「剛。てめえはラリってて、何が起きているのか、わかってねえの…」
その刹那、剛は口から血色の毒霧を、大蔵の眼に噴射した。
剛の脳内には、大量の黒蛇がうねり、脳内全体を舐める様に動き回っている。剛も今まで感じた事がない程に黒蛇が脳内を活発に動き回り、自分自身が黒蛇になってしまったようだった。
「ヴィあああっ!!!」
大蔵は後方に仰け反って倒れた。
悶絶して、もう声が出ない。ドクターが急いで近づいて診察を始めた。大蔵は失明し、失神した。ドクターに治療を受け続けたが、手遅れだった。真央は声も出さず、溜息を漏らした。
(素人にこのざまか。剛君がそう簡単にただのヤク中になるわけないな、やっぱり)
(大蔵はむしろこのまま死ねよ)
後方からKarimが出て来た。
「てめえ。いい根性しているじゃねえかよ。俺が相手してやるよ」
(こいつは甘くない。途中までは、本気でやり合うしかない)
剛は瞬間で後ろに引き、改めて構えた。剛は打撃、レスリング、柔術のトータルで闘うスタイルで、総合格闘技のスタンスを取った。Karimは反射的にサンボのスタンスを取った。
(やはりな。Karimは殺人や格闘を愛しているから、必ず一度格闘で闘うと思っていた。格闘でも征服したいのだろう)
Karimは身長200cm・体重150kgの体躯を持っている。剛は実際にKarimに向き合ってみて、その体躯には信じられない程、Karimの運動神経や身体能力の高さ、格闘技術の高さを感じた。
Karimは剛と向き合って、剛の実力を見極めた。
(この男は素人ではない。格闘技も殺人も大蔵よりも高い才能があるし、経験値も相当積んでいるな)
剛は全力で格闘技で闘った。対抗できるのは打撃のみと判断し、遠い距離から一気に飛び込み、右フック、左ミドルキック、左アッパー。細かくはあるが、着実にヒットを重ねた。
Karimもこれほど小さく速い相手と闘った記憶はほぼなく、しばらくはヒットを受けた。だが、徐々にスピードに慣れ、ミドルキックの足を掴んで、パワーボムで頭から突き落とした。剛は刹那、頭をずらし、右肩で地面に打ち付けられた。その瞬間に、鎖骨の骨は折れた。
マウントを取ろうとするKarimに三角絞めを狙うが避けられ、顔面に鉄槌を一発食らった。鼻の骨は折れ、前歯も数本折れた。顔面から激しく飛び散った血が、剛の口の中に止めどなく流れ込んで来た。まだKarimの下半身が不安定だったため、ダメージが少し削がれた。だが、剛はこの一撃で意識が朦朧となった。
(あと一発もらったら、確実に意識が飛んでしまう…)
Karimは今の鉄槌で「勝負があった」、と認識した。
(どうやってより残虐に素手で殺してやろうか?頭から落として、頭蓋骨を一発で割って、脳を地面に出してやるか?)
剛は、Karimが勝利を確信し、猟奇的な欲望を湧き起こした瞬間を見逃さなかった。