自分の運命を受け入れ、大蔵を殺す決心をした剛は冷静に大蔵の弱点を探った。
(必ず機会はある)
(殺しのプロならプロで、それによる驕りが必ずある)
(大蔵達は俺をアマチュアだと思っているだろうし、実際にそうだ)
剛は今までの大蔵に関する記憶の断片を収集し、大蔵が剛に渡したUSBの動画を擦り切れる程に分析した。その結果、4点を突き止めた。
・大蔵は猟奇的な殺人に酔っている
・大蔵は奥の黒づくめの小さな人物を常に意識して動いている
・多くの黒づくめの人物は恐怖によって動いており、大蔵を信頼していない
・大蔵は昔から自分にコンプレックスを持っている
恐怖に囚われず、冷静に真実を読み取ろうとすると、今までとは全く違う点を発見出来た。この4点を用い、活路を見出そうと考えた。
今回大蔵を殺すに当たって、剛の目的は三つあった。
・自分及び自分の家族、仲間を生きて返らす
・大蔵及び目撃者を全て殺す
・殺人後の自分と家族への復讐を最小化する
弱点を利用できそうな余地はある。だが、大蔵達を殺した上で、自分達が今後生き抜けるイメージを描けない。大蔵の実家の殺人者集団は、大蔵を殺したら、確実に復讐に来るだろう。
(難しい)
(何か発想を大きく変える、何かの前提を覆さない限り無理だ)
剛は小4の時に蛮勇に洋介に挑み、半殺しにされた。この時に自分の能力の過信、奇跡への期待で、本当に殺されかけた恐怖は今でも鮮明に覚えている。その時以来、挑戦する時に(蛮勇になろう)とする自分を常に戒め、自分の弱さに向き合って来た。そういう時にこそ自分は成長し、勝てた。
(まともに物理的に闘ったら、確実に殺される。武器の使用も、彼らのほうが遥かに優れている。人質もとられている)
(仮に生き残っても、他の組織構成員に自分も家族も確実に殺される)
(だが、何かチャンスはあるはずだ。大蔵の弱みは少し掴めたが、Karimはどうだろう?世界の戦場で戦った筋金入りの殺人者だ。隙などあるのだろうか?・・・)
剛はふとiibadatanが現在拠点を日本に置いている事を思い出した。
(もしかしたら、Karimは日本という甘い市場で弱い人間達を殺していく中で、彼自身にも猟奇的な趣味への陶酔、油断が産まれいるのではないだろうか?)
そう考えると、大蔵だけでなく、Karimと闘える光も確かにあるように感じられた。
剛はオプションを3つ捻り出した。
① 現場の構成員を殺し、その足ですぐに海外に逃避する
② 組織構成員の全てを殺す
③ 構成員は一人も殺さず、彼らの奴隷にされる事を避けながら、彼らの仲間になる。その後適宜殺す
②は現実的に不可能である。①と③の具体化を模索した。
①を遂行するために、家族の預金の海外送付先、海外への避難先を探し始めた。大蔵の組織がグローバルであることを踏まえると、海外で捕縛される可能性も高い。
③の遂行を目指し、無理であれば①を遂行する方針を立てた。
③を遂行するためには、自分を仲間にすることのメリットを明瞭に伝える必要がある。交渉出来る相手ではない。彼らが自然に動いてしまう強烈なメリットをつくる。
(大蔵のコンプレックスや、大蔵が従う小柄な人物の考えが鍵だ)