あと、次で新章入ります。
蹂躙国家と恐れられたアルファディオスから出てきた女司教エレオノーラ・ベルン、彼女は巨大な大蛇に襲われた事と長旅からの疲れ、そして、神聖アウレリア王国に辿り着いた事に安堵したからなのか気絶してしまった。
彼女はイリスが用意した部屋に運ばれ、そこで休まされていた。そんな彼女も2日後には目を覚まし、神聖同盟の面々に礼を言うと、大切な話があると言って一同を広間に集めた。
「皆様、集まってくださりありがとうございます。
改めまして、私はエレオノーラ・ベルン、アルファディオスにて司教をしておりました。」
「うむ、エレオノーラ殿こそよくぞ無事であったな。みな、自己紹介を。」
「キミアのアストリットよ。宜しくね。」
「メル・メルだよ!」
「公主コハクじゃ。」
「アリシア・アルクトゥールスだ。宜しく頼む。」
「プリム・フィオリーレです。」
「カグヤと申します。」
「ボクはルー・ルー!宜しくね!」
「マイアだ、宜しく。」
「タイガ・レーヴァンタインだ。無事だったようでよかったよ。」
「皆様、宜しくお願い致します。それと、タイガ殿、助けて頂き感謝します。
(やはり、どことなく陛下に似ています。まるで生き写しのような……。)」
「あの、何か俺の顔に付いてます?」
顔をじっと見られた事でタイガが首を傾げながら恐る恐る訪ねると、エレオノーラはハッとなって口元を押さえる。
「ごめんなさい、あなたが陛下に似ていた物で。」
「陛下って皇帝に?」
「はい、何と言うか顔付きや雰囲気が似ていたので……。」
エレオノーラの言葉に全員がタイガを見るが、等の本人は腕を組み考え込んでいたが、その中でイリスがエレオノーラに歩み寄った。
「エレオノーラ殿、実はその皇帝の事で話があるのだ。話してもらえるか?」
「……分かりました。私から陛下についての事をお話します。
私の知る陛下についての話を。」
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司教エレオノーラから神聖同盟にもたらした物は、信じられる物ではなかった。
まず驚いたのが皇帝という存在の人柄であったが、それはタイガ達がフクスヴァルト公国で聞いた物とは異なり、非常に優しく理想を持ち、その理想の為に努力を怠らない人物であり、民思いであると言うことである。
しかし何時からか冷酷で非情な面を見せるようになり、そこから陛下が可笑しくなったらしく、全員が皇帝の変貌ぶりに驚いていた。
「いやあのさ、そんなに人格って変わるもん?
優しくて、努力家で、民思いな奴が冷酷非情な奴になるなんて。」
「確かに、普通では考えられないな。」
「何か、理由が有ったのでしょうか。」
「そうね、だとしても皇帝のしてきた事は覆せないわ。
いくつもの国があの男によって滅ぼされたのだもの。」
マイア、アリシア、プリム、アストリットの言葉に一同が腕を組んで考え込む中、タイガは皇帝の事が気になっていた。
「(皇帝が俺に似ていた?どういう事だ?しかも人格が突然変わる?まさか、破戒者か?
いや、破戒者なら飛鳥が教えてくれるだろうし。)」
そんな事を考えていると、突然エレオノーラがイリスに向かって頭を下げた。
「イリス殿、無礼を承知でお願い致します。どうか陛下と会談の場を設け、話し合いをして欲しいのです。陛下はこの大陸を豊かにし、民の笑顔を望んだお方……そんな陛下が非情になられたのは何か理由があるかと。
お願い致します!皆さん、今なら戦をせずに済みます!どうか!!」
床に頭を擦り付けるように土下座をして来るエレオノーラ、そんな彼女に神聖同盟はどうすべきか顔を見合わせていく。
エレオノーラの話が本当だとすれば、皇帝は悪人ではなく善人であり、民のために努力を怠らない人物、そんな彼が何故恐れられたのか分からない今、戦を起こすのは愚行であると皆が考えていた。
その時だった、タイガは広間の入り口の方から気配を感じて振り向く。
『マスター、誰か来るわ。』
「(だな。)」
「タイガ、どうした?」
アリシアが訪ねると、タイガは2刀に手を掛け、アリシアもプリムを守るように立つ。
「……お客さんみたいだぞ。」
「客?こんな時に客だなんて、兵達は何を……!?」
イリスが扉を開くと、そこから入ってきたのはタイガが魔術師の郷であるキミアで対戦した男、シュタインであった。
「あいつは!?」
「兄さん!?」
「「「「「兄さん?」」」」」
「アストリットの兄貴らしいんだが、ちょっと前にやりあったんだ。
……お前、ここへ何しに来た?」
「そう警戒するな、挨拶だ。」
「挨拶、だと!?兵達はどうした!?」
「眠らせた。別にやり合う気はない、挨拶に来ただけだ。
……改めて自己紹介だ、俺は“魔羯”のシュタイン。アストリットとタイガは知ってるだろうが、今は皇帝陛下の下で“理想郷”を目指して戦っている。」
「理想郷?一応聞くが、どんな理想郷なんだ?」
「決まってるだろ……力ある者が上に立つ世界だよ。
血筋でも、コネでも、身分でも、産まれた家柄でもない。強者だけが生きる世界だ!!
弱者はその強者達の為だけに働き、生きる世界、そこには生まれも家柄もない。
皇帝陛下はそんな世界を造ると言っていた。」
「そんな!?民は、民はどうなるのですか!?
そのような国になれば、民は!?」
エレオノーラの言葉にシュタインは首を傾げる。
「民は、陛下の采配でそのまま暮らす。だがまぁ、搾取はされるがな。」
「そんな……!?」
「おい、お前は……お前ら五神将は何で皇帝に従うんだ?
まさか、金でも掴まされたか?」
タイガの質問に目を丸くするシュタインだったが、頭を抱えて笑いだした。
「くっ、くくくくっ、あはははっ!ずいぶんずれた事を聞くものだなぁ?
あいにくとそんな安く薄い物じゃない。俺は陛下に命を救われ、真理を見せてもらったのさ。」
「真理?何それ、なんか幻覚でも見せられた訳?」
「いや、幻覚じゃない。この“世界”は“無数にある世界の内の一つに過ぎない”。
そんな小さな世界の、寂れた郷で分かりもしない真理を探るよりも、陛下に見せられた世界のほうが余程煌めいていた。」
「(他の世界、異世界を見せた?そんな力を皇帝が?)」
皇帝について考えていると、シュタインは入ってきた入り口に向かう。
「まぁここで、これ以上話す気はない。俺は帰る。
……あぁ、エレオノーラさん。陛下から伝言、“うっとおしいから死ね”だとよ。」
「っ!!?そんな……陛下。」
皇帝からの言葉に泣き崩れるエレオノーラを近くにいたアストリットが抱き止める。
そして、シュタイン、皇帝の言葉に怒りを覚えたアリシアとイリスが剣を抜き、切っ先を向ける。
「貴様!!例えどんな理由があろうと、その言葉は許せん!!」
「あぁ!エレオノーラ殿が皇帝をどれだけ!!」
「知るか、文句なら陛下に言え。あと、一応伝えておいてやるよ。陛下は12の星を使う。
戦場には、“獅子”のグレン、“金牛”のバラン、“宝瓶”のハリベル、“魔羯”の俺、“巨蟹”のコクの軍が出る。それを指揮する俺ら全員が星持ちだ。
そして、陛下は“白羊”、“双魚”、“天秤”、“双子“、“天蠍”、そして魔星の力を持ってる。俺ら5人を倒しても、実質勝ち目はないと思うが……やる気なら掛かってきな。では。」
シュタインはそれだけ言うと、部屋を出ていった。
「嘘、でしょ?星の力、あのハリベルって女が見せたけど、あんなの化け物みたいなのが5人もいて、さらに皇帝は6つも持ってる!?」
「星の力、一つあるだけで戦場を掌握する力……か。それを皇帝は6つ所有している。
……勝ち目が薄くなりそうだ。」
「五神将を突破して、さらに皇帝と女帝に迫っても、皇帝に確実に殺られる……厄介ね。」
周囲が意気消沈する中、マイアがため息を吐く。
「あのさぁ、あんたらなんで落ち込んでるわけ?まだ負けてもないのに。」
「し、しかしマイア殿。敵は未知の力を持っているのだぞ!?
それなのに、我々に勝ち目があるとは。」
「だからなに?戦なんて予想外が起きて当たり前でしょ。ていうか、そんなの戦になれば起こるっての。タイガもそう思うでしょ?」
「まぁね、戦なんて予想外、予定外が当たり前。それなのに騒いでたらキリがない。
それに、俺は皇帝が本当に悪人なのか会ってみたくなった。
この戦、何がなんでもやるぜ!」
タイガの言葉にアリシアは頭を押さえてため息を吐く。
「はぁ、全く……タイガは無茶苦茶な事を言うものだ。だが、ここで退けば、皇帝はこの大陸を侵略する。そうなれば、犠牲も増えるだろう。」
「こうなればやるしかありません。」
「そうだよ!ここで逃げたら恥って感じだもん!!」
「わ、私も精一杯逃げないようにします!」
アリシア、カグヤ、ルー・ルー、プリムがそう言うと、アストリットもやれやれといった感じで立ち上がる。
「過去から来た人達がやる気なのに、私達が下がったら格好悪いわね。
次期グランドマスターとして、私も戦うわ。」
「曾祖母ちゃんがやるならボクもやる!!」
「儂も戦おう。必ず弟を助け出す。」
「皆……そうだな。敵が強大であろうと、我らは戦う!!そして、この大陸に平穏と安寧をもたらす!!皆、勝つぞ!!!」
「「「「「「「「「オオォォォォォォォォッ!!」」」」」」」」」
皆が武器や手を上に挙げて誓いを立て、アルファディオスの皇帝、女帝を倒すために立ち上がったのであった……。
◆◆◆◆◆◆
その頃、アルファディオス皇帝の部屋、そこでは主である皇帝?が玉座に座っており、天井を見上げながら、ため息を吐いた。
「“射手”と“乙女”が消えたか……。まぁいい、あの二つが無くても此方には“俺”を含めた11の星がある。それに、過去から来たといっても所詮は人間とかの集まり、勝てやしない。
あぁ~~早く、連中の絶望する顔がみたいなぁ。」
口元を怪しく歪め、そう言いながら嗤う皇帝?その背には禍々しいオーラが浮かんでおり、そこには無数の黒い蛇がおり、その一匹の頭を撫でる。
「あぁ、分かってるよ。早く食べたいんだろ?大丈夫、お前の大好きな魂……沢山食べさせてやるからな。しかしまさか、黒犬の連中の魂を食っても足りないとはなぁ、この大食らいめ。
だがまぁ、砂漠の国……エルドニアだったか。あの国はぁ……ついでで良いか、目ぼしい物もないし、魂も不味そうだし。」
シャアァァァッと頭を撫でているのとは違う蛇がすり寄ってくる。それを撫でると、蛇同士が喧嘩しそうになるが、それすらも楽しげに見ていた。
「早く戦にならないかなぁ……。」
楽しそうに嗤う皇帝?
その笑みは酷く歪んでいたが、それは誰にも分からなかった。
その頃砂漠の国、エルドニアでは……とある騒動が起きていた。
それは、現エルドニア王が何者かに半殺しにされ投獄されたのであったが、それが神聖同盟やアルファディオスに届くのは、まだ先であった……。
戦が始まる。
感想等あれば下さい。