(お姉ちゃんは綺麗だし、頭もいいし、芸術もすごいけど、男にはモテない。勇気もない)
葵は自分に美貌以外に特に才能がないことをよくわかっていた。
そして、自分自身が複数の男とセックスすることで興奮する遺伝子であることも。
だからこそ成長する程に、葵は彩香との違いを感じ、彩香に深いコンプレックスを感じるようになった。
姉妹特有の、お互いへの憧れやコンプレックスがぶつかることが増えた。
「お願い。大事なデートがあるんだ。最近喧嘩ばかりしているのに頼むんだよ。必ず返すから」
「何に使うのよ」
「バッグを買いたいんだ」
彩香はあきれた。笑いが込みあげるのを堪えた。
(バッグ買ったからって、男を落とせるわけねーだろ)
彩香は葵がまだまだ幼いことに気づいた。
(いつも男に靴やバッグを買ってもらっている葵が自分に頭を下げるのは、よほど好きな男なんだろうな)
(私も最近かなり稼いでいるしな。これで助ければ、昔の葵みたいにかわいく接してくれるかな)
「お姉ちゃん、最近ものすごく稼いでいるでしょ?私知ってるんだ。お姉ちゃんみたいに綺麗なら、余裕でしょ。ねっ、一生のお願い!」
「わかったわよ」
その時、葵は子供のように飛び跳ねた。二人で久しぶりに抱き合って笑った。
だが、彩香は暫くし、勘を働かせた。
(もしかしたら、剛君なのかな?)
葵の異様な喜び様に嫌な直感が走ったのだ。
(剛君だったら許せない)
彩香は一瞬で目つきを変えた。彩香は自分でも気づかずに、新しい人格をつくった。
葵は彩香に剛のことは一切言わなかった。関係もこじれるし、邪魔しに来ると考えていたからだ。また今までの剛の態度を振り返った時、一対一で戦った時、剛はおそらく彩香の方に惹かれていることも葵は自覚していた。
(葵を尾行して、もしセックスするようなことになったら、絶対に止めてやる)
彩香は、葵が剛のペニスをしゃぶったり、ペニスを挿入されて突き上げられたり、精子をかけられていることを想像した。
(絶対許せない。殺してやる)
彩香は自然と殺意を持った。
今まで何回も、剛とのセックスを妄想してオナニーして来た。他の男に抱かれている時も、剛を当てはめて感じている事ばかりだった。
剛の童貞を奪うセックス、お姉さんの立場で剛を甘えさせて自分に溺れさせるセックス、剛を育てるセックス、育った剛に反対に滅茶苦茶に犯されるセックス。
常に鮮明にイメージしていた。
特に、憧れと年下の可愛さが相まった剛の童貞を奪われるのが葵なのは、許せなかった。彩香は、葵が複数の男性と淫らなセックスをすることが好きなビッチである事を軽蔑していた。
(こんな糞ビッチに、剛君の童貞を奪わせるような事は許さない)
彩香は葵を尾行することにした。華やかな彩香には考えられない陰湿な行為だった。根が明るい彩香も、自分にこんな側面があることに驚いた。
彩香は念を入れて、髪の毛の色を落としに美容院に行った。今まで着ないような地味な色の服を買った。だが、実際にどんなデートになるのか情報がなく、ただただ探偵をイメージして準備をしていた。彩香はネットで盗聴器を探した。葵が剛を部屋に連れて来た時に備えてだ。
(自分の妹の部屋に盗聴器をしかける女は居るのだろうか?)
彩香は一瞬、疑問に思った。
だが、迷いはなかった。どんな手を使ってでも、セックスを阻止してやる積りだった。