「おぉ剛かよ」
「まさかお前にこんなに度胸があると思わなかったぞ。地獄を味合わせてやるよ」
洋介は淡々と声を出した。美味しい獲物を見つけた笑みが止まらない様子で、不気味に口を歪めた。
剛は今までに感じたことのない力みを身体中に感じた。恐怖で呼吸が激しく上がっていることを感じた。右の突きを放ってから、シングルレッグのタックルをした。
恐ろしく重い腰だった。その瞬間に、剛は絶望した。洋介が鳩尾に膝蹴りを放ってからは、ボロ雑巾の様に完膚無きまでに攻撃された。
数え切れない数の膝蹴りを腹に受け、嗚咽しながら、顔からアスファルトに崩れ落ちた。この時点で、肋骨は左右で三本折れていた。
上から洋介が強く踏みつけ、前歯の全てがアスファルトに激しく擦り付けられた。その場で歯がかけ、飛び散った。背中を取られ、左右から夥しい数殴りつけられた。呼吸が苦しくなり、血塗れになって、ゴロリと転がった。
すぐにマウントを獲られ、左右の頬を殴りつけられた。グッタリした状態で右手を獲られ、腕ひしぎを極められ、膝を反対側に折られた。再度マウントを獲られ、頸動脈を絞められた。
洋介は元々、剛を若干恐れていた。
剛は実際に空手が強く、皆からの信頼があった。
(全く違う世界の人間だとわからせてやる)
(ここでこいつを殺して、ヤクザ入りの手土産にしてやる)
剛も感じた。
(こいつは殺しに来てる。だが、もう反撃出来る体力はない。このまま意識を落とししまおう…)
このタイミングで、周囲の人間がようやく洋平を止めた。剛は、この制止がなければ、確実に殺されていた。洋平は殺すことに躊躇はなく、むしろその結果を欲していた。
頭は15針縫わされ、肋骨に加え、右肘は骨折させられた。記憶にない程に攻撃され、気づくと、60人の前で素っ裸になっている自分に気づいた。臍までドス黒い血が垂れ流れていた。最早痛みは感じられず、自分の心臓の鼓動だけが、脳全体に鈍く響き渡っていた。
ドゥックンッ…ドゥックンッ…
剛は小便と大便を垂れ流していた。恐怖と失神の衝撃で、緊張が緩んだのだ。剛の前には続々とギャラリーが出て来て、手と足の爪を一枚一枚剥がしていった。
一枚目は、虚ろ目をした稔が剥がした。
稔が剥がした爪をギャラリーに見せた時、気味が悪い笑いと歓声が起きた。
剛の取り巻きの中には、稔も居たし、剛が毎日空手を練習していた友人・先輩・後輩達が居た。「最高の友達たちだ」と剛は思っていた仲間だった。剛はその仲間達の視線や声や動きから、洋介の恐怖でその場に居るのではないことを察知した。仲間だった筈だった友人達は、剛への拷問に明らかに興奮し、熱狂していたのだ。
「もっとやれっ!もっとやれっ!!」
不気味なドスが低い歓声が集団全体から聞こえて来た。
(こいつら、一体何なんだ…)
(俺は負けたんだ)
剛は悟った。
60人は一人一人剛の前に立ち、頭から小便をかけたり、指の骨を折ったり、アナルに鉛筆を抉らせたり。拷問を繰り返した。それは、取り巻き一人一人にとっては、このような場が無かったら経験する事が出来ない、虐待の経験なのだろう。全く人が変わったように発狂し、剛に拷問を与えるのだった。
「おぃっっ。死ねよ、剛、オラっ!!」
12枚目の爪を剥がされた時、剛は失神した。