※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ -GAIA SAVERS-   作:独楽 悠

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第16話_八方塞がり

一夜明け、葉月家は沈鬱とした朝を迎えていた。

蒼矢がいなくなり、残された四人は一睡もできず、静まり返った家の中で、誰もが押し黙ったまま過ごしていた。

厚い壁に立ち塞がれたような現実の前に何もできず、ただ時間だけが経過していっていた。

「ありがとう、面倒をかけるね」

[蔓]の攻撃を受けて肩と腕を痛めた葉月は、烈に介抱してもらい、身体を支えられつつ居間の座椅子にゆっくりと寄りかかる。

葉月は意外に身体を鍛えていて、投げ飛ばされた時もかろうじて受け身を取れており、あまり大事には至っていなかった。

「いやー…強いね、あれは」

「…ああ。加えて脳筋じゃねぇ。厄介なタイプだな」

独りごとのように言う葉月に、影斗は会話を合わせる。

蒼矢の状態と彼の証言からしか把握できていなかったが、[蔓]の強さは想像をはるかに超えていた。

そもそも、『セイバーズ』の活動拠点になっているこの家に単身乗り込まれ、あげく目の前であっさりと目的だけを奪っていかれるとは、つゆほども考えていなかった。

テーブルの上に、アズライト鉱石と枠の歪んだペンダントが置かれていた。

粉々に破壊された鉱石は床に散らばって手では拾いきれず、やむなしに掃除機で吸ってきれいにゴミを取り除いたうえで、飛ばないようハンカチに包まれていた。

「…集めたところでどうなるってんだよ。蒼兄は戻って来れないのに…」

すっかり元気を失ってしまった陽は、テーブルにもたれてハンカチをぼんやりと眺めていた。

 

『セイバー』と[侵略者]では、『現実世界』『転異空間』[異界]それぞれの世界への移動について、方法や制限がまるで違っていた。

[侵略者]は現実世界と異界を自由に行き来でき、転異空間は[侵略者]にとっては用のない場所だが、他二世界へも行く分には制限が無い。一度転異空間から出たら自力では入れなくなるだけだ。

比べて『セイバー』は、世界間の行き来を著しく制限されている。転異空間への移動は[侵略者]や[異形]…つまり[異界の者]との接触がなければできないし、戻るにも[それら]を倒すもしくは異界へ還したうえで、変身解除しなければならない。異界は自力では行くことができず、[異界の者]が帯同していないと道が開かれない。

まさに"防衛"だけに特化した仕様だ。もちろん異界へ行く理由は無いし、戻るという行動も想定されていないため、帰還の仕方もわからないままだった。

おそらく蒼矢は捕えられているだろうから、こちらから異界まで迎えに行く必要がある。

どうにかして、[異界]との行き来の方法を考えなければならない。

 

――今回は様子を見ながら調整しよう。簡単に壊れてしまっては惜しい獲物だからな――

 

葉月は[蔓]が口走ったその言葉を覚えていたので、手遅れになるまで幾分か猶予があると考えていた。

でも、時間が経つほど蒼矢の帰還が難しくなることに変わりはない。一刻も早く、何らかの手を打たなければ。

 

「…陽、学校行けよ」

テーブルに頭を乗せてぐたっとしている陽に、烈が声をかける。

「…! 行ってられるかよ、こんな時に…!!」

「お前サボりてぇだけだろ。高校生は学業に励めよ。成績悪いんだろ?」

「……!」

眉を吊り上げて烈に食ってかかる陽だったが、加えて影斗にまでそう言われ、一気に頭に血が上ったのかテーブルを手ひどく叩きつけて立ち上がる。ハンカチが一瞬宙に浮き、葉月があわあわと手で押さえる。

「わかったよ、行くよ!!」

影斗は飛びかかって来られるかと構えたが、陽は肩をいからせたまま居間を走って出ていった。

「あっ、待って… 車出すよ」

「いらねー! 走ってく!!」

葉月は腰を浮かしかけたが、遠くから陽の大声が届き、ついで玄関の引き戸がスパーンと閉じられる音が鳴り響いた。

烈が深く息をつく。

「…案外素直だったな」

「だなー。ここに居ても仕方ねぇって、あいつもわかったんじゃねぇ?」

影斗は煙草を手に立ち上がる。部屋を出ていこうとするタイミングで、呼び止めるように葉月が口を開いた。

「…二人にはここで待機していて欲しい。何も出来ないかもしれないけど、何があるかわからないから」

葉月の静かな視線に、烈と影斗は無言で頷いた。

烈は何気なく、テーブルのハンカチをめくってみる。

青いアズライト鉱石は、割れた断面に天井の照明を反射した。

そしてほんの数秒、ほのかに光る。

「……!」

烈は目をわずかに見開き、自分のTシャツの襟ぐりを引っ張って中を確認する。ロードナイトは光っていない。

その光景を、居間にいた全員が目にしていた。

影斗は煙草を咥えたまま、呆けた顔でつぶやいた。

「…なんだ? 今の」

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