タイガSide
別の異世界に転生してから、数年が経った。
俺が転生した先は、レーヴァンタインという貴族でこの世界……正確には"オスティア"という大陸で、一番歴史のある貴族らしい。
しかし、地獄に行くのだって思ったら、それがまさか貴族に転生するとは思わなかった。てか、貴族って……正直、俺はあまり貴族に良い印象を持っていない。
初めは親ともあまり会話をせず、素振りとかで時間を過ごしていたが、俺が5歳の頃に病気に罹った時、母親は俺の事を心配してくれたし、寝ずに看病までしてくれた。
父も少なからず心配してくれていたのが、嬉しかったが祖父は何も言わなかったが……あの目が気に入らなかった。
まるで"余計な心配を掛けるな"という目が、アイツに……"ガンビーノ"に似ていてムカついた。
まぁ、そんな事も有りながら俺はこの世界で生き残るために身体を鍛えた。素振りに走り込み、筋トレにシャドーボクシング、木刀や剣を使っての打ち込み……あと、近くの湖で水泳なんかもしたが、時々出てくる"使徒"もどきみたいな魔物を相手にした事もある。
そんな中、背後から気配を感じ辺りを見ていると、窓の方に気配を感じその方向を覗く。すると、そこにローブを着た男が窓際に座っていた。
「やぁ、初めまして。」
「誰だ……くっ!?」
隣に置いてある剣を取ろうとした瞬間、男の目が光り、まるで縛られたように動きを止めた。
「そんなに警戒しないでくれ。俺はキミの味方なんだから。」
「何言って……んだ……!?てか、何だ…これ……!?」
「話を聞いてくれるなら解放するが、聞いてくれるかな?」
「お前……何者だ?」
渋々頷くと、男は俺の身体を自由にし、俺は警戒しながら見据える。
「ん?俺?俺は世界の均衡を保つ管理者の一人、名前は"叢雲 飛鳥"。飛鳥で構わないよ……黒瀬 大雅くん。」
管理者を名乗る男、叢雲飛鳥。そいつは生前の俺の名を呼んできたので、警戒も含めて睨み付けるように眼光を鋭くする。
「そんなに警戒しないでくれ。管理者には転生した人間を見分ける力があるんだ。」
「そうかい。んで、一体何の用なんだ?まさか、転生者である俺を消しに来たのか?」
「キミにこの世界…… "黒獣"について教えに来たんだ。」
そう言うと飛鳥は俺の頭に触れ、彼に世界の情報を与えた。それを見て暫くして呆然としていたが、すべてを見終わった俺はベッドに腰を下ろし、頭を抱えた。
「あんな……あんな事があるなんて……それに、母様が……あんな……!?」
「ごめんね。けど、キミには知っていて欲しかったんだ。そこでキミが「どうしたら……」?。」
「どうしたら……あの未来を変えられるんだ……?」
タイガの言葉とその眼光に飛鳥は口元を緩ませる。
「キミが変えれば良い。それで結末は変わる。」
「そうか……んで、これからどうするんだ?」
「まずはキミにスキルを幾つか渡す。それを使って強くなると良い。」
「何でまた俺に?」
「キミが面白いからさ。ベルセルクの世界で蝕を体験したキミに興味がある。それにキミにスキルを渡してどんな風になるか見てみたい。」
飛鳥はそう言うと、部屋の窓とカーテンを閉めると懐から一冊の本を取り出す。
「さぁて、これからキミにスキルを渡すわけだが……タイガ、キミ好きな動物や色を言ってくれ。それでスキルの数が決まる。」
「?よく分かんねぇけど、好きな動物は……鷹、好きな色は赤だな。」
「ふむふむ、なるほどなるほど……えっと、この組み合わせなら……大体7~8か。よし、それじゃ……この中から選んでくれ。まとめて欲しいと思ったら、上の方に書いてあるスキル名を触ってくれ。」
「え?選んで良いのか?ありがたいけど……うわ、こんなにあんのか。えぇっと、格闘系の"武闘家"に魔法系の"魔導師"、まずはこれが欲しいな……あとは、お、覇気もあるんだな。」
俺は幾つかのスキルを触っていき、そして本を返すと飛鳥はタイガの方を見ると、自身の持つ魔眼を発動させた。
「ほぉ?"武闘家"に"魔導師"かぁ……あとは"蒐集家(コレクター)"、それに"覇気"か。この4つだけで良いのか?」
「あぁ、今の所はな。特にこれと言ってないし。」
「そうか、じゃあこっちからもプレゼントを渡すぞ。取って置きのスキルだ。」
そう言うと飛鳥は本のページの1枚にタイガが触れたスキルと別の何かを書いていく。すると、そのページを切り取り、タイガの胸に押し付けると彼の中に紙が解けていき、胸の辺りを触るが特に違和感は無かった。
「何をした?」
「ん?俺の知っている奴に、頭のイカれた女がいるんだ。そいつの持ってたスキルの中で選んだスキルを渡すよ。
因みに渡したのは成長のスキル=レベレーター。
このスキルを特別にサービスとして渡しておく。あとまぁ、何かあれば会いに来るから。じゃあ。」
飛鳥はそう言うと出ていき、タイガは渡されたスキルについて考えようとしたが、明日にしようと眠りに着いた……。
ーーー。
ーー。
ー。
飛鳥と出会った次の日、俺は城下町に行って薪の束なんかを運ぶのを手伝いながら、同い年くらいの子どもとも遊んだが、どれも親には隠れて毎日していた。バレたら怪しまれるし……。
そんな中、俺は母クラウディアに連れられて、彼女の主であり、女神の生まれ変わりとされている人物に会うためにエオスにある白の城と呼ばれる場所へと向かっていた。
「(女神ねぇ……どんな人なんだろ?)」
「タイガ、そろそろ着くわ。」
「はい。」
馬車を降りると、数人のメイドが迎えに出ており、俺は母と共に城の中に入っていくと、そこには一人の耳の長く露出の高い服……というか薄着の女性が立っていた。
「待っていましたよ。クラウディア。」
「はい、セレスティン様。」
俺と母の目の前に立っている女の人、その人は優しく微笑んでいたが、その耳は、ベルセルクの世界のエルフのパックやイバレラのように長く、肌も白かった。
というか、この人誰だ……エルフっぽいけど、この世界のエルフは皆こうなのか?
「あらあら、ふふ。初めまして、セレスティン・ルクルスです。あなたがクラウディアの言っていた息子さんですね。」
「……。」
綺麗な人だなぁ……ってか、乳でかっ。
着てる服もほとんど布切れだし。
「タイガ、どうしたの?」
「え……?あ、いえ。初めまして!タイガ・レーヴァンタインと申します!いつも母様がお世話になっております!」
「こ、こらタイガ……!?申し訳ありません、セレスティン様!」
「うふふ。良いのですよ、タイガ君は礼儀正しいのですね。ご挨拶も出来てよろしいですよ。」
うわ、誉められた……何か嬉しいけど、なんというか、この人……俺に話し掛けてくるために屈んでるから、大きな胸の谷間が目に写って……目のやり場に困る。
「この子、結構大変でしたよ。難産で、中々出てきてくれなくて、その上身体も弱かったので……でも、」
「そうなんですか……でも、こうしてあなたの下に産まれてくれたのです。クラウディア、自身の子を大切にするのですよ。」
「はい、勿論です!」
「ご両親を大切にするのですよ。タイガ君。」
「はい!」
そう返事をすると、セレスティン様に頭を撫でられた。
すると、彼女は怪訝そうに一瞬こちらを見たが、すぐに笑顔になり、微笑んだ。
その後、俺と母はセレスティンさ……様と色々な話をしたが、大司教?とかいうおっさんが来たので、名残惜しいが別れを告げてレーヴァンタイン領に戻っていった……。
しかし、まさか耳の長いエルフの特徴は持ってたけど、羽が無いとはなぁ。あれがもしかしたら、エルフの原型なのか?
~~~~。
セレスティンSide
私は自分の聖騎士であるクラウディアが連れてきた息子さん、タイガ君の顔合わせを行いました。
子供らしい愛らしい笑みでしたが、雰囲気はどことなく大人びていました。帰り際にあの子の頭を撫でたのですが、その時におかしな記憶を見ました。
それは現実とは思えない空間で、タイガ君に似た青年が黒い鳥のような人物の顔を悲しげに撫でる光景でした。
「(先程の子……タイガ君と言ったかしら。あの子はいったい?)」
その光景が何を指しているのかは分かりませんでしたが、その場面を見た時に、何故か胸の中に感じたことのない"不安"のような物を感じましたが、それは深く考えませんでした。
〜〜〜。
タイガSide
あれから数ヶ月、俺は時折母に連れられて、セレスティンの所に顔を出しており、その中で、色々な事を話したり、時には白の城の城下にある孤児院の子達と遊んだりしていた。
そんなある日、俺は日課である剣の素振りをしていた。
「1498……1499……1500!」
素振りを終えた俺は一休みするために、庭にある木の下に座り込んで、持ってきた筒に入れた水を飲み干すと、寝転がって空を見上げる。
青い空の下、こうやって空を見上げていると、鷹の団にいた時の事を思い出していた。
「(そう言えば、あいつと一緒に傭兵やり始めたのも、今くらいだったな……。)」
『タイガ、俺は……強くなる!強くなってやるんだ!!』
「(もうあいつは……ガッツはもういない。あいつは……もう。)」
そんな事を考えながら、俺は青い空を流れる雲を見ながら溜め息を吐くのだった。
「はぁ……それにしても。ガッツ達はどうしてるかなぁ。無事に生き残れたのか?まぁ、髑髏の騎士が何とかしてくれたとは思うが……はぁ。」
そんな事を考えながら空を見上げていると、空に浮かぶ雲を見ながらため息を吐く。
鷹の団にいた頃は、時折こうやって空を見上げながら昼寝をするのが好きだったなぁ。
「はぁ……このまま寝たいけど、そろそろ戻るかなぁ。」
そう言うと、俺は自室へと戻っていき湯浴みをして、疲れを取った日の夜、寝る前に行ったトイレから戻っていると両親の声が広間から聞こえていた。
「……!」
「……。」
「?(何だ?)」
会話の内容が気になり、こっそり覗いてみると、そこでは両親と祖父が言い争いをしている所を見た。
「お義父様、まだタイガは子どもです!それなのに、今から見合いなどしなくても。」
「早い内から嫁を持つのは、大切なことだ。何よりもヤツもレーヴァンタイン家に産まれた者……ならば家を継ぐために必要な事なのだ。」
「(見合い?誰が……って俺?!)」
「しかし父上、クラウディアも言った通り。まだ見合いは早いと思うのです。ですから、しばらく「黙れ!」っ。」
「子どもが産まれたくらいで調子に載るでないわ。長年貴様はクラウディアを孕ませられなかった"種無し"、子が産まれた位で、わしに意見するな!!」
祖父の……いや、ジジイのその言葉に、俺の中でプツンっと何かがキレた。自分勝手な発言、他人を見下した言葉、何より自分の家の事しか考えていない傲慢な態度……それが俺をキレさせるには十分だった。
タイガは扉を蹴破らんばかりの勢いで開けた。
「た、タイガ!?」
「なんだ起きていたのか?さっさと「……しろ。」ん?何だ、何か言ったか?」
「明日、俺と勝負しろ。俺が勝ったら父上に謝り、見合いは先送りにしろ。」
俺の発言にグラーヴは眉間にシワを寄せて、訝しそうに彼を見る。
「貴様、誰に向かって「あんたに言ってるんだ。じい様。」なに?」
「家族より家……。家なんざどうとでもなるが家族はそうはならない。それも分からない程に耄碌してんの?」
「た、タイガ!?」
「……そこまでわしに言うのなら、覚悟は出来ているだろうな?良かろう。明日、外の中庭で相手をしてやろう。」
ジジイはそう言うと、部屋を出ていきその様子を見ていた。ジジイを睨み付けていると、母が早足で駆け寄ってくる。
「た、タイガ!あなたなんて事を言うの!?お義父様を怒らせるなんて!」
「……ごめんなさい。でも、許せなかったんだ。あんな言い方されて……。」
「え……あなたもしかしてさっきのを全部聞いていたの?!けどだからって……お義父様にあんな……。」
「タイガ、私も一緒に謝る。だから「父様。」ん?」
「俺、父様がバカにされてんの……すごい嫌なんだ。それにこれは……俺の意地です。」
俺はそう言うと、2人に深く頭を下げて部屋を出ていった……。
〜〜〜。
翌朝、レーヴァンタイン家の敷地にある広大な庭。そこでは普段、クラウディアが団長を務める女性だけの騎士団"黎明騎士団"の騎士達が鍛練を行っているが、今その場には2人の人物が立っていた。
1人はレーヴァンタイン家の家長にして歴戦を制してきた老人グラーヴ・レーヴァンタイン。
もう1人はレーヴァンタイン家に生を受けた少年にしてグラーヴの孫であるタイガ・レーヴァンタイン。
2人はこれから決闘するのだが、その様子を見ようと何人もの兵や騎士達、さらにレーヴァンタイン家に雇われている使用人達。
そして、心配そうに息子であるタイガを見つめる彼の両親である母クラウディアと父クラウスがいた。
兵士達や使用人達は口々にこの決闘の結果を呟く者達がおり、その大半がグラーヴの名を挙げており、それを聞くだけでクラウディアは手を強く握る。
「覚悟は良いか、タイガ?先に言っておくが、降参はありだぞ。」
「……。」
「無理だと思ったら、すぐにでも「じい様。」ん?何だ?」
「その話、まだ続きます?時間が惜しいから始めて欲しいんですけど。」
タイガの発言にグラーヴは眼光を鋭くして、彼を睨み付けるが、当のタイガは興味無さげに首をコキコキと鳴らしている。
その様子を見て、大半の兵士達やその全員が顔を青ざめさせた。
審判役の兵士が恐る恐る2人を見ると、片手を挙げる。
「で、では……は、始め!!」
号令の合図と共にグラーヴは剣を構え、タイガはゆったりと剣を構える。
「行くぞタイガ!!うおぉぉぉぁぁぁ!!」
タイガに猛然と斬りかかるグラーヴ。しかし、タイガはそれを見聞色の覇気を使いながらバックで避けつつ、上手くいなしていく。
そんな様子に兵士達は驚いていた。
グラーヴは多くの戦で名を挙げた人物であり、歴戦の猛者である。そんな彼の剣劇は凄まじく、その一撃一撃が強力なモノであった……が。
タイガはグラーヴ以上の強者"ボスコーン"やゾッドやワイアルドなどの"使徒達"との戦を経験しており、その経験によるモノからグラーヴの剣筋を見切っていた。
そんなグラーヴの剣劇を、まだ年端も子どもであるタイガが見切っている事と、タイガの動きに一同は驚きを隠せなかった。
そんな中、攻撃が一切当たらないことに苛立っていたグラーヴはタイガに叫んだ。
「くっ!逃げるな、臆病者め!!それでもレーヴァンタイン家の男か!?」
「はぁ……それは悪かったね。んじゃ、今度はこっちから行くぜ。」
「なっ!?」
タイガはそう言うと、避けるのを止めると今度はグラーヴに向かって、真下から剣を切り上げると、グラーヴはそれを剣で防ぐ。
グラーヴはその早さに目を見開き、身体を強張らせてしまい、クラウディア達もタイガの剣速の早さに驚いていた。
「(くっ!?何だこの剣速は!?早すぎる!?)」
タイガは突きを連続で放ち、剣で防いでいたグラーヴを吹き飛ばすと、彼の体勢が崩れていたのを見て、即座に近付き足払って転ばせた。
「ぐあっ!?ぐっ……なにを!?」
立ち上がろうとしたグラーヴ。しかし、即座に剣を蹴り飛ばすと、喉元に剣を突き立てる。
「どうします?まだやります?」
「くっ!おのれ!こんなやり方……貴様、恥ずかしくないのか!?」
「……じい様、あんた馬鹿ですか?」
「なに!?」
タイガの言葉にグラーヴが鋭く睨み付ける。
「これが家での出来事だから良かったですけど、もし戦場なら……じい様は確実に殺されてました。それは分かってますよね?」
「くっ……!」
「ま、生意気盛りの孫の戯れ言と思ってください。あ、これで見合いの件は無しって事と父様としっかり話してくださいね。」
タイガはそう言うと、その場を去っていき水場に向かうと汗を流し、その後、部屋に戻ってベッドに剣を置き、ふぅ、とため息を吐いた……。