DOAXVV世界でハーレムライフ -転生?オーナーは解任が怖い- 作:HI-METAL
深夜、日も変わろうかという時間帯、カツンカツンと甲高い音を立てながら俺は鉄製の階段を上っていた。築何年かは知らないがかなり古い。
都心の職場に比較的近くて安い物件などそうそう有る筈も無く、俺が此処に住み始めてから、もう既に10年以上が過ぎていた。
当初は給料が上がったら引っ越そうなんて考えていたが、景気はさっぱり上向かず、手取りもここ数年横ばい状態。住環境のグレードアップに回す金など存在しなかった。
階段を上り切ると「ふうっ…」っとため息をつく。
角から数えて3件目のドアを開けると「ただいま」と言いながら中に入った。もちろんおかえりと言って待ってくれてるような人はいない。これは単なる口癖だ。
スーツをハンガーに掛け、ラフな格好になると俺はすぐにパソコンの前に座った。電源を入れ、いつものゲームを起動する。
デッドオアアライブ・エクストリームヴィーナスバケーション。
ここ数年、俺が唯一嵌まっているゲームで、常夏の島を舞台に水着姿の女の子がビーチバレーしたりプールサイドでキャッキャしたりするのを眺めるゲームだ。だいたい合ってるはず。
『オーナー、こんな遅くまでお仕事?体にだけは気を付けてよね…』
ログインするとゲームキャラクターのみさきちゃんがそう声をかけてくれる。もちろん定型セリフだが、疲れている俺にはわかっていてもその言葉に癒される。
「さて、デイリーを片付けますか…」
このゲームでは毎週フェスと呼ばれるミッションが更新され、ガチャで新たなSSR水着を狙ったり、希少アイテム狙いでビーチバレーの試合をひたすら周回しなければならなかったりするが、俺は昨日までにその作業をあらかた終わらせていた。
数分もかからないデイリーミッションさえ片付ければ、後は次のフェスが始まるまでのんびりできる。俺はサブモニターでDOAXVV関連のツイートを流し見しながら作業的にミッションをこなし、それが終わるとホーム画面に移動した。
夜のプールをバックにみさきちゃんが恥ずかしそうに水着を隠そうとする。水着の好き嫌い設定に合わせてこうした反応をするのもこのゲームの良い点だ。
せっかくなので足上げポーズと困り顔を選択し実行する。このポーズはいわゆる開脚で股間をこちらに見せつける形になるのでプレイヤーの間でも人気が高い。
プールサイドに寝そべったみさきちゃんが恥ずかしそうに脚を上げていく…そこですかさず霧吹きで水を吹きかけると水着が少し濡れて透け、よりセクシーになった。
カメラを操作して濡れた股間越しに胸と恥ずかしそうな顔をフレーム内に収めスクリーンショットを何枚か撮る。最高に楽しい瞬間だ。
しかし、このゲームにはもっと素晴らしい事がある。
そろそろみさきちゃんにはいつもの格好になって貰おうかな…場所をドレッシングルームに移し、水着を変更しようとして…不意に頭が揺れた。
あ、あれ…
視線が定まらない…ゆっくりと体が傾いてゆく。
ドサリ、と体が床に倒れた音がずいぶんと遠くで聞こえた。
だるいな…俺は最後にそんなことを思うと、そのまま意識を手放した。
『オーナー、なんか用事無いの?暇なんですけど…』
モニターの中でみさきちゃんがそう呟いていた。
「…」
な、なんだ…
「オーナー」
…眩しい…
「オーナーってば!」
聞き慣れた声と共に俺の体はゆさゆさと揺れる。どうやら知っている誰かに起こされているようだ。しかし、俺を起こしに来るような親しい友人などいただろうか?
「もう、こんなとこで寝てると熱中症になっちゃうよ…」
「あ、ああ…」
驚くほどしわがれた声が出た。ずいぶんと重く感じる右手を目の前にかざし、思うようにならない瞼を開けようと試みる。
薄く開けた視界にぼんやりと人影が見えた。
「…大丈夫?」
その人影と思しき人物に上半身を支えられながら体を起こす。体がぎしぎしと軋むようで痛い…眩しさもだいぶ治まりようやく焦点が合ってきた…俺は声が聞こえた左側へ顔を向けると、心配そうにこちらを見つめる女の子と極至近距離で目が合った。
「…!」
驚きのあまり声が出ない。
「オーナー、なんかちょっと顔色悪いよ…」
この声、そしてこの顔…俺は彼女を知っている…
そう…DOAXVVの中でも俺が一推ししているキャラクター…みさきちゃんが目の前にいた。