「う……ん、朝か……。」
窓から差し込む朝日を眩しげに呟きながら、ベッドから身体を起こすタイガ。
外を見ると、そこには昨日見た景色が広がっており、それを見て、夢ではないと気付いたタイガは、はぁっ、とため息を吐く。
「起きたら夢でした!……なんて事は無いかぁ。起きて素振りでもするか。」
タイガはそう言って、ベッドから起き上がると水場に行って顔を洗い、浄化で綺麗にした服に着替えると、庭に向かおうとした時、扉がノックされ、1人の女騎士が入ってきた。
「おはようございますタイガ様、イリス様がお待ちです。朝食を済ませ次第、中庭にお向かい下さい」
「分かった、すぐに向かう。」
タイガがそう返事を返すと、女騎士は一礼をして部屋を出ていき、タイガも部屋を出て水場にて顔を洗い、歯磨きをした後、朝の食事を終えてから朝に顔を会わせた女騎士と共に中庭に向かった。
するとそこには、剣を腰に下げたイリスと部下と思われる数人の騎士の姿があった。
「おはよう、よく眠れたか?」
「あぁ、よく寝たけど。これは?」
「うむ。すまないがお前の力を見せてほしいんだ。どれ程の実力があるか見ておきたくてな。それに、部下の者達にもお前の力を見せておきたいのだ。構わないか?」
「全然構わないぜ。むしろ身体を動かしたいと思ってたんだ。」
タイガはそう言うと、用意されていた剣を2本抜き構えると、イリスも腰に指していた剣を抜くと正眼に構える。
互いに動かずにらみ合い、ピリピリとした空気が周囲を立ち込める中、木の葉が一枚 地面に着いた瞬間、タイガとイリスは動き、双方の剣がぶつかり合う。
火花が散り、ギリギリと鍔是り合いになるが、イリスの表情は苦しそうだった。
「くっ……!」
「動きや剣速、中々速くて驚いた。こんなに速い奴は中々いないぜ?」
「よく……言う!」
タイガの軽口にイリスは、歯を食い縛ってそう言い返す。しかし、彼女の方は一切余裕はなく、その場で堪えるだけであった。
「(な、なんて力だ……!返すことが、出来ない……!)」
「結構強いな。あんた。んじゃあ、そろそろ……本気出すとしますかねぇ!」
タイガはそう言うと、身体から覇王色の覇気を放ち始めた。
~~~。
イリスSide
私はイリス・アルケーディア。
オスティア大陸にあるアウレリア王国で騎士団長をしている者だ。
私は今、友であるセラの予言で過去から来たという男、タイガ・レーヴァンタインと手合わせをする事にした。
最初は虎王と呼ばれていたこの男の事が気になったからなのだが……。
しかし、目の前にいるのは……本当に人間なのか!?
「(こいつは……こいつは……!いったい何なんだ!?)くっ……はぁ!」
自分を奮い立たせるように声を出して、タイガから離れるとヤツを見る。
タイガから発せられている威圧するような気配……その押し潰さんばかりの覇気を感じた私の頭の中には、双剣でバラバラに切り裂かれる光景が頭に浮かび、その場から飛び退いて剣を構える。
その瞬間、タイガが迫ってきており私の頭に向かって2つの剣が振り下ろされ、私はそれをギリギリの所で避けると、今度は衝きが心臓に向かって迫っていた。
それも避けると衝きは地面を深く抉った。
その後も迫る攻撃を避けながら、何とか攻める隙を探すがそれが中々見つからない。
その後、衝きの連撃を受けながらも距離を取って、ゆっくりとこちらに近付いてくるタイガを見ながら、私は身体が震えるのを抑える。
周りの部下達もタイガの出す覇気に、息を飲み動けなくなる者やへたり込んで座る者、中には気絶した者までいた。
「(な、何なんだ……こいつは……!?こんな気迫、人間の出すモノなのか?!)」
「どうした?騎士をやってるなら戦くらいはしてるんだろ?なら、この位は大丈夫だろ?」
タイガはそう言うと、楽しげに笑みを浮かべていた。
その目には真っ直ぐに私だけを見ていた。
「(これが……タイガ・レーヴァンタイン。なるほど、虎王の名は伊達ではないという事か。)……来い。」
「……。」
「?おい、どうした?剣を鞘に戻して。」
私を見たタイガは剣を鞘に戻して地面に差すと、それを見て私は首を傾げた。
~~~。
「終わりだ。」
「何故だ?まだやれるだろう?」
「いやぁ、これ以上やると庭が滅茶苦茶になるだろうし、それに互いに手の内晒すのもどうかと思ってな。」
「……それもそうだが、まぁ、分かった。」
「んじゃ、悪いがちょいと水場借りるぜ。」
そう言ってタイガは水場へと向かっていき、イリスは握っていた剣を鞘にしまう。
イリスはタイガが置いた剣を拾って見てみると、2つとも柄の部分が、ぐしゃりと潰れ罅が入っており、使い物にならなくなっていた。
「(この罅の入り方、どんな力の入れ方をしたら、こんな罅が入るのだ?!それに、刀身に至ってはすでにグラグラだ。)」
「い、イリス様。この剣、どうなさいますか?」
「……修理に出しておいてくれ。」
部下にそう命じたイリスは、先程までタイガが放っていた威圧感……覇気について考えていた。
「あの覇気……あれが鷹の戦士としての力の一端か。恐ろしいモノだった。(しかしあの者がいれば、恐らく奴等に……蹂躙国家に対抗できる……!)」
イリスは今、このセレヌス大陸を我が物顔で好き勝手している蹂躙国家をよく思っておらず、近々彼らに対して大規模な戦争をする事を考えていた。
そんな中で偶然出会ったタイガという存在に、イリスは強く拳を握る。
「これが虎王か……セラに話してみるか。」
一方、イリスとの手合わせを終えたタイガは水場から戻ると、客室で彼女から用意された"この時代"の地図を見ていた。
「東方"フクスヴァルト"……魔術師の郷"キミア"……商業国家"テュルル"……文学の国"エルドニア"に、蹂躙国家"アルファディアス"……何かずいぶん変わっちまったなぁ。」
タイガはそう言うと、かつてのセレヌスの事を思い浮かべた。
確かに過去のオスティアと今のオスティアとでは大きく違う所が多く、タイガは頭を抱えながら天井を見上げながらベッドに横になる。
「何か変な感じだ。分からないままってのは気持ち……そうだ!分からないなら、分かるようになれば良いんだ!」
タイガはそう言うと、バッ!と起き上がり立ち上がる。
「昔みたいに旅に出れば良いんだ。そうすれば分からないことも無くなるだろうしな!」
『呑気な事を言ってるね?』
「ん?飛鳥か。」
頭の中に聞こえてきた飛鳥の声に、タイガは身体をゆっくりと起こす。
『元気かい?』
「まぁそれなりに、な。んで、何か用か?」
『あぁ、まぁね。とりあえず君が無事だという事はみんなには伝えた。無事だと分かるとホッとした様子だったよ。アリシアやルー・ルー、カグヤは未来に行くって言ってたよ。クラウディアとマイアが抑えてる。』
「そうか……。」
『あと、こちらから君に色々と渡すものがある。数は少ないけど、上手く使ってくれ。』
その言葉の後、タイガの足元に秋水、さらに一冊の本とジャラっと少し大きめの袋が現れた。
袋の中を見ると、そこにはタイガの所持金が入っていた。
「色々送れんだな?」
『軍資金と秋水。そして、魔法と医学の本。今はそれしか送れない。』
「いや、これだけ有ったら何とかなる。ありがとうな。あ、あと。みんなには元気だって伝えておいてくれ。」
『了解。じゃあね。』
飛鳥はそう言うと、タイガはベッドに倒れ込み、ゆっくりと瞼を閉じて眠りに着いた……。
その翌日、タイガはイリスに旅に出るという事を伝えた。
「旅に出たい?」
「あぁ、この世界を知るためにも旅をさせて欲しいんだ。」
「しかし、あなたは我が国の客人。何かあっては……。」
「大丈夫!ある程度まで旅したら戻るから。頼む。」
渋っていたイリスだったが、セラフィーナに旅に出ることを話すと彼女はそれを承諾し、それを伝えるとタイガは翌日旅に出ることにしたのであった……。
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イリスSide
タイガが旅に出たのを見送った私は、セラに会いに彼女のいる地下神殿に来ていた。
「セラ。彼を旅に出しても良かったのか?私には一抹の不安があるのだが。」
「イリス。それは……」
「お前の言葉だ。私はそれを疑う気はない。だが、彼は過去の者だ。"奴"の力には勝てるか分からないし、その力が蹂躙国家に通用するかどうか。」
私の言葉にセラは優しく微笑む。
「イリス、わたしは彼を信じます。彼は女神セレスティン様の騎士であり、彼女が愛した殿方……そんな彼を信じたいのです。」
「セラ……分かった。お前が信じるのなら私も信じよう。友としてな。」
それだけ言うと私は地下神殿から離れていった。
しかし、タイガ・レーヴァンタイン……奴から感じたあの"威圧感"、あれはいったい何だったんだ?