※この作品はR-18です。

黒蛇男   作:zubro909

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3. 龍太を殺す (2)

「あいつ、馬鹿だな」

 

剛は、幼馴染で親密な気持ちがある葵がヤクザと付き合っていることにホトホト呆れた。

 

元々葵が柄が悪い男が好きなのはわかっていたが、筋が通った喧嘩好きと、お金で殺人や暴力を行う人間との違いもわからないのか。

 

剛は冷淡に「馬鹿同士で勝手に死ねばいい」と思った。

 

だが、剛は、ヤクザだろうが何だろうが、女に手を上げる男は許せなかった。

 

正義を通したいという感覚ではなかった。実際は「弱者を虐める強者を殺してやりたい」という殺戮の欲望だった。その欲望のためには、一人で自分の身をリスクに晒す事に迷いや恐怖はなかった。むしろ殺戮の欲望に駆られ、興奮を止められなくなってしまうのだった。

 

この点が、凡庸な剛の不思議とユニークな点だった。

 

剛は毅に聴いた。毅は昔からサッカーや勉強に忙しかったが、なぜか情報通だったからだ。

 

「何ていう奴なの?そいつ」

 

「龍太。185cm位あっていかつくて、俺らの4個上らしいよ。中学でレスリングで全国優勝していて、地下格闘技のチャンピオンらしいよ。和彫入れてて、いっつも吾郎とかいう手下を連れているらしい」

 

「お前、よく知ってんね」

「この街で、赤川組と東日連合と揉めたら、終わりだぞ。下手に揉めたくないから、俺は情報を集めてるんだ」

 

剛が住む藤川市は、東京都と横浜市の中間だ。両都市は大規模過ぎて、定期的に大規模な暴力団排除活動が入った。藤川市はその隠れ蓑として長く機能して来た歴史があり、覚醒剤と売春の大きな利権があった。

 

藤川市の住民は昔から「清濁飲み込む」という言葉に逃げ込んでいた。だが、ただ単純に怯え、憧れ、服従して過ごしていた。剛は昔から、この藤川氏の住民の小賢しい敗者のスタイルに辟易していた。

 

「ふーん。俺は、本当に強い奴が女子供に手を上げるとは思わんけどな」

 

幼馴染の葵がヤクザに暴力を振るわれている。

 

剛はそれに対して「はい、そうですか」「相手がヤクザならしょうがないですね」という性格ではなかった。

 

(どこかのタイミングで必ず龍太を殺してやる)

 

(一個人としての強さも、バックの強さも久しぶりに刺激がある奴が出て来たな)

 

剛は洋介以来のターゲットを定めた。

 

中学2年になった剛は、自分が小学6年の頃にヤクザである洋介と対決し、脳に損傷を加えて植物人間にし、空手道場に晒した。

 

その後もずっと格闘技や殺人術の鍛錬は続け、大人も含め、多様な強者と喧嘩をして来た。プロの格闘家に暗闇で襲撃され、半殺しにされた事もあった。

 

だが、洋介を植物人間した殺戮の時に感じた興奮。脳の奥からドーパミンが噴出し、湧きだした液体が黒蛇になって自分の脳を嘗め回し、蠢く感覚は感じられなかった。

 

この日から剛はずっと、洋介を残虐に殺す事ばかり考えるようになった。

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