目の前の相手を、ジュドーを見て俺は頭の中が混乱していた。
何故目の前にいるんだ?死んだって聞いたのに、何で……何で敵として生きてるんだ!?
「じ、ジュドー……!?」
「おいおい、どうしたよ?そんなに驚いた顔して、俺が生きてんのがそんなに意外か?」
「お前、だって使徒に……」
「あぁ。あれか、あれなら俺は微かに生きてたんだよ。そこを今の旦那の所に拾われてな。今は月光の旦那の部下なんだ。」
ジュドーの言葉を聞いて入るが、頭に入ってこない。
ガッツとキャスカ、リッケルト以外は全員があの日、"蝕"の中で、死んだと思っていた。それが目の前で生きてて、話してて、動いてる。
「しかし、お前もあんな酷い目にあったのに、こんなふうになってるとはな?」
「ジュドー……俺はがふっ!?」
いきなり吹き飛んで何事分からなかったが、すぐに分かった。
俺は、ジュドーに蹴り飛ばされたんだ。
「がはがはっ!!?」
「ったく、昔のお前ならこんなの軽く避けただろ?まさか、昔の仲間に会えて、感動しちゃって動けなかった?なら、安心しろ。俺は、お前の敵だからな。」
「ジュドー……ぐぁっ!?」
頭を踏みつけられ、鈍い痛みに目を閉じる。そんな状態でもジュドーは構わず続けた。
「ていうか、いつまで仲間のつもりでいるんだよ?もう仲間でも何でも無いんだぜ?俺は、月光の旦那の部下で、お前と戦をしてるんだ。昔のお前はどこいった?」
「くっ……こ、の!!」
「おっと!?やる気になったか?いや、今のは咄嗟にやったって感じだな?ならこうするか、お前の今の仲間の首を斬ればやる気になるか?」
『っ!?』
ジュドーはそう言うと、こちらを見ていたアリシア達の方を見てカットラスに手を掛けると、咄嗟に身体が動いた。
「ジュドー、テメェ……いい加減にしろよ!!?」
「おぉ、怒ったか。"昔の仲間"よりも"今の仲間"か?随分冷たいな?」
「っ!違う……!」
「……何か興醒めしたぜ。ジュダル、引くぞ。」
ジュドーはカットラスを納めると、ジュダルに向かってそう言った。
「何言ってんだよ?このまま攻めた方が「楽しい事は長い方がいいだろ?」ちっ、分かったよ!」
「待てジュドー!?」
「タイガ、今度あった時は本気でやろうぜ?その時は"鷹"として相手するからよ。」
ジュドーはそれだけ言うと、ジュダルや兵士達と共に黒の城へと引いて行ったが、残された兵士達は戸惑いの表情を浮かべていた。
「引いた、のか?」
「けどなんで?」
「タイガ様のお知り合いなのか?」
戸惑いながらも顔を見合わせる兵士達を他所に、アリシアが俺に駆け寄ると肩を掴んできた。
「タイガ、あのジュドーという男は誰なんだ?お前の知り合いなのか?」
「……仲間、だった奴だ。けど、あいつは……!?」
「タイガ、それは「お姫さん。」マイア殿?」
「今は戦の最中なんだよ?余計な事は詮索するな。あたし達も引くよ。タイガも、後で説明してくれる?」
「……少しだけ、時間をくれ。気持ちの整理をしたいんだ。」
俺の言葉にマイア姉は何も言わずに頷いてくれて、その後の退却の指揮は彼女がしてくれたが、俺は足取りが重く気持ち悪いのが治まらなかった。
同盟軍に戻った俺は、みんなと会う気になれず1人で部屋に籠もることにした。ベッドなや横になる気にもなれず、その場で膝を抱えて座り込んでいた。
消音の魔法を掛けて、鍵を開けて明かりもない部屋の中、俺は1人で子どもみたいに蹲っていた。
「なんで、ジュドーが生きて……なんで俺は探してやる事もせずに、あんな所に置き去りに!?くそ、くそ!?」
何が転生者だ、何が運命を変えたいだ!?
誰も助けれなかった癖に!仲間も、友達も、部下も!?
俺はただ、ガッツの近くで慣れ合ってただけ……本質は使徒共やグリフィスよりも最低だ!!ただの自己満足のクソ野郎だ!?まだガンビーノやゾッドの方が純粋だった!!
「俺なんて、あのまま死んでれば良かったんだ……何もしなければ。「調子悪そうだな。」……飛鳥。」
声のした方を見ると、そこには飛鳥が立っていた。
「なぁ、飛鳥。教えてくんないか?転生者ってなんなんだ?ただ蘇って、好き勝手するのが転生者なのか?」
「人によって捉え方は違う。まぁ大抵は"選ばれた者"と勘違いしたりする者もいるがな。」
「じゃあ俺は、その"選ばれた者"って勘違いしたバカの方だな。好き勝手に暴れて、物語を壊して、使命感に走って、好き勝手やって……。」
「そうだろうか?俺はキミのした事は間違いだとは思わないけど?」
飛鳥はベッドに腰掛けると、どこからか持ってきたのか飲み物を飲み始めた。
そんな飛鳥の胸倉を掴んだ。
「どういう意味だよ!?俺は現に!?」
「キミのおかげで、この連合は黒犬のバカ共から救われたし、助けられた者も多くいる。キミが何もせず、ただの欲望丸出しのバカなら、あんな美女達に囲まれて、我慢できるか?」
「それは。」
「まぁこれは俺の主観だけど、間違いなら正せ。まだ二十にもなってない青二才が生意気にほざくな。」
飛鳥はそれだけ言うと、霧のようになって消えていった。
「何だよそれ、わけわかんねぇよ!?俺はどうしたらいいんだよ!?俺は、俺は…!?」
そんな時だった。
扉がコンコンとノックされた。
「誰だ……今は誰とも会いたくないんだ。」
「タイガ君、私です。」
訪ねてきたのは、セレスティン様だった……。
女神様、タイガを救ってください。