剛にとっては、父親の拓の自殺で今まで積み上げてきたものに不信感が生じていた。
その中で更に大蔵からの脅迫があり、今まで自分が積み上げて来たもの全てに、全く価値を見出せなくなっていた。
一週間一睡も出来ず、食事も全く出来ずに衰弱した剛の肉体と脳に。注射針を通して大量の覚醒剤が流し込まれた。
だが、剛が末端のヤクザを半殺しにして脅し、持って来させた薬物は実際は、「覚醒剤」と呼べるような代物ではなかった。
剛が注射した覚醒剤は、粗悪品中の粗悪品だった。剛が半殺しにしたヤクザは末端過ぎて、実際に既に数十人が即死している物質だった。「覚醒剤」などと、高級な名称で名付けられるものではなかった。三流の医師が間違って合成した致死幻覚薬物だった。
(・・・ギュィン。ギュィン。ギュイン・・・)
覚醒剤が脳と身体に染み渡っていく。
(ドクドクドクドクドクドクッ!)
急に心臓が破裂しそうになった。
脳の奥が割れそうに痛み初め、剛は失神した。10時間程失神した後に、剛は虚ろに意識を取り戻すと、そこには地獄のような世界が広がっていた。血と黒い油が入り混じった汚水の中で、剛と父親の拓、母親・弟・祖父母、彩香・葵・沙耶、幼馴染の玲香・毅、格闘技の恩師などが両手両足が切られた芋虫の姿で蠢いている。それを、大蔵と、剛が植物人間にした洋介と龍太が拷問にかけ、レイプしているのだった。洋介と龍太は意識を取り戻しており、自分が意識を失わされた恨みを晴らそうと、剛の目の前で、剛の大切な人間達の頭蓋骨を砕き、脳をグチャグチャと引っ張り出して、狂っていた。
剛の父親の拓は芋虫になった惨めな姿で、必死で崖から落ちて自殺しようとし、崖ににじり寄っていた。崖の直前で毎回大蔵は拓を蹴り飛ばし、笑うのだった。
「お前はどれだけ自殺したいんだよ!」
それでも拓は、剛が見た事のない虚ろな眼で何度も崖へ向かうのだった。
(父さん。もう止めてくれ!)
剛は声にならない声で絶叫し続けた。
拓が崖の直前まで行き、達成感と安心感に満ちた顔をしていると、また大蔵が拓を蹴り飛ばすのだった。そのシーンが何度も何度も、剛の前で繰り返されるのだった。剛にとって、自分が拷問される事、家族や仲間が拷問されて殺される事より何よりも、拓が蹴り飛ばされた後になぜか自分から崖に向かって必死ににじる寄る所を見るのが辛かった。
(父さん。なぜそんなに死にたいんだ・・・)
拓は剛には一切目も合わせず、剛が何度止めても全く話を聴かなかった。何一つ自分と家族に伝えず、自殺した拓と同じだった。
剛を長年つけ狙っている寧々は、最新鋭の盗撮機と盗聴機で、剛が致死幻覚薬物で狂っている姿を見つめていた。
「あれ?剛君は意外に、こんなに脆い雑魚なのかな?これで死ぬのかな」
寧々は失望し、冷酷な眼で剛を見ていた。剛は失神した状態で痙攣しており、脱糞と失禁を繰り返していた。