ゲッコウという者の力によって、グラーヴ将軍が若返っていき、老いていたその肉体は若々しくなっていき、若返りが終わった頃には、タイガくんと遜色ない程にまで若返っていました。
グラーヴ将軍は若返った自分を見て驚いていたが、次第に口元に笑みを浮かべて笑い始めました。
「これが、儂いや俺の身体か……ふふっ、ふふふっ!ふははははっ!これは凄い!凄いぞゲッコウよ!この姿、愚息を生む前の全盛期の姿だ!これならば、確実にクラウディアを、いやセレヌス全ての女を孕ませられる!」
鋭い眼光をクラウディアに向けるグラーヴ将軍。その視線にクラウディアは目を伏せて、辛そうに顔を逸らしました。
それにしてもグラーヴ将軍の豹変ぶり、どうやら肉体だけではなく精神までも若返ってしまったようです。人とは、こんなにも変わってしまえるのでしょうか……。
「はぁ……。」
そんな中、タイガくんはそんなグラーヴ将軍を見て、ため息を吐きました。こんな状況で溜め息を吐いた事に驚きましたが、それ以上にその溜め息にグラーヴ将軍が睨み着け、タイガくんに斬りかかりました。
けれど、タイガくんはそれを見ずに剣ではなく、鞘で攻撃を受け止めたのです。
「(グラーヴ将軍を見ることなく、鞘だけで止めるなんて。それ以上にあんなに軽々とグラーヴ将軍の一撃を止めた!)」
グラーヴ将軍、長きに渡り戦場に出て数多くの敵を討ってきた猛者であり、クラウディアの剣の師でもある彼の一撃は決して軽くない。
しかし、タイガくんはそれを軽く止めたのです。
その後グラーヴ将軍の剣を滑らせ、態勢を崩させたタイガくんは将軍を殴打と斬撃で追い詰めていきます。
その戦い方は、まるで怒りながらも戦いを楽しんでいるようにも見えました。
「ははっ、やっぱりね。」
4の砦の守護のサポートをしているマイアさんから、そんな声が聞こえ全員で彼女を見ると、マイアさんは笑っていました。
「マイアさん、あの…"やっぱり"とはどういう?」
「いや、あの爺さんじゃタイガには勝てないって思った。それだけだよ。女神様。」
「あ、ありえません!?お義父様の強さはセレヌス全土に…」
「あのさぁ、聖騎士さん、この世であり得ないは無いんだよ。アタシもそれなりに戦場に出てるから分かるけど、あの爺さんはたしかに強い。けど、タイガはそれ以上に強い。」
「それは、どういう意味じゃ?」
「アイツはアタシ等よりも、戦いに勝つ事に貪欲なのさ。敵がどれだけデカかろうが、貴族だろうが、戦となったら勝つ事を優先する。その為なら無茶もするけどね。」
マイアさんは頭を掻きながら続きを話す。
「その上で仲間も大切にしてる。アイツは勝ちに貪欲な上に仲間も守ろうとするし、仲間が危機になったら突っ込んで助けに行く。大馬鹿で、大甘なやつなの。」
「タイガ……あの子がそんな。」
クラウディアも知らなかったタイガくんの一面に、私もオリガさんも静かに彼の方を見る。
すると、タイガくんの持った剣とグラーヴ将軍の剣がぶつかり合い、火花を散らしていましたが、その時のタイガくんはとても楽しそうに笑っていました……。
〜〜〜。
「牛針!閃!砂紋!」
「くっ!?」
「はぁ!!」
「ぐはぁ!?」
連続の突きと複数の斬撃と岩をも砕く牙突に、グラーヴは転げ落ちる。
タイガと若返り青年となったグラーヴ、本来であればグラーヴは若返った自分の方が強く、忌々しい孫を倒して目の前の女達を犯し孕ませる筈だった。
そう考えていた。
しかし、彼は知らなかったのだ。自身の孫が数多の戦場を駆け、多くの化け物"使徒達"と戦い、その中で多くの仲間を失うという拭い切れない絶望を味わった事を。
そして、その絶望から学んだ
"勝利"と"生への執着"。
大切な仲間や家族を守るという"信念"。
友とした二度と負けないという"約束"。
その為にしてきた"鍛錬"と"実戦"。
それらがタイガを強くし、数々の能力を持ちながらもそれ以上の地力を着けたのである。その速度と威力、全てがグラーヴに勝っていた。
そんなタイガに対してグラーヴは、老いた事とそれによる力のブランクと若返った事による反動によって、彼は圧されていたのである。
「(こんな、こんな事……認めん!?種無しの息子の孫なんぞに圧されるなど!?)」
「戦の中で考え事か?」
タイガの言葉に振り返った瞬間、グラーヴの股間に武装色を纏ったタイガの金的が当たり、その重く硬い蹴りに玉が潰れ、股間に血が滲む。
「$%#$"'$$%'$"$%~'%|$!!?」
あまりの激痛に言葉が出ず、グラーヴは床に転げ回る。
そんな情けない姿を見ても、タイガはただただ静かに見ていた。
「こ、この、ガキィィ!?よくも名家の種を「やかましい」ゲハっ!?」
「前から思ってたけど、名門とか名家とか意味あるのか?そんなの貴族間でしか役に立たないだろうが。そんな物に縋ってる意味あるわけ?」
「き、貴様!?貴様に何がわかる!?名門の血を絶やす等あってはならないことなのだ!名門レーヴァンタイン家は潰えてはならない!女神様を守っていき、この大陸にその名を残す為には、優秀な種が必要なのだ!?その為に儂は!」
「んな下らないことの為に、父様を傷付けて、母様を傷付けて……んな事しか頭にねぇなら!!さっさとくたばれこの老害!!!」
「ひっ!?」
タイガの本気の怒りにグラーヴは怯んで動けなくなり、タイガはそんな祖父を見て、トドメを刺そうと秋水に力を集中する。
「や、止めろ!来るな!」
「あんたさぁ、さんざん偉そうに言っといて今更それかよ?戦場でそんな姿見せて、相手が素直に聞くか?俺は……聞かねぇがな。」
「や、止め」
「あと、大切なのは家の名前じゃねぇ。大切なのは、家族なんだよ!大辰憾!!」
「う、うわあぁァァァァ!!?」
タイガが大きく振り上げて、秋水を振り下ろすとグラーヴは泣き叫びながら自分を守ろうとし、全員が目を閉じる。
しかし、いつまで経ってもグラーヴの悲鳴は聞こえて来ず、全員が目を開けると、その刃は彼を断たずに寸前の所で止まっていた。
「……。」
「ひ、ひえ……。」
グラーヴはあまりの恐怖に気絶し、見る見る内に置いていきヨボヨボの老人となって倒れていった。月光の打った力が切れたのと、あまりの迫力に身体と心が壊れかけたのであった。
そんなタイガにセレスティンが優しく声を掛けた。
「タイガくん。あなた……。」
「はぁ、こんな人でも俺の爺ちゃんだ。殺せるわけ無いじゃないですか。セレスティン様。」
「いやぁ、見事だね。こんなボケた老害すら生かすなんて、甘々過ぎて口から砂糖吐きそうだよ。」
パチパチと拍手をしながら、月光が笑みを浮かべながら近付いてくる。その笑みを見て、セレスティンは寒気を覚え身体を抱いた。
「(何でしょうか、あの人の笑みを見ていると身体が動かない……!寒気が止まりません……!)」
「それにしても、まぁ予想はしてたけど……もう少し役に立てよなゴミの分際でバカみたいな夢見てよぉ……アホ過ぎで寒いわwww」
「お前、いったい何者なんだ?明らかにヤバいってことは分かるが。」
タイガは秋水を持ったまま月光を見据える。
直感で分かったのだ……"こいつはヤバい"と。
「前に名乗らなかったっけ?まぁいいや、改めて自己紹介だ。僕は黄泉閊 月光。世界の破戒者であり、この世界を壊す者だよ。宜しくね。」
「お前、ヴォルトを蘇らせて暴れさせたり、ジジイ達を唆したり、何がしたいんだ?」
「簡単なことだよ。僕は……全部壊したいんだ。人も歴史も世界も全部ね♪今まで色んな世界を壊してやったよ。何人か抵抗してきたけど、僕に勝てる奴なんていないけどね。」
「ふざけてるのか?」
「僕は真面目だよ。だってそうじゃないか、夢?絆?仲間?馬鹿じゃないの!人間なんて一皮剥けば欲の塊、腐った生ゴミ、平気で他人を利用して蹴落とす!そんな生き物じゃないか!それを馬鹿みたいに夢語ってさぁ、気持ち悪いんだよ!!!」
笑みを消して激しく地団駄を踏んでそう言う月光。
そんな姿に全員が言葉を失うが、月光は構わず続ける。
「だからこそ、僕が全部壊すんだ。どんな世界だろうがね。」
「そんな事させると思ってるのか?」
「キミ如きに何が出来るんだ?高々"人間"にさぁ……。」
そう言った瞬間、タイガは見聞色で未来を見て即座に動いた。
「猛虎獣烈覇!」
「雷竜のアギト!」
虎型のエネルギーと竜の頭を形作った雷がぶつかり合い、爆発が起こり、全員が踏ん張って立つのがやっとだった。
「くっ!?化け物じゃな、あ奴は。」
「たしかに、魔王って言うだけあるわ。化け物って言葉が生温く感じるよ。」
「タイガ!」
煙の中から気絶したグラーヴを抱えて、飛び出して来たタイガ、その身体はあちこち火傷をしており、それを見たクラウディアが息子に駆寄った。
「タイガ、大丈夫!?」
「俺なら大丈夫、それより母様……外に俺の分身と父様がいる。急いで向かうからみんな、集まってくれ!」
タイガの言葉に全員が集まると、タイガは転移の魔眼を発動してその場から離れていった。
一方煙の中から月光が現れ、タイガ達を探すが姿を確認出来ないと分かると、はぁ。と溜息を吐く。
「逃げ足早い奴、まぁ良いか。こっちも準備するかな。」
月光はそう言うと、倒れていた死体達を水の膜で包んで体内に仕舞うと奥の方へと消えていった……。
一方、クラウス達と合流して黒の城から脱出したタイガ達は、アリシア達の待つ七盾同盟に避難したが、タイガは転移の魔眼の連発で魔力が切れてそのまま気絶してしまったのである。
目が覚めると、タイガは自室で横になっており、手足には治療の痕跡が残っており、近くには両親が寝息を点てて眠っていた。
「母様、父様……俺どんくらい寝てたんだ?」
外を見てみると、満月が浮かんでおり時間がかなり過ぎているという事が分かった。
「はぁ……ヤバい、魔力切れで身体が動かん。あれからだいぶ寝てたみたいだな。秋水は、良かった。ちゃんとあるわ。」
「うっ……タイガ?」
「起きたのか、タイガ。」
「母様、父様。おはよう……でも、無いね。大丈」
クラウディアが目を覚ますと、タイガを見たがクラウディアは声を掛けてきた息子を優しく抱きしめた。
「え?か、母様……?」
「良かった……!本当に、本当に無事で良かった……!」
優しくも強く抱き締めてくるクラウディア、肩が濡れる感覚を覚え、涙を流している事が分かり、タイガは戸惑いながらも母を見る。
「母様、父様。心配かけてごめんなさい。」
「あなたは謝らなくて良いの……。今回の事で分かったわ。お母さん、強くなるから……あなたも、お父さんも守れるくらいに強くなるから……!」
「私もだ。セレスティン様から全て聞いた。私もお前達を支えられるくらい強い父になってみせる。」
「母様……俺も2人の事支えます。だから泣かないで。」
優しく両親の背中を擦るタイガ。
家長は居なくなってしまったが、家長はクラウスが継ぐことになり、それを近い内に話すと言うと2人は部屋から出て、客間に向かったのであった。
その後、タイガは眠りに着こうとしたがその時扉がノックされた……。
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