タイガ達が性交による強化を終えていたちょうど同じ時、連合からラルクことアスクレピオーズに着いた狐人族の当主のコハクは彼の前に立ち、少々怒った様子で交渉をしに来ていた。
「それで?何か用かな、狐の長よ。」
「……主が提示してきた約定通り、わしはお主らに従い協力した。なれば約定通りにしていただきたく、ここに来たのだ。」
「約定?何かしたっけ?」
「貴様っ!惚ける気か!!?我ら狐人は貴様らに協力した!それは捕虜となっている我が弟であるメノウを返還し、国の安全を保証するという約定あってこそ!!よもや反故にする気ではあるまいな!!?」
「あぁ、そんな約束したっけ?まぁいいや、メノウって子を連れてきな。」
そう言うと兵士によってコハクの弟であったらしいメノウが縄に縛られ連れて来られる。その体は傷だらけであり、あちこち血塗れであった。
それを見た途端にコハクは顔を怒りで真っ赤にし激昂する。そしてそのまま腰に差した短刀に手をかけようとした瞬間、コハクの体に蛇が巻き付き、その体を拘束する。
コハクが突然の事に困惑していると、狐の国の兵士がメノウを連れ、その首元に剣を突き付ける。
それを見ながらも表情を変えずにいたアスクレピオーズは口を開く。
「お前の弟だろ?返して欲しいなら俺に従うんだね。それとお前らは人質になって貰うぞ?抵抗したら……どうなるか、分かるよな?」
「くっ……この外道が……っ!弟に手を出すなど……」
「まだ状況を理解していないようだな?一度だけ言おう、俺は今すぐフクスヴァルトを滅ぼせるんだ。大人しく従うんだね。そうすればすぐに解放してやるよ。まぁそれまでには多少痛い目にあってもらうけどね。」
「ふっ、舐めるでないわっ!わしらの誇りにかけて、そのような脅しに乗るものか!」
アスクレピオーズの言葉に強気に返すコハクであったが、しかし体は恐怖に震えているようだった。それも当然であろう、コハク達は自分達より強い存在と戦った事が無いのだから。それを知っている為、アスクレピオスはあえて高圧的に言葉を発し煽っているのだ。
そんな事を知る由もないコハク達であるが、ここで怖気づく訳にもいかない。何せコハクにとって国と弟を守る事が最優先なのだから。
そんな思いからコハクが覚悟を決めたところで、アスクレピオーズに操られた兵士達がコハクを取り囲むように動き出す。
だが、この状況では何も出来ず、コハクは自身の無力さに歯噛みする事しか出来ない。
………………
しばらく経った頃、その場にはぐったりとして項垂れるコハクの姿があった。既に服と呼べる物は身につけておらず全裸の状態だ。しかもその体は精液まみれとなっており、髪にまで飛び散っていたりする有様だ。
「おいコラ。いつまで寝てるつもりだよ、早く立てよ。まだ終わってないぞ?」
そう言いながら兵士はコハクの腕を掴むと無理やり立たせると引き摺りながら部屋からメノウと共に出て行くのであったが、コハクは力を入れると兵士の喉笛を爪で切り裂いて倒すと、メノウを抱き抱えて窓を破り、何とか馬車を馬を奪ってアルファディオスを飛び出したのであった。
◆◆◆
一方でタイガ達の神聖連合は大慌てで部隊の編成が行っており、その作業は夜を徹して行われた。
あまりにも謎が多すぎる邪神を討つために作業は大忙しであり、兵士達は細々と休憩を取りながら訓練を行っていた。
「アリシア殿!部隊の方は?」
「ハリベル、私、タイガの部隊の編成は終わった。アストリット達魔術師の部隊、力のルー・ルー、バラン達の部隊も出来上がってきている。しばらくすれば、全ての隊が整うだろう。それにあれを見ろ。」
アリシアが指差した方向、そこにはタイガとセレスティンがおり、話をしながら部隊の様子を見ていた。
タイガも休むことなく部隊編成を行っており、敵を倒すための準備をしていた。その最中、連合内が騒然とし始める。一体何かと思いながらもそちらを見るとそこにはボロボロになり、体中傷だらけになった狐の獣人の女性が一人倒れ伏していた。
その姿に驚き駆け寄ろうとすると女性の下には一人の狐人の少年が護られるように抱えられている。その人物を見てイリスは驚いた。
「っ!?コハク!!衛生兵を呼べ!!」
イリスが檄を飛ばすと1人の兵士が衛生兵を呼びに駆けていき、コハクとその少年にタイガは兵が来るまでの間に、治癒と回復の魔法をかけながら治療していた。
やがて兵がやって来るとコハクは担架に乗せられ運ばれていくと、コハクとその少年は用意された部屋で休む事となり、しばらくしてコハクが目を覚ますと、彼女は治療された事を聞いた。
その事に礼を言うコハクにタイガは声をかける。
「この度はわしと弟を治療してくれた事、感謝する。だが、何故助けたのだ。わしはそなたを……。」
「あぁ、刺したこと?確かに痛かったが、もう気にしてねぇよ。あと、仕事があるからしばらく休んでろ。」
ぶっきらぼうにそう言うタイガは部屋を出ていくと、コハクはしばらく休むことにしたのであった。
それから数時間後、コハクが目覚めるとそこには既にコハクの弟であるメノウがいた。
メノウはコハクを見るなり泣き始めると、その様子にコハクも涙を流す。そして二人は抱き合うとお互いの無事を確認し合い、喜び合っていた。
そこへセレスティンとセラフィーナがやって来て、コハクは何があったのかを説明した。その中でアスクレピオーズが初めて見たとき以上に力を増しているという事を聞いた一同は戦々恐々としたが、タイガは楽しそうに笑った。
「なるほど……そりゃいい事聞いたぜ。つまり奴は強くなってるってことだろ?ならこっちも負けていられねえよなぁ!」
タイガの自信満々の言葉を聞き、アリシア達は呆れつつも嬉しく思うのであった。
こうして準備を終えた神聖連合はアルファディオスへ向けて進軍を開始したのだった……。
◆◆◆
その頃、ラルクに戻ったアスクレピオーズはアルファディオスにて、戦いで火照った体を鎮めるために、召喚した大蛇に民を喰わせるという暴挙に出たのである。この大蛇達はアスクレピオーズと直結している。
さらにこの大蛇達は獲物を捕食することで、その分だけでアスクレピオーズの傷を癒し、魔力を獲物が捕食される際に流す負の感情によって満たされるのだ。
アスクレピオーズの放った蛇達は人間を襲い始めると、人々は逃げ惑うしかなかった。
『うわあぁぁっ!!?』
『助けてぇっ!!?』
『いやああぁぁぁっ!!?』
「怯えろ!泣け!叫べ!お前らの絶望が“我”の力となるのだ。蛇達よ、たっぷり食え!」
アスクレピオーズが嬉々としてそう叫ぶ中、アスクレピオーズの中に囚われているラルクの心と精神はガリガリと削られていき、涙を流すが誰にも彼の涙を拭うことは出来ずにいたのであった。
彼の体に浮かぶ蛇の紋章の“下”にある“龍”の紋章、その紋章はわずかに輝くが、それもすぐに蛇の紋章によって消されてしまう。
「はぁ……はぁ……。(俺は、このまま消えるのか……?グレン、ハリベルさん、コク、シュタイン、バラン。みんな、ごめん……。)」
仲間たちへの謝罪をしながら、ラルクはゆっくりと眼を閉じた……。