コハクと五神将を仲間に加えたセレスティン、セラフィーナ達“神聖同盟軍”はアウレリア王国は蛇皇神帝アスクレピオーズに乗っ取られた皇帝ラルクと戦うために、アルファディオスへと向かっていた。
彼らが向かっていたアルファディオスの遥か上空は毒々しい紫色に染まっており、さらに近付くだけで気分が悪くなるほどの障気が放たれており、中には胃の中の物を吐く者もいるほどだ。
「うぅ~っ。き、気持ぢ悪い~っ!吐きそうだよぉ……!」
「ぼ、ボクもぉ……!」
「わ、私も、です……。」
「あんたらねぇ。気持ちは分かるけど、吐くなら見えないところで吐いてきな。あと、桃姫さんは後ろ行ってな。」
マイアの言葉にルー・ルー、メル・メル、プリムはイリスの部下の女騎士に連れられて、その場を離れた。その中でもセレスティンとセラフィーナは天幕から外に出ており、偵察に出ているコハクとくノ一部隊、そして、力に覚醒したクロエの帰りを待っていた。
その頃、タイガ、アリシア、イリス、グレンの4人は前線からアルファディオスを見ていたが、その異様さに気付いていた。
「人がいない……。見張りの兵すらも。」
「なに?本当か、タイガ?」
「あぁ、普通は見張りくらいいる筈なんだが……グレン、どう思う?」
「可能性としては民が自力で逃げたか、あるいは……アスクレピオーズが何かしたか、だな。」
「何かとは、何だ?」
「……腹減らしたら、何をするか。言わなくても分かるだろ。」
グレンの言葉にタイガ達はゾッとして生唾を飲み込む。
腹が減ったら何をするか……簡単な答えとしては“食べる”であり、もし、力を使ったことで腹を空かせたとしたら、民は既に……その先を考えただけで、アリシアとイリスは体を抱き締め、タイガは顔を青くする。
そんな中、戻ったコハク達はセレスティン達に報告をしていたが、その内容は奇妙な物であった。
「誰もいないのに、城門が開いている?」
「あぁ、城門が開けっぱなしだった。兵が閉め忘れたのかとも思ったが、まるで“勝手に入れ”と言わんばかりの開け方であった。それに、城下には民どころかネズミもいなかった。」
「セレスティン様、どうされますか?」
「……立ち止まっていても仕方ありません。タイガさん、アリシアさん、イリスさん、グレンさん達に先行するように伝えてください。他の方は待機しつつ、戦闘を行えるように伝えて下さい。」
「承知した。」
コハクはそう言うと、タイガ達に伝令を伝えるために駆け出した。
「タイガ、アリシア、イリス、グレン!」
「コハクさん、偵察から戻ったのか?」
「あぁ、セレスティンから伝令だ。主らの部隊で先行しろとの事じゃ。後方はわしらが護る。だが、城門が不自然に開いている上に、何か奇妙じゃ……用心するのじゃぞ。」
コハクはそう言うと、マイア達に伝令を伝えるために駆け出し、タイガはゆっくりと立ち上がる。
「良し!んじゃ、行きますか。」
「そうだな。」
「あぁ。(陛下、必ず助けるからな。)」
「皆!!進むぞ、続け!!!」
『おおおおおおおおおおおっ!!!』
タイガ達4人の率いる部隊、その数およそ4000人は先行し、アルファディオスの城門へと向かっていったが……その様子を“不気味な影”が遠くから眺めながら嗤っていた。
その城門は確かに不自然に開いており、さも“ご自由にお入り下さい”と、言わんばかりに開いていた。
「確かに不自然だ。あんな開けっぱなしにするなんて。それに人の気配もほとんど感じない。」
「アスクレピオーズ、あの野郎嘗めてやがるのか……!」
「とにかく入るぞ!」
「皆進め!!遅れるな!!」
『おおおおおおおっ!!!』
一同が中に入ると、早速広場まで一直線に向かっていき、広場に着くと辺りを警戒し始め、アリシアが腰に指したサーベルに手を掛けながら辺りを見回す。
そんな中でタイガが頭を掻きながら言う。
「……これはグレンの言った通り、かもな。アリシア、イリス。俺はスラムの方を見てくる。」
「待て、私も行く!グレンとイリスは気を付けてくれ。」
「あぁ、何かあったら知らせるようにな!」
「無茶すんなよ?」
アリシアとタイガがスラムの方に向かい、その屋内に人がいるかを探ったが誰もいなかった為にその後イリスらと合流し、アルファディオスの城へと向かおうとした時、空にラルクの姿をしたアスクレピオーズが現れたのである。
突然現れた巨大なその顔に兵達が驚き、戦くがアリシアが兵達に叫ぶ。
「皆落ち着け!!幻影魔法だ!」
《やぁ、皆さん。よくもまぁこんな所まで来たな……馬鹿な連中だよ、お前ら。》
「何だと!?」
《お前らがわざわざ自分から来てくれたんだ。この城下に住んでた“連中”と同じように、あの世……いや、俺の腹の中に送ってやるよ。》
「城下に住んでた連中と同じ……!?アスクレピオーズ!貴様まさか、民を喰ったのか!?民には何の罪もないというのに、何故そんな非道な真似が!?」
アリシアの言葉にラルクに憑依したアスクレピオーズが鼻で笑った。
《非道?金髪の姫よ、俺のやっていることが非道だと?笑わせてくれるなよ。世の中には俺などよりもっと酷い奴が大勢いるんだぞ。“無駄に正義感溢れてるくせに弱い奴”や“正しさを振りかざす奴”、“夢も何もない癖に力だけがある奴”など色々いた。
だがなぁ、そういう連中の共通点が有るんだよ……それは、“自分が正しい”って思い込んで周りを巻き込んでるんだ。お前らも同じだ!少し力があり、人数を集めただけでそれが正しいと、これから自分達がする事が正しいと思っている……あまりにも愚かで、あまりにも可哀想なものだ。》
アスクレピオーズの言葉にアリシアが睨んでいると、タイガがそれを逆に鼻で笑った。
「おいこら、爬虫類のなり損ない!!お前も偉そうに言ってんじゃねぇよ!!他人様の体を乗っ取らなきゃ何も出来ない、しようとすらしない癖に生意気ヌかすな!!」
《何とでも言えばいいさ。お前達はここで始末し、残りの連中はじっくりと料理してやる。貴様らの仲間が俺の腹に入るのを、あの世で見届けるがいい!》
それだけ言うとアスクレピオーズは幻影を消し、それと同時に周囲から毒々しい色をした大蛇の姿をした怪物“アポピス”が無数に現れ、タイガ達を囲み、口から瘴気を吐き出している。
「くっ!?囲まれたか!?」
「やってやろうじゃねぇかよ!!」
「こんな所で負けられるか!」
「全兵抜剣!!この場を乗り切るぞ!!」
『おおおおおおおっ!!!』
過酷な戦闘が始まろうとしていた……。