最大五人で構成される『ガイアセイバーズ』は、それぞれが持つ能力の特長を活かせるように、各々が役割を持って活動している。
蒼矢が変身する『アズライト』は、[侵略者]や[異形]の居場所を特定したり、性質や弱点などの情報収集が出来る『索敵』という固有能力を持っていて、地味ではあるが他セイバー個々の負担を減らしたり、戦闘時間を大幅に短縮できたりと、サポートに特化したセイバーである。
また変身前の現実世界でも、わずかに能力を使うことが可能で、[敵]の発生したおおまかな場所を感じ取ることができる。でも、こうして何年も能力と共にしてもなお未知な部分はまだ多く、蒼矢自身もわからなかった『アズライト』の宿主になったことによる感覚に、ふと気付くことがあったりする。
そして今、新たな未知の能力を身を持って理解したのだ。
"蔓田"は、[侵略者]。
一瞬沈黙が降り、思考が停止した蒼矢は目の前の[侵略者]を凝視したまま固まるが…身体の奥から押し寄せるように『嫌悪』と『敵意』が湧きあがり、上気していた身体が瞬時に総毛立った。『セイバー』としての自分が、明確に蔓田を[敵]と認めたのだ。
でも、わかったところでどうにもならない状況にさらされていた。[蔓田]は、正体が割れてもかまわず続けようとしてきた。
「やめろっ…やめろ、触るな!!」
本能が目覚めた蒼矢はめくられたシャツを押さえ、足を振り上げて[侵略者]の脇を蹴り飛ばす。
「良いぞ、その反応を待っていた。そうでないと、こちらも楽しくない」
しかし、激しい抵抗を見せる蒼矢の様子を見て、[蔓田]はかえって気持ちを昂らせたのかにやりと嗤い、足蹴を簡単にあしらって、細い首に手をかける。
「んっ…く…」
苦しさに懸命に手を引き剥がそうとするが、もちろんびくともしない。
[蔓田]のもう片方の手は悠然と下半身に伸び、股間を軽く揉み上げてから、ベルトを掴む。実にスムーズな動きでバックルが外れ、ファスナーが下ろされると、薄い布で覆われた温かな局部が外気に露出した。
[蔓田]は口角を一層つり上げ、生唾を飲み下した。
「さて、頂くとするか。まさか『セイバー』の精液が飲めるとは思わなかったぞ…お前に目をつけて正解だった。なあ、『アズライト』…いや、『髙城蒼矢』か」
「…っ…!」
追い詰められた蒼矢には、二択しか残されていなかった。
このまま[侵略者]に犯され続けるか、変身して『転異空間』へ移動し、『セイバー』として戦うか。
セイバーズ間の取り決めとして、単独での戦闘は危険過ぎるため原則禁止されていた。転異空間に入り、万が一セイバーが[侵略者]に敗北した場合、彼らの手によって[異界]へ連れ去られ、帰還できなくなる可能性があるからだ。
とりわけ『アズライト』については、固有能力としての攻撃手段をほとんど持たず、防御手段も特出したものが無いため、単独戦闘は絶対NGと固く決められていた。
…[侵略者]は、自分を"手に入れる"と言っていた。最終的には[異界]へ連れ去ることが目的なのだ。
この空間にいる限り、他のセイバー達との連絡手段はおそらく絶たれているし、抜け出すこともできない。
でも変身すれば…連絡はできないが、自分の現況だけは知らせることが可能だった。
相当危険な賭けだったが…蒼矢は覚悟を決める。
まさに[侵略者]の手が局部に触れようとする最中、蒼矢は胸元に光る起動装置を握った。
「おわっ!?」
急にTシャツの中が光り、烈は運んでいた酒瓶ケースを取り落しそうになった。
光へ視線をやると目を見開いた表情で固まり、ケースを足元に置いて、首に下がっていたペンダントを引っ張り出す。蒼矢と同じく『セイバー』である烈は、『ロードナイト』を冠するペンダントを携帯していた。
ペンダントもとい起動装置は、敵である[侵略者][異形]の邪念に反応して、装置にはまった鉱石が発光し、それをエネルギーに変身・転送準備が整い、握ることでそれらが起動するようになっている。また別に、自分以外のセイバーがとある地点で変身すると、自分のパーソナルカラーではなく変身したセイバーのパーソナルカラーで光る効果も備えている。複数のセイバーが同時に変身した場合は、それぞれのセイバーのカラーが明滅する仕組みだ。
つまり烈で言えば、ロードナイトのパーソナルカラーである赤色で光るのが通常の変身モーションである。
しかし今は、青い光が明滅もなく単色で放たれている。
「…蒼矢…!?」
驚愕の声を上げた直後に、尻ポケットから着信の知らせが入る。葉月からだった。
「葉月さん!」
『烈、もう気付いているね? 場所は大学かな?』
「…多分…っ、葉月さん俺、今日はっ…あいつのこと」
『落ち着いて。今は何も考えず、すぐ向かってくれ』
動揺し、自分の今日の行動を後悔し始める烈に向かって、葉月は冷静かつ優しいトーンで指示を送る。
『おそらく衝動的な起動だろう…[相手]によっては一分一秒を争う。勝負がつく前に、何としても間に合って欲しい』
「わかった…! 葉月さんは?」
『僕は
葉月の声の傍らから、おそらく別の電話機からの陽のわめき声が漏れ聞こえてきた。
「…了解!!」
母親に手早くことづけし、バイクに飛び乗る。
…15分…いや、10分で向かってやる!!