※この作品はR-18です。

チカラの器   作:ヤン・デ・レェ

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今までで最長ですね。


まあままま、原作のアラジンアリババまでの道のりはまだまだ遠いんでね。
予定としては、古代章をいくつかに分けて描くのでそのあとかな。
いきなり時間経過するのは何百年分も細かく書くのが辛いからね。
流石に妄想のリソースが少なすぎますからな。
建国、進撃、征服、帝国内の話みたいな流れで古代章は流れます。


降り立つは暗黒大陸

ソロモンから肉体を、イルイラーから感情を手に入れた器は宇宙間に浮かぶ分離世界の中でも一際煌く世界を見つけた。

 

器は吸い寄せられる様にその世界へと向かった。

 

暗い宇宙の夜を抜けて、雲の大海を掻いて進んだ。

 

目に映ったのは広大な大地、太陽色に染まった赤土、堂々とその身を走らせる大河、蒼穹に映える緑の海原、初めて見る動く生き物。

 

数え出せばキリがない猛烈な情報量が器に流れ込んだ。

 

先ずは降り立たねば、そう思うがいなや足先をつけんと動き出す前に不愉快な騒めきが耳を打った。

 

 

 

 

思えばこの時が全てのきっかけとも言えよう。

 

 

 

器が目をむけた先に映ったのは痛々しくその身を打たれながら灼熱の大地を歩かされる赤髪の老若男女出会った。

 

その集団を囲む様に派手な装飾が輝らう下品な軽鎧を着込んだ男どもがおり、集団の最後尾には無駄な贅を身重に溜め込んだ醜悪な男が踏ん反り返っている。

 

一人日陰の中で派手な杯を使い、赤髪達に見せつける様に喉の渇きを癒して見せる。

 

赤髪の多くはそんな男に敵意を向ける体力もない様子で炎天下に揺れている。

 

気に食わなかったのか、周囲を囲む数人の鎧姿の男どもに何かを命じた。

 

槍の刃先よりも下の部分で子供や女わ打たんとしているらしい。

 

今にも斃れそうだった男の一人が目を見開くと、すかさず自身のみを呈した。

 

硬質な物体と、肉の衝突する音が鈍く響いてきた。

 

赤髪の女子供は言葉もなく、ただ僅かな水分をその瞳から絞り出した。

 

喉が渇いてしまって、張り付く様に慟哭を妨げる。

 

器は限界であった。いや我慢など最初からしてはいなかった。

 

余りに腐敗の進んだ悪辣にその身が固まっていただけである。

 

状況を飲み込むことなどできていない。

 

だがしかし、女子供を打たんとするその業を、他者を嬉々として虐げる事を見逃すほど、人の感情を受け取った器は穏やかではいられなかった。

 

そもそも力を人類が求めたのはその身を守るためであって、生きるためであって、こんな使い方をされるために生まれたわけではない。

 

己の存在全てへの宣戦布告と受け取った器に迷いは無い。

 

 

 

じりじりと身を焼く炎天を柄にもなく恨みに思う事しかできない今の自分たちの有様に、ファナリス達は一様に深い絶望を感じていた。

 

果てしない大地を思うがままに駆け抜けて、天地の恵みを享受する穏やかながら過酷な生活は幸福であった。

 

ある日見舞われた特大の絶望は、奴隷狩りというらしい。

 

それぞれが違う集落に住むファナリス達であり、一同同じくして一人のときに囲い込まれ捕まった。

 

手足の枷は重く、形容し難い痛苦を延々と与えてくる。

 

泣くことも、嘆くこともできぬ程に体は弱り果てている。

 

周りを囲む忌々しい男どもは私たちを見るたびに嘲るようにその境遇を嗤う。

 

思ってもいない癖に、気の毒にな、ほらほらもう少しで着くぞなどと宣うのだ。

 

口からは何の音も零れない。

 

そんな事に構ってられるほど身体は生易しい状態には置かれていないからだ。

 

喉の渇きは既に一線を超え、朦朧とした世界に取り残され、苦痛から逃げるための手段としてひたすらに無様な歩行を続けているのみだ。

 

もしこれが運命というのであるならば。

 

どうか、誰でもいいから壊して欲しい。

 

いっそこの苦からの解放と相成るのであれば生命すら奪われよう。

 

私達が何をしたというのか。

 

何の道理でこの重苦を課せられなければならないのか。

 

もう意識を保つことも望むまい。

 

苦痛から逃れ続けるのにすら疲れた。

 

助けて欲しい、運命は残酷だ。

 

瞼の向こうに天を夢想して、そのままに果ててしまえれば。

 

そう願い目の光を落とした。

 

 

パキャッ!!!!

 

 

瞬間硬いものが爆ぜる小気味良い音が私を夢から覚ました。

 

目を開けようと瞼を上げることになけなしの力を注ぐ。

 

男性のものだろう野太い悲鳴が聞こえる。

 

パカンッッ!!!

 

目を開ける間にまた爆ぜた。

 

さっきのとはまた違う悲鳴が聞こえる。

 

音の数は増えていく。

 

バギンッ!ドバンッ!

 

目をはっきりと開けば、私の世界は変えられていた。

 

呻き苦しんでいるのは私達を苦しめていた男たち。

 

三十人以上もいたそれらは悉く薙ぎ倒され地に伏すばかりだ。

 

両脚があらぬ方向になった者、両手腕が強い力で切り飛ばされた様な酷い亡骸、体の何処かが欠損するか可笑しな方を向いてしまっている者達が泣き叫んでいる光景は、不謹慎にも私に安心を与えた。

 

あの太った醜い奴隷商という男は腰を抜かして股座に染みをつくっている。

 

顔の穴という穴から汁を吹き出しては口を地に揚げられた魚の様に開閉を繰り返す有様。

 

何も言葉が出ない状態、まさに唐突な命に関わる絶望を突きつけられた時の表情だ。

 

私たちと同じ目に合うとは気の毒になるな。

 

あはははは。

 

清々しく響く場違いな笑い声があがった。

 

あははは、と笑い声が私の口から漏れていた。

 

誰の声かと思ったが、周りの皆んなは呆然としていて声を響かせているのは私しかいなかった。

 

これは傑作だ、そう思った。

 

末期の喜劇とでも言えようか。

 

最後にこんな幻覚なのかどうかも判らない景色を見せてくれた事に感謝しよう。

 

誰にともなくありがとうと言おうと精一杯顔を笑顔にして前を向いた。

 

 

 

 

するりと手足の重みが消えた。

 

えっ、と少し強張ったような声が私も含め周囲のファナリス全員からあがる。

 

強い力、風を受けるような感覚が私たちの真正面に仁王立ちしているのがわかった。

 

それまで力なく空か地を見つめていたものまで、全員が顔の向きを同じくした。

 

私達の前途には、顔も立ち姿も逞しい男が私達の前に佇んでいた。

 

見たこともない黒い御髪に澄んだ黒い瞳。

 

ファナリスである私達でさえたじろぐ体から放たれている莫大な力の威の気配。

 

私たちのことをしんと静かに見つめている彼の手には、先ほどまで私達を蝕んでいた不自由と苦痛の象徴が握り潰された無様な状態で握られていた。

 

彼が誰なのかはどうでも良かった。

 

助けてくれたという事実が、枷を外してくれたという事実がなによりもありがたかった。

 

涙も唾液も血も汗も、全てしぼり尽くしたと思っていたのに。

 

涙が溢れて止まらない。

 

泣き叫ぶことも出来なかったはずの干からびていた喉が勝手に震えるせいで嗚咽が止まらない。

 

私だけじゃないみたいだ。

 

誰しもが、苦痛の末に吐き出された苦々しい涙じゃない、嬉しくて有り難くて、でもどうしようも無くて堪らない時の温かくて塩からい涙で顔を輝かせていた。

 

クシャクシャの顔、痛みに苦しむさっきまでの怨敵が地べたに転がっていることなんてすっかり忘れて喜びを享受する。

 

まだあの男の人は何にも言ってないのに。

 

もしかしたら自分の奴隷にすると言い出すかもわからないのに。

 

それなのに、今与えられた暫定的自由の甘美な祝福に感謝せずにはいられなかった。

 

一通り泣き終わり男の人へと視線を向ければ、照れ臭そうにそっぽを向いて、私たちから視線を外していたのを戻して私たちのことを見つめ直した上で言い放った。

 

私たちは自由であると。

 

自分はこの世界に国を建てるためにやってきたのだと。

 

国を建てるという話は耳をすり抜けてよくわからなかったけど、自由と解放が私達の間に浮き上がった。

 

今度はありがとうありがとうと言いながら、中には抱きつくものもある中で皆して泣いてしまった。

 

彼はどこか居心地悪そうに、でも自分の話を最後まで聞かない私達に気分を悪くすることもなく笑っていた。

 

 

 

 

 

泣き祭りを終えると、いつの間にか人垣から抜け出していた彼が漏らした奴隷商を拘束し男どもの荷物にあった水と食糧から簡単な粥のようなものを作ってくれていた。

 

彼がいうには初めての料理だから、君たちが随分長い間泣いてくれていたおかげで練習できた、らしい。

 

とても美味しいとまでは言えない味だったけど、皆んな付け合わせでそのまま出てきた干し肉より何よりも美味しそうに食べていた。

 

今度こそ人心地ついた私たちは、特に酷い状態の仲間をまだマシな状態の仲間が担いで、最も近くにあるであろう私の集落へと向かう事にした。

 

彼が力任せに起こしていた焚火を囲んで、私たちは暫しの歓談を楽しんだ。

 

時間も忘れて話していると、星がよく輝くくらいに夜は更けていた。

 

出発は明日という事になり、もう寝ようという誰かの声に従い皆んなで焚き火の周りに塊になって眠った。

 

眠る前に彼は、襤褸切れ一枚で寒そうにしている私たちに積荷にあった服を配ってくれた。

 

あの男達のものだということは何処か嫌な感じだったが、彼からもらった物だと思えば良いものかも知れない。

 

私達はそれで身を包んで、改めて身を寄せた。

 

彼はおやすみと私たちに声をかけると、焚き火の近くに胡座をかいた。

 

その夜私たちが身を冷やすことはなかった。

 

 

翌日、出発の時がきた。

 

私達は全会一致で命の恩人を集落に招く事にした。

 

私たちは彼を、彼も私達の何も知らないだろう。

 

しかし、だからこそそんな互いを強く結びつけてくれた彼という人に全身全霊で感謝を示したいと思っている。

 

率直に集落に一緒に来て欲しいと誘えば、彼はとても嬉しそうに了承してくれた。

 

もしかしたら彼も奴隷商人で、とても狡猾に私たちの集落を見つけるために演技をしているのではという考えも挙がったが、その考えを挙げた本人が誰より申し訳なさそうにそんなわけないよなと否定していたのを思い出して笑みが浮かんだ。

 

多分不安で仕方ないから一緒にいて欲しいというのもあったのだと思う。

 

元気な者で手分けして食料と衣服、まだ脚が痛むため少しでも確実に身を守るためにと男達の使っていた武器を運ぶ。

 

男達は生死問わず放置する事にし、奴隷商人だけは聴くことがあるとかで連れて行くらしい。

 

彼は男達を制する際にも使っていた自前の大きく分厚い刃のついた矛を右手に持ち、左の方に枷がついた奴隷商人を担いでいる。

 

彼が私たちの列の前後を行き来する様にして追従するようだ。

 

速度を緩めたり早めたりして前の方と後ろの方にいつでも対応できる様にしている。

 

私たち皆んなのことを見守ってくれているのがわかり、私も含めて皆んな心が熱くなった。

 

中天に昇ったどでかい太陽が私たちを睥睨している。

 

汗を垂らして前へ進むのは枷があったときと変わらないし疲労も溜まる。

 

 

けど、私たちを縛るものは何もない。

 

彼は私達を運命から解放してくれたな違いなかった。

 

大地に一列の鮮やかな赤がそよぐ。

 

それを地から見守る絶対の黒天は天の太陽に勝り、彼らの心身をその安穏な御影へと迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我々が遭遇した恐るべき事象について

 

今から約30年前のことだ。

 

そう、そうだ俺がまだ傭兵としてアノ大陸で荒稼ぎしてた頃のことだ。

 

あの時は丁度ファナリスが珍しい戦闘民族ということで奴隷狩りが始まったばかりでな、一人でも拐って来れれば一攫千金も夢じゃなかった。

 

あぁ、俺も一枚その商売に噛みたくてな。

 

頼んだんだよ、知り合いの傭兵と護衛業のお得意様の商人にな。

 

もちろん分け前は大分小さくなっちまうがな、それでも十分なくらいにファナリスっていう商品は高く売れたんだよっ…っといけね…声が高くなりすぎちまった。

 

ま、まぁよ、それで40人近くの大所帯で暗黒大陸の大河沿いの集落から一人で出てきた奴らをピンポイントで捕まえたんだよ。

 

そしたらよ!…10人近く拐えたんだよ。

 

一人でも御の字だったんだがな、まさか本当に億万長者の夢が叶うかもしれねぇとは思わなんだ。

 

本気で狂喜乱舞しちまったぜ。

 

しってるか?あいつらは大陸北部の真ん中を真横に流れる大河沿いに集落が多かったんだぜ。

 

しかもめっぽう強いから、あいつら以上の捕食生物はいない。

 

食物連鎖の頂点に立つ奴らってのは大抵群れないんだよ。

 

まぁ人型だし、集落はあったけどな。

 

どでけー大陸にポツポツとある程度なんだよ、だから情報のやり取りなんてやらねぇ、ましてや閉鎖的な社会で生きてんだから奴隷なんて概念すらねぇんだわ。

 

集落から離れたところまで狩にきたところを袋叩きにして手枷足かせをつけて一丁上がりよ。

 

あ、成人のファナリスは特に危ねぇからな、獰猛なんてもんじゃねぇ。

 

俺の隣にいたやつが蹴りをモロにくらってそのままあの世に直行したよ。

 

二、三十センチ台の穴が空いた死体なんで見た事なかったよ。

 

……なんだよ、急かすなよちゃんと話してやるからよ。

 

…俺が本当に死ぬかどうかの思いをしたのは最初で最後のファナリス狩りのクライマックスに差し掛かった時だったよ。

 

もうすぐ一番近い都市国家の国境だって時のことだ。

 

その日はびっくりするほどのいい天気でな、空の向こうの星が昼間から見えるんじゃないかって透き通ってたんだよ。

 

あの日以来あんなに綺麗な空は見てねぇ。

 

だが、もう二度とあの空を見たいとはおもわねぇよ。

 

その日、初めてだってのに10人近いファナリスを捕まえて遊頂点だった俺たちは、そいつらに十分な休息もとらせないようにしながら歩かせてたんだよ。

 

奴らはとにかく強力だからな、弱らせるくらいが扱いやすい。

 

それはまだ始まったばかりだったファナリス奴隷産業においても周知の事実だった、色々と聴く機会はあったからな。

 

まぁ、そんなこんなでヘトヘトの奴らを調子に乗りまくって揶揄いながら進んでたらよ、空から光の球みたいなのが落ちてきたんだよ。

 

そんで変だなとか思ったけど特に何も考えずにいたら、雇い主のお得意様の商人が酒か回ったのかは知らんが女とガキのファナリスをボコボコにしろとか言い出すんだよ。

 

俺らは仮にも雇われてるからな、商品を傷つけるのは何だが軽ーく叩かねえとなと思って振りかぶるわけだ。

 

さしたら男のファナリスが割り込んできて代わりに打たれてくれてよ。

 

これはよかった、丈夫な方は傷ついても多少は問題ないと思ったんだよ。

 

…でもよ、それまでだったんだろうな。

 

歩き始めた列の前の方にいた女のファナリス。

 

あいつはすげー綺麗な顔をしてたな…流石に怖くて手はださねぇがな。

 

こりゃ常識だけどな、手を出そう物なら確実に死ぬ。

 

まぁそれは置いといて、だ。

 

そいつがボソって言ったんだよ。

 

助けて。って。

 

次の瞬間だよ。

 

助けなんかこねぇよ、そう言おうっていうんで若い奴がしゃしゃり出ようとしたらそいつが吹っ飛んだんだよ。

 

首は正反対を向いてたし、でもアイツはラッキーだったな即死で。

 

俺はすっかり思考停止してな、多分そのおかげで助かったんだろうな。

 

顔を若いのが飛ばされてきた方に向けようとした時に、すげー力でよ、吹っ飛ばされてよ。

 

体が全くと言っていいほど力んでなかったからなすがまーまに飛んだな。

 

身長五つ分くらい飛んだんじゃないか?

 

そっからぱったり意識がなくなったな。

 

最後に見た光景ってやつはな、頭意外を真っ黒な鎧で包んだ黒髪黒目の男前が仕事仲間の傭兵達を素手と馬鹿みてぇに分厚い大矛でちぎっては投げちぎっては投げしてる所だな。

 

へへへ、漏らしたな。アレは。

 

本当に千切られルんだぜ。

 

俺は頭を強く打っただけでよ、頭から血が出てるくらいしか怪我はなかったんだよ。

 

目が覚めたのはまるっきり日が回ってからだ。

 

空が眩しかったな、周りを見たら骸だらけ、手足が散乱して、胴体から上だけのやつ、首が…多分握り潰されたんだろう、絞り切った果実みたいになって死んでるやつ…そんなのばっかだ。

 

俺以外に生きてたのは一人だけだ。

 

奴隷商人だよ。

 

ま、今はもう死んだがな。

 

 

本当に俺だけになっちまった。

 

 

 

俺は忘れられねぇ…あの男、力の純玉とはよく言ったもんだ…30年前の俺を殴ってでも止められたらな。

 

俺よぉ…あの時を除いて、あと一回だけあの男を見たことがあるんだよ。

 

暗黒大陸ってのは北部の一帯が都市国家が点在してたんだ。

 

俺はあの後命からがらその内の一つに辿り着いたんだよ。

 

そんで傭兵からはすっかり足を洗って違う仕事を始めたんだが、それが船に積荷を運ぶ仕事だったんだよ。

 

…この時の積み荷ってのは…奴隷だ。

 

奴隷貿易で、大陸と大陸を繋ぐ際の基地としての役割があったから都市国家が栄えてたんだ。

 

そんで、ファナリスなんかは俺がやられた日意向めっきり入ってこないんだが、それ以外の奴隷は毎日のように来るわけだ。

 

鳥の羽を身につけてる民族だったり、蛇を大事そうに抱えてる浅黒い肌のガキだったり、はたまた神かなんかに祈ってばかりいる奴もいる…なんていうかいつもよりもそういう変わり種が多い日でよ。

 

俺は嫌な予感がして、その日出航するっていう空の船に乗せてもらったんだよ。

 

…案の定、その日のうちに俺が住んでたその国は滅ぼされた。

 

たった一日で小さいとはいえ国が滅んだんだ。

 

船の手すりに体を預けて、何が襲ってきたんだと思って船乗り達と一緒に国が燃え落ちるのを見てたんだ。

 

真っ赤な髪…返り血もあるだろうな、今まで見たこともない大人数のファナリスがあの男に率いられて都市の軍隊を切り刻んでたよ。

 

何十人っていうファナリス、それも成人の男女に若い奴もいた。

 

俺たちが捕まえた、あのすげー別嬪も男の側で戦ってた。

 

とんでもねぇ、荒々しいなんてもんじゃないぜ。

 

ファナリス達、特に若いのは強いことは強いだろうが集団なら対処できるんだよ。

 

でもっ…あの男が出てきたらもう、軍隊も個人も関係ねぇ!

 

…将軍も隊長も雑兵も関係ねぇ!

 

大矛でずっぱんずっぱん胴体も腕も足も舞っちまって、四肢を握られよう物ならとんでもねえ力で握られてそのままブツンっだ。

 

そうじゃなくても持ち上げられたまま地面に叩きつけられて擦り込まれちまう。

 

それまでどうにか持ち堪えていた都市国家の領主の邸宅に雪崩れ込む男と赤髪の一団を、離れていく船のデッキからずーっと、見えなくなるまで見てたよ。

 

風が出てきてよ、俺たちは無事に向こうの大陸についたよ。

 

 

 

暗黒大陸の魔人。いや、今は暗黒大陸の大魔王か。

 

俺は一生あの恐ろしい体験を忘れない、いや忘れられない。

 

 

大黄牙帝国建国の約50年前に書き残された手記「暗黒大陸で見た地獄」この手記を基に、大黄牙帝国の皇帝であり文人としても活躍した第53代首長チャガン・ギメンが著した「暗黒大陸の脅威に関する詳細」より。

 

皇帝直筆の前書きの後、第一章「魔人との遭遇」から第二章「燃え落ちる国」

までの一部を抜粋。

 

 

 

 

 

この著作の中で、チャガン本人は最後にこのように書き添えたという。

 

「暗黒大陸は地政学的に我が帝国との利害問題が発生する可能性は僅かであり、我が方に比べてかの大陸の継戦能力には大きな差があることも確かである。一方で、我が帝国の東方に存在する鬼の住まうと言われる小国は、付近の島嶼部における権益をめぐり対立が深刻化することも考えられる。そのため我々が今後まず最初に敵として想定すべきは東方の鬼である。この後にかの大陸勢力との山脈以西の覇権を巡り争う事は避けられぬこと、忘れる事なかれ。今後大きな威を持つであろう魔法技術の研究発展と実用化には、天山山脈西方の魔力操作に長ける民族と、体系化された魔法理論の研究が進む小国家群の我が帝国への服属が不可欠である。」

 

時、正に大黄牙帝国滅亡の十年前也。

 

 

 

 

これ以後、大黄牙帝国と暗黒大陸の間に挟まれた小国の間で小競り合いが頻発。

 

これを仲裁、対処する形で小国を吸収し互いに勢力を伸ばす二大国。

 

数年に及ぶ、間接的な領土拡大競争の末に他大陸に根拠地を持つ暗黒大陸側が劣勢かに見え始めた。

 

が、東方の鬼が住む国が突如として暗黒大陸の征服者個人に永遠の忠誠を誓うことを宣言した事により形勢は逆転。

 

西は暗黒大陸本土と山脈以西全域からの大ファナリス兵団と少数民族を束ねた合従軍による一斉進撃、東は大海を渡り鬼の国を経ての大規模同盟軍の派兵によって幾年の膠着は解けることとなる。




すっげーのびた。
うーん。短く幾つかに分けて投稿するか、それとも長いの一つか二つにするか。
どっちがいいんだろうね。
筆が乗れば書くという事にしましょう。
こういうのはお好きかな?僕はナルニア国物語の会戦とかレッドクリフとか大好きなんですよね。
壮大なのでも大丈夫だという方!
いい感じに壮大にしていくのでね、鼻くそほじりながら読んでもらえれば幸いです。

それじゃ。またな!
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