「はぁ、はぁ……くそ!あのガキ〜!!」
タイガとの戦闘の中で逃げ去った海賊ヴァンクラッドこと乗っ取られた海軍将校の青年クラウス・ラインハルトは森の中で息を潜めた後に、自身の船の海賊船へと乗り込んで海を進んでいた。
ヴァンクラッドは狡猾で頭の回る海賊王であり、強い相手には無駄な戦闘はせずにいることが多かった。
そんな中で自分の予想以上に強いタイガは、厄介な存在であった。
「……しばらく“海賊港”に身を隠すか。力を蓄えねぇとな。」
ヴァンクラッドは忌々しげに顔を歪ませながら、部下に命じて船を目的の港まで進めさせるのであった……。
◆◆◆
その頃、タイガとアリシアは海軍提督ミレイユと共に、アウストリア王宮を目指して船を進めており、その船室の一つで2人はミレイユから“取り調べ”を受けていた。
「タイガ・レーヴァンタインとその妻、アリシア・レーヴァンタイン。オスティアという大陸の生まれであり、貴族である。……オスティアという大陸、聞いたこともないな。」
「まぁこの大陸とは違う大陸だからな。俺もアリシアもそこで生まれ育って、見聞を広げるために旅をしている。」
「ふむ……。それにしても海賊ヴァンクラッド、奴は我々が来たと同時に逃げ出したのだな?」
ミレイユの問いかけにアリシアが答えた。
「あぁ。それは間違いない。貴殿らが来るのに気付いて、逃げ出したようだったからな。」
「人相書きもさせてもらったが……この男がヴァンクラッド、か。兵士達にも通しておく。それよりこれから2人はどうするのだ?」
「……決めてない。適当に旅をするつもりだった。」
「それならば海軍に勤めてみないか?2人がよければ、こちらで席を用意することも出来る。海賊の捕縛に協力したのだからな。」
「私はありがたいと思うが……タイガ、どうする?」
ミレイユの提案にタイガが腕を組んで考えこむ。
「(この世界を知るのにも悪くはないし、何よりアリシアに野宿させるわけにはいかないか。先立つものも必要だし。)分かった。その話、受けさせてもらうぜ。」
「うむ。では、王宮につき次第話を進める。それまでは船でゆっくりと寛いでいてくれ。船内の物は壊さなければ好きに使ってくれて構わない。王宮までは大体3時間くらい掛かるからな。」
ミレイユはそれを伝えると、自分の仕事をしに客室を出て行き、残されたタイガとアリシアは一息吐いた。
「っはぁ、緊張した。海軍提督と話すとか初めてだったから身体強張った。」
「だが真面目で芯のありそうな人物だったな。それにしても、あのヴァンクラッドとという海賊は、あの島で何をしていたのだろうか?」
「さぁな。海賊の考える事は分からない。けど、何か嫌な予感がするんだよなぁ……。」
タイガは呟いて、天井を見上げるのであったが、アリシアもどこか不安そうであった……。