「おいっ!本当に死ぬぞ!」
毅に言われて、剛はようやく洋介への攻撃をやめた。
「なんでここまで…」
「お前にはわかんねーだろ。こいつは俺よりも大分強いんだよ。殺す位までやらないと、確実に俺が復讐されるんだよ。絶対に復讐できないような恐怖を与えないと、上のやつはやれねえんだよ」
毅には、この時の剛は自分が知っている剛とは全く違っていた。それどころか、同じ人間とも哺乳類とも思えない、狂った動物にしか見えなかった。
(こんな場所には居られない)
毅は何も言わずに動物の勘で反射的に走り始め、一人で逃げた。足をもつれさせ、何度も何度も転びながら、必死で逃げ去って行った。
剛は洋介の頭皮から、脳内の白い液体が漏れ出しているのを確認し、(洋介は意識を戻さないだろう)と察した。周囲に気配を感じ、洋介を殺し切れず、その場を離れた。毅が大人を呼んだのだろう…。
(これで洋介が万が一意識を取り戻したら、俺は確実に殺される。失敗した。毅も殺すか、洋介を殺すまでこの場に張り付かせなければいけなかった。甘かった…)
剛はようやく我に返り、危機意識を取り戻した。
そもそも頭蓋骨を破壊して植物人間に出来た際の基準を明確に把握するべきだった。毅のような目撃者が現れた場合、その目撃者を殺すのか、他に口封じの手段を講じるのか、事前に計画しておくべきだった。剛は自分の死の可能性を目前にして、今になって自分の詰めの甘さに直面した。
結果としては。洋介は一命を取り留めた。だが、意識が戻らない植物人間になった。つまり、剛は最低限のミッションを遂行した。
この沙汰を目撃していたのは2名。
毅と、寧々だった。寧々は、剛の幼馴染である玲香の母親だった。母親と言っても年齢は28歳で、スイス・韓国・日本の血が混ざった寧々には他人を寄せ付けない、鋭い美しさがあった。
寧々は玲香を通じて小2の剛と出会った時に、「この子は異常な残虐さ・性欲・賢さを持っている」と直感した。その時から自分の莫大な資産とネットワークを活かし、剛の自宅に最新鋭の盗撮機・盗聴機を設置し、スパイを雇い、剛の日常生活全てを監視していた。剛の今回の洋介惨殺の計画も、計画時点からずっと剛を追っており、墓場の茂みに潜り込む剛を尾行していたのだ。
寧々は剛が洋介を殺しかけていたシーンをつぶさに観察していた。自分の子供の幼馴染が他の男性を殺戮していく姿を見て、寧々は気が狂いそうな程に深く興奮していた。途中から舌をチロチロと動かして涎を垂らしながら、クリトリスをコリコリを触り、ヴァギナの壺に指を抉っていた。剛の表情・動き・身体だけをじっとりと凝視していた。