「ああ、ほっとするよ、それにしても先に寝ていてくれたら良かったのに」
「助手ですよ、あたしは、先生より先に休むなんて」
「まあ、こんなに遅くなるとは思わなかったからね、悪かった」
マグカップには熱い紅茶、砂糖とウィスキーがたっぷりと入っている、飲んでいるとお腹の中からぽかぽかと温かくなってきて、半時間前まで外にいた寒さが嘘のようだ。
スノーバイクから放り出されて、遭難しかけた事は内緒だ、怪我人の手当で遅くなってしまったということにしようとスカーと打ち合わせたが、彼女は素直に信じたようでほっとした。
今日ばかりは自分のベッドに女二人が入ってくることはないだろうと思い部屋を出ようとしたマルコーだが、あることに気づいた。
「ここに貼ってあった絵は、どうしたんだね」
おまじないですと言って貼ってあった紙がなくなっているのだ。
「あら、知らないわよ、傷の男がはがしたんじゃない、邪教だって言ってたし」
ラストの言葉に、そばにいたスカーは、むっとした顔になった、誰か持っていってたのかしらというラストの言葉に、ただの絵ではないかと思ってしまった。
確か上半身は、いや、下半身は鱗では、何故か、細かな部分、どんな顔をしていたとか、思い出そうとすると何故か。
(似ている)
と思ってしまった、何に、いや、思い出せない、不思議に思いながらもマルコーはベッドに入った。
もう、朝なのか、うっすらと目を開けると窓からの明かりがやけにまぶしく感じられて、思わず目をこすりながら体を起こしたマルコーだが、視界がやけに明るく広くなっていることに気づいた。
おかしいと思いながら、手を伸ばして顔に触れた瞬間、急いでベッドから出ると洗面台に向かった。
鏡を見た瞬間、驚いた、鏡に映っているのは自分の顔にだ、顔全体の皮膚が火傷でただれて目元が腫れたような跡、それが自分の顔だった。
何故と混乱する、眠っている間に何があった、その時、マルコーとスカーの声が聞こえ、ドアが開いた。
振り返った自分を見るスカーの目に驚いている、無理もない、シン国の少女、メイの錬成、鍛錬の術でも完璧に自分の顔の傷を治す事はできなかった、
「マルコー、なのか、その顔は、どうした」
驚いているのが分かる、どうやって説明するとマルコーが悩んだのは無理もない。
実はシン国の医療術と錬金術の掛け合わせた治療ができないかと思って、色々と試してみたんだよ、まずは自分の体でと説明した。
かなり、無茶なことを行っていると思うが、この国の人間ではない彼女は他国の医療と錬金術という言葉に、そうなんですかと納得した。
「先生、うまくいったから良かったけど、今後は無茶はしないでください」
(騙されてる、騙されてるわよ)
と隣でラストは内心呆れながらも、それを顔には出さなかった、無論スカーもだ。
「ねえっ、錬金術ってわかってる」
「知ってるわよ、確か、空気から金の延べ棒、インゴットを生み出したりするんでしょう、他にも色々と鉱物とかの精製をしたり」
何、その金のない貧乏学者の夢物語みたいな、まるで三文小説じゃないと思いながら、ラストは無言になった。
そして、夕方にはにドクター・マルコーは生まれ変わったという噂がブリックスの軍人達の間に広まったのはいうまでもない。
今回、少し短いです、すみません。
顔を元通りになれば恋愛モードに拍車もかかるかなあと思いました。