真央は旦那であるKarimとの生活の中で変わっていった。
はじめは、Karimの殺人の世界、恐怖の世界に心が震えた。自分から志願して、殺人も重ねた。拷問も重ねた。真央は、自分がこの殺人の世界の住民であることを体感した。誰よりも殺人の才能があるように感じた。真央の殺人の才能は、Karimもiibadatanに集まる軍人達も全員が驚き、深く認めていた。
急速に殺人技術を吸収すると、真央は新しい世界に挑戦したくなった。
Karimは裏社会における、世界一の殺人受託事業者を目指した。幼少期から少年兵として、殺人で稀有な才能を発揮したKarimの自然な発想だった。日本からアジア、アメリカ、ヨーロッパに顧客を拡大して来た。
一方で、真央はこのまま殺人受託事業者で居たくなかった。もっと支配領域を肉体だけではなく、精神世界や知的世界に拡げたかった。表社会の政治やビジネスも支配したかった。
世界的なフィギュアスケーターだった真央は世界の首脳からも常に祝福され、尊敬されて来た。間近に触れる事で、「彼らや彼女らに出来て、自分に出来ないわけはない」と常々感じていた。彼らの中には富や権力を用いて、真央にセックスを依頼する連中も多く居た。真央も数人は好奇心でセックスしたが、社会的には優れている彼らも肉体的にはあまりに貧弱で、狂暴な真央のセックスに慄くばかりだった。
また、英語圏でのエリート教育を受けておらず、論理的な思考力も高くない真央は、常に表社会の政治やビジネスの住人から見下げられている体感があった。彼ら彼女らはアスリートとしての自分は手放しで称賛するが、腹の底で見下げられている事はよくわかっていた。真央はこの経験にコンプレックスを持っており、裏社会に行ってからも、表社会でリベンジしたい意思を強く持っていた。
この真央の夢の中で、夢を託すべき息子の大蔵は期待外れだった。肉体に優れるが、知的に優れない自分を投影していた。殺したい程に憎んでいた。
大蔵は母に蔑まれると、自分の存在が無くなるように思う程、心が揺れた。悲しい感覚をすぐに超え、無感情になってしまう。気が遠くなって、生きた心地がしなくなる。小6の時に河合塾の全国模試があった。
(この模試で、俺はお母さんを見返してやるんだ)
大蔵は必死に努力した。
運動を一切やらない程に勉強に集中し、Karimに激怒された。だが、母に認めてもらうため、父を無視した。Karimには息子でありながら、何度か半殺しにされていたが、恐怖心を必死に抑えて無視した。他人の眼を無視し、一心不乱に努力した。
だが、結果は偏差値70程度だった。
剛と毅は85、玲香は90を取った。2人とも楽に取り組んでいた。明らかに論理思考力の先天的な才能に差があった。この時、大蔵は、剛と玲香に決定的なコンプレックスを抱いた。
(こいつらには論理思考力では絶対勝てない)
「あんた、剛君の足元にも及ばないのね」
「剛君みたいにキレる息子がよかった。知恵遅れな筋肉馬鹿なんか死ねばいいのに」