剛の幼馴染である大蔵はある日、虚ろに一人で道を歩いている玲香に会った。
大蔵と玲香達は16歳になっていた。
いつも自信に満ち溢れていて、明るい玲香と違い、憂鬱で、無気力だった。
「お、、おー玲香。なんか、なんか、げ、げっ、元気なくない?」
「あっ。大蔵君。いや、そんなことないよ・・・」
大蔵は昔から玲香に憧れていて、女性として憧れていた。だが、(自分には釣り合わない位レベルが上だ)と考えており、遠い距離を感じていた。元々女性は大好きなのだが、コミュニケーションするのは大の苦手だった。今回は勇気を絞り、声をかけてみた。それでも、完璧にどもってしまった。
大蔵はソマリア・サウジアラビア・日本の血が入った混血で、巨漢だった。
まだ16歳ではあるが、身長は180cmあった。彼はレスリングでジュニア世界選手権で優勝するレベルにあるアスリートでありながら、勉強も優秀だった。だが、幼馴染の玲香・毅・剛と比較するとレベルは落ちた。玲香・毅・剛はMITやハーバードに入るレベルの学力を有していたが、大蔵は下手をすると東大にも落ちかねないレベルだった。一般的には非常に優秀ではあるものの、大蔵自身は強いコンプレックスを持っていた。
大蔵にとって幼馴染の玲香は、正に高嶺の華だった。
スイス・韓国・日本・アングロサクソンの血が入った玲香は恐ろしく美しかった。特に、ソマリア・サウジアラビアの血が入り、純粋な黒人程に肌が黒い大蔵にとっては、正に白い妖精にしか見えなかった。そして、恐ろしく知能が高い事に加え、バレエの才能が世界的に優れている事も羨望の理由だった。
「あの子は世界的に活躍出来る可能性があるわね」
大蔵の母親の真央は、玲香の踊りを見た時にそう言った。
真央はフィギュアスケートの金メダリストだった。大蔵は、真央が他人を認めた言葉を初めて聴いた。真央が他人を認めるのは、極めて異例だった。真央は決して大蔵の事も、大蔵の父親のKarimの事も、他人の事も認めなかったし、褒めなかった。常に他人が「どうしてこんなにも才能が乏しいのか」不思議に思っている様子で、超然としていた。その真央の反応もあって、玲香は大蔵にとって、天井の上の存在だった。
大蔵は幼馴染の剛・毅・玲香以外には親からの指示で、友人をつくらなかった。
その理由は、大蔵の父親のKarimにあった。大蔵の父親のKarimは、元ソマリアの軍人で、来日後に殺人者集団iibadatan(アラビア語で「駆除」の意味)として勢力を拡大した男だ。iibadatanは通常ヤクザやマフィアが行う様な覚醒剤・買収等の事業は一切行わず、殺人のみを受託する組織だった。Karimは身長200cm体重150kgの体躯で、明晰な頭脳、残虐性、優れた身体能力を持っていた。日本中の誰もが知る真央がKarimと結婚した事は、日本のスポーツ界・社会全体で絶対に触れては行けないタブー中のタブーだった。Karimはメディアに圧力をかけるために、有名な記者5名とその家族を、眼を抉り、口を割き、両手両足を切り取った姿にし、惨殺した。その事実を知る者は実際、世の中にほぼ存在しなかった。真央は、両親や姉にも伝えず、突如姿を消したからだ。メディアはおろか、一般社会に降りる事は無かった。
そんな大蔵は勇気を出して玲香に元気がない理由を聞いてみた。
「実は剛君に告白したんだけど、全く相手にしてくれなくて…」
「それは聞いた事があるけど、かなり前の話だよね。玲香もあまり気にしていない様に思っていたけど…」
「・・・実は誰にも言わないでほしんだけど、一度だけ剛君とセックスしたんだよ。その後に私は何度も思いを伝えているんだけど、怖い程無視されているんだ・・・」
大蔵は心臓が止まる程に衝撃を受けた。自分が神と崇めている様な玲香が、剛とセックスしただなんて・・・。
(いつか玲香に見合う男になって、玲香の処女をもらう。そして、真央に喜んでもらうんだ)
それは、大蔵が子供の頃から描いていた目標だった。