いつまでも変わらないと思っていたガサツでボーイッシュな幼なじみがいつの間にか俺の知らないところで女にされていた件 作:第三世界(うたかたとわ)
「アイラもバイトを始めたって?」
「そうなんだよ~。エイトにばかりデートのお金を出してもらってちゃ悪いからな~。私も週に一回か二回くらいだから許してくれ!」
ある日の放課後、アイラがバイトを始めたことを俺に報告してくる
彼女が始めたというのは派遣のバイトで、登録した日にどこかの日雇いのアルバイトに行くというものらしい。だからある程度は自由にバイトをする日を選べるらしく、それほど俺とアイラが会えなくなる日が続くわけではないそうだ
俺はお金のことは気にしなくていいよとアイラに伝えたのだが、彼女はバイトをするという決意を曲げなかった。少しだけ二人が会えない日が増えるけど、その分、他の日に一緒にいることを約束した
……。
……。
……。
「アイラのやつ、どうしたんだ?」
ある日の午前中、一緒に俺と学校に登校をしてきたはずのアイラが授業に姿を表さなかった。心配した俺がアプリで彼女にメッセージを送ると、アイラからは体調が悪いから早退をする。ごめんね。と言うメッセージが返ってくる
「まじか。体調が悪かったのか……」
彼女と一緒に登校をしてきて、そのことに気づかなかった自分が情けなくなる
アイラのことを心配しながらも俺は次の授業の準備をすることにした。次の授業は体育だ。いつもなら俺のクラスの担任で体育教師である下川先生が俺達の授業を担当してくれるのだが、当の下川先生は臨時の休みらしく今日の体育は別の先生が担当することになっていた
こうして、アイラのいない寂しい一日が過ぎていく
「寝てるのかな?」
俺が学校から帰宅をして早退した彼女の様子を伺おうとすると、俺の部屋から見えるアイラの部屋の窓は電気がついていなかった。体調が悪くてまだ寝ているのだろうと考えた俺は、彼女のことをそっとしておくことにする
「……あれ?……アイラ?」
しかし少し夜も遅くなってきた頃に、俺はタクシーを使って自宅に帰ってきたアイラの姿を目撃する。心配した俺が彼女にそのことを尋ねると、アイラは病院に行って点滴を受けてきたのだと俺に説明をしてくれた
「――やめてっ!」
「ごめん……」
俺がアイラの腕にある点滴の跡を確認しようと彼女が着ている制服の袖をまくると、アイラの腕には注射を打ったような跡があった。それを彼女は怒ったように引っ込める。さすがにデリカシーがなかったか
何でか他人が注射をした跡って気になっちゃうんだよね。でも、これからは気をつけるようにしよう。普通に考えて、注射の針を刺されたばかりの腕を誰かに触られたくなんてないもんな
そしてアイラは俺に向かって今日はもう寝ると伝えると、そのまま元気がなさそうな様子で自分の部屋に帰って行く。その時のアイラは本当に体調が悪そうだった
でも、俺が心配して何かをしてあげてもアイラの体調を悪くするだけだ。寝ているのが一番いい。そう考えた俺は、彼女のことをそっと見送ることにした
次の日には、ケロリとアイラの体調が元気に戻っていたのが幸いである
それからたびたびアイラに日雇いのバイトが入ったり、俺のバイトの日があったりで、彼女と会えない日が続くことになる
でも他の日はアイラと楽しくデートをしているし、会えない日の分を埋めるように二人で濃密なイチャイチャを繰り返していた。そして一日や二日間、放課後に会えなかった後にアイラと一緒にいると、寂しかった分いつもより楽しい時間を過ごすことができることに気づく
逆に、いつも二人で一緒に居過ぎてしまったのかもしれない。少し増えた会えない時間がより、二人の時間を親密にしてくれていた
こうしてアイラと俺の二人の高校生活は、卒業式の日まで順調に続いていくのであった