剛が寧々に尋ねた。
「寧々さん。「Administrator」で「Sort by frequency of play」で検索してください」
はじめて寧々の表情が変わった。表情を変えていない装いを巧みにしているが、剛は見逃さなかった。
「なぜ?」
「あなたの関心ごとが知りたいからです」
沈黙が漂った。
寧々は心臓が一瞬口から出そうになった。
Egorとセックスした、ブリュッセルのバーのトイレ以来だった。剛の要件で検索された場合に表示される動画は次の通りだった。それはつまり、寧々が個人的に関心を持ち、確認している順序だった。
#4. 剛が龍太を植物人間にした後に、彩香と葵と行ったセックス
#3. 剛が洋平を植物人間にした後に、寧々と叫びながら初めて射精したオナニー
#2. 寧々がEgorとブリュッセルのバーのトイレで行ったセックス
一番は?
#1. 剛が玲香とセックスして、玲香の顔に跨って大便を噴射したセックス
(絶対に観せられない)
剛はこの時の寧々の表情・呼吸・挙動を洞察し、確信した。
(今の反応から察すると、寧々さんは、俺が行っているセックスか殺人の動画をよく観ているな。俺が思ったよりも遥かに、寧々は俺とセックスをしたがっている)
「隠しましたね。あとで伺います」
剛は論点を切り替えた。
「Karimとは大蔵の父親ですね?その組織の情報をください」
「教えてくれたら、大蔵、Karim、大蔵の母親が私を殺そうとして集まる日時と場所を伝えます。例えば、その施設全体を爆破し、包囲すれば、3人一度に殺せます」
(なぜこの男はここまで強気なんだろう?私はいつでも彼を殺せる準備は出来ているのに)
剛は、寧々は優秀であるからこそ、本来的には暴力の世界の住人でないことを察知していた。
寧々が表情を変えた瞬間、右手でボタンを押す前に寧々に突進するイメージを持っていた。そのための間を正確に測り続けて来た。剛は今までの経験で、相手が殺気を放つ瞬間を迅速に察知出来た。
(この人に俺は殺せない)
寧々は剛を測りたい、いや、理解したい欲望に取り憑かれ始めていた。メッセンジャーで数人とやり取りをすると、大蔵の父親の組織Karimの情報を整理し、剛に共有した。
・組織名:iibadatan
・構成人数:535人(2020年12月9日22:18時点)
・利用システム:プライベートIaasにカスタマイズシステム
・競合:Galdze(Russia)、Guld(Afganrstan)、無し(Japan)…
iibadatanのCIO、人事のexecutiveは、寧々の上顧客だった。
「ありがとうございます。iibadatanのKarimの妻や内部の政治について教えてください」
寧々は再びiibadatan関係者にチャットを行なった。
……………
iibadatanの妻中田真央は、殺人業務委託以外への拡大を狙っており、知識労働者の雇用を進めている。Karimは殺人業務委託への集中を狙い、組織内に2つの派閥が形成されている。大蔵は真央に見限られており、信頼回復に努めている。
……………
入手された情報の価値はアルゴリズムと寧々が評価し、インセンティヴとして、各人にパーソナライズされた動画と金を付与した。金は各々で5億円程度だった。
「なるほど。よくわかりました」
(Karimと大蔵のみを消して、真央と組む手は考えられる)
剛は真央をTVで観た記憶があった。
剛は、真央が世界的なフィギュアスケーターであることに加え、清楚でノーブルな外見をしているが残虐な狂気を隠し持っている事、異常に強い性欲を持っている事を直観していた。そのため、真央が突如として世間から姿を消し、殺人者となっている事を聞いても、全く驚かなかった。「スケーターよりも殺人者の方が適性があり、イキイキとしているだろう」と感じた。だが、剛は真央がそれ程論理的な思考力が優れていない印象も直感的に持っていた。