大蔵の目的は、素人への恐怖感の増幅、それによる京極の精神的な破壊だった。
京極の家族、主要構成員がだるまにされて、京極の前に現れた。京極の妻、娘、息子、主要構成員、その妻、娘、息子。暴力によって得た美しい身体と身なりをしていた者達は、哀れな人形になった。
生気のない、どんよりとした眼をした人形達は、改めて大蔵の部下達に犯された。人形とセックスするのは、大蔵の部下達にとっては新鮮なようで、おもちゃのように弄ばれ、射精された。黒づくめの大男達が人形を蹂躙する様は異様だった。
ゴロゴロと蹴飛ばされて、人形達は、京極の幼馴染や飲食店の家族の前に転がった。ただ眼と口がパクパクしている人形を見て、彼ら彼女らは絶望して嗚咽した。最早、叫び声や泣き声は出なかった。
「わかった。全てを話す」
「だから、もう全員を殺してくれ」
京極は悟って言った。
これ以上に最悪なことが起きることは想定できなかった。京極は全てを話した。
Karimは大蔵に感心した。絶対吐かないと考えていた京極は機密情報を全て話した。これで更に利権を拡げられる。
この時点で、大蔵は緊張で疲弊していた。だが、他者を制圧していること、猟奇的な感覚が満たされ、脳内でアドレナリンが暴発していた。
「こいつらを全員だるまにしろ。更に、眼を抉り出し、聴覚、嗅覚、発話能力を全て奪え」
「おおぉお、おかしいじゃないか!すぐに殺せ、と言ったはずだ!少なくとも組に無関係な人間を殺するのはやめろっ!」
京極は静かに叫んだ。大蔵は無視し、指示した。この人形達を、京極組の残党に送付した。
興奮し切った大蔵は、真央に言った。
「お母さん!どうだよ?俺は立派な跡取りになれるだろ!俺がこの組織をでかくするんだ!!」
絶対に深く抱きしめてくれる、と思った。子供のように跳ねてしまっていた。
真央は全く表情を変えず、首を捻った。大蔵の顔も見ることなく、去っていった。
「え?」
大蔵は何が起こったのか、わからなかった。その場に崩れ落ちた。
(こんな残虐なことを命がけでやったのは、お母さんのためなのに。なぜこれほど無視されるんだ?まったくわからない)
大蔵が心の中で、何度も真央に壊されながらも、少しずつ何度も積み上げて来た建物が崩れた。大蔵には、自分が信じて来た土台が崩れ落ちて、どこまでも堕ちていってしまう恐怖を覚えた。
…
真央は大蔵の必死の虐殺を冷め冷めと見ていた。
大蔵が京極一家や素人の幼馴染・飲食店の家族を恐怖に陥れたのは間違いなかった。更に、卑劣で知られた殺人受託業者の京極に洗いざらい機密情報を吐かせたのは、確かに大蔵の成果だった。
だが、真央は大蔵の虐殺さが冷静さを欠いており、自分の能力の誇示やコンプレックスに基づいている事に、大蔵の弱さを感じた。幼い頃からフィギュアスケートで常に世界的に評価されて来た真央には、大蔵のそうした必死さに共感できなかった。
真央は、大蔵が自分に褒めてもらおうと近づいて来た時に、本能的に吐き気を覚えた。その時に、真央は気づいた。
自分は他人の評価を過剰に気にする人間が本能的に嫌いで、弱くて死ぬべき人間である、と考えていること。だからこそ、実の息子ながら大蔵に全く愛情を持てないこと。この二つだ。
大蔵が真央に必死で評価してもらおうと思う程に、真央は大蔵への軽蔑心を増した。だが、大蔵はその構造を全く理解出来ず、ただ一人で闇の深くに沈み込んで行った。