「よっと……ここが新しい世界か。自然が多いな。」
タイガが辿り着いたそこは森のような場所であり、自然が豊富な雰囲気であったが、何処か空気が淀んでいる感じがしていた。
「(何だこの淀んだ感じは……何か嫌な雰囲気だな。)」
【タイガ、聞こえますか?】
「(この声は……まさか。)」
タイガが精神の中に意識を移すと、そこには一体の巨大な緑の鷹がいた。
颶風王フェニックスである。
「(はじめましてだな。あんたが颶風王フェニックスか?)」
【如何にも。貴方の相棒として貴方を導きましょう。】
「(よろしく頼む。んで、フェニックス、俺はどこにいるんだ?)」
【私も詳しくは分かりません。ですが、何やら異質な気配がある世界ということは分かります。】
「(そうか。んじゃ取り敢えず冒険してみるかね……また何かあったら話そうぜ!)」
【はい。】
タイガはフェニックスとのリンクを切り、旅を始めようとした時、背後から気配を感じて振り返るとそこには……。
「タイガ……!」
「うそ、でしょ……!?アリシア!?なんで「バカ!!」うわっ!?」
タイガが驚き、戸惑いの声を上げる中でアリシアがタイガに飛び着き、タイガの胸に顔を埋めながら胸を叩くが、アリシアの目の辺りから濡れていくのが分かった。
「アリ、シア?」
「バカ!バカ!バカ!大馬鹿!!勝手に別世界に行くな!!お前が来なくてみんな寂しかったんだぞ!?セレスティン様やプリムがどんなに辛いと思ったか!!?」
「アリシア……。」
「バカ……バカぁ……!」
胸の中で泣くアリシアを強く抱きしめ、頭を撫でるタイガ。
アリシアやみんなに頭を下げて謝罪をすると、アリシアは泣きながらも立ち上がる。
「ごめん……俺もみんなの所に行きたかったけど、行けなくてな。というか、みんなは何でここに?」
「私はセレスティン様に許しもらって、飛鳥殿を脅かし……説得して転生したのだ。」
「そうだったのか……ごめん。俺の勝手な都合に巻き込んで。」
「それはもう良い。だが、これからは勝手にいなくならないでくれ。とても心配するからな。」
「はい……。」
「それで?ここはどこなんだ?私達は何の世界に来たの?」
「それが俺にもさっぱり……今人の気配を探ってみるな。」
タイガが見聞色の覇気の覇気で人の気配を探りながら、鷹の眼で空からも探してみることにした。
すると、遠くの方に人の気配を感じ取ったタイガは目を開く。
「人の気配だ。この森を出たところ!」
「飛鳥殿から聞いたが、覇気というのは便利だな。私も使えるようにならねば。」
アリシアはガッチリとタイガの右を陣取って腕を組み、タイガは戸惑いながらも苦笑するしか無かった。
2人が森の出口へと進んでいくと、そこには空が広がっており、自分達が巨大な水溜まり……海の見える島にいる事が分かった。
「とんでもない所に来たみたい。」
「確かに。これは凄い……塩辛いな、これが海という物なのか。」
「海なんてオスティアには無かったからな。」
「そうだな。……タイガ、あれ!」
アリシアが指差す方を見ると、遠くにある場所では戦火が広がっているのが見えた。
「何だアレは。戦争か?」
「みたいだな。どうする?タイガ。」
「行ってみよう。」
「ま、何か分かるかもしれないし、行くぞ。」
タイガとアリシアは悲鳴のする方へと走って向かうと、そこにはガラの悪そうな男達が逃げ惑う人々を追い回しながら襲っており、人々は逃げ惑う中、男達は彼らを追い立てて遊んでいた。
「なんてことを……!タイガ、どうする?」
「助ける。情報を貰うついでにな。アリシア、無茶するなよ!」
「分かっている!」
タイガは翠鷹を抜くと、賊徒に襲い掛かり斬り伏せていく。
「大丈夫か?」
「あ、あなたは!?」
「旅の者だ。取り敢えず下がってな。」
タイガが民達を助けると、賊徒達は楽しみを邪魔された事に怒り、タイガに襲いかかる。
「何だてめえ!!」
「やっちまえ!!!」
「やかましい!風刃!」
「「「「ぐがああああああっ!!!?」」」」
「んじゃあこれやってみるか!翠嵐大竜巻!」
タイガの起こした巨大な烈風の竜巻に賊徒達は巻き上げられ、切り刻まれていき、物言わぬ肉塊へと変貌する。
その後もタイガ達は多くの賊徒達を斬り伏せていき、大多数の民を助けることが出来た。
「アリシア!無事か!」
「あぁ!タイガも無事のようだな。」
「数は多かったけれど、大したことなかったな。」
「よくも邪魔をしてくれたな。」
「「!?」」
その時、タイガとアリシアは声のした方を振り向くと、そこには薄汚れた装束を着た青年がいた。
歳はタイガやアリシアと同い年位だが、その雰囲気は明らかに別人であるというのが、覇気で感じ取れた。
「アリシア、あいつ。」
「あぁ、何か異様だ。」
タイガ達が警戒心を強める中、青年は周囲の賊徒達の死体を一瞥すると、タイガ達に尋ねた。
「お前らがやったのか?」
「だったら何だ?」
「よくも俺様の邪魔をしてくれたな。この俺様の邪魔をしてただで済むと思ってるのか?」
「何だそれ?脅しのつもりか?」
「男は殺すが、隣の女は嬲りものにしてやる。」
「下劣な。」
「お前、何者だ?」
「俺か?俺様はヴァンクラッド!海を!陸すらも!世界をも支配する海賊王だ!」
「ヴァンクラッド?なんだそりゃ聞いたことねぇ名前だな。だが、海賊王ってことは海賊か。」
「だったら何だ?」
「俺様の邪魔をするのなら、この場で嬲り殺しにしてやるよ!」
「やれるもんならやってみろ!!!」
ヴァンクラッドと名乗った青年は、腰からサーベルを抜きタイガに斬りかかるが、タイガも覇気を出してヴァンクラッドを弾き飛ばす。
「ぐっ!!?」
タイガの覇王色の覇気に、ヴァンクラッドは気圧されて吹き飛ばされてしまい、タイガは辺りを警戒しながらも、意識はヴァンクラッドに向けている。
自分を睨みつけてくるタイガに、ヴァンクラッドは忌々しそうに睨み返す。
「貴様、何者だ……。ただの剣士じゃねぇな。」
「タイガ。それだけ名乗っとく。お前こそ何者だ?明らかに別人だろうが。」
「言うわけねぇだろうが。言っとくが俺を切ったら海軍から追われるぜ?」
「何?」
「タイガ、向こうから人が来ている!」
「……ちぃ!奴ら嗅ぎつけてきたか!あばよ、タイガ!テメェの事は忘れねぇからな!!」
ヴァンクラッドは捨て台詞を吐くと、足早に逃げ去っていった。追おうとしたタイガだったが、その場に現れた別の集団に取り囲まれる。
すると、1人の女性が前に出た。
「この島を襲った海賊を討ったのはお前たちか?」
「おたくら誰だ?」
「我らはアウストリア海軍。私は提督をしているミレイユ・フォン・アウストリアだ。海賊を討ったのはお前たちだな?」
「一応そうなるな。それで、そうだと言ったらどうする?」
「話を聞きたい。すまないが王国まで同行してもらうぞ。」
タイガとアリシアは見合うと、頷き合い、ミレイユに付き従って、彼女の乗ってきた船へと乗り込み、どこかへと向かうのであった……。