(・ω・)頂いたお金に後悔させないように丹念に、丹念に『速水 奏』を堕としてみたので今作も楽しんで頂ければ幸いです!!
「は、速水さん」
気温も緩み、廊下に吹き込む風もすっかり柔らかくなった春の事。新入生がもたらす校舎の賑わいも落ち着きを取り戻してきたそんな時分、何処かで聞き覚えのある声が掛けられて私はゆっくりとそちらに顔を向けることで返礼とする。
振り向いた先には進学校のココらしく規定に乗っ取った制服の着こなしに、平均的な顔立ちの女子生徒が緊張に顔を赤らめてこちらを見つめている。ふっと失礼にならないくらいに頭を巡らせて彼女の名前を思い出そうとするけれども、ついぞ出てくる事はなくいつもの様に微笑んで誤魔化す事にした。
「なにかしら?」
「あ、あの……先生から、このプリントを渡す様にってお願いされて。 こ、これっ!!」
「―――あぁ、ごめんなさい。わざわざありがとう」
たったそれだけの連絡事項なのに顔も真っ赤に声を詰まらせつつも彼女が差し出してくれたプリントは力み過ぎた弊害か少しだけ皺が寄っていて、手汗で少しだけ湿っている。だけれども、そんな事で眉を顰める程に潔癖でもないので素直に受け取ってサービスとして少しだけ微笑んであげる。
そうすれば、蒸気でも吹き出しそうなくらい顔を真っ赤に染めた彼女は言葉にならない声を上げて背を向け、連れ合いの友人たちの元で甲高い悲鳴を興奮気味に上げて楽し気に去っていく。
まるで動物園のパンダね、なんて一人で苦笑を零しながら私は“進路相談”と銘打たれた藁半紙を雑にカバンに突っ込み、足を帰路に向かわせた。
放課後の予定に胸を高まらせ、ざわめく雑踏を通り抜けていくたびに感じる視線は様々だ。
羨望だったり、憧れだったり、好意だったり、嫌悪だったりと分類するのが億劫なくらいの物量のソレ。ただ、一つだけ言えるのはその視線が増える中、誰もが道を開けて遠巻きにソレを投げかけてくる事。
自分が過ぎ去った後に囁かれる噂や与太話も聞こえてないと思っているのか、隠す気もないのか下卑たモノから、興奮気味のモノまでお構いなしだ。
普通であれば嫌気がさすであろうその声は私“速水 奏”にとってだけは自身の振る舞いが自分の望む理想像を過不足なく表しているという証明なのだから悪い気はしない。
小学生の頃に決別した弱い自分を切り捨て、たまたま手に取った漫画で自分を魅了したあの女スパイの様に強く生きるその姿をこうして再現できている。ソレは何よりも自分を奮い立たせ一種の優越感を感じさせるのだから、苦に思うはずもないのだ。
校内どころが街中でも誰もが振り返るくらいに整った自分の容姿に肢体。都内全域を見回しても間違いなくトップクラスの学力を誇るここで中堅程度に位置して、家柄もソコソコに裕福。ここまで世の人間が求める全てを手に入れている自分にそういった視線を向けるなというのも残酷な話だろうから中学の頃から慣れ親しんだこの空気はむしろ自分に落ち着きすら与える。
だけれども――――あまりに代わり映えの無い日々というのにも少し飽きが来ているのも確かだ。
そんな倦怠感から来る溜息をチェーン店で買い求めたコーヒーを冷ます息に混ぜ込んで小さく零す。
ミステリアスな女のイメージを守るために学校で読むことを控えていた今日発売の最新刊の漫画をパラパラ捲りつつ気を晴らそうとするが今日ばかりは上手く入り込めず、しこりの様なものは胸の奥からずっとその存在を主張してくる。
美貌も、羨望も、知恵も知識も手に入れた。
あの古い漫画に出てきた女スパイが持っていた武器は全て手に入れて満たされているはずなのに何故か空虚に感じる日々。そんな答えが出るはずもない懊悩を断ち切るためにもう一回だけ溜息を零して手元の漫画を閉じようとした時に偶然開いていた、とある台詞が目に入った。
『刺激が無けりゃ、つまらない』
そんなありきたりな一言。
だが、絶望を前にしても不敵にそう強がりを零して困難に立ち向かうその主人公の一言は今の私にとって間違いなく天啓とも言える一言であったのだ。
そう、そうだ。刺激が無ければツマラナイ。
あの漫画の女スパイは恵まれた全てを持っていた。それだけの才覚があれば平凡で、幸せで、裕福な一生を過ごす事なんて造作もない事だったはず。だけれども、彼女はそれら選ばずに――――自分が超えられるかどうかギリギリの一線を責めて生きていた。
そう、全てを手に入れたはずの自分が空虚に感じるのも当たり前だ。
彼女の生き様の、最大の肝を忘れていたのだから満たされるわけがない。
そんな単純な気付きを得れば、なんだかモノクロに見えていた世界も随分と活気づいて、煩わしい街中の雑踏も新しい事件へと誘う何かの手がかりの様に思えて来て胸は勝手にときめいていく。
そんな唐突に開けた視界の中で自分の生活を彩る最初の“スリル”には何が相応しいか、逸る心臓を落ち着かせるために冷めたコーヒーを啜りながら思案する。
別に犯罪行為に手を染めたいわけではない。女スパイだって自分の力量で超えられるギリギリの線でいつも戦っていたし、悪事を捌いていくのが仕事だった。そんな彼女の手練手管で多く用いられていた―――女の武器。
それの使い方を自分は全く知らない事に気が付いた。
もちろん、学校という狭い範囲に限れば自分の知る限りの“男”という生き物を揶揄うのは容易い事だというのは実証済みだ。
クラスで騒がれている男子は自分が微笑みかけて二、三の言葉を交わせば顔を真っ赤に染めて、次の日にはそれが英雄譚のようにクラスメイト中に語り始めるし、新任の担任はもとより、偉そうに厳めしい顔を作る生活指導の教諭も生徒指導室という密室で自分がボタンを何個か緩めるだけで下心丸出しの視線で言葉を詰まらせる。
そんな単純でツマラナイ生き物だと生暖かい目で見逃してきたのだが、いざ“そういう経験”があるのかと問われれば自分の躰は余りに清い純潔のままである。
簡単に処女を切ればいいなんてモノでもないとは分かっているが、それでも、経験があってほくそ笑むのとそうでないのでは雲泥の差がある。
そうと気が付けばそれは自分の未体験へ踏み込む“スリル”であり、より自分が高みに上るには不可欠な経験の様に思えてソレを得るためにもう少しだけ思考を進めてみる。
まず、学校関係者は論外だ。
教員はもとより、クラスメイトと一旦そんな関係になったと知れれば実に面倒な事になることは猿でもわかる程に明白だ。
“高嶺の花”であるからこそ自分の今の地位は保たれているのだし、男子共は自分が声を出すだけで顔を真っ赤にするチンパンジー。関係を持った瞬間に歯止めがかからず増長して、学校中にソレを言いふらす事は確実だろう。
それに続いて自分に好感触を持っていない女子グループは喜び勇んである事ない事を焚きつけてはしゃぎまわるのは確定的明らか。
それは、自分の求める理想像には程遠い泥沼だ。
となればどうするか。
一番簡単なのは自分のポケットにある四角い携帯端末でアプリを開き、写真の一枚でも乗せれば容易に叶うだろうが――――論外。ソレは私のしたい“スリル”とはかけ離れた行いだ。そういうのは雑誌によく持て囃されているピンク髪の頭空っぽの尻軽女がお小遣い稼ぎにでもやっていればいい。
「………そうなると、意外と私って狭い世界で生きてるわね」
手頃な手段をバツバツ切り捨てていくと、あっという間に候補が無くなった事に少しだけ驚いた。
自分の唯一といっていい趣味の映画や漫画なんかではこういう時に都合よく王子様が出てきたりするものだが現実とは冷静に並べ直してみればなんと淡白でツマラナイものか。
冷めて不味くなったコーヒーを啜りつつ自分自身に対しての呆れと苦渋を誤魔化しつつ思考の方向転換を図ってみる。
少し、ハードルを下げよう。
あと腐れの無い、自分の理想を満たす様な初体験をいきなり求めるから行き詰るのだ。
とりあえず、今から周りを見回して自分的に悪くない程度の男を揶揄ってみる事から始めよう。
自慢でもないが見た目から言えば大概の男にとって自分は垂涎ものの顔と体であるし、怪しいと思っても“キス”程度の誘惑なら乗らせる自信がある。それ以上を無理やり求めてくるならこの人込みで一声あげればあっという間にソイツは取り押さえられ、世間は私の味方をするだろう。警戒心が強く訝しむようなら『ドッキリの撮影だった』とでも言って笑って収めて貰えばいい。
そんな身の安全とリスクの天秤を掛けて新しいお遊びにいざ、顔を上げてみる。
高校生、論外。中年、論外。チャラそうなナンパ、論外。オタク、論外。新社会人……ピンとこない。となれば、残るは大学生―――だなんて、ぼんやり辺りを睨んでいると隣にどっかりと腰おろす気だるげな影が目に入った。
あれだけ目を凝らしていたのに、音もなく自分の隣に腰を下ろしたその男。鴉の羽みたいな真っ黒な髪を緩く纏めてる中でアホ毛が風にふよふよ揺れていて、その下の顔は気だるげで覇気がない事を覗けば細くシャープな面立ちで整っていた。
湯気を立てるコーヒーを猫舌なのかチビチビ舐める彼が身に着ける服は流行とは言い難いものの質のいいカーディガンと黒のスキニーパンツで質素に纏められていてそれがなんとなく浮世離れした色気を出しているような気がしてつい息を呑んでしまう。
好みかどうかで言われれば―――結構、いい線を行っていると言わざる得ない。
あの女スパイのライバルの刑事もこんな感じの陰のある男だった。二次元が初恋とか口が裂けても人には言えないが、こういうのが好みなんだからどうかほっといて欲しい。
その上、新たな一歩を踏み出そうとした日に偶然隣にこんなチャンスが転がり込んでくるという展開に不覚にも胸が高鳴るのを感じてしまう。
行くか、どうか。そんな久しく感じる葛藤と焦燥―――久々に“生きている”実感。
それに流されるように、必死に自分が考えたセーフティを見直し私は
声を発した。
「ねぇ、 私と“キス”してみない?」
胡乱気で、底なしの暗い瞳が―――――私を捉えた。
―――――――――――――――
花好きの女子大生に呼び出されまんまと花の植替えを手伝わされた厄日。可憐で穏やかそうなその女をいつだか公園でナンパしてデートの末に美味しく頂く事に成功したのは良いのだが、こうして季節の変わり目にあれこれと趣味のガーデニングに駆り出されるのがたまに傷である。
まぁ、そのお代として毎回ねっとりと“めしべとおしべ”の仕組みを実習させて頂けるので文句は言えないのだが、慣れない労働に夜を徹しての過激な実習指導をこなした体はどうしたって気だるさを拭えない。
余りの眠気に電車に乗る前に滅多に呑まないブラックコーヒーで気付けをしようと駅前でソレを舐める様に啜っていると――――『痴女』に声を掛けられた。
驚きと共にそちらに目をやれば、ショートボブの艶やかな紫紺の髪に、大理石の彫像の様に滑らかで整ったその顔立ち。それらに引けを取らない女を強調する躰を制服に身を包んだ少女がこちらを試す様に微笑んでいた。
そんな美女といっても差し支えない女が急に「キスしないか?」なんて声を掛けてきたのである。俺のあんまりな感想にも弁明の余地は十分にあると思うのだ。
そんなAVやエロ本のお手本のような状況だが、現実に起これば普通にヤバい奴である。
良い子の皆はこういった時には曖昧に返事してすぐに立ち去るか、近くの大人か両親にスグ助けを求めようね☆彡
ちなみに、日夜女の子を食い荒らしている俺の様な悪い子はこういう時に一拍おいて欲望とリスクを天秤に掛けてしまうのが悪い所である。
顔も体も普段ならあの手この手の小細工で何とかきっかけを作って褥にご招待してぐちゃぐちゃにしてやろうと画策するレベルなのだが、なにせ人生初に近い“逆ナン”という状況がどうにも警戒心を擽ってくる。
パッと思い浮かぶ可能性としては、美人局。次点でいえば暇なJK達の罰ゲーム。その次に大穴で―――退屈な日常に刺激を求めたお馬鹿ちゃん。
さてはて、このまま見過ごすには惜しそうな別嬪をどうやって毒の腑抜きをして食べれるようにしたものか思案する事、数舜。俺はざっくりとした結論を頭の中でだして行動に移ることにした。
「俺達ってどっかであった事あるか?」
「いいえ、恐らく“初めまして”だと思うわ」
「……なんで声を掛けてきたか聞いても?」
「………そうね、強いて言うなら顔が好みだったのと―――貴方も退屈そうな顔をしてたからって理由ではダメ?」
とりあえずの会話を試みれば思ったよりもあけすけな答えと、まさかの大穴だったことに対してついつい吹き出して笑ってしまった。
クツクツと笑いを零す俺を見て少しだけ気分を害したのか眉を寄せる彼女に手を振り何とか笑いが収まるまで少しだけ待って貰う。その少しの間で急に降って湧いた“おもちゃ”の遊び方を丁寧に考えて、組み立てていく。
なるほど、なるほど。こういうパターンもあるのかと年甲斐もなくウキウキするのを押さえきれないままチキンな俺の予防線を含めたプランをご紹介させて頂く事にしよう。
「いや、悪かった。そんな事を正面から言われる経験ってあまりなくてな。―――俺でよければ喜んでお願いするよ」
「あら、もっと訝しむものだと思ってたけど意外と乗り気なのね?」
「こんなチャンス、人生でそうあるもんじゃないしな……さてと、」
顔を覆っていた手を笑いと一緒に引っ込めた時にはいつもの女の子を騙す時に使う気弱な笑顔の仮面を張り付けて俺は蓮っ葉に彼女に了承を示す。そうしてようやく初めて真っ直ぐに瞳が重なり合うが、俺のひと声に少しだけそれが揺らいだ。
おそらくだけれども、本当に乗るとは思ってなかったのかもしれない。
ただの刺激を求めての悪戯が現実味を帯びて目の前に迫ってきた事に今更怖気てしまった事が微かに現れ、自然体を装っている身体が硬さを帯びるのが隠しきれていない。だが、『キス』だけという文言がある以上は極端な危険はないというのが彼女のセーフティとして踏みとどまらせている、といった所だろうか?
そんな賢しい振りをした馬鹿が一番、騙しやすいという教訓を刻み込んでやる。
安全で、綺麗な城で悲劇のヒロインごっこに浸っていればよかったのにわざわざ恐ろしい森で狼の前にその柔肌を晒したりするから―――貪り食われてしまうんだ。
そう仮面の裏で昏い喜びに打ち震えている俺は身を固くしている彼女の手を可能な限り優しく掬い上げる様に引き上げ立たせ、歩き始める。
「えっ、ちょ―――ど、何処にいくのよ!?」
「折角の初めてのキスなのにこんなロマンも無い状態でやるのはもったいないだろ? どうせならちょっとだけデートと洒落こもう」
「な、なにを勝手に―――というか、何で初めてって!?」
固めた決意と覚悟を別方向からひっくり返された彼女はその整った顔立ちに年相応の慌てた幼さに染め、勝手に初めてと決め込まれた事にプリプリと憤慨する。キャンキャンと抗議してくる彼女を“まーまー”なんて雑にあやしながら俺“比企谷 八幡”はその手を引き、予定外のデートへと軽やかにご招待するのであった、とさ。
―――――――――――――――
「はいー、“ライラさん特製ケバブ”二丁おまちどうさまでございます~」
「あいよ。釣りは要らないから」
「比企谷さんのそういう所が素敵だとおもうですよ~」
「仮にこれがデートだとしてもこのチョイスはどうなのよ……」
馴染のケバブ屋台で看板娘から熱々のケバブを受け取りその片方を差し出せば、何やらブツブツ言いながらも彼女は大人しくソレを受け取る。
だが、口ではなんだかんだと言いつつも育ち盛りの食欲には抗えないらしくスパイシーな匂いと手からはみ出るボリュームに恐る恐るといった様子で齧り付けば、眼を見開いて小さな口で次々と食べ進めていく。
そんな人に懐いていない小動物が餌付けされているみたいな様子に苦笑を零しているとチロリと睨まれる。だが、それも頬を膨らませて口元にソースをつけているのでは迫力よりも愛らしさが際立つ。
「いやいや、お気に召して貰えたようで何より。ほれ、コーラ」
「………まあ、美味しいのは間違いないわね」
そんな素直じゃない返答に肩を竦めつつも俺もケバブにかぶりつく。
これでもかと盛られた肉とキャベツを半円状のナンみたいなので挟んだだけだと侮ることなかれ。じっくりと炙られた肉は柔らかくジューシーなのに嫌味の無い旨味を肉汁と共に絞りだし、ソレをたっぷりかけられたスパイシーなソースが引き締める。そのくどさを和らげるようにキャベツがシャキシャキと口の中をスッキリさせた上でモチモチと香ばしいナンがそれら全てを調和させる。
手早く、それでも満足に腹を満たす最適解の一つ。それがこのケバブであると言っても過言ではない。
そんな至福に頬を緩めているとジーとコチラを彼女“速水 奏”が見ている事に気が付いた。
「そっちのバーベキューソースも一口食べてもいいかしら?」
「ん、いいぞ。ほれ」
「………声かける人間違えたかしら?」
「?」
彼女は甘めのヨーグルトソースを頼んでいたので、こっちも気になったんだろう。自分のオススメが反響を呼んだことがオタクの悲しい性で嬉しくなってしまい鷹揚に彼女が食べやすいように差し出してやる。ただ、何が気に食わないのかソレと俺をマジマジと見比べた後に彼女は少しだけ頬を染めてそんな事をぼやく。
「―――あっ、もしかして間接キスも初めてだったか?」
「いい加減にしないとホンキで帰るわよっ!!」
彼女がハグハグと俺のケバブを食べてるときに唐突に閃いた言葉がポロっと出てしまい、顔を真っ赤にした彼女に思い切り肩パンチを喰らった。これには俺も思わず反省して甘んじて受け入れるが、そのときに少しケバブのキャベツが飛び散ったのでぴえんな気持ちになってしまった。おのれ、純情みすてりあす少女め。
「あだだだ、妹がいるからついこういう時は癖が出ちまうんだよ」
「ふんっ、どうだかっ!!」
腹が満ちてご機嫌だったのに、すっかり臍を曲げてしまった少女。これには困ったもんだと思いつつも紙ナプキンを差し出せば不機嫌ながらも受け取ってはくれるらしい。彼女が気難しい顔で口元を拭いているのを苦笑しつつ、残りの分を手早く食べて自然にその手を取って歩みを進める。
「悪かったよ。本命までもう少しあるから時間潰しに付き合ってくれ」
「………今更だけど、変な所に連れ込むつもりならすぐに大声出すわよ?」
「きっかけから考えればすげぇ理不尽な事言われてんだよなぁ、俺。……まあ、未成年が補導されるようなとこには行く予定はないさ、と」
「まさか―――ココ?」
「まあ、20分くらいだけど暇つぶしにはもってこいだろ?」
ぽつぽつとアホな会話をしているウチにたどり着いたのは人も機械もガチャガチャと喧騒を響かせる学生たち御用達の暇つぶしスポット“ゲームセンター”である。
よほどロマンティックな空間を期待していたのか呆れたような顔を浮かべる彼女。だけれども、その表情の中にはちょっとだけ未知への好奇心みたいなモノが燻っているのを見た俺は彼女に問いかけてみる。
「もしかして、入った事なかったか?」
「まぁ、興味が湧かなかったし……その、なんというか、縁が無かったというべきかしら」
「………悪い事を聞いちまったな」
「ちょっと待ちなさい。縁が無かったって意味勘違いしてるでしょ? 友達がいないとかそういう方面のアレじゃないからね? 誘われること自体は普通にあったわよ?? 興味がないから断ってただけだから!!」
「…うんうん、そうだね。今日は俺が奢るから好きなので遊んでいいぞ」
「ちょっと!! 絶対に勘違いしてるでしょ!!」
誘われたってあれでしょ? 卒業式とかの時にクラス全員で行くけど一人だけ声かけないのもなぁ、ていう空気で誘われる奴でしょ。それでマジで行くと『うわ、ホントに来た』とかKYというレッテルを最後に張られるヤバい地雷イベントだ。八幡そういうのには詳しいのだ。
多分だけどコイツも雪ノ下タイプでクラスから孤立してこんな非行に走ってしまったんだと思えば少しだけ優しくしてやってもいいかと思えてしまう。大丈夫、ボッチでも案外楽しくやっていけるぜ。頑張れ、若者。
そんなエールを視線に乗せて送っていると今度はさっきと腰の入れ方の違うガチ肩パンを叩きこまれた。 ぴえん。
――――――――――――――――
さてはて、入店の時には一悶着あったが入ってしまえば人生初めてのゲームセンターに奏の瞳は子供の様に輝きっぱなしであった。
UFOキャッチャーの景品である漫画の推しに大興奮して白熱したり、最近のシューティングゲームのガチ加減に大いに悲鳴をあげ、エアホッケーでは負けるたびに本気で地団駄踏んで悔しがり、レーシングゲームではぶつかりまくり最下位になってクソゲだと拗ねたりと――――最初のミステリアスは何処に行ったんだこの女、という具合で予定を大幅に超えて満喫してしまったのである。
「ね、ねぇ、もうちょっと、あれだけ遊んでみましょう? リズム感とダンス系なら絶対に自信があるの!!」
「もう未成年は退店時間だよ。また今度な、今度」
「ぅう~、約束よ。破ると酷いわよ?」
名残惜し気な駄々っ子となり果て、店内に居残ろうとする彼女をあやす様に手を引き何とか外に連れ出した頃には本命の方の時間がギリギリになっている。何ならもう、本来の目的を忘れかけているぜ、このお馬鹿ちゃん。だけど、湯水の様に俺の小銭を溶かしたのだからその分の役得はしっかりと回収させて頂きたい所である。
いまだにしょんぼりUFOキャッチャーの景品の火柱デフォルトキーホルダーを眺めている彼女を手早くタクシーに詰め込んで最後の大詰めだ。
「………ど、何処に向かってるの?」
「お前、今日の主目的完全に忘れてただろ……」
「わすれて、ないわよ?」
「べつにいいんだけどさぁ…」
もう今更そんな“やっべ”みたいな顔で取り繕われても時すでに遅しである。それに、何よりも――――変に肩ひじ張って緊張されている時よりも今ぐらい気が緩んでいる方が俺にとっても丁度いい。
俺は、形式ばった“表面”を汚したいのではない。
その人の、女の根源であろう“芯”を滅茶苦茶にしたいのだ。
だから、この将来誰もが憧れる輝きになりえた少女に本当の喜びや温かさを知ったその時こそが―――――その甘い果実の食べごろなのだ。
そのための一手間を、惜しまず、今はただ楽しもう。
これからの事を意識した瞬間に緊張に肩を強張らせ始めた彼女が可愛らしく思えて、俺は小さく零れる笑いを流れていく夜景に溶かす事で収めたのであった。
――――――――――――
不覚にも、彼に声を掛けてから私の短い人生で恐らく一番無邪気にはしゃいでしまったという自覚が今になって私を苛やむ。
ぶっきらぼうで少しひねくれている彼に連れられたデートでは“そんなもの”をなんて思うたびに常識を覆されて、自分の世界に無かった色と景色が無理やり流し込まれてきてどうにもいつもの自分を保てない。
クールで、ミステリアスに。 それが“速水 奏”。
それなのに、自分が彼を翻弄するどころか、いつの間にか立場は逆転して興奮する私を彼が苦笑と共に受け止めてフォローしてくれている。そんな屈辱的な状態なのにそれが心地良く思っている。それに気が付いたのだって、はしゃいでいたゲームセンターからタクシーに押し込まれて冷静になってからの事だ。
恥ずかしいやら、悔しいやら、ちょっとだけ感じるくすぐったい喜びやらを何とか飲み込んで整理しようとしていた時に彼の一言でもっと根本的な所を思い出して冷や汗と、顔が真っ赤になるのを止められない。
そうだ、自分は―――“キス”をするためにこの男と一緒に居るのだった。
目まぐるしい新体験の嵐にすっかり忘れていた中で、ケバブを食べている時に零した言葉がリフレインして私の顔からはいよいよ湯気が出そうなくらいに熱くなる。
彼の、自分とは違うあの大きな歯形が付いたケバブ。
差し出されたそれに、精一杯口を開けて齧り付いても半分が関の山だった。
そんなたったそれだけの事なのに“男”と“女”という生き物の差を今までで一番“リアル”に感じてしまう。
思えば、今までの人生で男性と直接的に触れ合う事なんて滅多になかった。だって、誰もが自分が笑顔や困り顔で何かを頼めば嬉々として従ってくれたし、自分の気分を害すような行為はまるで禁忌の様に避けてくれていたから。
だから、初めてなのだ。
“キス”どころが自分の手をすっぽり包んで、抵抗なんて意味のないくらい膂力に差があることを予感させる固い掌に触れるのも、よろけた自分を支えるために胸で受け止められた時の分厚くて重たい筋肉の圧力を感じたのも―――全力で繰り出した拳もヘラりと笑って許されるくらいの威力にしかならない事実を知ったのも。
そんな、反抗する事に絶望的な差があることを彼とのデートで初めて知ってしまった。
いざとなれば叫べばいいと思っていた。
口八丁で丸め込めると思っていた。
でも、このタクシーの行方がもしも“そういう所”であったとしても―――私は彼に思い切り抱きしめられただけで全てのそんな小細工が出来なくなってしまう確信があった。
絶対絶命の獣が最後に全身の力を抜いて苦しまないように終わりを迎える様に、あの手で掻き抱かれ、胸の圧力に押し潰されれば助けを求めるどころか呼吸もままならない中で必死に喘ぐように上を仰ぐしか出来ず、か細い脚は恐怖から力を失って彼の支えが無ければすぐに崩れ落ちそうになる中で――――彼の自分とは違う口で唇が重ねられ、貪られる。
唾液を啜り啜られ、口内を太い舌で蹂躙されている時に自分の舌は呼吸を求めて媚びる様にソレを迎えるだろう。
そんな、考えるだけでも恐ろしい行為。
なぜそんな行為に、自分はこんなものに憧れなんかを持っていたのか。
あの女スパイが簡単に体を許さなかったのは、男を気ままに揶揄っていたからではない。―――そうして完璧にコントロールしなければ一瞬で自分は貪られてしまう事を彼女は知っていたのだ。
そんな真実に今更に気が付く自分の愚かさに頭を抱えたくなる。
だがもはや、サイは投げられ車内に二人きりという空間に自分は迂闊にも踏み込んでしまっている。ここから先、彼の膂力で肩を掴まれただけで抵抗する勇気なんてかき消されてしまう。そうして、最後には―――そんな最悪のシナリオが何度も鮮明に浮かんでくる。
ただ、私の心臓を高鳴らせ、愚かさを理性が大批判している最大の理由は―――そんな無様な被食される事に期待し、興奮を覚えているという事実であった。
愚かしい。本当に度し難い程に、愚かしい。
人生で初めて感じたあの力強さで、思い切り蹂躙される事の快楽を自分は期待してしまっている。
そんな事実に発狂しそうになった時に、運命の瞬間が訪れた。
滑らかに国道を走っていたタクシーが緩やかに止まった制動で、目的地に着いた事を知らせる。
ただただ、外を眺めていた彼の躰が動くのに思わず肩が跳ね、乾く喉は声どころか呼吸すらも怪しいくらいに固くなっている。そんな私の内心を知ってか知らずか彼は淡々と支払いを済ませ―――驚く程に柔らかく私の手を引いた。
「こ、ここは?」
「寝ぼけてんのか……最後のデートスポットだよ」
タクシーの行きついた先で引かれた手に従って外に出れば春とは言え少し冷え込んだ風が吹き、目の前にそびえたつのは想像していたようなお城の様な建物ではなく――――“水族館”と言う看板が掛けられた建物であった。
――――――――――
「正直、こんなちゃんとしたデート先を知ってるとは思わなかったわ……」
「褒めるのか、貶すのかどっちかにしてくれ」
彼に連れて来られた水族館は都内でも有名なデートスポットらしく、結構いい時間にも関わらず多くのカップルがその幻想的な光景に目を奪われつつイルミネーションと水槽の生き物たち前で肩を寄せあっている。
だけれども、その空気は自分が想像していたもの何かとはかけ離れた柔らかく幸せそうな空気に満ちていてさっきまでの自分の妄想が胸中の厭らしさを表しているようでなおさら恥ずかしくなって隣に立つ彼についつい八つ当たりのように悪態をついてしまう。
そんな私の事を呆れたように笑って許すその差がなんとなく経験の違いを表しているようで、行き場のないモヤモヤは募っていくばかり。
「ほれ、そんなふくれっ面してるくらいなら楽しんどけよ。折角の奢りだぞ?」
「もっと、ロマンチックな言い方があるでしょう……。というか、どうせなら有名なイルカショーも――――」
あんまりにあけすけな言い様にムッとした私が彼のデートプランの穴を突っ込もうとしかけた時にはたと気が付いた、あのゲームセンターに入る前に彼は“2,30分くらい”と言っていたが、それをだらだらとごねって私が居座った時間を逆算すれば、きっかりとソレを見れていたであろう事に。
そこまで気が付いて言い掛けた言葉を呑み込むことも吐き出すことも出来ずに、間抜けに固まった私に彼は緩く笑って答える。
「変なとこでお前も目敏いな。―――ま、ソレは今度きた時の楽しみのとっとけよ。仕事じゃあるまいし、その時に一番楽しい事しなきゃ損だろ?」
「………うん」
そういって緩く手を引く彼に返す言葉が思いつけなくて、私はそう返すのが精一杯だった。
それでも、優しく温かいその手から伝わるのは私がさっきまで想像していた暴力的なモノではなく凹んでしまった胸中まで満たしてくれるような柔らかくて抗いがたい何か。
本能が警告を鳴らしている。
さっきまでの危機感とは根本的に違うソレは心臓の動悸を強制的に加速させて、手にはかいたことも無いくらいの熱と汗を含ませていくのにその手を離したくない想いが湧き上がって。―――ヤバい、と頭の何処かで何かが叫んでいる。
エスコートするように手を引かれ、交わされる気安い言葉の応酬に勝手に脳内が感じたことも無い多幸感で包まれていくのを嫌でも感じる。
駄目だ、ダメだ、だめだ。
理性を保て。ここまで積み上げた日々を思い出せ。
意味の分からないイジメに屈し、理想を抱いて立ち上がったあの日を思い出せ。
そのために、その理想の自分であるために払ってきた犠牲を思い出せ。
今日会ったばかりのたった一人との邂逅で――――“今日の為にその日々は在った”だなんて
今までの自分に対する 冒涜だ。愚弄だ。嘲笑だ。侮辱だ。 “幻想的な景色の中で” 喪失だ。違反だ。裏切りだ。横着だ。汚辱だ。 “彼の優し気な視線から逃れられない。” 汚染だ。甘寧だ。偽造だ。 “優しく引かれていた手はいつの間に肩に置かれ” 苦渋だ。屈辱だ。苦杯だ。苦悶だ。 “緩やかに迫る彼の唇から目を離すことも出来ずに” 軽視だ。軽蔑だ。 “私はあまつさえソレを受け入れる様に唇を差し出し” 下賤だ。傲然だ。姑息だ。最低だ。詐取だ。惨憺だ。失意だ。失礼だ。醜態だ。凄惨だ。俗悪だ。怠惰だ。怠慢だ。 “彼の熱や匂いや空気が目をつむっても分かるくらいに近づいて” 堕落だ。恥辱だ。濁りだ。卑賎だ。独善だ。
触れ合ったその優しい唇の感覚に“速水 奏”という女が築いてきたちっぽけな偶像は余りにもあっけなく――――壊されてしまった。
ーーーーーーーーーー
噂には聞いていた夜にも見ることが出来るという品川にある水族館。
内容自体はこういうアミューズメントが好きな自分としては少し物足りない“デート用”という感じのものではあったのだが、普通の水族館にはないイルミネーションとソレに合わせて作られた展示は中々に趣深く料金以上に楽しめたので普通にいい感じだと言っていいだろう。
最初になにを想像していたのかは知らないが緊張で固くなっていた奏も軽口を交わす内に最初の調子を取り戻して楽しんでいた。途中でわざわざ地雷を踏みぬいて勝手に落ち込んだりするのも年下とのデートならではの光景だと思えば笑って流せる。
そこからは普通にゆったりと、歩調を合わせる様にその光と生物のコントラストを味わいながら回っていけば自然と口数も減り――――順路の最後となる海中水路に行きつき二人で息を呑んだ瞬間に瞳がかち合った。
揺らめく水の反射が薄暗い回廊の中で朧気に俺達を照らす。
彼女は怯えているようにも、期待しているようにも見える複雑な感情と自問自答を抱えながら―――それでも俺と繋いだ手を離さないまま救いを求めるような瞳だけが確かに煌めいた。
ぞくり、とえも言えぬ快感が背筋に奔って歪みそうになる顔を必死に取り繕う。
彼女は 手放した。
自分自身を守るであろう最後の砦の“芯”とも言えるものを、手放してしまったのだ。
自分で決めるでもなく、誘うのでもなく、どうするかという意思決定の全てを他人に委ねてしまった。
それは、魂の隷属だ。
この瞬間に、この類い稀なる輝きを持ったかもしれない一人の少女の神聖さも尊さも全ては失われて――――快楽を求めて無様に蹲り、縋りつく無様な存在へと成り果てた。
そんな凋落の美が甘く甘く俺の脳髄を満たして、奮い立たせる。
不安に震え、それでも脳内を覆う偽りの甘美な予感に期待を募らせるカワイイ愚か者である彼女の肩を柔らかく愛情を精一杯込めて抱きすくめる。迷子になって泣き喚く幼子をあやす様に可能な限り甘く、優しく、害はないよと安心させるように。水揚げに震えるおぼこな娘を宥めるが如く玉を扱う様に柔らかく。
言葉を発さぬままくゆる紫煙の様な緩慢さと熱を持って顔を寄せてゆけば、無垢な小鳥の様に未熟な嘴を差し出してくる様子はなんとも愛おしい。
何もない癖に、あるモノ全てで関心を買おうとする姿はなんて健気な事か。
そんな愚かな少女に俺はありったけの憐れみを込めて、優しくキスをしてやった。
いつものセフレたちにしているものに比べれば幼子の児戯にも等しい唇が触れ合うだけのキス。
たったそれだけの事なのに彼女の体からは一気に力が抜けしだれかかる様に脱力する。
ソレを抱き留めてやれば腰が抜けたのか体中は小刻みに震え、辛うじて俺を支えにしているような有様だ。そんな状態にも関わらず彼女の瞳は蜂蜜のように蕩け、真っ赤に熟れた果実の様に蒸気した顔で彼女は自分をこんな風にした劇薬を“もっと”とせがむ様に唇を差し出した。
それに、俺はもう一回柔らかくその唇を吸ってやる事で応える。
まるで溺れているかのように俺の胸元を強く握り縋ってくる彼女。ソレは何度も、何度も唇を重ね、息が荒くなり始めた時に唐突に訪れた。
“あっ”なんていう間の抜けた声と共に―――彼女の体がブルリと震えた。
ただ、唇を啄むだけのキスで彼女は 達してしまったのだ。
余りにも、無様な醜態。褥ですらない人目のある場所で配慮に配慮を重ねて貰ったのにも関わらず彼女は下半身を淫らに、勝手に反応させてしまった。だが、何よりも酷いのはそんな醜態を晒しているのにも関わらず幸せに脳みそを溶かされた痴呆のようにだらしなくその快楽に浸ってしまっている事だろう。
ただただ荒く、深い吐息を繰り返してその身体を俺にこすり付ける事で続きを促す少女に俺は最後に軽いキスと苦笑だけで答えて、彼女を支える様にしてその水族館を後にする。
最初は悲しそうな顔を浮かべた彼女も“この後”に思い至ったのか、震える足を何とか動かして俺の誘導に従うが――――門超え、橋超え、道路超え、人がひしめく駅のホームまで来たところでどうにも自分の想像する行き先でない事にこのマヌケも気が付いたらしい。
「え?」
「“キス”一つにも、けっこー段取りって重要なもんだったろ?」
「へ?」
タイミングよくホームに滑り込んで扉を開く車両。それに惚ける彼女を軽く押し出して乗せた後にもう一度だけ彼女のおでこにキスを落としてやった所で丁度、扉が閉まって何かを喚いている彼女はあっという間に地下鉄のトンネルへと消えていく。
そんな間抜けな姿にひとしきり笑い転げているウチに携帯に着信が入る。どうやら最後のキスの時にどさくさに紛れて張り付けた仕込みは上々に作用してくれたらしい。
アイツのデコにキスするために髪をかき上げた時に張った付箋には俺の連絡先と“続きはもうちょっと大人になってから” なんてしたためて置いたのだ。キスだけで絶頂してしまう知ったかぶりオボコには丁度いい諌言だったと思うのだが、さっそく返ってきたメールを読むにどうにもお気に召して貰えなかったらしい。
『このヘタレっ!!!!』
次々と届く単純明快な罵倒の数々。ソレを真っ赤な顔して涙目で連投しているであろう少女を想像して思わず俺はカラカラ笑いつつも、さて、なんて返信したモノかと思案して結局適当に返しておくことにした。
『また来週な』
『破ったら、承知しないわよ』
ご丁寧にお怒りの顔写真付きで睨みを効かせてくるのだから可愛げのある処女だ。
そんな新しい玩具を壊す楽しみに胸をときめかせながら俺は中途字半端にムラついた煩悩を晴らすために暇そうなセフレが誰かいないか携帯の履歴をくるくると適当に捲りつつ夜の街へと歩を向けつつほくそ笑む。
もうちょっと。
もうちょっと、と。
可憐な花弁が散り、膨らんだ実が蕩け落ちる程に熟していくその光景を醜悪な小鬼がニマニマと滴る涎を拭うことも無く――――最高の食べごろを見計らって耳障りな嗤いを響かせた。
――――――――――――
あの変化とスリルを求めて踏み出した日から私の日常は、思いのほか結構早く転換期が訪れたと言っていいと思う。
あのヘタレ男との出来事に気がおかしくなりそうな位に地団駄を踏んだ次の日、それが夢では無かったのだという証拠の様に机の上に投げ出されたお気に入りの漫画のキーホルダー。折角苦労して取れたというのに、それすらも付けないというのは逆にあの男の影響を意識しているようで癪だったのでカバンの端に取りつけてみた。
なんだかちょっと子供っぽい気もしたがあれだけ話題になった作品なのだからつけてても文句は出ないだろうと自分を納得させていつも通りに登校したのだが――――それが、きっかけだったのだと思う。
おずおずと掛けられた声は先日も聞いたばかりの声で、振り返ればこの間プリントを届けてくれた同級生の姿があり、また“いつもの”かと思い漏れ出そうになる溜息を繕おうとした時に彼女は先日よりもずっと熱の入った声を震わせ私のキーホルダーを指さしこういったのだ。
『奏さんも、その漫画好きなの?』
自分ではなく、他のモノへと熱の込められた視線を向けられているという慣れない状況に戸惑いながら頷けば――――体当たりかと言わんばかりに思い切り抱き着かれ、甲高い悲鳴が耳元で鳴り響いた。
そんな状況に困惑して眼を回している私などお構いなしといった雰囲気で怒涛の如くその漫画の魅力を語る彼女。がっこんがっこん肩まで揺すられ、いよいよもう駄目かと思った頃にようやく彼女の友人たちが駆け付け、私から引き離してくれ事なきを得る。
それがちょっと風変わりだが、私の人生で初めての“友人”というモノに出会った瞬間だった。
切っ掛けさえあれば、馴染むのはあっという間で遠巻きに自分を見て囁くだけだったクラスメイト達も挨拶を交わす様になり、雑談を楽しむ様になり、昼ご飯まで一緒にするようになった。
クールで、ミステリアス。そんな理想の自分とは程遠いそんな姿の筈なのに、斜に構えて冷笑をすることで均衡を保っていた頃に比べて心の中は随分と穏やかで暖かなモノに包まれているような気がして自然と笑う事が多くなっている。
そんな自分の変化へ戸惑ってはいても、流れはもっと急になっていく。
あの肝心な所でヘタレた男は、再び何食わぬ顔で自分の前に現れて私の心をかき乱していく。
――――約束のゲームセンターに行った。 太鼓やダンスのゲームで彼に勝って笑ってやった。
――――映画に行った。 開始30分で眠ろうとした彼に怒った。
――――買い物に行った。 地味な彼を着せ替え人形にして遊んだ。
――――ご飯に行った。 お勧めのラーメンは凶悪な美味しさで眩暈がして、翌日の体重計で彼を恨んだ。
――――温泉ランドに行った。 馬鹿にしていたけれど、縁日の様な雰囲気や色んな施設があって彼が呆れるくらいはしゃいでしまった。
今まで頑なに意地を張ってきたのが馬鹿馬鹿しいと思えるくらいに自然な自分で彼と過ごした日々が胸の奥に澱んでいた何かを解きほぐして、あっという間に私はただの高校生にされてしまう。そして――――デートの最後にされるあの甘いキスがそんな自分を許してくれているようでズブズブと彼にのめり込んで行くのを止められない。
友人ができ、新しい世界が開いて、その、ちょっと癪だが“恋人”が出来た。
憧れていた“スリル”や“ミステリアス”なんてモノは欠片も見当たらない穏やかな日常なのに、あの時とは比べ物にならないくらい色鮮やかな日々を満喫してしまっているのがなんだか少しだけ気恥ずかしい。
それもこれも自分をあの夜のキスで軟弱にした彼のせいだと責任転嫁して、そのツケを今週も支払って頂くために送ったデートのお誘い。
彼専用の着信音で返信が来た事に気が付き、鼻歌交じりで携帯を開いて――――
『今週のデートは金ローが“カリ〇ストロ”なのでキャンセル』
「は?」
そんなクソふざけた返信で脳内の何かが切れる音が響くらいに怒りを掻き立てたのであった。
あの男は、本当に私の感情をとことんひっかき回さないと気が済まないらしい。
―――――――――――――――――
『じゃあ、今週はお家デートね』
メールを送ってから秒で帰ってきた返信を見て思わず呆れの溜息を吐いてしまう。
こうなる様に誘導してきた側が言うのも何なんだが、こんなホイホイと罠に引っかかるチョロさはもはや純粋に心配になってきちゃうよ? この前、堕としたギャルもそうだが最近の子はなんでこう疑いもせずに食べられにきちゃうのん? ウチの小町の鉄壁さを通信教育で配布したら一攫千金も夢じゃなくなってきたまである。
そんな妄言を脳内で呟きつつ、あれから早二月でこの成果に出した事に小さく肩をすくめた。
あれ以来、奏とは定期的にデートと言う名の骨抜き業務に勤しんで少しずつ彼女の精神を緩ませてきた。そうしたら今までのストイックが祟ったのか見る見るうちに心の贅肉を蓄えて今では最初の人目を引く貫禄なんて見る影も無くなり、ただの女子高生に成り下がってしまった彼女。
良い事だ。友達が出来て明るくなり、色んな体験を通して見分を広め心の新陳代謝を行って日々に活力が沸く。その上、そんな自分を見つけさせてくれた優しい“依存先”まで一気に手に入れたのならば―――――“理想の自分”なんてモノ持っているのもさぞ、馬鹿らしくなる事だろう。
だから、彼女は最初に抱いていた警戒や不安なんてとっくに過去のモノだと思ってしまい、いまだ素性の知れない男の家に軽々しく“お泊り”してしまおうなんて考える。
アフリカじゃ通訳さんが“アイツらは昨日の友達、今日のご飯の精神で生きてるから気を付けろ”と優しく警告してくれるし、ソレは日本だって例外ではないのである。
一人でいれば、ドタキャンくらい流せたのだ。
孤独であれば“信頼”なんてモノを抱かず、刺されたって心の最後の一欠けくらいは守ってやり直せたのだ。
でももう、あの子には無理だ。
扉を開き切って、優しい世界で柔らかくなった心は傷を深く深く刻み付ける。
そして、ぐずぐずになったその肉片は―――――どこまでも膿んで、腐り落ちていくだけなのだ。
その蕩け切った腐肉になったあの少女が
どんな顔を浮かべるのか想像して、俺は熟した果実が落ちるその瞬間が遠くない予感に舌なめずりをするのであった。
―――――――――ーー
「うわ、マジで来たよ……」
「仮にも女子高生を招いてるんだからもっと嬉しそうにしたらどう?」
あれから渋る彼を問い詰めて遂に割らせたアパートの住所。
冷静になってみれば人生初の異性の部屋を訪れるという事実に少しだけ怖気づきそうになるのを奮い立たせた放課後。手土産を片手に地図アプリ頼みで行きついた建物は意外にも小綺麗で、想像していたような貧乏大学生が住むようなオンボロでない事にひとまずは安堵の息。
そこまで来て更に不安になるのは、一杯食わされてはいないかという事だったが―――チャイムからしばしの間をおいて億劫げに出てきたしかめっ面の彼が出てきた事でようやく肩の荷が降りてついつい憎まれ口が出てしまう。
そんな私に肩を竦めるだけで答えた彼もこれ以上ごねる気力も無かったのか素直に玄関に私を招き入れてくれる。
小綺麗な内装の玄関には彼のお気に入りの靴が数点あるだけで、奥に続く間取りは1DKの広くはないが住み心地の良さそうな部屋が続いている。テレビやソファなんかの家電や家具は最低限あるくらい。無骨で無頓着な彼らしい内装だと苦笑する傍らで壁一面を埋める本は少しだけ驚かされる。
「慌てて掃除しただけかもしれないけど、意外に綺麗に暮らしてるのね」
「どんな想像をしてんだよ…」
手土産の袋をテーブルに置いてソファに腰を下ろした私の一言に彼は呆れたように溜息を吐いて聞き返す。
「服もゴミも散らかりぱなしの汚部屋だったり、後はフィギアや漫画とかが棚にぎっしり詰まってたり――――後は、エッチな本がその辺に転がってたり?」
「偏見が煮詰まった先入観だな。あと、BDも漫画も今はパソコン一つありゃ事足りるからベッドの下を探しても何にも出ないぞ?」
「あら残念。どういうのが好みか興味あったのに」
おもむろにお宝を探し始める素振りをする私に彼が今度こそげんなりとし、肩を落とすので思わず笑ってしまった。
「というか、ロードショー始まるにはまだ時間早すぎるだろ。どっか飯食いに行くか? おすすめのサイゼなら近くにあるけど」
「ふふん、喜びなさい。今日はカワイイ女の子の手料理が食べられるわ」
「………ホントに食えるものが出てくるんだろうな」
彼が本格的にお宝探しを始めようとしている私の首根っこを掴んでそんな事を提案してくる。そんな予想通りの展開にほくそ笑んだ私が手土産の袋の中から途中で買ってきた食材を見せつけてあげると凄く嫌そうな顔をされた。
男子の端くれならば、嘘でもここは満面の笑みで答えろコノヤロウ。
「完成品を前にその言葉を後悔させてあげる」
「………あっ、カップラーメンの余りとかどっかにあったからそれでも大丈夫だぞ?」
「手料理になんかトラウマでもあるの、貴方?」
口の減らない彼との会話を交わしつつ私はあまり使われた形跡の無い台所に立って食材を手早く並べていく。
大見栄を切ったからには失敗は許されない。たまにはこちらがあの男の鼻を明かしてやるために、そして、彼がちょっとでも喜んでくれればいいななんて下心を抱きしめつつ私は調理を始める。
いっそのこと、このオムライスにハートでも書いて出してやろうかしら?
私の、呑気な鼻歌が包丁の音と共に狭いアパートにゆったりと流れていく。
―――――――――――――――――
冷蔵庫にお酒しか入ってなかったり、油すらないという衝撃の事実で彼をコンビニに走らせるというトラブルはあったモノの普段と比べても遜色ないくらいに上出来となったオムライスにスープと小皿。最初は疑わし気にこちらを見ていた彼もいい匂いがし始めた頃には子供みたいにお腹まで鳴らしてバツが悪そうにしていたのがなんだか無性に可愛くて笑ってしまった。
気持ち多めに作ったご飯もぺろりと平らげて“美味かった”なんて素直に言われればこっちも意地悪をするつもりにもなれず“お粗末様”だなんて返すしかできない。それが、なんだか無性に恋人のやり取りっぽくて恥ずかしくなるのを皿洗いに逃げて誤魔化した。
そうこうして食後のコーヒーを二人で呑んで食休みをしているウチにあのお決まりのオープニングがテレビから流れ始め、そのまま息も忘れて大泥棒とお姫様の大波乱に見入ってしまう。言葉を交わすことも無く、用意したお菓子を突くことも無く、その物語に引き込まれている内に―――遂にはエンディングを迎える。
彼について行こうとする少女と、心を鬼にしてソレを引き離す大泥棒。
今までは、胸を高鳴らせたはずのそのシーン。
だけれども、“傍に居たい”と思える相手が出来てから見るとこんなにも心証が変わるモノなのかと驚いた。
踏みとどまった大泥棒が今までは輝いて見えたのに今は身勝手で残酷に思えてしまい、決意して踏み出した想いから逃げ出すその行為を責め立てたくて仕方がないのだ。
あそこまで心を奪ったのならば、誰よりもその少女に責任を持って守り切ればいい。
暗いとこに引き込みたくなければ、自分が足を洗えばいい。
何よりも―――――あそこで抱きしめられない少女が、あんまりに惨めだ。
そんな判然と自分でも整理しきれない感情に困惑しているウチにやがて隣からの視線に気が付いて、思わずそちらに目を引かれてしまう。
気だるげな昏い瞳が、私を貫く。
偶然と気まぐれの出会いではあったものの、あの大泥棒の様に私の心を盗んでいった彼。
いつだって背伸びする私を苦笑いと共に寄り添ってくれた“兄”の様だった彼の柔らかい視線はそこにはなく―――焦がす様な感情を押し込めた“雄”の煌めきを宿している。
思わず怯んで引きそうになる私の手を、辛うじて力加減の効いた指で引き留めた彼が短く呟く。
「逃げるなら、いま逃げろ」
逃がす気なんて、さらさらない力で私を引き止めるその“男”の声に心臓が跳ね上がる。
あの最初の夜に警鐘を鳴らした本能がガンガンと脳内を叩き、溢れる弱音や言い訳が滝の様に零れてきそうになる。
ここで引き返さなければ、もう戻れない。
分かっている癖に、その手から伝わる熱を渇望している自分が逃亡を拒絶する。
YesもNoも言えないまま、ただ立ち尽くす私をその強い腕が引き寄せた。
その引力に抵抗することも無く彼の硬くて熱い胸板にぶつかった私を逃がさないようにと苦しいくらいの力で抱き込まれ、詰まる息のせいで呼吸を求めて顔をあげれば―――最初のキスと同じ状態で彼の顔が目の前にあった。
だけれども、ソレは決定的に違う。
あの時は恐くても、彼は私を気遣って優しいキスを教えてくれた。
それだけでも、自分の“女”は衆目の前で多幸感に押し流され達してしまったというのに―――――“性”というモノを剥きだしにしたソレを体験すれば、自分がどうなってしまうのかなんて想像もつかなかった。
乱れる呼吸が勝手に彼の匂いを吸い込み思考をぼやけさせ、抱きしめられたその腕から伝わる感触だけで体中に電気を流されているようで知らなかった神経まで叩き起こされ甘い痺れが迸り視界が明滅する。
分からない。
どうなってしまうかなんて、もう分からない。
それでも、私の中の“雌”は正しくこの“雄”に対してどう振舞うかという事を理解して、導いてくれる。
熱に浮かされ、もう彼の事しか考えられなくなった私は―――その教えに忠実に従った。
か弱く、細い指を彼の硬い胸板に縋る様に握り締めて縋りつく。
引き寄せられ逃げる事の敵わない腰は彼に少しでも寄り添う様に絡ませて。
被食される喜びに痺れて働かない脳に逆らうことなく、頬を緩め―――自分を貪り尽くしてくれる“雄”が食べやすいようにその唇を淫靡に差し出す。
自然界での掟は人類の本能にも深く刻まれて、今なおその作法は変わらない。
―――――――――――――――
彼女の力を込め過ぎればポッキリ折れてしまうのではないかと思う程に細いその身体を引き寄せ、抱きしめてしばし。最初は微弱な抵抗や震えがあったのだが、数分もすれば抵抗するどころが媚びる様に体を押し当てて雌特有の甘ったるい匂いを醸し始めた。
それでも、媚びる事に慣れていない拙い児戯の様なものだが―――急な身の危機に正気を失ってしまった少女が顔を真っ赤にして蕩けた顔でその唇を差し出してくる光景は中々に見応えがある。
男の誘い方も知らない少女のソレは、無様で哀れなくらい不細工なモノ。だけれども、絶世の美少女が男の慈悲を請う様に舌を躍らせ、唇を突き出しているソレは生命の根源に関わる神秘のような卑猥さだ。
そんな彼女がなんだか無性に愛しくて、可愛らしくて、いじらしくて――――徹底的に壊してあげたいと心から想う。
待ちに待ったこの瞬間がいつも俺の真っ暗な溝を一瞬だけ満たしてくれる。
誰もが憧れ、眩しさに目を眇めるそんな存在の硬く強い殻を丁寧に剥いた瞬間に溢れる果実の柔らかい身を晒してソレを下品に貪って打ち捨てる。それが腐敗して、どうしようもなく堕ちていく瞬間のために俺はこの煩わしい少女の幻想に付き合ってきたその苦労が報われるのだ。
そんなマグマの様なヘドロが俺の中から溢れ出てきた所で俺の胸元で阿呆の様に唇を差し出している彼女に――――優しいキスを落とした。
想像を覆す柔らかで、優しいソレに一瞬だけ正気を取り戻した彼女が息を呑んだ瞬間に
思い切り口内を 貪ってやる。
彼女の舌を、歯を、頬を、粘膜を、喉を―――唾液の一滴すら食らいつくす乱暴で“接吻”という言葉も憚る“捕食”に近い行為。
一瞬だけ惚けた彼女が唐突に襲い来るその暴虐に呼吸すらままならずに呼気を求めて必死に舌と唇を突き出す。そんな生理的な現象すら許されず喘ぐ彼女を楽しみながら、彼女の必死に考えてきたであろうコーディネートであろう服を荒っぽく乱していく。
ブラウスをはだければ女子高生には随分と早い煽情的なブラが見え、チェック柄のスカートをずり上げれば揃いの際どいショーツが既にシミを作っている。最初からそのつもりだった癖に戸惑うその初心さが愉快で心の奥に巣くう小鬼がげたげた笑う。
男の家に無防備に乗り込んできた愚かな少女。
たった数回のデートで心を許して、優しく手ほどきをして貰える妄想でもしていたのだろうか?
その夢見がちな思考に笑いは止まらない。
素直にその辺の同級生でも味見していればよかったのだ。それが出来る能力も、美貌も持ちながら面倒を避けたつもりで最もしてはいけない選択をしてしまった。だから、こんな無様を晒す。
彼女の口内を貪りながらも、彼女のデリケートな部分をゆるやかに撫でていく。その瞬間に未知の感覚に跳ね上がる彼女を体で抑え込みつつも――――カリカリ、カリカリともどかしく感じる程の加減で爪を立てる。
AVの様に激しく弄れば感じるなど幻想だという事は実験したセフレたちで実証済み。俺が遊び、壊してきた結論から言えば究極、“雌”という奴は段取り次第では“くすぐる”という行為だけで絶頂を迎える事が出来るのだ。
それが男女の交わい自体が初めての、酸欠気味で混乱状態に陥ったキスだけで達してしまう敏感な女なら
「っ♡ー――――ぶぁ、んひっ、んんっ―――~~~っ♡♡♡!!!!!!」
脳の処理能力なんて簡単に跳ね上げ、あっという間に人間噴水に仕上げてやる事なんて実に容易い話なのである。
びちゃびちゃと、床とカーペットに粘り気のある潮をまき散らしてつつ背を必死に仰け反ろうとする彼女を抑え込み、カリカリと執拗なくらいに責め続ければ一度だけ大きく痙攣した彼女がプツリと糸が切れたように全身を脱力させて沈黙してしまった。
にちゃぁ、と塩臭い粘液塗れとなった指とだらしなく弛緩して涎や涙等を垂れ流して美貌が台無しになっている顔からようやく一旦離れて見れば、たった10分の内に凄まじい有様になって気絶している彼女の思わず笑いが零れる。
ぴくぴくとしか動かない彼女の体に豊かな乳房はブラジャーを飛び出してその先端を真っ赤に充血させ、白目をむいていまだ想像のキスに耽る舌は厭らしく蠢き―――股間からは潮とは違う液体……まあ、憚らず言えば失禁を渾身の勝負パンツから滴らせて水溜りを作っていた。
あの、誰もが振り向く絶世の美少女がこんな痴態を晒しているのだから笑うしかないだろう。
そんな俺の個人的な感想は置いておき、携帯のカメラを起動させて余すことなくその情けない姿を記録しておく。わざわざこんな事をしなくても別途の隠しカメラで包み隠さず録画済みなのだが、後々のプレイで羞恥を煽って追い詰めるにはこれが一番盛り上がるのだから逃す手はない。
そんな一連の下準備を終えた俺は彼女が意識を取り戻すためにゆっくりとその赤く張りつめた恥部の肉芽を――――思い切りつね上げて彼女の意識を取り戻してやった。
その際に、またカーペットが汚れたのは些細な事だろう。
――――――――――――――
もう、何度目かも分からない脳内に響くナニカが焼き切れる音と全身の力がプッツリと切れて崩れ落ちる浮遊感。そして、堕ちきる前にソレを上回る電流が意識を無理やり覚醒させて絶叫と共に体を痙攣させる繰り返し。
意味がないと分かりつつも、助かる道はこれしかないと口が勝手に救いを求めて喘ぐように助命を乞う。
「―――もう、ひっ、たしゅけて♡♡。らめ、らめらめらめっ♡♡♡!! ―――~あぁぁっぁっぁっぁ♡♡!!! やらっ♡♡♡♡! もう♡、いきらくないのっ!! ホントにっ、ホントに♡♡♡しんらひゅっ あ」
私のちっぽけな脳みそを絞りあらゆる懇願を試みるも、私の体にのしかかる圧倒的な存在はそんな非力な雌の戯言に付き合う暇はないと言わんばかりに私の子袋を何度も突き上げ立場の差を分からせるだけだ。
荒くはない。むしろ、優しく滑らかなその注挿。だが、それが自分の指では掴み切れない程太く、股下から臍を優に超える長さで―――膣内の凹凸の全てをこそぎ取る雁首を持つ男根で無限に耕されるのならば雌は許しを乞い、せめて子種を促す様に非力な膣を締めて少しでも早く吐精を促してやることくらいしか救われる方法はない。
数時間前まで処女であった自分の“女”は自分が泣き喚きながら『貫いてくれ』と懇願するまでの間で丹念に解されきって、血もでないくらいにふやけ切っていた。そして、いま自分を屈服させている男の根が張られた瞬間には体中の水分を出し切る程にあらゆる体液をまき散らして“自分が女として生まれたのはこの為だったのだと“むせび泣く程に満たされてしまった。
何度となく精を出しても、何度達しても自分に雄々しく反応してくれる彼とその男根が連れて行ってくれる終わりのない快楽に酔いしれた自分の脳内は確実に焼き切ってはいけない回路まで焼き切って人目にさらすことはできない醜態を晒して彼にひたすら愛を紡いでいた―――と思う。
疑問形なのは、私が正気でいられたのはそこまでだったからだ。
ドロドロになって力尽きた私の頬を優しく撫でた彼は、止まらなかった。
もう、あるのかも分からない私の秘所を変わらぬペースであれからずっとこすりあげ続けている。
時計ももう読むことが出来ないし、陽が昇っているのか落ちているのかも分からない。
必死に許しを乞い、媚を売り、忠誠を誓って泣き喚いていた声は掠れて消え、限界を迎えて言葉にするのも憚れらる尊厳を漏らしながら彼に犯され、彼の口から与えられる水分とかみ砕かれた食物だけが私の生命線となって必死に欠片も残さないように啜って自らお代わりを求めて舌を突き出し強請った。
そんな終わりの見えない責苦は意識を弾ける快楽の電流と共に奪い、ソレを上回る衝撃で意識を引き起こされた時には違う体位で躰を躾けられ、頭ではなく脊髄に“自分はこのチンポを満たすためにだけ生まれてきた”という真理に気が付いて彼に掠れた声で感謝を告げた。
「わ りゃ じ、 あいひえる♡。 あなだ♡と この♡♡ ぢんご♡ ♡ お“ぉっ ~~っ♡♡♡♡fchだ♡♡し♡♡ゅえr!!!!!」
自分でも聞くに堪えない“愛の告白”に彼は一瞬だけ目を丸くした後に、それが正解であると認めるかのように優しく頬を撫でて久々に甘いキスをした後に――――初めて事務的でない、雄の義務とは違う欲望をぶつけるような激しい腰遣いをしてくれた。
子宮口すら貫くような激しい突き上げに真空となった膣口は熱烈なキスを彼の男根に交わし、内臓ごと引き抜くようなその勢いで去っていくソレを惜しむように“ちゅっぽっ”という下品な音と共に離れもたらされる喪失感と、与えられる快楽に膣全体がわななく。
そんな哀れな姿に慈悲を与える様に骨盤を割る様な勢いで突き上げられ、再び私の子宮は歓喜に打ち震えソレをキスと共に再び迎い入れる。
この営みの中で初めて見せた“孕ませ”や“屈服”させるための動きではなく―――彼自身が“快楽”の為に振るうその性暴力。
それは自分が初めてこの運命の雄に“犯して”貰える段階まで至れた証明として焼き切れてしまった脳細胞が歓喜に染まって嬉しさから涙がこぼれる。
ミステリアスで、孤高。
そんなものに拘って“雄”という絶対的存在を弄ぼうとしたかつての憧れ。
それが、いまはなんとも哀れでちっぽけな生き方だと気が付く。
なぜ、あんなものに憧れてしまったのか。
どれほどの時間をそれで無駄にしてしまったのか。
そんな悔恨が今では拭えないけれども、彼女に憧れて踏み出した一歩が彼に出会わせてくれたと思えばやはり彼女は自分の恩人だったのだろう。
彼と出会ってから世界が変わった。
色の無い日常に少し変わってるけどいい友人が出来て、見下していたクラスメイト一人一人にも人生や考えがあることを知って、色んな体験を重ねて自分の世界の狭さを痛感し、誰かと歩む時間は一人で歩むものの数倍濃いという事を学んだ。
そして
自分の無駄に育った躰と、いじめられる切っ掛けになった容姿。
それが、“運命の雄”を満足させるためのモノだと気が付けたのだから♡
そんな長年の苦しみの答えに心の中を満たされていると、より激しくなる注挿で熱く太いその男根がより膨らんで彼と自分の匂いが濃く混ざった淫靡な香りが更に強くなったのを感じる。
あ♡ くる♡♡♡♡
そんな予感に急いで膣を引き締めお迎えの準備をする。
荒い吐息にもはや打撃音といって差し支えない暴力的な音に私の嬌声が混ざって、お互いの興奮がクライマックスを迎えている事を示した。
もはや、一突きごとに潮を撒き散らし絶頂の嵐で意識が飛びそうになる中で彼の背に爪を立て、痙攣を無視して無理やり絡めた足で腰を掻き抱いて必死に保つ。脳内に散る雷のような快感と、撒き散らされる潮と汗の飛沫の嵐の中でも彼だけは手放さないように。
そんな終わりのない航海の果てに―――――
音がやみ、静寂が訪れた。
「イけ、奏」
そんな一言が 後光が指す凪の様な世界で柔らかく響き
“ どじゅっ ”
重たい重低音と共に私の子宮にめり込んだ亀頭から―――マグマが放たれた。
内臓を焼かれる快楽に人ならざる絶叫をして
愛する男から貰えたその一言に歓喜して
その日、 “速水 奏” という女は ようやく今日という日に 生まれたのだった。
――――――――――――――
「ひぐっ、ぅっ、うぎゅっ――――初めてだったのにぃ……」
「いや、ごめんて」
楽しい金曜ロードショーから一転、処女踊り喰い耐久ロードレースと洒落こんで土曜の夕方まで奏を犯してみたらウンともスンとも言わないくらいプツリとこと切れてしまった。今までの様にクリトリスを思い切り捻りあげても、ケツに紅葉が残るくらいひっぱたいても腰をカクつかせるだけで反応が無くなってしまったのでしょうがなく切り上げる事にして部屋の掃除に勤しんでベットに戻ればメソメソとこんな感じで泣いていのだ。
こんな調子で続行という訳にもいかないので仕方がなく彼女の事を優しく抱き留めてナデナデ慰めてやれば、もの凄い目で睨まれた。ぴえん。
まあ、文句は言えないのでヘラりと笑ってキスで誤魔化そう。
なにせ彼女の大切な“初体験”はとんでも無い経験となってしまったのだから。
絶頂に次ぐ絶頂の快楽地獄に咽び泣きあられもない言葉で許しを乞うたのに、許される事なく攻め立てられて失禁から潮吹き、果ては犯されイキながら尊厳をひり出す所まで追い詰められた。
そんな終わりのない責め苦にピタリと綺麗な筋だった彼女の女陰は一晩で使いこまれた襞がべろりと生まれ、皮に埋もれていたクリトリスは真っ赤に腫れて突き出し引っ込まない。それだけでも痛ましいのに、豊かな乳房の先端から体中にキスマークや歯形がこれでもかと残されケツは叩きすぎたせいか一回り大きくなってエロさが倍増している。
大理石の彫刻の様に完成された美を誇っていた彼女の体はたった一晩で尊厳も何もかも奪われてただただ男の欲望を満たす高級娼婦の肉体へと書き換えられてしまったというのだからもう下手人としては無責任に笑うしかないでしょ。
そんな哀れ被害者のお馬鹿ちゃんを慰めるのも赴き深いものがあったのだが、三大欲求の一つがグウと腹を鳴らせて抗議をしてきた。
思えば昨日の晩からほぼ24時間激しい運動に励んだ上に、比喩でなく部屋中に散らばった数えきれないコンドームの中に貴重なタンパク質を放出し続けていたのでさもありなん。ついでに言えば人はお腹が減るとイライラするらしいので胸元でシクシク泣いているオナホールのご機嫌取りもこっち方面のアプローチに切り替えてみる。
「なぁ、奏。飯なんだけど……」
「え? あ、うん―――――んえ❤︎」
「出前で、も……」
「 あ 」
俺の胸に額をゴリゴリ押し付けて抗議していた奏はその提案を聞き遂げる前に何かを察したのか俺を見上げる様に頤をあげて舌を突き出してくる。それは、さながら親鳥に餌を強請る雛そのものの姿で―――彼女がこの短期間で完全に常識まで破壊されてしまった悲しくも心躍る成果であった。
あの長時間の性交において流石に喉も乾くし、腹も減るので適当にパンだったり水を補給したりした。だが、その間も腰は止めるのが煩わしくて奏にはもういっそのこと両方同時に行ってしまえばいいという発想の元、全て口移しで食物を与えていたのだ。
乾ききっていた奏は恥じらうことも無く舌を伸ばして俺の口に吸いついてきたし、飢えていたのか貪るように俺の口内のパンを求めて飲み込んで行った。そんな性交を止めずに栄養をとれる大発明を定期的に行っていたせいか―――彼女にとって“飯”とは俺から口移しされるものに差し替えられてしまったらしい。
そんな俺でも眼を剥くような光景に唖然としていると彼女もレロレロと突き出していた舌を止め、その勘違いに気が付いて小さく声を漏らした後に顔を真っ赤に染めていく。
俺はとんでもない事をしつつあるんじゃないかと微かに湧き上がる疑念とあんまりな淫乱さにドン引きするのを辛うじて塞ぎこんで、何とか恥じらう彼女の口にキスを落として笑ってごまかしてやる。いや、もう、笑って誤魔化すしかないでしょコレ。
「好きなの、頼んでいいぞ」
「違うのっ!! いまのはちがうのっっ!!!」
優しく微笑む俺の視線から逃れる様にシーツを頭からかぶり絶叫する彼女に苦笑を零しつつ、俺は何を食うか適当に候補を絞っていくのであった。
結局、飯を食ったその後も、夜が更けても――――彼女が帰らねばならないギリギリまで交尾は続き、家を出るころには彼女を無事に壊し切ってやることが出来て実に有意義な時間を過ごしたことをココにごほーこくさせて頂こう。
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ピロリン♪
ミステリアスなJKがセフレに加わりました!
様々な調教を楽しみましょう!
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速水 奏 メス 17才
M ☆6
S ☆2
性欲 ☆8
服従 ☆7
特殊 ☆6
奉仕精神 ☆8
嫉妬・独占 ☆10
病みやすや ☆8
~蛇足~
「あれ、奏ちゃんまだ“進路希望”出してなかったの?」
「ええ、ちょっとまだ決め切れなくて……というか、そんな一杯もって来られてもよみきれないわよ?」
「えへへ、オススメがありすぎて絞れなくてさー」
良く晴れた学校の昼休み。最近では名前まで親し気に呼んでくれるようになった“友人”が両手にどっさりと漫画が詰まった袋をもって私の席にやってきて声を掛ける。あれ以来、趣味の漫画を貸し借りする中となったのだが重度のオタクの彼女の情熱にはたまに呆れてしまう事もしばしだ。
「というか、奏ちゃんの成績ならどこでも進学余裕なんじゃない?」
「んー、まあ、そうなのだけれども……最近はやってみたい事もあって迷ってるの」
「ほへー、大学の学科選びで迷ってるんだ。確かにどうせやるなら興味あることの方がいいよねー」
うんうんなんて腕を組んで頷く彼女が可愛らしくて苦笑を返しつつ私はちらりと手元の用紙に目を向ける。
悩んでいるのは学校ではなく進路自体だというのは野暮だろう。
理系・文系の選択から志望校の候補。そんな無機質な欄の横にオマケの様に書かれた小さな“就職希望”の枠。
さてはて、進学校の“進路希望”で―――――『お嫁さん』なんてモノを書くくかどうか本気で迷っているというのは誰に相談したモノやら。
クスリと、それでも割かし真剣に悩む私はあの気だるげな“恋人”の事を想って身体と胸の心を少しだけ熱くして微笑んだのだった。