数百年前、オスティア大陸でもっとも名高い国であったアルファディアス。
かつて女神が建国し、暖かく豊かなその国は大陸で名を轟かせていた……しかし、その国の王であり女神であったセレスティン・ルクルスだったが、その国は今、女神の国ではなく人々を恐怖に陥れる国となっていた。
今は"蹂躙国家"と呼ばれ、かつての名であるアルファディアスと呼ぶものは誰もいない。周囲の国々から恐れられており、その国是はただ一つ。
『弱き者は、強き者に絶対服従しなければならない』という国是に従い、蹂躙国家と呼ばれるようになった。
そして、その玉座には1人の少年が王として君臨しているらしく、その隣にはティーフリングと呼ばれる淫魔の女性が寄り添っており、その淫魔によって蹂躙国家には娼館が軒を連ねている。
さらにそこの娼婦達は、奴隷や蹂躙国家との戦争によって捕虜となった女性達が働かされているとのことらしい。
「……これが、この世界で起きている事です。」
「おいおいおい……マジかよ。壊れすぎだろ未来。何でそんな事に?」
「分からない。何が理由でそんな事になったのか、何故女神の国ではなくなったのか……。」
「まぁ、どっちにしても厄介な事になってんなぁ。」
イリスの言葉にそう言いながら頭を掻きながら、ため息をつくタイガ。
まさか未来がこのような事になっているとは思わなかったらしく、ショックを受けてうちひしがれていた。
そんな中、タイガは有ることを思い出した。
「あれ?そう言えば、セラフィーナ、さんだっけ?あんたはなんで俺の事を知ってたの?あと、このイリスが言ってた女神の翼ってなんのことだ?」
「貴方の事です。とても有名で、戦ではまさに獲物を狩る獣の如く敵を討ち、民には慈愛をもって接していたと。」
「何それ初耳。」
「そして……その、か、数多くの女性を愛し、沢山の子を成したと。」
「何それ初耳!!?」
恥ずかしさのあまり、耳まで赤くするタイガであった。
イリスはそんな様子を見て、やれやれと言った感じの呆れたようなため息が漏れでた。
「それで?この時代に呼んだのは、セラフィーナ。あんたなのか?」
「……はい。タイガさん、どうか私達に力を貸してください。」
「……大体分かった。けど、少し時間をくれないか?この時代の歴史やら地図やらの本があるなら、それを見たいんだが。」
「それは構わない、こちらで用意する。セラフィーナ様、そろそろ彼を部屋に案内しますので、失礼します。」
タイガはイリスに連れられて、客間に案内され、その部屋で休むことにした。
その背を見送るセラフィーナは、胸の前で強く手を握った……。
その夜、全員が寝静まった中、イリスはセラフィーナに会いに地下神殿へと訪れていた。
「イリス、昼間はありがとうございました。」
「いいえ、私は貴女の予言に従ったまでです。」
「イリス、今は2人なのですから、いつものように接してください。」
「そう……だな。すまない、セラ。」
セラフィーナの言葉にイリスは苦笑する。
2人は親友であり、騎士団の団長であるイリスも彼女の前では、穏やかな笑みを浮かべる。
そんな中、イリスはセラフィーナに質問をした。
「セラ。あの、タイガという男……信用できるのか?私には奴が噂の虎王には思えないのだが……。」
「彼は、かつての女神セレスティン様の騎士だった者。そして、悪名高かったヴォルトや悪の化身であった月光を討った人物……信用は出来ます。」
「……セラがそう言うなら、信用する。お休み、セラ。」
そう言って、神殿を後にするイリス。
その背を見送ったセラフィーナも、再び眠りに着いた……。
一方でイリス・アルケーディアによって用意された部屋に案内されたタイガは、その後 案内された浴室に行き身体を綺麗にした後、部屋に戻って休んでいた。
そんな中、タイガは空を見ながら静かにため息を吐いた。
「はぁ……これからどうするかなぁ。いくらセレヌスとは言っても、帰る方法が無いしなぁ。」
そんな事を呟きながら、ベッドに横になるとそのまま眠りに着こうとした時、何処からか声が聞こえてきた。
『イガ……タイガ……タイガ。』
「ん?誰だ?」
突然聞こえてきた声に辺りを見渡すが、そこには誰も居らず首を傾げた。
けれども、その声は気のせいではなく声は頭の中に響いていた。
『聞こえるか?タイガ?』
「この声は、飛鳥か?!」
『あぁ、良かった。聞こえてるみたいだね?今何処にいるんだ?』
頭の中に聞こえてきた飛鳥の声に安堵しながらも、彼の質問にタイガは頭をポリポリと掻く
「それが……未来にいるんだよ。」
『未来?』
「あぁ、何でも150年程後の未来のオスティアに。」
『…………未来、だと?』
そこからタイガは飛鳥に自分に起こった事を、ありのまま話した。
その内容に、飛鳥はふむっと返してきた。
『つまり、君はその男が持っていた玉に触れた瞬間に、未来に飛ばされたという訳か。』
「あぁ、しかもアルファディアスは蹂躙国家ってのになっちまってるらしい。」
『そうか……分かった。こちらから何とか出来ないか調べてみる。君はしばらくその世界にいてくれ。』
「分かった……あ、あと。皆はどうしてる?」
『消えた君を探してるよ。まぁ無事だったという事は、こちらから伝えておく。まぁ、相当荒れるだろうけどね。』
飛鳥の言葉にタイガは、すまんっと返すと声が消えた。
声が消えたのを感じたタイガは、ベッドに座り込むとそのまま倒れ込んだ。
「はぁ……これからどうなることやら。まぁ考えても仕方ないか……とりあえず寝るかぁ。」
タイガはそう言って眠りに着いた。
これからの事は、これから考えようという風に切り換えて。
もうまもなく今年も終わりですが、これからも宜しくお願いいたします。