ミスティオラSide
妾には誇るべき存在がいた。
姉代わり……否、姉と言っても過言ではない存在であり、気高き女王とされていた"オリガ・ディスコルディア"姉様である。
姉様は同族の中でも高い魔力と、同性をも惹きつける美貌の持ち主であり、ダークエルフの中でも完璧と呼ぶに相応しい否!それ以外にあろうかという存在である!
妾は姉様から魔法の指南を受けた事はあったが、しかし姉様は郷にいた時はいつもどこか上の空で、こう言っていた。
『つまらぬなぁ。』
つまらない……その言葉が何を示していたのかは分からないが、姉様はその言葉を呟くと、数日後には郷から姿を消していた。
まだ幼かった妾は姉様が消えた事に驚き、涙を流したが姉様は帰っては来なかった。更に妾はとある魔術師より"男を惹きつける呪い"を受け、初めはゴブリンに、それから数多の男どもに抱かれた。
この呪いのせいで死にたくなるほどの屈辱を味わったが、妾は逆にこの忌まわしい呪いを利用してやろうと思い、諸国をフラフラし、そして、このエルドニアに流れて国王の情婦となったが、まさかこの地で姉様をしる男に出会おうとはな……。
「オリガ姉様って……あいつ、家族いたのか。全然知らなかった。」
「貴様、何故姉様の事を知っている?姉様は今どこじゃ?」
「どこって、今はその何ていうか、てか説明するから離れろ!」
目の前の男、タイガはそう言うと妾に事情を説明した。
何でもコヤツは過去から来たらしく、そこではオリガ姉様はクロエという混ざり者と共に暮らしているとか……あの気高い姉様が何故混ざり者のハーフなんかと暮らしているのかは分からないが、コヤツの言ってる事は嘘のようにも聞こえた。
しかし、妾の呪いが効いていない男など珍しい。少し遊んでみるとするか。
「ふむ、うぬの話には一切信ずる物は無いが、まぁ姉様の知りあいならば、まぁよしとしよう。」
「信じてくれるのか?」
「あぁ。一応ではあるがな。」
「そうか。はぁ、信じてくれるのならそれは良かった。」
そう言って胸を撫で下ろすタイガ。
過去の世界のオリガ姉様、どんな暮らしをしているのか楽しみだ……。
そんな中、街道の方では騒ぎが起きており、何事かと顔を覗かせると、そこには1人の子供を兵士達が数人で殴る蹴るなどの暴行をしていた。
どうやら妾が見つからなくて苛立ってるらしい。
「何やってんだあいつら!?」
「放っておけ。大方妾が見つからんで気が立っているのであろう?全く、人間とは愚かな生き物じゃ。」
「そうかもな。んじゃ、愚か者の行動しますか。」
そう言うと、タイガは兵士達に近付くと奴らの前に立ち、苛立つ兵士達が一斉に殴りかかるが逆に奴が殴ると、その兵士達は一撃で吹き飛ばされた。
すると、それを見ていた他の兵たちは怯えた様子で立ち去っていき、残されたタイガは何かの魔法を使うとその場を離れて、宿へと向かっていった。
「タイガか。存外面白いかもしれぬな。」
そう言って、妾は宮殿に戻ったのだが、その直後に目を覚ましていたエルドニア王に泣きつかれ、そのまま利用してやろうと宮に入れられた。
この妾を覆う鳥籠から必ず出て、いつかオリガ姉様と再会してみせる……!
………。
一方イリス・アルケーディアがタイガを見つけた森の中に、彼の姿があり、その視線は足元にある開いた棺桶に向けられていた。
「バカな。なんで棺桶が開いて……!?」
彼は開いた棺桶に手を触れると、そこから感じた魔力に驚き目を見開き、バッと勢いよく立ち上がる。
「そうか。ついに来たのか……タイガ、レーヴァンタイン。」
そうタイガの名を呟くと、空を見上げた。
すると、自身の祖国に念話を飛ばす。
【何よ。いきなり連絡してきて、驚いてあなたの分身達からの中出しでいっちゃったわよ。】
「そいつは良かったな。それより、ラドミア。お前が勧めてたあの案件、通すぞ。」
【え?本気?】
「あぁ、始めるぞ。この大陸の覇権をかけて……盛大な戦を始める!!」
彼はそう言うと、口元を歪めて笑うのであった……。