オスティア大陸の南東にあるとある国。その空は厚い雲に覆われており、そんな空の下にあるのが、かつて女神セレスティンが建国したとされるアルファディオスだったが、今では"蹂躙国家"と呼ばれている。
蹂躙国家と呼ばれる由縁、それはこの国の在り方その物であり、国是ともされている。この国では弱者は命以外の全てを蹂躙される。
そんな国に存在を表すように建つ嘗ての"白の城"と呼ばれた城、その一室では1人の男が紅茶を飲みながら書簡に目を通していた。
そんな彼の背中には黒い翼が生えた女性が寄りかかっていた。
「ねぇ〜、そんなの書記官達に任せて、私とシましょ?」
女性の名はラドミラ。
"ティーフリング"と呼ばれるサキュバスであり、強い魅了の力を持っており、その力で現王である彼の側にいる。
性格は自堕落かつ傲慢な性格であり、アルファディオスの男達の心身を悉く支配しているが、彼女の魅了を一切受けない人物の1人である彼に、興味を抱いている。
「ねぇ~、お茶なんて飲んでないで~、私と気持ちいい事しましょう?」
「……。」
「ねぇ~、聞いてるの~「喧しい、甘ったるい臭いが移る。離れろ淫売。」あら、ひっどぉい。女を邪険に扱うなんて、最低よ?」
「喧しい。そんなに精液が欲しいなら、城下にでも行け。俺はしない。」
冷たく引き離す彼に、ラドミラは妖艶な笑みを浮かべながら抱きついて、その豊満な胸を押し当てる。
「ふふっ、本当に素敵よあなた♡私の魅了を受けても平気なんて。本当に素敵♡。」
「はぁ……いい加減にしろ。紅茶が不味くなるし仕事が遅れる。」
「い・や・よ。私に付き合ってくれたら離れてあげる♡」
そう言って自身の股間を触ってくるラドミアに、彼は溜め息を吐くと影から自分と同じ分身を10体ほど生み出し、その全員を彼女に宛行わせた。
「ほら、そいつらで好きにしていいから失せろ。」
「あら。ありがとう♡」
そう言うとラドミアは寝室に向かい、そこで色事を始める。
そんな中、1人の別の白の衣服に身を包んだ女性が部屋に訪れた。
「失礼します。陛下、少しお時間宜しいでしょうか?」
「あぁ、エレオノーラさん。」
部屋を訪ねて来たのは、蹂躙国家にある教会という組織で司教をしている者で、彼の理解者でもあるエレオノーラ・ベルンであった。
彼女はこの国最後の良心とされており、蹂躙国家の在り方に疑問を持ちながらも、彼とこの国の理解者となった者でもある。
また彼もエレオノーラとは口論が絶えなかった時もあったが、接していく中で互いに意見を交換したり、国の在り方について話す事も多くなっていた。
「陛下、お疲れのところ申し訳ありません。ですが、こちらの書簡を。」
「これは……あぁ、黒犬か。あいつら好き勝手やってるな。」
書簡に書かれた名を見て、彼は呆れたように苦笑する。
「しかし陛下、いくらラドミア様の肝いりとはいえ、彼らの所業は目に余ります。特に捕虜への暴行、街の中での婦女子に対しての行為の無理強い、挙げ句の果てには戦果を独占するなど、どれも酷すぎます。」
表情を強張らせながらそう言うエレオノーラの言葉に、彼は頭を抱える。
彼らの言う黒犬とは、正式には黒犬騎士団と呼ばれているが、オスティアの者達は侮蔑と恐怖を込めて、嘗てのように黒犬と呼んでいる。
そして、彼が持っている書簡には黒犬騎士団の悪行が記されており、彼は大きな溜め息を吐いた。
「全く、これで自分が英雄になったつもりかよ。まぁ、ある意味でこの国の国是を体現してるわな。」
「陛下は、これをお許しになるのですか?」
「いや、近々こっちからも言っときますよ。」
「ありがとうございます。では、失礼致します。」
エレオノーラは行儀正しく礼をすると部屋から出ていき、残された彼は、ふぅ。と溜め息を吐いて窓から空を見上げた後、彼はローブを身に纏うと何処かへと出かけた……。
〜〜〜。
一方その頃、イリス達のいるアウレリア領から旅に出たタイガは、広大な砂漠の中にある都"エルドニア"を目指して歩いていた。
「くぅ〜。暑い、暑すぎる。砂が熱されてて暑いし歩き辛い。けど、この先にエルドニアがあるんだよな。」
額から汗を流しながらも進んでいくタイガ。
砂に足を取られそうになりながらも、彼は目指して進んでいくのだった。
そして、遠くのほうに黄金色をした丸い屋根の城のような物が見え、町の入り口と思われる場所に降り立つと砂漠に到着る。
「ここがエルドニアかぁ。確か学問が盛んな国だったなぁ……どんな国か楽しみだ!」
そう言うとタイガは国の中へと入っていった。町の中は土作りの民家と露店が多く、町も賑わいを見せていた。
そんな中、エルドニア城の離宮では2人の男女が交わっていたが、褐色肌の女性の方はお世辞も楽しげではなかったが、男の方はまるで手放さないと言わんばかりに腰を振る。
「おおぉ!ミスティオラ、ミスティオラ!」
「……っ」
「イクぞ、イクぞ!!」
激しく腰を動かして、ミスティオラと呼ばれた相手の女性に自身の子種を放っていたが、その際にもまるで彼女を自分の物と言わんばかりに抱きしめながら腰を振っていた。
「ミスティオラ。わしは、わしはお前さえいれば……」
「……。」
まるで呪詛のようにそう呟くと、男は満足したのか眠りについてしまった。一方でミスティオラと呼ばれた"ダークエルフ"の女性は心ここにあらずと言うような表情で、近くの飲み物を金でできたグラスに入れると、静かに飲み下していく。
その後、少し考えた後にミスティオラは何を思ったのか、外を見た後に手近にあった布を被ると、部屋を出ていった。
そんな中、ミスティオラは考え事をしていた。
「(かつては名君と呼ばれた者もこのザマとは……このまま国を出てたとしても、妾には居場所など。)」
そんな事を考えていると、ミスティオラは目の前を歩いていた人物、タイガとぶつかってしまった。
「あ、悪い大丈……!?」
「……何だ?妾の顔に何か着いておるか?「オリガ!?お前もこっちに来れたのか!?」!?」
タイガは驚いたようにミスティオラの肩に触れて顔を見たが、別人だった事に少し肩を落としたが、それ以上にミスティオラは彼の言葉に驚いていた。
「(こやつ、今なんと言った……何故こやつがオリガ姉様の名を!?)」
「……って、よく見たら別人か。悪い、知り合いに似てたから声掛けちまった。じゃあ「待て。」ん?」
「こっちじゃ。」
ミスティオラは何かを見つけたのかタイガの手を握ると、そのまま路地裏に入って身を彼に寄せると耳元で呟く。
「妾を匿え。どうやら追手が来たらしい。」
「はぁ!?ま、マジかよ。ミラーウォール!」
タイガは驚きながらも、透明なガラスの壁を張ると追ってきていた兵士らしき人物は路地裏を見た後、そのまま慌てて走り去っていった。
「……今のが追っ手てやつか?」
「あぁ、少し城から抜け出したのじゃ。それより、うぬは妾を見て何とも思わんのか?」
「?何かって何が?」
「いや、分からぬなら良い……それよりもまずはうぬの名を言え。何故オリガ姉様を知っている。」
自身に掛かっている呪いの影響を受けない目の前の男に内心驚きながらも、ミスティオラは疑問に思っていた事を訪ねた。
「オリガは俺の仲間だよ。黒の女王って呼ばれてたが今では大切な仲間だ。というか、あんた誰なんだ?」
「……妾はミスティオラ。ミスティオラ・アーテー、オリガ姉様と同じ郷の生まれじゃ。」
「え?マジでか?」
身に纏っていた布を脱ぐと、その素顔を曝け出したミスティオラにタイガはただ驚いた……。