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1 出会い
ーー……そこは燃え盛る炎が拡がっていた。そして、その炎の中から数多の悲鳴が響き渡り、その中には下衆な笑い声も響き渡っている。
タイガはそんな光景を見て、言葉を失っていた。
「(なんだ、これは……!あれは、旗?)」
そんな凄惨な地獄のような場所で、一際目立つ旗が現れた。
それは黒を基調にした中に、白の虎と交差した剣が標された旗だった。
すると、景色は暗転し真っ暗な何も無い暗闇の中、その中をタイガは立っていた。
「ここは?さっきまで……?」
タイガは背後に現れた光に振り返ると、そこには1人の光輝く人物が立っていた。その人物はタイガに何かを語り掛けていた。
「タイガ様……。」
「誰だ、あんた?」
「お願いします。女神の翼よ。私達を、未来を救ってください……。」
「未来?未来っていったい何の事なんだ?それに、あんたはいったい誰なんだ?」
そう言うタイガだったが、その人物はゆっくりと消えていき、その後を追おうとした瞬間に起きた強い光に目を閉じる。そして、目が覚めると、そこは自室のベッドの上だった。
隣では昨夜の相手であったセレスティンとアリシアがスヤスヤ寝息を経てていた。
「今のは、夢か?変な夢見ちまった……疲れてんのかなぁ。って、考えても仕方ない。起きて仕事するか。」
タイガはそう言うと、ベッドから起き上がると朝の身支度をしに行き、仕事に取り掛かった……。
アルファディアスが建国されてから1年。
人間と多種族とが互いに手を取り合い、平穏に暮らしていける国としてオスティア全土にその名が広まっていった。
その中でアルファディアスの領土と民、そしてアリシア達を狙う者達が戦争を仕掛けてきたが、それはタイガ達によって蟻の如く粉砕されたのである。
そんな中で、かつてオリガとクロエが住んでいた黒の城。そこは今、2人や奴隷だった者達や以前に住んでいた国を追い出された者達の一時的に住まわせる場所になっていた。
セレスティンという女神にして、国主の下。アリシア、プリム、カグヤ、ルー・ルー、マイア、クラウディア、オリガ、クロエ、タイガという面々が集まり、セレヌスに平穏が戻っていた。
そんなアルファディアスを、セレヌスの森からまるで親の敵でも見るように睨み付ける男がいた。
「くそ……何がアルファディアスだ。あの場所はもともとヴォルト隊長の場所だっての……!」
この男は黒犬の生き残りである。
月光がヴォルト達を殺したのを見て、その力に失禁し無様に逃げて森の中に隠れていたのだが、戦争が終わったのを見て、男は月光が倒されたのを知り、新しく建国されたアルファディアス……セレスティンを憎んだ。
こうなったのは、あの女神達のせいだと。
「あんな露出女神、ヴォルト隊長より下の癖に何が女神だ……乳と尻以外取り柄のない無能淫売の癖に……!」
完全な逆恨みである。
しかし、ヴォルトを失った彼にとってはアルファディアスとセレスティンは敵意を向ける対象でしかなく、冷静な判断が出来ないでいた。
「あの淫売、消してやる……!」
そう言う男の手には、藍色の水晶球が握られていた……。
一方、その頃アルファディアスの国主であり、女神として崇められているセレスティンは、自身が住む白の城のテラスから民達の前に現れて微笑みながら手を振っていた。
そんな中、タイガは警備も兼ねて遠くからその様子を見ていた。
「(平和だなぁ……ま、平和なのは良いことか。けど……。)」
そんな中、タイガは今朝見た夢のことが気になっていた。
「(あの光景はなんだったんだ?それに、あの光ってた人……女神の翼とか言ってたけど、いったいなんだったんだ?)ん?」
タイガは遠くから歪な気配を感じとり、その方向を見ると、そこには藍色の水晶珠を持った男がいた。
その男に嫌な予感を感じたタイガは、密かにその後を追った。男はテラスに続く階段を上っていき、後少しで到達しそうになった瞬間。
「おいあんた、ここから先は関係者以外立ち入り禁止だぜ?」
「……お前。」
男はタイガを見ると、目付きを鋭くする。
「お前、七盾の奴だよな?確か、仲間を半壊させた。」
「あんた誰だ?」
「俺は黒犬の生き残りだよ。お前らに殺されたな。」
「黒犬の?それで、そんな奴が何する気だ?」
タイガの問いに男は鼻で笑って返す。
「それを話すわけないだろ?まぁ、あの淫売女神には消えてもらうけ「あっそ。」………え?」
男はタイガに首を落とされ、その場に喋らない肉塊となった。そんな死体の手元からキラリと光るものを見つけた。
「阿呆か、相手を前に隙きだらけだ。しかしこれは、こいつが持ってたものか?こんな玉っコロで何する気だったんだ?」
そう言いながら、拾った藍色の水晶珠を見回すタイガ。
その時だった。
『助けて……』
「え?何だ今の……あ!」
突然聞こえてきた声に対して辺りを見回したが、何もなく油断して珠を地面に落としてしまった。
その瞬間、空間が歪みその中に吸い込まれ始めた。
「なっ!?何だ、これは………!!」
タイガは何とか踏ん張ったが、身体は徐々に引っ張られていき、最後には空間に吸い込まれていってしまい、その場には倒した兵士の死体以外何も残らなかった………。
~~~。
タイガSide
「うわあぁぁぁぁ!?」
俺は今、真っ暗な中を落ちていっている。
突然の事で何が起きているのか分からずに、混乱するしかなかった。
「くそ、どうなってるんだこれは!?身体が思うように動かねぇ!」
身体がまるで思うように動けず戸惑っていると、何かにぶつかって落下が止まった。
「痛てて……!ここ、どこだ?」
辺りを手探りで調べてみると、上と思われる場所が少し動き、ゆっくりと動かすと朝日が差し込み、一瞬眩しく思いつつも何とか全て開くと、そこは森の中だった。
「何だここ……俺なんでこんな所にいるんだ?てか、これなんなんだ?」
ゆっくりと自分が入っていた箱から身体を起こすと、今まで自分が横たわっていたであろう場所を見る。そこには大きな箱があり、それは箱というよりは棺だった。
「これって……棺か?!なんで俺棺から出てくるんだって、落ち着け落ち着け。まず何があったか思い出せ。」
そう言って俺は自分に何が起きたのかを、思い出すことにした。
その時だった。背後からガサガサという音が聞こえて振り返ると、そこには1人の同い年くらいの剣を携えた明るい赤毛の女が現れた……。
「本当にいた。まさか、予言通りとは……」
「誰だお前は?」
タイガは目の前に現れた少女を、警戒しながら見据える。状況が分からず、さらに剣を持った物が現れれば警戒せざるおえない。
そんな中、少女は怪訝そうにタイガを見る。
「ふむ……警戒するのは分かるが、私は敵ではない。あなたはタイガ・レーヴァンタインで合っているか?」
「そうだが、あんたは何者だ?」
「これは失礼した。私は"イリス・アルケーディア"。神聖王国アウレリアの生まれで、騎士をしている。貴方の事も知っていますよ……"女神の翼"タイガ。」
「何また、その中二病みたいなネーミングは?」
「チュウニビョウ?まぁここではなんだ、着いてきてくれ。」
イリスはという人はそう言うと、用意していた馬車に乗り込み俺は不思議に思いながらも、乗車すると馬車は移動を始めた。
森を出ると、馬車は高原を進んで行った。
「えっと、イリスさんだったか?ここは何処なんだ?この馬車はどこに向かってるんだ?」
「うむ。一応話しておいた方がいいな……まず、ここはオスティアではあるが、貴方のいた時代から年月が過ぎているが……。」
「す、過ぎているって……どの位だ?」
「ざっと数百年程だ。」
「す……数百年!?!?マジでか!?てか、ここオスティアなのか!?」
タイガの言葉にイリスは静かに頷き、タイガは落ち込んだようにため息を吐き、ガクンと項垂れた。
目覚めたら棺桶の中、さらには数百年後の未来に飛ばされたのだ。本来ならば失神するだろうが、転生や敵との激戦、さらに前の世界で地獄を見たタイガは、存外大丈夫だったようだ。
そんな中、イリスは窓の外を見た。
「項垂れている所、申し訳ないがそろそろ着くぞ。」
「着くって……どこに?」
タイガが馬車から外を見ると、視線の先には巨大敷地と真っ白い城のような建物が見えており、どこか神聖な雰囲気を醸し出していた。
さらにその城門には、数人の騎士と思われる女性達がおり、馬車を凝視している。
「ここは……。」
「神聖アウレリア王国、私の生まれた国だ。着いてこい。」
馬車を降りたタイガはイリスに連れられて、門を潜ると廊下の中を進んでいく。
青空が広がり、どこまで美しい景色が見える中、タイガは何か異質なものを感じていた。
「(なんだ、この場所……何かいるのか?てか、この気配って……。)」
その異質な気配にタイガは首を傾げた。
その気配は、彼の知る人物に酷似した物だったからである。
そんな中、イリスはある扉の前で立ち止まった。
「ここは?」
「ここから先は、決して人には口外しないでくれ。良いな?」
「この先に誰かいるのか?」
「着いてくれば分かる。」
そう言うと、イリスは扉を開けた。
そこには下に通じる階段があり、2人は階段を降りていくと、その先には地下神殿が広がっており、その辺りの光景にタイガは辺りを見渡していた。
「凄い……こんな場所があるとは。」
「本来ここには、私しか来れないのだが、この度はお前に会いたいから連れてきて欲しいと、彼女に頼まれたのだ。」
「"彼女"?誰か住んでるのか?」
「まぁそんな所だ……着いたぞ。」
イリスの言葉に正面を向くと、そこには1人のエルフの女性が座っていた。
その女性に向かってイリスは膝を着いた。
「セラフィーナ様、予言の者をお連れいたしました。」
「イリス、ご苦労様でした。」
「はっ。」
騎士の礼をとるイリス、しかし、タイガは目の前にいるセラフィーナという名のエルフの女性を、静かにじっと見ていた。
「(セラフィーナ……なんだかセレスティン様に似てる……。)」
そんな中、セラフィーナはタイガに近付いて、頭から爪先まで見渡す。
すると、タイガの手を握った。
「え?!ちょ!?」
「お待ちしておりました。女神の騎士にして翼、タイガ・レーヴァンタイン様。どうか、この世界をお救いください。」
「え?ごめん、ちょっと待って。話がぜんっぜん見えてこないんだけど……いったい何を。」
「そうですよね。混乱しているのに、なんの説明もせずに……ではお話しします。この世界の現状を。」
セラフィーナは真剣な表情で、この世界で起きている出来事を語り始めた……。
感想などあれば、下さい。