アリシアSide
私、アリシア・アルクトゥールスはいつも通り兵の調練していたが、突然城門が崩れる音がして、向かってみるとそこには見たことの無い装束の男がいた。
その男は笑いながら言った。「この砦で強いやつはいるか?」と。
その言葉に私達は警戒し、剣を構えた。
黒犬の者ではないにしろ、城門を軽々と破壊するような者が武器を持って現れ、異様な雰囲気を纏っている男に警戒した。
「(何だこいつは……いったい、何者なんだ!?)」
「どうした、来ないならこっちから行くぜ。」
男は得物を鞘に納めた状態で奮い、兵士達を殴り飛ばしていった。殆どの者が反応すら出来ず、打ちのめされていく様に私は言葉を失った。
「(この男、一体何者だ!?何が目的)「考え事とは余裕だな?」なっ!?」
「女が剣を持つとはな?中々の腕前だが……やはり話にならないな。」
「ナメるな!!」
私は男に剣の切っ先で貫こうとしたが、男はそれを軽くいなしていき、どの一撃も決まらずにいる。
すると男はため息を吐いた。
「はぁ……筋は良いがこんなものか。おら!」
男の一撃は私の手から剣を弾き飛ばし、弾かれると尻餅を付いてしまい顔を挙げると、男は喉に鞘を向ける。
「どうする?まだやるか?」
「貴様、一体何が目的だ……。何故こんなことをしたんだ!?」
「ん?俺は強い奴と戦いたいだけだ。まぁ、この場所には居ないようだがな。」
「だったら、俺が相手してやろうか?」
「「!?」」
凄まじい威圧感を感じ、私と男はその方向を見ると、そこにはタイガが立っていた。
タイガを見て男は笑みを浮かべながらその方向を向くと、彼に訪ねた。
「ほう、良い目してるな?お前、名は?」
「タイガ。タイガ・レーヴァンタイン、あんたは何て言うんだ?」
顎を掻きながら、男は楽しげに笑いながら名を名乗った。
「俺か?俺は……リューマって言うんだ。」
リューマと名乗った男は、持っていた剣を鞘から抜く。
そこには私の使っているような両側が刃になっている物ではなく、片刃になっており刀身が黒く刃には赤い模様のようなものがある。
そんな中、タイガはリューマを見据えながら話かけた。
「あんた、その得物は刀か?」
「ん?お前刀を知ってるのか?」
「あぁ、本で読んだことがある。それにその刀とあんたが普通じゃないってこともな。」
「へぇ。俺はこう見えても色々と斬ったことはあるんでな。けど、ここの奴らは話にならかったが、お前は少し違うみたいだな。」
口元を三日月のように笑いながらそういうリューマに、タイガは腰に指した得物を抜き、正眼に構える。
それを見たリューマは礼儀正しく、しかし獰猛な笑みを浮かべて答えた。
「まぁ確かにこいつはただの刀じゃねぇ。こいつは大業21工の1つに数えられたモノでな。刃は黒刀、乱刃大逆丁字。銘は秋水ってんだ。」
「秋水か……良い銘だな。」
「そうだろ?だが……こいつの切れ味、知りたくないか?」
そう言うと、タイガとリューマは互いに駆け出し、次の瞬間には双方の得物がぶつかり合い、火花を散らしていた……。
ーーー。
とある国に1人の侍と呼ばれた剣士達がおり、その中の1人のその男には、数々の伝説があった。
曰く、剣の勝負においては無敗である。
曰く、巨大な"竜"を一刀で討ち取った。
曰く、伝説の刀神とさせれている。
しかしその男は病によって死期を迎え、静かに息を引き取り、あの世への道を歩いていた。しかし、そこである少年と出会い、こう言われた。
『後悔があるんだね……良いよ、その後悔、僕が満たしてあげるよ。』
その瞬間、何者かに魂と肉体を引っ張り出され、気づけば得物だった刀"秋水"を手にして、この地に立っていたのである。
訳が分からず、ただ何かに縛られたような感覚と見知らぬ土地での強者を求めていた。そんな彼の目の前に、自身に呼び掛けてきた少年がおり、彼に命じられて……。
~~~。
2の砦、そこではリューマとタイガの2人による激しい剣劇が行われていた。
「はぁ!」
「らぁ!」
スパパァァンッ!とタイガが剣を振ると、凄まじい剣圧に乗せて飛ばした斬撃がリューマに迫るが、リューマはそれを黒刀で軽々と弾き返す。
「っ!一度に斬撃を2つ飛ばしたのか!面白ぇ!!」
弾かれた斬撃はズガァァァァンッというけたたましい音と共に、城壁を削り飛ばした。
リューマがタイガの方を見ようとしたが、そこには彼の姿はなく、静かに辺りを見回していた。
「何処行った……上か!」
「はっ!」
タイガは上空から剣を振り下ろして、リューマの頭を狙うが、リューマはそれを防いで避けると、再び激しい打ち合いとなる。
金属同士がぶつかり合いながら火花を散らしていき、互いに引かない戦いとなる。
「はははっ!楽しい!身体がゾクゾクしてくるぜ!」
「俺も!楽しくて仕方ないな!」
一撃一撃がぶつかり合う度に甲高い金属音が鳴り、火花が散り、衝撃が周囲のものを吹き飛ばしていった。
リューマとタイガ、2人とも生まれも育ちも違う。
しかし、2人は同じ豪剣の使い手であり、剣士としての腕前はかなり近いのであるが、同系統の破壊力を持つもの同士では勝負は長引くことは無い。
そんな剣劇を見ていたアリシアは言葉を失い、ただ呆然と見ているしかなかった。
「(な、何だこれは……!こんなの、凄すぎる……!)」
アリシアはタイガとリューマ、2人の一騎打ちを見て、言葉を失い、開いた口が閉じなかった。
まるで、その場には小さな嵐が吹き荒れているようであったが、アリシアはその中でタイガの表情を見ていた。
「(タイガ、なんて楽しそうなんだ。あんなに楽しそうに笑ってるなんて……。)」
そんな中、彼女の胸の中には感じたことのない胸の高鳴りがあったが、アリシアはそれが何かは分からなかった。
「猛虎獣烈破!」
「うぉ!?虎に見立てた衝撃波か!すげぇ技使うんだな!」
「これだけじゃねぇぞ!百八煩悩鳳!」
「おいおい、今度は飛ぶ斬撃か!?お前ますます面白ぇな!」
「それはどうも!」
そう言いながら笑うリューマは悉く技を受けきり、それを見て接近してに激しく打ち合うタイガ。しかし彼の使用している剣は黒刀の誇るべき硬度によって刃が削れていき、徐々に刃零れし始めていたのである。
タイガは武装色を纏っているが、得物である剣の方は長く持ちそうになかった。
「(不味いな。いくら武装色をしているとは言っても、マジ物の黒刀の固さには及ばないかな?)」
「(こいつ、一撃一撃が強い上に技が多い。それに、速さは中々の物だ。並みの奴らならこいつには勝てねぇか。……楽しくてしょうがねぇな!!)」
リューマとタイガ、出会うことの無かった2人の豪剣の使い手は、互いに身体中に傷を負いながらも笑いながら見合う。
そんな中、リューマは有ることが気になった。
「おい、タイガとか言ったな。お前、何で戦ってんだ?」
「なに、どういう意味だ?」
「それだけの技と剣の腕だ……いったい何を思ってそれほどの鍛練が出来た?」
目の前の小僧が何故ここまで戦うのか、何を思って戦っているのかが。
その質問にタイガは剣を持ち直し、リューマの方を見て答えた。
「……強くなるためだ。強くなりゃ守れるものも増えるし、もっともっと上に行けるしな!」
「ほう……悪くねぇ答えだ。なら、俺に勝ってみな!」
そう言うとリューマは秋水を鞘に納めると、体勢を低くして構える。それはまるで獲物を狙う獣のように見えた。
それを見たタイガはもう一振りの剣を抜いて、交差させて構える。その目には獲物の様子を伺うような威圧感がある。
互いににらみ合ったまま、動かないでいた。その様子を見ていたアリシアは、自然とごくりと唾を飲み下す。
「(次の一撃で勝負が決まる……!)」
「真龍斬!!」
「おらぁぁぁ!!」
地に落ちていた木の葉が揺れて空に舞い、地面に落ちたその瞬間、タイガは龍を纏いながら、リューマは覇気を溢れさせながら同時に駆け出し交差した瞬間、タイガは剣で、リューマは秋水で一閃した。
「「……。」」
「ど、どうなった……!?」
『……!』
アリシア、そして兵士達が固唾を飲んで見守る中、タイガの剣が砕け、右肩から左脇腹に掛けて袈裟斬りにされた傷から血が滲んでくる。タイガはその場に膝を付き、肩で息をする。
「がはっ……!?」
「っ!タイガ!」
『タイガ様!?』
アリシアがタイガに駆け寄ろうとしたが、タイガはそれを止める。身体から多くの血が流れるのを見て、兵士達は悲痛な声を挙げた。
「はぁ、はぁ……さ、差し分けの……よう、だな。」
「だな……ぐふっ!」
その瞬間、リューマの身体に出来た交差させて出来た大きな星型の傷から血が吹き出し、リューマも膝をついた。
「はぁ、はぁ……まさか、相打ちになるとはな。」
「俺だって、そうなるとは……思わなかったぞ。この俺に傷をつけるとな……。はぁ……はぁ……おい。」
「あ?なんだっと!?これは、秋水!?」
リューマはタイガに向かって何かを投げる。彼から投げ渡されたのは、彼の相棒"秋水"だった。
秋水を渡すと、リューマは笑顔で言った。
「それお前にやるよ。お前なら、いずれは使いこなせるようになる。」
「な!?お、おい!リューマ、何処に行くんだ?!その傷じゃ!」
「まさかこんな知らない土地で、こんなに満足した戦いができるとは思わなかった。タイガ、絶対に強くなれ!」
リューマはそう言うと、光の粒になって消えていった。
「リューマ……うぐっ!?」
「た、タイガ!?しっかりしろ!!誰か衛生兵を!!」
タイガは血を吐いて気を失い、その場に倒れ込んでしまった。
アリシアはその場に倒れたタイガを支えると、その顔を見下ろした。
「(タイガ……先程お前が言った"強くなるため"というのは、一体何なんだ?昔、何かを失ったのか?)」
アリシアはそんな事を考えつつも、タイガを衛生兵と共に連れていき、治療を行うことにした……。