※この作品はR-18です。

黒獣~転生戦記~   作:ボルボロックス

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04 動く異端

重苦しい威圧感と障気に包まれた黒犬傭兵団の根城となっている黒の城。

 

 

その玉座の間では今、黒犬傭兵団の隊長であるヴォルトが不機嫌な様子で自身の座る豪勢な椅子に肘を付いて歯軋りをしていた。

 

 

そんな中、1人の優男のような青年がヴォルトに近付いた。

 

 

「ヴォルト様、その被害「今話し掛けるな!俺は気が立ってるんだ!!?分からねぇのか!?」っ……分かりました、失礼します。」

 

 

メガネをかけた優男のような青年であり、黒犬傭兵団の軍師であるキーンは、一礼するとその場から離れた。

 

 

「くそっ……くそくそくそ……!クソガァァァ!」

 

 

ヴォルトは立ち上がると、けたたましく吠えながら玉座を蹴り、剣を抜いて滅多矢鱈に振り回す。

 

 

彼は自分より年下のタイガによって自分達が捕らえた筈のオリガ、クロエ、プリムが助け出され、さらに内通に利用していたベアズリー、モルデラッタ兄弟やオーガ達が死体として見つかり、あまつさえ自分も何も出来ずに敗北した。

 

 

捕虜を救い出され、内通者を失い、さらには落とせると踏んでいた1の砦、2の砦の2つの砦を奪えずにいた。

 

 

さらに連続で敗北を味わい、自分の顔に泥を塗られた事、そして、ここまでの屈辱を味わわされた事がとてつもなく腹立たしかったのだ。

 

 

ヴォルトは、荒れに荒れに今では以前は浮かべていた笑みは見られず、下手に何か言えば部下ですら切り殺し兼ねない様子である。

 

 

ヴォルトは、その玉座に向かって苛立ちをぶつけるように思い切り何度も蹴りつけた。

 

 

「くそっ!!本来なら今頃は奉仕国家を建国している筈のモノを、何でこんな事になってんだ!?くそ!くそ!くそ!」

 

 

「(だが、まだ負けじゃない。俺にはまだ幾つも策がある。それを使えば、まだ盛り返せる!)」

 

 

怒りに任せて暴れていたヴォルト、しかし、頭にはまだ敗北していないと自分に言い聞かせ、さらに頭の中で多くの策を練りながら、心の中で考えながら腹の中で笑うのであった……。

 

 

~~~。

 

 

一方、クロエ、オリガとの初夜を過ごした翌日、タイガは少々遅れて目を覚まし、水場に顔を洗いに行った。あの後もタイガとオリガは行為を続け、その後目覚めたクロエも交えて、貪るように行為をし、3人とも汗だくになるほどまで続けたのだった。

 

 

水の浄化魔法3人とも身体を綺麗にし終えた後、それぞれが自分の部屋に帰り、タイガも執務室に向かい、今日の分の政務をすることにした。

 

 

すると、扉がノックされ、1人の女性騎士が書簡を持って入ってきた。

 

 

「タイガ様、お仕事中失礼致します。」

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

「先程セレスティン様より各砦の守護についている者達に招集を掛けられました。すぐに来るようにとの事です。」

 

 

「分かりました。ありがとうございます。」

 

 

タイガはそう言うと、女性騎士は一礼して部屋を出ていくと自分も軽く書簡を片付けてから、出掛ける用意をした。

 

 

そして、馬小屋に行くと馬に乗り、数人の兵を連れて白の城へと向かう。そしてしばらくして白の城に到着し馬を降りる。

 

 

すると一台の馬車が後に到着し、そこからアリシアとプリムが降りてきた。

 

 

「おはよう、タイガ。」

 

 

「た、タイガさん……おはようございます。」

 

 

「おう、おはよう。アリシア、プリム。お前達にも来たのか?例のセレスティン様からの招集。」

 

 

「あぁ、お前にも来たようだな。」

 

 

「まぁな。んじゃ行きますか。」

 

 

「あぁ/……はい。」

 

 

3人が一緒に白の城へ入り、場内を進んでいくと赤毛のショートヘアーの女性が見えた。

 

 

その女性は3人に気付いた。

 

 

「あれ、お姫さん達に……タイガ!?」

 

 

「マイア姉!?久しぶり!」

 

 

タイガは赤毛の女性に近付くと、互いに握手を交わす。

 

 

彼女の名はマイア。

 

 

タイガが流浪の旅をしている時に、彼を一時世話していた人物であった。特定の誰かに着くということはせず、色々な地に行き、自由に生きている。

 

 

マイア自身もタイガを弟のように思っており、面倒を見ていた。

 

 

親しげに挨拶をする2人に、アリシアは質問をした。

 

 

「すまないが、2人は知り合いなのか?」

 

 

「あぁ。マイア姉には、子供の頃に世話になったんだ。色々な事を教えて貰ったんだ。」

 

 

「な~にが教えてもらった、よ。こいつってばちっこい癖に戦慣れしてんだもん。末恐ろしかったわ。」

 

 

呆れながらも楽しげにそう言うマイア。その様子は弟を見る姉のようだった。

 

 

そんな様子を見たアリシアは、不思議そうに首を傾げる。

 

 

「(マイア殿は昔のタイガを知っているのか……。何故か分からないが、胸がムカムカする)」

 

 

密かにアリシアはそんな事を考えたのであった。

 

 

その後、4人は一緒に白の城にある女神ラーレンティアの像のある広間に向かうと、そこにはセレスティン、クラウディアを含めた4人の女性がいた。

 

 

その中にいた黒髪に赤い着物に下は褌という服装をしたタイガと同い年くらいの少女がタイガの方に歩み寄る。

 

 

「タイガさん、お久しぶりです。」

 

 

「カグヤ?久しぶりじゃんか。」

 

 

黒髪の少女の名はカグヤ。

 

 

かつてタイガが東方に行った際に黒鬼に捕まった所を助けた相手であり、友人となった人物である。

 

 

カムナグラという神を信仰している。

 

 

「何だいタイガ。あんた東方の巫女さんとも知り合いな訳?は~顔の広いことで。」

 

 

「子供の頃、マイア姉と会う前に行ったんだ。その時初めて東方に行って、そこで仲良くなったんだ。」

 

 

「へぇ、そうなの?あたしは行ったこと無いなぁ。」

 

 

「……東方、か。どんな所なんだ?私も話しには聞いていたが、行ったことがないんだ。」

 

 

マイア、アリシアがそれぞれの反応を示し、タイガも楽しげに笑う。

 

 

そんな中、セレスティンが微笑みながら話を始めた。

 

 

「ふふっ、皆さん。お話は後にしましょう。今は大切な話があります。」

 

 

「あ、すみません。」

 

 

タイガ達が軽く謝る。すると……。

 

 

「全くさぁ。遊びに来たんじゃないんだからね。考えてほしいよ。」

 

 

そんな声がしてその方向を向くと、そこには緑のローブと帽子を被った半裸の小さな女の子が不機嫌そうにしていた。

 

 

そんな少女に対して、タイガは近付くと在ることに気付いた。

 

 

「お前、もしかしてハーフリング?」

 

 

「そうだよ?何か文句ある?」

 

 

「いや、本で読んだことが有っただけだから本物を見るのは初めてなんだ。宜しくな。」

 

 

タイガがそう言うと、ハーフリングの少女はタイガを頭の天辺から爪先まで見下ろした。

 

 

「ふ~ん?変な奴。まぁ良いや、タイガだっけ?ボクはルー・ルー。一応は宜しくしてあげるよ。」

 

 

ツンっとした態度でそう言いながら笑う少女、ルー・ルーにタイガも笑顔で返す。

 

 

その後、セレスティン、クラウディア、アリシア、プリム、カグヤ、ルー・ルー、マイア、タイガの順で円状に席に着くと軍義が始まった。

 

 

その内容は、今後の黒犬への対応だったが多々様々な内容があったが、最終的には"警戒しつつ待機"という物になり、軍義が終わりを迎え、それぞれが各自の砦に戻る事になった。

 

 

その時、何かを思い出したセレスティンはタイガに質問を呼び止めた。

 

 

「タイガ君、ちょっと良いですか?」

 

 

「?何ですか?」

 

 

「アリシアさんと一緒にプリムさんを助けた際、何か他に誰かを助けのでは無いですか?」

 

 

セレスティンの質問にタイガは一瞬驚き目を泳がせる。

 

 

「あの……何でそんな事を?」

 

 

「タイガ君、あなたから闇に近しい気配を感じたので。それで、どうなのですか?」

 

 

セレスティンがタイガに近付き、頭から爪先まで見て改めてそう訪ねた。

 

 

「そんな事、有るわけ無いじゃないですか。気のせいですよ。」

 

 

「そうですか……分かりました。変なことを聞いてごめんなさいね。」

 

 

そう言うセレスティンに一礼すると、タイガは足早に白の城から1の砦に戻った。

 

 

 

 

一方、黒の城の一角にある部屋の一室、そこでは全身に包帯を巻いた男が一人、何かの本を読んでいた。

 

 

男の名はシャムハザ。蟲使いであり、カグヤと同じ東方の出身であり同門であったが、東方を抜け今では黒犬傭兵団に身を置いている。

 

 

しかし、前の戦、さらに最近の戦では黒犬は連敗しており、その事がヴォルトを苛つかせていた為か、先程も部下数人とオーガ2体を斬り、その事で黒犬を抜けようと考える者も出て来ていた。

 

 

「……黒犬、ヴォルトもこの程度か。やはり自分でやるしかないのか。」

 

 

そう呟くシャムハザ、そんな時背後から気配を感じ振り返ると、そこには導師服を着た青年が立っていた。

 

 

「何だお前は?」

 

 

「初めまして、東方の人。僕はキミに協力しようと思って来たんだ。」

 

 

「何だと?ヴォルトではなく、俺に?」

 

 

「うん♪あ、そうだ自己紹介しておくね。僕は月光、"黄泉閊 月光"っていうんだ。宜しくね♪」

 

 

「知らぬ名だな……貴様、いったい何が目的なんだ?」

 

 

シャムハザの問いに月光は楽しげな笑みを浮かべながら答える。

 

 

「目的なんて……そんな物はないさ。ただ、僕は面白可笑しくしたいだけさ♪あ、そうだ……ヴォルトって人いる?」

 

 

「奴に会ってどうする?」

 

 

「挨拶したいだけだよ。挨拶♪」

 

 

そう言うと月光は、部屋を鼻唄を歌いながら出ていく。

 

 

悪意が徐々に、1つの世界を蝕み始めていた……。

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