窓から差し込む朝日に目を擦りながら、ぐぅ~っと身体を伸ばす。しかしまだ眠気が覚めない。
「(もう少し寝たい。)」
「タイガ、起きてる?そろそろ朝御飯よ。」
「は……い。起きます。今行きます。」
部屋を訪ねてきた母に呼ばれたタイガは着替えると部屋を出て、家族と朝食を食べに行くのであった。
寝間着から私服に着替えたタイガは、家族の待つ部屋に向かうとそこには両親と祖父がいた。
「おはようございます。母様、父様、爺様。」
「おはようタイガ。」
「おはよう。」
「……うむ。」
タイガが席に着くと、家族と一緒に食事を摂る事にしたのであった。
その後、タイガは母と共に剣の訓練を行うことにしたのだったが、その際に兵士達がコソコソと自分を見ながらぶつぶつと話しているのを感じた。
その様子を見て、タイガはため息を吐く。
「(はぁ、またか……。)」
タイガがグラーヴとの試合を行った日から、タイガを見る者達の目が変わった。
その目には、驚いた者、関心を示した者、ドキッとした者などがおり、その者達はタイガを遠くから見るようになったが、そう言った者達の視線が彼には擽ったかった。
しかし、そんな中でタイガはある事を考えていた。
それをタイガは両親と祖父に話すことにした。
「「「旅に出たい!?」」」
「はい。取り敢えず1年と半月ほど。大陸を廻って見聞を広めたいので、旅に出たいのです。」
「何を言っているの!?そんなの危険だわ!まだあなたは子供なのよ!?」
「そうだぞ、タイガ。旅に出ずとも見聞を広めるなら。」
「俺は自分の目で見て、自分で体験したいんです。」
タイガがそう言うと、両親は黙ってしまう。
そんな中で祖父が口を開いた。
「旅に出たいのなら、好きにすれば良いではないか。」
「お、お義父さま!?」
「父上!?」
「但し、必ず1年と半月で帰ってこい。その後にお前には騎士団を作り、クラウディアの下でセレスティン様の騎士となるための学びをしてもらう。」
「分かりました。」
祖父から許しを得たタイガは傷薬などを買いに町に出て、その帰り道、彼は使用人である下男達が何かを話しているのを聞いた。
「なんだ?」
「どう考えても、可笑しいだろ?あの旦那様からあんなお子が生まれるなんて。」
「それはそうだがよぉ……。」
「養子なんじゃないか?もしくは拾ってきたとか。」
「(なに言ってるんだ?あいつら。なんつう逞しい想像力だことで。)」
そんな事を思いながら、呆れていたタイガ。しかし、次に聞いた言葉は信じられないモノだった。
「だって可笑しいだろ?あの"種無しの旦那様"からあんなお子が生まれるなんて、俺には信じられないね。もしかして、奥さまの前の男の」
「は?」
その言葉を聞いたとき、タイガは剃を使ってその下男に近付くと、頭を地面に叩き付けた。
「「「っ!?」」」
「おい、誰が種無しの子どもだって?誰が何だって?」
「「「た、たた、タイガ様!?」」」
怒りの形相で下男の1人を踏みつけているタイガを見た他の下男達が、タイガに頭を下げる。
「……お前ら、このバカと同じ事を考えてなかったか?」
「め、めめ、滅相もありません!?そんな、このバカが勝手に!?」
「そうか……なら良いが。もし次2人をバカにしたり、侮辱したら……どうなるか分かってるよな?」
「「「!!!!!」」」ブンブンっ!
下男達が首が取れんばかりの勢いで頭を下げていくのを見て、タイガは動かなくなった下男から足を退けると家へと帰っていき、その様子を見て下男達はその場に腰を抜かして座り込む。
その夜、タイガは旅支度を整えていると、扉が3回ほどノックされた。
「はい?」
「タイガ、まだ起きてたみたいね。」
部屋を訪れたのは、母クラウディアだった。
「母様、どうしたんですか?」
「タイガ、その……昼間の件なんだけど。」
「……あぁ、下男の事ですか?あの馬鹿が許せないことを言ったから、手が出ました……申し訳ありません。」
頭を下げるタイガにクラウディアは近付くと、彼を優しく抱き締めた。
「……か、母、様?」
「怒ってくれてありがとう。もし私だったら、怒るだけでは済まなかったわ。本当にありがとう……。」
「は、はい。ありがとうございます。」
優しく頭を撫でられるタイガ。
今まで彼は頭を撫でられた事はなく、生前やベルセルクの世界でも母親から頭を撫でられた事は、殆ど無くこの時が初めてであった。
「あ、ありがとうございます。母様……。」
「えぇ……そうだ、タイガ。よかったらお母さんと一緒に寝ない?」
「え……?!な、何で?」
「何だか小さい頃の事を思い出しちゃってね。それで久しぶりに寝たいと思ったの……駄目かしら?」
~~~
タイガSide
「(何でこうなった……!?)」
俺は今、母クラウディアと一緒にベッドで横になっている。正直、何でこうなったのか全く分からない。
けれど、何故か全く嫌な気はしない。
ただ……
「ん……タイガ……。」むにゅ、むにゅ……。
さっきから胸が当たってる……しかも、顔も身体も全てが綺麗だから余計に刺激になってる。
「(寝れない……!?)」
興奮で大きくなりつつある股間を押さえながら、必死に耐えていると、隣から母の啜り泣く声が聞こえてきた。
「タイガ……いなく、ならないで……お母さんを、置いて……いかないで……。」
「っ……母様。」
涙を流して寝言を呟く母を見ながら、俺は母の頭を撫でた。けど、これは俺が決めた事だ。
初めにベルセルクの世界に行った時、俺は仲間達からの反対を押しきってガッツと一緒に旅に出ることを決めて旅立った。
それは俺自身の意思だ。だから、この世界でも俺は自身の意思で歩いていく。
俺は母の額にキスをして何とか眠りに着いた……。
翌日、明け方の朝日が登るのと共に俺は旅に出た。
初めはこの世界について学ぶために世の中を歩くことにしたが、やはりベルセルクの世界よりもこの世界は、魔物という生き物が多く存在しており、種類は人形のモノから蔦に似たモノまでがおり、そのどれもが好戦的であった。
しかし、戦闘する相手としては初めは苦戦したが、経験を積むには充分すぎる相手だったが、今ではオーガなどもいたが、他にも山賊やら傭兵崩れみたいなのもいたが、それらは自分の力を上げるのには最適だったし修行にもなった。
それにその間も家族に対して手紙を送るのを忘れずに送った。
そんな中で俺はこの旅で色々な場所に行き、その中で様々な人達と出会った。
旅の初めで出会ったのは奴隷になっていたダークエルフの女の子だった。
何でも"とある貴族"の愛玩奴隷だったらしいが、その子とキャスカが重なって見えた為に、その子を助け出したあと少しだが一緒に旅をする事にした。
初めは敵意剥き出しで、何度か俺の事を殺しにかかって来たが話をしていく中でコミュニケーションが取ることができ、その中で彼女に武器や格闘術を教え、その中で一番手に馴染んでいたダガーの使い方や生きるための必要最低限の事を教え、覇気や六式についても話した。
途中で別れたので、今では何処で何をしているのかは分からないが、元気でいて欲しいと思っている。
その次はとある傭兵団に加わって路銀を稼ぐことにし、そこでは姉代わりのような人と出会った。姉さんは初めは面倒そうにしていたが、俺に色々な事を改めて教えてくれたし、一緒にいてとても気が楽になった。
けど、とある戦場に一緒に出た時にそこで姉さんを罠に嵌めようとする奴らの話を聞いてしまい、俺は咄嗟にその場から離れたがその事を誰かに話す気には慣れなかった。
まぁでも、話を聞けたおかげで俺も対処できたので姉さんをそいつの代わりに助けて、無事に事なきを得たんだが……これが不味かったらしい。
傭兵団を去る際に、その男の部下らしい奴らに囲まれてリンチをされそうになり、危うく殺されそうになった。まぁそいつら全員返り討ちにしたけど。
傭兵団を去ってしばらくした頃には、俺はオスティア大陸の山を2つ超えた場所にある"東方"と呼ばれる国に着いた。
そこはとても穏やかな空気に包まれていたが、どこか懐かしいと感じるような場所でもあった。これは俺が元日本人だからなのかも知れないなと感じた。
そこである女の子と出会ったのだが、その子は物静か……というか能面みたいな子だった。
何か話し掛けても、あまり感情を見せてこない彼女を引っ張って街の中に出ていた"屋台"とやらに2人で回ったのだが、そのどれもがとても美味かったし、あの子も時折笑ったり驚いたりしてこちらも楽しかった。
そんな時に黒い巨大な"鬼"と呼ばれる怪物が東方を襲った。
その鬼を見て一瞬ゾッドを思い浮かべたが、奴と対立した時はもっと恐ろしかった為に、あの鬼は対して怖く感じなかった為に難なく倒す事が出来た。
その後、一緒に女の子の母親からお礼をしたいと言われたが俺は何か嫌な予感がしたので、俺は旅を続ける為に足早に東方を飛び出した。
「(約1年ちょっとで色々な所に行ったもんだなぁ。)」
約二月が過ぎたある日、大陸にある湖の近くで休んでいると人の気配を感じ、俺はその方向を見るとゆっくりと林の中から飛鳥が現れた。
「やぁ、タイガくん。」
「飛鳥、久しぶりだな。何か用か?」
「キミがだいぶ成長してきてるから、そろそろ俺もその成長の手伝いをしようと思ってね。」
そう言うと、飛鳥は何もない所に木で出来た扉を1つ作った。
「何だその扉?」
「この扉の先にはいくつかの階層を作ってあり、その1つクリアすると報酬を得られる上に、1つ上の階層に入る。」
「ダンジョンみたいなものか。どんなのがいるんだ?」
「それは入ってからのお楽しみだ。それでどうする?やる?やらない?」
"やる"か"やらない"かと聞いてくる飛鳥だが、俺の中では既に答えが決まっていた。
「やるぜ飛鳥。強くなれるならなんだってやるさ!」
「了解、んじゃあ早速入ろう。ちなみに階層は1から最大で100まであるけど、どうする?」
「一つ一つクリアしながら上を目指していく。まずは10階層を目指していく。」
そうか。とだけ言うと、俺は扉をくぐった。
「ここは……」
扉をくぐった先には何もない真っ白な空間が広がっており、その中心には飛鳥が座っていた。
辺りを見廻しているとパチンッという音が聞こえて振り向くと、そこには傭兵のような身なりをした男が5人ほど立っていたのである。
「これは。」
「俺が作った敵だ。第一階層の敵で平均的な大人の男と同じにしてある。いつでも初めていいぞ。」
「了……解!」
俺は剣を抜いて男達に向かって斬り掛かった。
傭兵時代に教わった事なんだが、戦場ではよーいどん!は一切無い。そんなのは隙きを作ってしまう。だからやるなら速攻を仕掛けるのが一番だ。
あっという間に5人を倒すと、飛鳥は口笛を吹く。
「騎士の家の子供とは思えないな?」
「戦場でよーいどんがあるわけ無いだろ?だからこうさせてもらった。」
「いい判断だ。んじゃ、早速第2階層行ってみよう♪」
そう飛鳥が言うと白い空間に階段が現れ、それを登って進むことにした……。