「全兵、警戒を怠るな。何か有り次第、迎撃体勢をとり、交戦するように。」
兵達に指示を伝えた後、馬車を用意してアリシアを乗せ、タイガも馬車を運転して、黒の城の近くまで行くことにした。
本来はタイガが1人で行くと言っていたのだが、プリムの身を案じたアリシアが付いて行くと断固として譲らなかったのだ。
その為、馬ではなく馬車での移動となったのである。
「タイガ、1つ聞きたいのだが。」
「何だ?」
馬車に乗って、黒犬傭兵団のいる黒の城へと向かっている時、馬が突然強く嘶き始め、馬車が揺れた。
「ど、どうした!?何があった!」
「どうやら着いたみたいだな。ここからは歩くぞ、恐らく障気の影響だろうか、生き物はこれ以上近付けない。」
タイガ達は馬車を降りて、障気を吸わないように布で口を覆いながら進んでいくと、視界の先に異形な形をした建造物……黒の城が見えた。
その城は禍々しく、まるで堅牢な牢獄を思わせる黒い城が立っており、威圧感に満ち溢れていた。
「ここが、黒の城か。何と威圧的な形だ。」
「あぁ、ん?」
近付いて入り口を探していると、タイガは城門と思われる場所を見つけた。
「あそこが入り口か……どうするタイガ?」
「ちょっと待っててくれ。」
そう言うとタイガは城門に近付くと辺りを警戒すると、敵兵を探すがいないのを確認すると、アリシアに手招きした。
「さてと次はこの扉だが……。」
「鍵がなければ中には「鍵は入らねぇよ。」なに?」
「ぶっ壊せば同じだ。ふっ!」
タイガは城門に近付いて手を当て軽く力を入れると、旋風鉄斬拳を使う。すると、分厚い鉄の扉がまるでバラバラになったのである。
「なっ!?こ、これは!?」
「ちょっとした技だよ。それより入るぞ。」
そう言われ慌ててタイガはアリシアと一緒に、そのまま城内に侵入した。
「よし、何とか入る事は出来たが……プリム達は何処だ?」
「……下だな。」
「なに?下だと?」
「あぁ、下から3人分の気配がする……その中の1人が恐らくプリムって子だな。」
「そうなのか?それは信用して良いのか?」
「今は信用してくれとしか言えない。だが、今は信じて欲しい。」
「……分かった。なら案内を頼む。」
タイガは頷くと2人は下に続く階段を見つけ降りていく。すると、そこはタイガの言う通りで地下牢が並んでいた。
しかし、その様子を背後から見ている者がいた……。
黒の城の地下牢に来たタイガとアリシアの2人は、拐われたプリムを探すことにした。
「タイガはプリムは何処だ?」
「この先だ。あと2つの気配もある。」
「そうか、ではその者達も救出だ。早くこの場所を出るぞ!」
「あいよ。」
そう言って牢を一つ一つ見ていく。すると、2つ先の牢から気配を感じ、タイガが近付いてみるとそこには2人の人物がいた。
「あれ?」
「ん……貴様は、タイガ!?」
「お前は…クロエか?懐かしいな。」
そこにいたのは、昔一緒に旅をしたダークエルフの少女"クロエ"と知らないダークエルフの女がもう1人いた。
「貴様、ここで何をしている?何故この黒の城にいる?」
「俺は人探しをしてるんだが……そっちの目付きの悪いのは誰だ?」
「この方は私の主、オリガ様だ。」
「……。」
そう言われ、オリガこと黒の城の主であるオリガ・ディスコルディアはタイガを静かに見てくる。
その目には特に感情はなく、こちらをただ見ているだけだった。
その時、アリシアが駆け寄ってきた。
「タイガ!プリムがいた……誰だこの者達は?」
「あぁ、白い髪の毛のはクロエ。昔一緒に旅をしたんだ。黒いのはオリガって言うらしいんだ。」
「オリガ……!?黒の女王か!?何故ここに!?」
「どうやら捕まってたらしい。それよりプリムがいたんだろ。」
「あぁ、そうだった。こっちだ!」
アリシアに着いていくと、そこには1人の桃色の髪をした女の子がいた。
タイガは剣を抜いて彼女のいる牢屋に近付き、鉄格子を切り裂いた。
「っ!?」
「出られるか?えぇっと、プリムちゃんだっけ?」
「は、はい……。あの、あなたは?」
「俺はタイガ。自己紹介は後でするよ。出てきな。」
プリムちゃんを出した後、クロエとオリガのいる牢の前に立った。
「……お前らはどうする?ここに残るか、それともここから出るか?」
「……陛下。」
「好きにするがいい……。それに、この城にも未練はないしな……。」
オリガの言葉に頷くと、プリムちゃんと同じように牢屋の鉄格子を切り裂いて2人を出した。
「ほら、早く出な。」
「それは困りますなぁ。」
そして、5人で上に行こうとした時、豚の兄弟と身形の良い老人がオーガを連れてきた。
「ベアズリー!?それにあいつらはモルデラッタ、やはり貴様ら敵に寝返ったのか!?」
「えぇそうですよ。姫様、こんなところまで来るとは何とも……まぁ良い機会ですな。その男以外は全員捕まって「邪魔だ」は?」
タイガは剃を使って一気に近づくと、ベアズリーとか言う男の後ろでニヤついている豚人族のモルデラッタ兄弟の首と、オーガの首を斬撃を飛ばして撥ね飛ばした。
突然の事に理解が追い付いてないベアズリーに、顔を向けながらもタイガは呆れたように言い放つ。
「おっさん、あんたアホなの?自分から間合いに入るとか、頭の中はすっからかんなのか?」
「な、何だと!?貴様、わしを誰だと「黙れ。」ぎゃあぁぁぁあ!?」
ベアズリーは偉そうに指差してきたが、タイガは指を思い切り捻るとベアズリーは悲鳴を挙げた。
「喚くなデブジジイ。というか、1の砦の爆発。あれはあんたが仕組んだんだろ?」
「くっ!?だ、だったらなんだ!?貴様に関係な「あるわ。馬鹿。」ぐぎゃっ!?」
ベアズリーの顔を思い切り踏みつけて、這いつくばる体勢にさせながら口を開く。
「大方、内通に協力すれば何かしらの報酬が貰えるんだろうな?そこの豚達もだろ?はぁ、お前らは馬鹿だな?」
「な、なに?」
「簡単だよ。内通なんてしなけりゃもっと長生き出来たのにって事だよ。」
そう言って金的を蹴りあげると、悶え苦しむベアズリーに剣を向ける。
すると、おっさんはガタガタと震え始めた。
「や、止めてくれ!?わしは、わしはまだ死にたくない!!?金なら幾らでもやる!!頼む!わしの話を!?」
「じたばたすんな、見苦しい。」
剣を思い切り振り下ろして、ベアズリーの首を跳ねると頭がごろんっと転がった。その顔には絶望が浮かんでいた。
「あの世で後悔しな……行くぞ。」
「あ、あぁ……分かった。」
アリシアは返事をしたが、プリムはタイガを怖がったのか彼女の影に隠れ、オリガとクロエは静かに頷いた。
その後、タイガ達5人は黒の城を脱出しようとしたが、壊された門の前には敵が大勢で待ち構えていた。
その前には大剣を背負った男がいた。
「……随分好き勝手やってくれたな?」
「貴様、ヴォルト!此度の裏切り、決して許さん!」
剣を抜いて裏切りの総大将である黒犬傭兵団隊長ヴォルトに、アリシアが剣を抜こうとしたがタイガはそれを腕で制す。
「あんたがヴォルト……猿山のボスザルか。」
「小僧が、この状況で嘗めた口が利けるとはな。だが、お前らもここで終いだ。ガキ、貴様の首は七盾同盟に送ってやる。その4人は奉仕国家の商品として扱うがな?」
ヴォルトの言葉に部下の傭兵達がゲラゲラと下品に笑う。すると、タイガは彼らに向かってほんのちょっぴり強めの覇王色をぶつける。
「「「っ!?」」」
ヴォルトは硬直し、部下の傭兵達は全員気絶して倒れた。
「なっ!?お前らどうした!?てめぇいったい何をした!?」
「別に?というか、この程度で気絶か。案外大したこと無いな、黒犬傭兵団。」
「このガキ!!!」
ヴォルトが剣を抜こうと腕を後ろに回した瞬間、タイガは剃で間合いに入り、金的をするとヴォルトは生まれた小鹿のように震えながら膝を着いた。
アリシア達も早すぎるタイガの動きに驚いたが、当のタイガは構わずヴォルトに近付くと、頭を掴み挙げて、ナイフを口の中に突っ込む。
「ガバッ!?」
「おいワン公、1つ覚えとけ?お前がどれだけの修羅場を潜ったかは知らないが……俺とお前じゃあ、潜ってきた修羅場の質が違う。」
「ぐ、ぐぎぎが……!?」
「あと、てめぇ位の敵なら山ほどいたぜ?あまり調子に乗ると……本当に消すから覚えとけや。」
そう言うとタイガは自分の何倍もあるヴォルトを軽く投げ飛ばすと、5人は城の外にある森の中に隠していた馬車に乗り、七盾同盟へと逃げることに成功した。
その後、タイガはオリガとクロエの2人に少しの間だけ軟禁状態にさせてもらうと伝えると、2人は構わないと言って部屋に入った……。
~~~。
黒の城から帰って来た後、俺はアリシア、プリムを連れてセレスティン様に報告をしに行った。その際に母様に滅茶苦茶叱られたが、それ以上に心配してくれた事が嬉しかった。
話は変わるが、セレスティン様の指示で1の砦は現在俺が代理で護るように言われ、アリシアはプリムが護っている2の砦に着くことになった。
「アリシア、大丈夫か?」
「あぁ、何とかな。しかしすまないな……6の砦の警護をしていたのに。」
「大丈夫だ。6の砦は爺様が護ってくれるって言うし、何かあれば駆け付けるから。それにこっちの問題もあるしな。」
問題と言うのは、オリガとクロエの2人の事だ。
オリガとクロエは現在1の砦の城にある空いている部屋にて休んで貰ってる。捕まってた捕虜って事で爺様に頼んで一応保護と言う形を取って隠している。
2人の事をセレスティン様に話すと何か嫌な予感がしたので、申し訳ないが彼女には黙っている事にした。
「そうか。タイガ、私で力になれる事があれば言ってくれ。何でも協力する。」
「あぁ、そん時な宜しく頼む!俺も手伝えるときは手を貸すぜ。」
「うむ。」
そんな時だった。うちの所の兵士が慌てて駆け込んできた。
「申し上げます!!黒犬傭兵団が2の砦に迫ってきております!」
「数は?」
「約10000!魔物もおります!」
「分かった……アリシア、すまないがアイリス騎士団と合流してくれ。俺らはその間の時間を稼ぐ。」
「ありがたい!すまないが、そうさせてもらうが待っていてくれ!すぐに駆けつける!」
アリシアが拳を握ってそう答えて、走って行くのを見送った後、俺は兵に指示を飛ばす。
「敵はこっちにも攻めてくる可能性がある。警戒を怠るな。」
「はっ!」
兵は返事をすると、受けた指令を伝えに仲間の下に向かっていった……。
……その後、俺は1の砦にいる兵の半分を連れて、アリシア達のいる2の砦の前へと赴き、そこで黒犬傭兵団を足止めする事にした。
敵は何処か焦っている様子だったし、何より余裕がない戦い方をしていた。
「おらぁ!!死ぐはぁ!?」
「不意打ちなら黙ってやれ。馬鹿。」
後ろから迫っていたモヒカン頭の傭兵に裏拳で吹き飛ばす。そんな様子と押され始めていた戦況、さらに覇気によって受けた心的ダメージによって、黒犬の兵達はへっぴり腰になっていた。
「おいおいどうした。全然歯応えが無いぞ?こんなんじゃ野犬の群れの方が強いわ。まぁ、あのボスザルじゃその程度か。」
そう言って軽く挑発すると、近くにいた何人かがこちらを睨み付けてくる。が、そんなの何とも思わねぇけど。
「こ、このガキ!?」
「この……!やっちまえ!!?ぶっ殺せ!!」
「「「うおぉぉぉぉ!!」」」
「ふっ……犀転!大紅蓮斬!鷹波!蒼紋猛瀑布!」
「「「うぎゃあぁぁぁぁ!!?」」」
1000人程こちらに斬りかかってきたが、覚えた技を使って、その全員を斬り倒していく。
「ったく、ぶっ殺すとか言うわ。簡単にキレるわ。お前ら戦舐めすぎ。」
そんな中、遠くからアリシアの率いる聖アイリス騎士団がこちらに向かってきているのが見えた。
「来たか……よし皆、反撃だ!このまま押し返すぞ!」
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
その声に兵達は大声をあげて鬨の声をあげて応戦を始め、黒犬傭兵団は徐々に押され始める。
「うちの娘の敵!!」
「死ね悪魔共!!」
そう言って敵兵を切り伏せていく者達。
彼等は黒犬によって娘や妻を辱しめられ、家族を殺された者達であり、彼等は怒りに任せて、黒犬の兵士や魔物達を殺していく。
そんな様子に傭兵達は恐怖を覚え始めていた
「く、くそ!?撤退だ!撤退をするぞ!!?」
黒犬傭兵団は撤退を始め、こちらは負傷した兵が何名か居たが、幸い死者は出てはいなかった。
その後、俺達はアリシア達と合流した。
「タイガ、無事だったか?!」
「平気平気。こんなの何ともない、アリシアも間に合ったみたいで良かった。ありがとうな!」
「礼などいらない。恩を受けたら必ず返すのが騎士としての本分だ。」
少々堅苦しいが、アリシアは話がしやすいし良いやつだという事が分かり、話し相手にしやすいと思えて良かった。
その後、俺は兵達を連れて1の砦に戻った……。
奉仕国家とか言う馬鹿丸出しな国の建国を宣言し、人を道具としてしか見てないアホ共の頭の顔に、泥を塗りたくる事が出来た。
まぁベルセルクの世界のような奴等がいないと言うのは、少し物足りなく感じるが……それでも、家族やその主が慰み者になるよりは、惨めな娼婦に身をやつすよりは良いと思う。
「(この戦……必ず勝つ!)」
俺はそう決心すると、取りあえず水場で身体を洗ってから部屋で休むことにしたタイガは身体の汗を流し終えて部屋に戻り、明日のために早く眠りに着こうとしたそんな時、扉がノックされた。