錬金術士ライザが幼馴染の父親と背徳交尾しまくって調教された挙句、親友であるクラウディアを中年親父に売り渡し、自分と同じハメ穴に変えていく話 作:黒胡椒サラミ
水没坑道から脱出してから数日間、クラウディアは森のアトリエに現れなかった。クラウディア自身も予想していた通り、無断で丸一日以上も家を空けていた彼女は、父親にこっぴどく叱られて、自室での謹慎を命じられたのだ。
非は自分にあると、クラウディアは思っていた。沢山心配をかけてしまったのだから、お父様が怒るのは仕方がないと。だから謹慎を命じられた時も、彼女は「申し訳ありませんでした」と言って大人しく頭を下げ、自室に引き下がろうとした。
しかしその時、父のルベルトが娘の背中に放った言葉が、クラウディアの心に棘を残した。
「やはり、こんな村の悪童たちと交友するなど、認めるべきではなかったな」
愛する年頃の一人娘が、初めて無断で外泊したのだ。ルベルトは心配し、その夜は一睡もできなかった。クラウディアが何事も無く帰ってきた時には言いようのない安堵を覚え、娘の無事を、神に感謝しさえした。だがその想いは、次に烈火のような怒りに変わった。だからだろう、その時にルベルトが、必要以上に強い言葉を使ったのは。
「ライザとか言ったか……? あんな娘を信用して、お前を任せたのも失敗だった。あのようなはしたない格好をして、恥ずかしげもなく外をうろつき回っているような娘だ。お前が悪影響を受けるのは当然だった」
あの恥というものを知らない娘の事だ、親御さんに隠れ、どんな事をしているか分からない。他の不良とつるみ、目も当てられないような生活をしているに決まっている。ルベルトは、それからもライザを蔑む言葉を並べた。
そして最後にルベルトは、あの娘と会うのは金輪際禁じると、高圧的な口調でクラウディアに命令した。
「返事をしなさい」
ルベルトに背を向けたままのクラウディアは、父の命に「はい」とも「いいえ」とも答えなかった。こんなことは、ルベルトにとって初めての経験だった。クラウディアはこの村に来るまで、彼の言うことに何一つ逆らわない「良い子」だったのだから。
苛立ち、ルベルトはついに声を荒げた。
「……返事をしなさい。返事をしなさいと言っている! 聞いているのか、クラウ!」
クラウディアが少しうつむき、きゅっと両こぶしを握り締めたのが見えた。しかし、彼女は結局、最後までルベルトの命令に頷かず、彼の執務室を出る間際に、小さな声だが、はっきりと言った。
「……ライザは、そんな子じゃありません」
ルベルトの反論を待たず、クラウディアは小走りに自室に戻っていく。ルベルトは、己が言い過ぎた事を悟り、また、娘の気持ちがどうしても理解できずに、頭を押さえてどっかりと椅子に座った。
そんな父娘のやり取りがあったのが、数日前の話だ。クラウディアはライザの事については父に逆らうような事を言ったが、自室での謹慎命令にはきちんと従い、一歩も屋敷の外に出なかった。しかし、ようやくルベルトに外出の許可をもらうと、彼女が一番最初に足を向けたのは、森の中にある彼らの隠れ家、ライザのアトリエだった。
「久しぶり、ライザ」
「クラウディア……!」
アトリエにいたライザは、クラウディアの姿を見るなり感極まったような表情をした。彼女が最初にクラウディアに対してかけた言葉は、謝罪だった。
「ごめんクラウディア……! やっぱりあたしのせいで、お父さんに怒られたんだよね? 本当にごめんなさい」
「ううん、いいの。大丈夫よライザ。もう外に出るお許しはもらったから」
「あたしが冒険に誘ったりしたせいで――」
「付いて行きたいと思ったのは私だから。私が決めたことだから。だから、ライザは謝らないで」
「う~~! クラウディア~~!」
ライザも、クラウディアが二度と姿を現さないのではないかと心配していたのだろう。涙目になった彼女は、クラウディアに近寄ると、その背中に腕を回して抱き着いた。
「よしよし」
まるで母親のような声を出して、クラウディアはライザの背中をぽんぽんとあやす。ライザの気持ちが収まるまで、少女二人はそうして抱き合っていた。
「ライザ、釜の様子が変だけど、大丈夫なの?」
「あ、そうだった! 調合の途中だったんだ!」
アトリエの錬金釜の中で、粘り気のある黒い液体がグツグツと沸騰しているのに気付いて、クラウディアはライザに指摘した。ライザは思い出したようにクラウディアの身体から離れると、慌てて釜の傍に戻り、杖でぐるぐるとかき混ぜ始める。
「爆発したりしないわよね……?」
「うん、多分大丈夫!」
「多分って……」
それで二人のやり取りは、すっかり元通りになったように見えた。クラウディアはライザの隣で、興味深そうに調合の様子を見つめている。
クラウディアにとって、ライザはこの村でできた、初めての友達だった。父親の商売の都合で、点々と住む場所を変えてきたクラウディアは、ライザと友達になる以前は、同年代の子どもとは、ほとんど遊んだことが無かったのだ。
だから、クラウディアにとってライザは特別だった。父親に反抗するような真似をしてみせたのも、彼がライザの事を悪く言ったからだ。ライザはクラウディアに、屋敷の外に出る勇気をくれた。冒険に連れて行ってくれて、クラウディアが今まで見たことも無かった様々な景色を見せてくれた。父に内緒で密かに練習していたフルートの腕も誉めてくれた。
例え愛する父とは言え、そんなライザを罵るような言葉だけは、クラウディアには許せなかった。
「おう、クラウディア。ようやく親父さんに許してもらったのか」
「あ、ザムエルさん……」
その時二階から降りてきて、クラウディアに声を掛けたのはザムエルだった。
「あの……、こんにちは」
ただ挨拶をするだけなのに、クラウディアはどうしてかザムエルから少し目をそらし、小声になった。そうなってしまった理由については、クラウディアにも分からない。
彼女は部屋で謹慎していた最中、色々な事を考えた。その大半は、水没坑道の奥に閉じ込められ、遭難していた時の記憶についてだ。あそこでは、クラウディアの世間知らずな頭では処理しきれない、様々な事が起こった。一緒に閉じ込められていたザムエルに対して、クラウディアは恐れや戸惑いの感情を覚えた事も多々あった。しかし、謹慎中に記憶と心の整理をつけると、やはりザムエルは、クラウディアを救うために精一杯の努力をしてくれたのだという結論に達した。
「何にしても、また顔を見られて嬉しいぜ、クラウディア」
「あ――、は、はい」
ザムエルに声をかけられて、妙にクラウディアがどぎまぎとしてしまうのは、彼に下着姿を見られたことや、人工呼吸の際に唇を奪われた記憶があるからだ。しかし、今のクラウディアの内側にあるのは、初対面の時に彼女が彼に対して感じていたような嫌悪ではない、何か別のものだった。
ザムエルが二人の傍に近づいてくると、クラウディアはふいと目を伏せた。そんな彼女の横顔を微笑んで眺めてから、ライザが手を叩いた。
「――よし、完成!」
「おお、やっとできたか」
「え~、一生懸命作ったんだから、ちょっとは褒めてよザムエルさん」
「ふん――分かったよ。よしよし」
(え…………!)
クラウディアは思わず目を見張った。
ザムエルが、よしよしと言葉でライザを褒めるだけでなく、彼女の頭に大きな手を乗せ、ポンポンと叩いたからだ。ライザは、まるで子猫が飼い主にするように、目を細めあごを上げて、その手に気持ちよさそうに頭を擦りつけている。
「どうかしたか?」
「どうしたの、クラウディア?」
「――え、えっと、ううん、何も」
その様子から目を離すことができず、硬直していたクラウディアに、ザムエルとライザが同時に尋ねた。クラウディアは慌てて首を横に振る。彼女の顔は、何故か熱くなっていた。
(今の――、今のって、どういうこと? え、これが普通なの?)
年頃の女子の髪に手を乗せ、ポンポンと叩く。これが実の親子だったり、あるいはもっと幼い子供に対してやるのであれば、クラウディアにも理解できる。しかし、ライザはクラウディアと同じ17歳で、ザムエルは40歳を超えた大人の男性だ。それが非常に自然な仕草で髪を撫で、撫でられて喜ぶ。そういうことは世間では当たり前なのだろうか。
「ちゃんと使えるもんができたんだろうなぁ?」
「あ、そういう意地悪言うんだ!」
「この前だって、調合失敗して酷い目に遭ったじゃねぇか」
「あれはちょっと……たまたまだよ!」
悶々とするクラウディアの横で、ザムエルとライザは会話を続けている。という事はやはり、さっきのやり取りはごく普通の、当たり前の行為だったのだ。きっとそうに違いない。でも――。
少し強張った笑顔でライザたちに相槌をうちながら、クラウディアは混乱していた。
「そ、それは何なの、ライザ」
「改良建築材だよ」
「建築材?」
「うん、この家を直す時にも使ったでしょ?」
クラウディアは自分の混乱を誤魔化すように、ライザに今しがた完成した物体の用途を尋ねた。ライザ曰く、これは建物を作るための建材だそうだ。以前に造ったものに少し改良を加えて、耐久性や耐水性を上げてあるという。一体、そんなものをどうするのか。クラウディアのその質問には、ザムエルが答えた。
「風呂を作ろうと思ってな」
「お風呂……ですか」
「ああ、この家にゃ風呂場が無かったからな」
確かに、このアトリエに浴室は無い。体を洗おうと思うなら、傍に流れている小川か、森の奥の湖を利用する以外に無かった。ここに屋敷から通っているクラウディアにとっては、それで十分だと思えても、ここを住居に定めたザムエルにとっては気になるだろう。
「たまにゃ、熱い湯にも浸かりてぇしな。身体を洗いに、一々川に入ったりするのも面倒だしよ」
「そう言うけど、ザムエルさんって、ちゃんと身体洗ってないでしょ? 時々変な臭いがするもん」
「何だと、この野郎」
「本当のことじゃん!」
ザムエルとライザのやり取りは、やはり距離が近い。両者の身体が触れそうなくらいの位置に立っている事もそうだが、それ以上に会話の内容が、クラウディアにとても親密な印象を与える。
(ザムエルさんの、臭い……)
クラウディアは無意識に、その形の良い鼻をひくつかせていた。このアトリエには、ライザが作った安心感を与えるというお香が焚いてある。感じるのはほとんどがその香りだが、クラウディアには、洞窟で閉じ込められていた時、ザムエルの身体から漂ってきていた、何とも形容しがたい匂いが、お香に紛れて自分の鼻に届いたような気がした。
「…………っ」
クラウディアの喉が、ゴクリと動いた。
「これでお風呂を組み立てるのは、ザムエルさんが自分でやってよね。そこまでは錬金術じゃできないから」
「分かってるさ。どうせここじゃ暇が多い。いい暇つぶしになる」
「二階に作るの?」
「どうするかなぁ……外に穴掘って、露天風呂にしてもいいかもしれねぇ」
「川から水を引く部品なら、あたし作れるよ?」
ザムエルとライザは、浴槽を実際に設置する算段をしている。彼らに気付かれる前に、己の顔の赤さを鎮めようと、クラウディアは必死だった。
それから三人は、ライザの提案で、一緒のテーブルを囲んでお茶の時間にすることにした。ちょうど喉が渇いていたし、今までの雰囲気が紛れるので、クラウディアも歓迎した。
「じゃあ、すぐにお湯を沸かすから、ザムエルさんとクラウディアは座って待ってて」
「ありがとう、ライザ」
クラウディアは、背筋を正して姿勢よく椅子に座り、そろえた脚に両手を重ねて置いている。こんな所にも、彼女の育ちの確かさや、受けてきた教育の質がうかがえる。ただ座っているだけなのに、どうも野卑で下品な印象を与えるザムエルとは対照的だ。
「待て、ライザ」
ライザがキッチンに向かおうとすると、ザムエルが彼女に声を掛けた。
「どうせなら、“あの茶”を飲もう。せっかく、クラウディアが久しぶりに来てくれたんだしなぁ」
「あ――、うん。“あのお茶”だね」
ザムエルが意味あり気な事を言うと、ライザもまた、意味あり気な笑顔で頷いた。まるで、二人だけの秘密のやり取りをしているかのようだ。「あのお茶」とは何かとクラウディアが尋ねると、ザムエルは言った。
「ライザがクラウディアのために作った、特別製の茶だ。だからまあ、味の保証はできねぇが……、お前がここに戻ってきたら、謹慎明けの祝いに、一緒に飲もうって決めてたんだ」
「私のために?」
「うん、そうだよクラウディア。ザムエルさんが、わざわざ遠くに出かけて、材料を採ってきてくれたんだ」
「私の……ために?」
クラウディアは、このアトリエに戻ってきて良かったと思った。ザムエルとライザは、クラウディアの謹慎が解けるのを待って、そのための祝いの品まで用意していてくれた。
「ありがとう、二人とも」
気にしないでとライザが言い、テキパキと茶と菓子の用意をする。そのお茶は、お茶というよりも、何か別の飲み物のようだった。三人のカップに注がれたお湯に、ライザがそれぞれ別の色の、花弁のような何かを落とす。花弁が湯に触れた瞬間、ふわりと色が広がって、嗅いだことの無い良い香りがした。クラウディアは、感嘆の吐息を漏らした。
「うわぁ……、綺麗……」
「そうでしょ? さあ、見惚れてないで飲んで飲んで。お茶が冷めちゃうよ」
「いただきます、ライザ」
そして、クラウディアはカップを口に近づけ、その香りを十分に味わってから、茶に口を付けた。不思議な味だが、とても美味しい。それから三人は、仲よく茶を飲みながら談笑し、お茶の時間を心行くまで楽しんだ。
「ん…………」
久しぶりにたくさん喋って、喋りつかれたからだろうか。
(あれ…………? なんだか、とても――)
やがて、クラウディアの視界がとろんとぼやけ、彼女は急に、眠りの中に落ちて行った。