アリシアSide
タイガが消えた。
目の前で起きた事に私は戸惑っていた。一体何が起きたのか、タイガはどこに行ったのかと、様々な事を考えていると後ろからマイア殿に頭を叩かれた。
「ま、マイア殿?」
「しゃんとしな!あのバカは消えただけだ。死んだわけじゃない!」
「なぜ、何故そんな事が分かるんだ!タイガは消され」
「あの男が言ってたろ?"1名様ご案内"って。恐らく何処かにタイガを飛ばしたんだろうさ。それに、あたしの勘からしたらアイツは生きてる。」
何故そんな事が言えるんだ?生きてるかどうかも分からないのに。何故そんな事が。
「アイツのしぶとさは、よく知ってるもんでね。多分生きてるよ。」
「その赤毛の言うとおりだぜ。金髪の嬢ちゃん。俺はあいつを殺しちゃいない。旦那のいる黒の城に飛ばしただけだ。ま、今頃殺されてるだろうがな。」
目の前で起きた事の張本人であるジュダルがそう言われ、私はゆっくりと深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。
明らかにこちらを挑発して来ているが、そんな事を気にしている暇はない。戦に集中しなければ……。
すると、ジュダルはケラケラ笑いながら下品な事を言い始めた。
「しっかし、あんたら良い身体してるよな。兵士を全員殺して、その生首の前で犯してやろうかな?そこのガキは別にいいし。」
「なんだと〜!?ガキってボクの事か!」
「下衆なっ!」
私とルー・ルーが怒りをぶつけて睨むと、マイア殿が軽く返した。
「触りたいなら良いけど、生憎あたしは……タダでヤラせるほど軽くはないよ。お姫さんは?」
「私とて、下種な男に抱かせる身体は無い!」
「あの団子頭、絶対泣かしてやる!!」
私とマイア殿。ルー・ルーは得物を構えてジュダルに向かっていった……。
〜〜〜。
アリシア達が戦闘を行っている中、黒の城ではタイガ、リムル、ジュドーの3人による激しい戦闘が行われていた。
黒炎を纏わせた刀を振るうリムルの一撃を流水岩砕拳で流しつつ、ジュドーのカットラスを弾き、タイガは2人に斬撃を放つ。
そんなタイガに対して、リムルとジュドーは息の合った連携で攻めていき、そんな2人にタイガも苦戦を強いられていた。
そんな様子を見ていた月光は、腹の中でほくそ笑んでいた。
「(そうだ。苦しめ転生者……。所詮仲間だなんだと綺麗事並べたって、お前らは"自分"が大切なんだから。)」
転生者はゴミだ。クズだ。そんな奴らを受け入れる世界もクソだ。生まれるべきものでは無かった。
転生者は自分の欲通りに動いて、世界を壊して、好き勝手に生きる"ウジ虫"だ。仲間だの、親友だのと のたまっても所詮は綺麗事だ。
このタイガとかいう男だって、所詮は綺麗事並べて生きてる奴だろう。さぁ同じゴミと昔の仲間に殺されて、さっさと死んでくれ。
「ジュドー、リムル!早いとこ奴を始末しろ!」
「あいよ。」「了解。」
月光の言葉を受けて攻撃を加速させる2人、その攻撃にタイガは圧され始めていた。火花が飛び散り、黒炎に肌を焼かれ、切り傷が増えていき、衝撃に身体が潰されそうになる。
「(くっ!?うっ!?流石に、痛ぇな。けど、どうしたら)」
そんな時、頭の中に声が響いて来た。メルトだった。
『マスター、生きてる!?』
『こんな時に何なんだ!?メルト、悪いが後に』
『良いから聞いて!!アタシ、あの2人の事をバトルチェックで調べたんだけど。2人は洗脳状態なのよ!』
『洗脳!?それは分かったが、こっちからはどうしようもねぇぞ!?魔法で解けるのかも分からないし。』
すると、メルトがある提案をしてきた。
『マスター。アタシに任せなさい。アタシなら何とか出来るかもしれないわ。』
『どうする気だ?』
『マスターがアイツらの身体に少しでも触れてくれれば、アタシが神経に侵入して、洗脳を解くわ。まぁ一か八かの掛けね。どうする?やる?』
『……分かった。メルト、お前に託す!!』
『了解!!リンク、発動!!』
タイガの言葉ととメルトは精神と肉体をリンクさせると、タイガの髪と眼の色は紫へと変化し、全身に水色のラインが紋様の様に浮き出ていた。
「なんだその姿は?手品か何かかな?」
「今にわかる。少し黙ってたらどうだ?」
タイガとリンクしたメルトの性格によるモノなのか、腰に手を当てながらそういう姿に、どことなくメルトが見え隠れしている。
「少しナリが変わったからって、図に乗るなよ。ジュドー、リムル、殺せ!!」
月光の命令にタイガに迫っていく両名、その攻撃に対してタイガはまるで踊るように躱していき、渦巻く水を纏った脚で蹴りを放つ。
「がはっ!?」
その一撃はジュドーの鳩尾に刺さり、吹き飛ばされ気絶するジュドー。そして、着地した隙きを狙ってリムルが斬りかかるが、それを躱すとリムルは黒炎を発現させ、タイガ(+メルト)は水の渦を発現させ、互いに0距離で放つ。
黒炎と水の渦がぶつかり合い、とてつもない水蒸気爆発が起こる。狭い玉座の間に水蒸気が立ち込める中、タイガは気絶しているジュドーに近付くと、その胸の辺りに触れようとした時、液状化したリムルが2人を包み込む。
「くっ!?」
「くははっ!さっきの水蒸気爆発、凄い威力だってことはよく分かったよ。けど、今ので逃げなかったのは下策だったね。まぁでも、ここでジュドーと一緒にリムルに取り込まれな。」
「くっ!?(くそっ!何とか2人に触れたのに、ジュドーは目ぇ覚まさないし、このネバネバもどうしたら……風で吹き飛ばすか。)」
タイガが風の力を使おうとしたその時だった。
「(そのままだ!!)」
リムルに制され、タイガは動きを止めるとリムルは言葉を続けた。
「(っ!?)」
「(悪いがそのまま動かないでくれ。すぐに終わらせる!)」
その瞬間、リムルの身体と思われるぶよぶよとした水の幕が現れ、包まれたタイガは抜け出そうと踠くもがくが徐々に意識を失っていった……。
~~~。
タイガSide
目が覚めた場所、そこは真っ白な場所だった。
起き上がって回りを見てみると、周囲も真っ白で何もなかった。
「ここは?」
「おぉ、来たか。上手くいったみたいで良かった!」
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこには先程まで戦っていたリムル・テンペストがニッコリと笑みを浮かべて立っていた。
取り敢えず身体を起こすと、リムルと向き合って話すことにした。
「お前、いったい何をしたんだ。それにここは?」
「ここは俺の精神の世界でな。ここならあいつも入ってこれないから、安心して話が出来るぞ。今は補食するふりをしてるって訳だ。」
「そうなのか……って!それより、お前なんで話せるんだよ!?あいつに操られてるんじゃ!」
「いやぁ。実はそれについては俺の転生した際に得たスキルの大賢者とお前んとこのメルトちゃんが助けてくれてな。何とか目を覚ましたんだ。」
「あ、そうなの。(なんつうチートだよ。)んで、俺をなんでここに連れてきたんだ?」
そう訪ねると、リムルはこちらに近付いて手を差し出してきた。
「ん?これは?」
「俺がお前に力を渡すんだよ。早くしろ。」
「え!?そんな事出来るのか!」
「あぁ。お前の力であるメルトちゃんに俺の大賢者の力をプラスして、それと"捕食者"も与える。けどその代わり、スキルをいくつか食ってしまうから気をつけてくれよ?」
「分かった。そうか……あ、あのさお前と一緒にいたジュドーは、アイツは?」
ジュドーの事を訪ねると、リムルは顎に手をおいて少し考えながら答えた。
「ジュドーって奴なら、捕食してないから大丈夫だと思うがな。どんな関係なんだ?」
「……昔の、大切な仲間だ。」
「そうか……なら大切にしないとな。それじゃあ、俺もう行くわ。仲間達が待ってるからさ。」
リムルはそう言うと、光の粒子となって消えていった。
お礼を言いたかったし、まだまだ沢山話したい事もあったけど、前を向くしかない。
『メルト、気分は?』
『絶好調よ。新しい力も貰って、ますます色々やれそうだわ。』
『そうか……。』
さぁ……反撃開始だぜ。月光!