※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ -GAIA SAVERS-   作:独楽 悠

3 / 23
第2話_日常

某T区は、都内でも有数の商業都市として名を馳せており、昼夜問わず人が多く賑やかな印象が強いが、中心部から少し歩くと割と閑静な住宅地が広がっていて、また違った空気を味わうことができる。

 

通っている大学から帰ってきた蒼矢(ソウヤ)は、立ち寄ったコンビニで少し遅い夕飯を買い、家路についていた。

 

細めの路地をくねくねと進み、シャッターの締まりかけた酒屋へ視線を流しながらさしかかると、店内からもれ出る照明をバックに、男がひょいっと顔を出した。

「おっ! おかえり。お疲れさん」

「ただいま」

立ち止まった蒼矢に、顔を出した男――烈(レツ)がニカッと笑いかける。

「今日も一人だろ、うちで飯食ってくか?」

「今日はいい。さっき買ってきたんだ」

そう言うと、蒼矢は手に持つ袋を上げてみせる。

烈は歩み寄り、袋のふちを引っ張って中身を確認する。

「ふーん…バランスは良いかな、少ねぇけど」

「…お前を基準にするなよ」

「あ、そうだ」

憮然とした表情を浮かべる蒼矢を尻目に、何か思いついた烈はサッとシャッターをくぐり、間髪入れずに外へ戻ってくる。

「これ持ってけ。夜食」

コンビニの袋へバナナを一本突っ込んできた。

「…ありがとう」

「おう、ちゃんと食えよ」

そう蒼矢の肩を軽く叩くと、烈は店へと戻っていく。

「烈!」

その背中に蒼矢が声をかける。シャッターをくぐりかけている烈が振り返った。

「ん?」

「…お疲れ」

「…じゃーな!」

またニカッと笑うと、烈は店の中へ消えていった。

ほどなくして、店のシャッターが下げられていく。

明かりが消え、暗くなった路地を、蒼矢は再び歩き出した。

 

 

家に着くと蒼矢は、とりあえず玄関とリビングの明かりはつけるものの、まっすぐ三階の自室へ向かう。

家には誰もいない。父は地方出張で連泊中だし、母はそもそも国内にいない。

デスクチェアに体育座りで腰かけ、タブレットに向かい、もそもそとパンをかじっていると、LINEが入る。

「…陽(アキラ)だ」

テストが近いので、いつものように勉強を見て欲しいとの連絡だった。

…そういえば、高校はそろそろ中間の時期か…

まるでこの世の終わりを知ったような、悲痛な表情の陽の姿が目に浮かぶ。

週末に家に来るよう、返信しておいた。

一息ついて、食後に貰ったバナナをむこうとしたところで着信が入る。

「もしもし」

『だ~れだ?』

「切りますよ」

『まぁ待てって。久し振りにかけてんだから、少しは喜べよ』

「先々週、そっち行って話したでしょう…要件は何ですか? 影斗(エイト)先輩」

携帯の向こうで、影斗は笑っていた。蒼矢の淡白な切り返しを楽しんでいるようだ。

『週末そっち行くからさ。会える?』

「断っても家に来るでしょう? いいですよ」

『話わかるね~、また葉月(ハヅキ)んち泊まるから、来いよ』

「わかりました」

『ちゃんと身体あけておけよ? 色んな意味で♪』

「切りますね」

『あー待った待った。冗談だろ、な? 蒼矢』

からかうと本当に切りかねないので、影斗は声色に真面目さをのぞかせつつ、蒼矢をなだめる。

『毎日寂しく過ごしてるんだからさ…お前なら俺の今の気持ち、理解できるだろ?』

「…そのつもりですよ。だからこうして、誘われたら必ず会ってるじゃないですか」

少しトーンダウンした影斗の声を受け、蒼矢は少し柔らかい口調で返した。

影斗が小さく笑ったのが聞こえる。

『たまにはコンタクト着けてこいよ。折角俺がやったんだからさ』

「いえ、眼鏡で行きます」

『…了ー解。じゃな、楽しみにしてる』

通話を切り、ペットボトルのお茶を一口飲むと、思い出したように再び携帯を手に取った。

「どうせなら、陽も葉月さんちに呼んでしまおう。…予防線じゃないけど」

陽に予定変更のLINEを送り、ついで烈のトーク画面を開く。

「烈にも声かけよう。家の都合がつけば、だけど…」

文面を送りかけたところで止め、烈には明日直接話すことにした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。