴女のような存在は寧ろありがたい!
これからも何かあれば伝えてほしい!」
広間が和やかな雰囲気に包まれた、その時であった。
「伝令!伝令!!会議中申し訳ございません!
緊急の事にて失礼いたします!!」
「なんかあったのか?」
「はっ!!それが……先程アルファディオス皇帝が、黒犬騎士団の処刑を決定したとの事!!」
「な、なんだと!!?」