大蔵の父親Karimは、京極組を残虐に殺し、彼らから情報を聞き出し、営業網を奪ったことについて大蔵を褒めた。
16歳の大蔵にとって初めての大きな仕事で、自信にはなった。京極組は日本の殺人者集団として古くから恐れられている組織で、改めてiibadatanの強さ・残虐性は世界に認知された。
だが、相変わらず母の真央には大蔵は無視され続けている。
大蔵は自分を見失っていた。自分のエネルギーのやり場が全くわからない。自律神経が壊され、毎朝全く起きられなくなった。トレーニングに集中できず、ストレスで体重が驚く程に増えて来た。
この時に、大蔵は玲香が剛に無視されている話を聴いた。
当時、剛は独特の空気を醸し出すように成長していた。洋介や龍太を植物人間にする闘いを通し、殺傷能力や残忍さを磨いていた。他の強い男も気に入らない場合は、確実に仕留めた。一方で、勉強でも偏差値80程度はキープし、玲香・毅とともに学校では突出していた。地道にトレーニングを続け、空手とレスリングで学年別全国優勝を成し遂げるほどになった。真摯に冷静に格闘技やスポーツ、勉強にも取り組み、体力・学力ともに基礎的な能力は大きく成長をしていた。
だが、大蔵は殺人者として、剛を冷静に見ていた。
(こいつ、人を殺したんじゃねーか)
(洋介も龍太も、絶対にこいつがやったに決まっている)
(すました顔をしているが、こいつは殺人者だ。俺達の世界の住人だ。取り繕うんじゃねぇ)
剛や大蔵が常に暴力や性にばかり関わっている時、予想も付かなかった事件が起きた。
桑原自動車のリコール事件発覚だ。日本を代表する伝統を誇る桑原自動車は、エンジンの致命的な故障を意図的に隠していた。この故障により、実際は数百名がなくなっていた。だが、桑原自動車はこの事実を知りながら、隠蔽したのだ。
この事件が剛、大蔵の人生を大きく変えた。
それは、この事件の後に、剛の父親の拓が突如自殺したからだった。拓の自殺は、大蔵が見つけた、剛の初めての弱みだった。この事実を知った時、大蔵は何とも言えない、不気味な笑みを浮かべた。
(ついにあいつの闇を見つけた)
今まで、大蔵には剛の弱みが見えず、彼をどうやって支配するか、イメージが湧かなかった。だが、この事件で大蔵には光が見えた。
(親父の自殺によって受けた傷を徹底的に抉って、剛を支配した上、殺してやる)
母親の真央は剛を買っている。更に、真央は肉体的に殺すだけでなく、人間に精神的な恐怖を与える殺人に重きを置いている。剛を屈服した上で殺せば、真央に認めさせる何かを掴めるはずだ。
大蔵は極度の鬱で太って来ている黒い顔面に、長い間忘れていた笑顔をつくった。
大蔵は剛を学校の裏に呼び出した。極度に興奮しながらも、殺人者として落ち着いて、相手に一切の感情を伝えないように話した。
「剛。お前の親父は人殺しで、自殺野郎だ。弱くて汚い血は、俺が殲滅してやるよ」
「1ヶ月後の8月31日、俺の家に来い」
「逃げても無駄だ。お前の周りの人間も全て割れている」
「お前らがこれからどうなるかは、これを観ればわかる」
京極一味をだるま姿にして惨殺した現場の動画を収めたUSBを、剛の顔に投げつけた。