(なぜ私は素直に剛君を求めなかったんだろう?)
剛が大蔵はじめiibadatanの情報を獲るために寧々の部屋に来た時、剛は驚く程急いで部屋を後にした。
寧々は剛の自信に飲み込まれ、「まだまだ、これから話す機会がある」、と思っていた。
剛と交渉した日。
自分の部屋で紅茶を飲み直した。美しい静かな部屋で、はじめて深い孤独を感じた。寧々は若い頃からずっと、他人と解かり合おうという期待は持たなかったから、孤独を感じる事はなかった。
だが、剛が去った後は孤独を感じたし、喪失感が大きかった。
(もしも剛君がiibadatanとの戦闘に負けて死んだら、剛君とは二度と一緒に過ごせない)
悔恨。
剛があまりにも自信を持って話すから。当たり前のように見送ってしまった。冷静に考えれば、素人の剛が世界的な殺人集団と戦闘し、勝てる見込みのないのだ。
(無理矢理にでも愛し合うべきだった)
(剛君の気を引きたくて、かっこつけてしまった)
寧々は涙を流した。気を取り直して作業を進めると、剛を殺したくない気持ちが増幅した。真央は内密にiibadatanの競合、Mokunberaに協力を仰いだ。
真央が剛の状況を判断し、殺される可能性が高まれば、iibadatanを殲滅するよう依頼した。10人の殺人者を日本川崎市に派遣。50億円と機密情報を共有した。
(剛君。頼むから死なないで)
剛の右眼への盗撮機設置の手術にも立ち会った。
何度も素直に気持ちを伝えようと思った。だが、剛は完全に殺人者になり切っており、躊躇った。自分の愚図さに嫌気を感じながら、剛がiibadatanと戦闘する当日を迎えた。(心臓が口から出てしまう)と思う程、落ち着かない。今まで強心臓を武器に、世界の軍人と交渉し、セックスして来た。その経験は全く役に立たなかった。自分の娘の玲香も、iibadatanの軍人達に舌を切られて連行され、ほぼ確実に殺される状況だったが、寧々は全く玲香の事は忘れていた。
剛がiibatadannに向かう当日の朝、真っ黒なドレスを着た。喪服のような気がして、慌てて着替えた。咄嗟に本能的に選んだのは、着たことがない、薄いピンク色のネグリジェだった。こんなに女性的な服を着てセックスをした事は、性獣である寧々にはなかった。
(剛君は生き残る。そして、すぐにうちに来て、私を狂ったように犯すのよ)
寧々は今まで何度も剛のことを考え、剛のセックスやオナニーの動画を観て、オナニーをして来た。だが、剛が死ぬ可能性を目前に一度リアルに強烈にセックスを意識すると、切なくて、オナニーが出来なくなってしまった。