※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ -GAIA SAVERS-   作:独楽 悠

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第21話_覚醒める藍銅鉱

「…っうぅっ…あ…」

まるで焼け石を押し付けられているかのように、左胸が高温の掌に焦がされていった。鮮やかな青い刻印が、[蔓]の手の中でその色を鈍らせていく。

「…いや…だ…っ…」

苦悶の表情を浮かべながら、アズライトは弱々しく頭を左右に振り続けていた。

…もう、失いたくない…!!

その時、身体の奥底で、温かな何かが鼓動した。

…"アズライト"…

頭の中に、自分のものではない声が響く。

 

「ぐあああぁぁっ!!!」

 

にわかに空間に響き渡った野太い咆哮に、セイバー達の目が見開かれる。

彼らを遮るようにうごめいていた巨木の[異形]達が、その咆哮が聞こえた途端驚くように一瞬どよめいた後、動きが緩慢になっていく。

四人は枝根を払い、装具を構えながら[蔓]とアズライトの元へ距離を詰めていく。

「っぐおおぉぉっ…!!」

咆哮は、[蔓]から発せられたものだった。アズライトの左胸に当てていた手を振り上げ、逆の手でその腕を抑えつつ、何かをこらえるように体を震わせている。

そして、未だ疲弊しきった面持ちで吊り下げられているアズライトへ、驚愕と疑念が入り混じったような顔を向ける。

「なん…ダ、」

次の瞬間、[蔓]の胸部に何かが撃ち込まれ、背面へと貫かれた。

徐々に距離を詰めていた四人にも、その瞬間ははっきり確認できた。度重なる異変に、思わず挙動が止まる。

「…!?」

「何だ…あれ」

[蔓]の背面から突き出たそれは、鋭く伸びる巨大な氷塊だった。その氷塊を起点とし、小さな結晶柱がパキパキと音をたてながら放射状に広がり、[蔓]の胴体を見る間に侵食していく。

「あ……ガ、ァ」

[蔓]は凄まじい形相を晒しながら、人間離れした挙動で痙攣し始めた。頭や腰が四方に振られ、まともな動作ができなくなっていく。

[侵略者]の異変が影響しているのか、セイバー達を囲む巨木の大群は一挙にしなだれていき、アズライトを吊っていた巨木も力を失い、拘束が解かれる。

地に落ちたアズライトは、ゆっくりと[蔓]へと視線を上げていった。

「……」

[蔓]の胸部からは、剣の柄のようなものが生え出ていた。いや、生えるというよりは、自分の身体から飛び出していったように感じられていた。凍てつくような冷気を漂わせ、[蔓]の体から氷の結晶柱を次々に生み出していく。

[蔓]に異変が起きてから後、アズライトの身体の催淫反応はピタリとおさまっていた。立ち上がり、その氷気を宿した剣を黙ったまま見つめる。

…"剣(ツルギ)の戦士 アズライト"…

再び、頭に言葉が降りてくる。

アズライトは、剣を手に取れと言われた気がした。

柄を握ると、呼応してアズライトの胸の刻印が水滴様から結晶様へ変化する。後発属性が発現した証だ。

そして、一気に[蔓]の身体から引き抜いた。柄から先端までがアズライトの胸の高さに届くかという、その全貌が露わになる。

驚くほど軽いそれは、水晶で出来たような、刀身の透けた大剣だった。

「剣…なのか」

「でけぇっ…!」

「……『氷柱(ツララ)』だ」

セイバー達がその装具の姿にそれぞれ驚く中、エピドートは小さく呟いていた。オニキスが横目で彼に視線を送る。

「お前のと張るかもな」

「いや…あれはそういうレベルを超えてるよ。…比較にならない」

アズライトは、その壮麗な刀身に魅入られるように眺めていた。

鉱石を取り戻した時に感じたごくわずかな温もりが、身体の中でゆっくりと鼓動し、広がっていくのがわかった。アズライトの中に芽生えた『凍氷』の力に、『氷柱』が共鳴するように光を反射した。

ロードナイトが声をかける。

「アズライト! やれるか!?」

アズライトは振り向き、無言で頷いた。『氷柱』を一振りし、[蔓]へ剣先を向ける。

既に胸部を氷の結晶で埋め尽くされ、手の先まで凍りついた[蔓]は、言語にならないうめき声を途切れとぎれにあげていた。眼球が八方へ小刻みに動き、あれだけ執着していた目の前にいるアズライトすら、もはや視認できないようだった。

その敵性生物(・・・・)へ、アズライトは静かな視線を送る。

「…[異界]の塵に還れ、[蔓]」

そしてその眉間へ向けて、風を切るように振り降ろした。切っ先がかすめた眉間から無数の氷の柱が伸び、増殖し、瞬く間に頭部を覆い尽くす。その速度のまま全身へ及び、中心からひび割れて崩れ落ちた。

[蔓]の身体は消え、後には大量の細かな氷のかけらだけが残る。

[蔓]が消えると同時に、巨木の[異形]もその全てが跡形もなく消えてなくなった。

 

全ての[脅威]が、空間から去った。

 

「…やったな!」

見守っていたセイバー達は、すぐさまアズライトへ駆け寄った。[蔓]を倒し、その場に座り込んでいたアズライトの手から『氷柱』が消え、それを支えにしていた身体が横に傾く。

「! っと…」

寸でのところでエピドートが受け止め、アズライトの身体を優しく抱きかかえる。

「良く頑張ってくれた。…お疲れ、蒼矢」

その温かな腕の中で、蒼矢は穏やかな表情で薄く頷き、静かに目を閉じた。

 

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