メインは戦記なんでね。
女の影と戦乱の影は表裏一体だと思うんです。
特に古代はね。
そんな戦記にしていきたい。
奴隷として連れて行かれようとしていたファナリス達を救ったのは一人の男であった。
解放された彼らは男とともに最も近くにあるファナリスの集落へ向かうことにした。
自分達を救ってくれた名も知らぬ強靭な一人の男だけが、解放されて間もなく身も心もボロボロの彼らにとっての心の支えとなった。
カタルゴと呼ばれる暗黒大陸の北端一帯は大陸のほとんどの土地をその大峡谷によって隔てられているにも関わらずとても広大だ。
そこには多くの自然の景観が存在する。
平野、高原、盆地に山脈と大小の河川。
どれも雄大だが、今の彼らにとっては安息を阻む隘路に他ならない。
娯楽と言えるものは互いの身の上話や故郷の家族のことで盛り上がる程度だ。
長い道のりの中で男とファナリス達はその仲をより深めていった。
旅路をともにするのは命の恩人である件の男と男が担いでいる奴隷商人、捕まっていたファナリス達十人だ。
ファナリス達の中に2人の女がいた。
二人とも故郷は異なり、生まれも異なる。
一人の名はガレリア。
彼女の生まれはカタルゴ北端の東部地方の平野近くの周辺では最も大きな集落の長の家だった。
集落から狩の為に離れた時の自分の供回の役を負っていた子女数名を逃す為に囮となり、結果軽傷を負った末に気絶させられて捕まった。
歳は17、身長は183cm。
怜悧な印象を与える外見とその高貴な生まれとは裏腹に、義理堅く強靭な精神を持つ。
そして、もう一人の名はミョルン。
彼女は生まれた時から孤独であった。
周囲に何か頼りとなるところはなく、生まれて間もない頃は野生の動物の食い残しを食べて命を繋いだ。
一人の家族もなく、ただ本能に従い獣を狩り自然に生きてきた。
大自然の恵みを糧とすることでその生を生きながらえさせて成長した。
女性でありながら、成人のファナリスすら優に超える屈強な肉体と鋼の精神力、何も何も物怖じしない胆力を持ち合わせた彼女は未知への好奇心に突き動かされる余りその身を奴隷にやつしかけた。
奴隷商人が罠に用意した、薬が盛られた料理に手を出したのだ。
野生の勘で飲み込む前に吐き出したものの、強力な毒素はその身を弱体化させた。
取り押さえられ頑丈な鉄無垢で出来た枷で手足を束ねられたのだ。
ファナリス達の中でも最も厳重に食事制限がなされ、徹底的な警戒のもと弱体化されていた。
歳は17、身長188cm。
獣同然の人生の中で逞しく育ったため、五感などの諸感覚は極めて鋭い。
人型にも関わらず大陸の北端以南に棲む獅子姿のファナリス族に勝るとも劣らぬ戦闘能力を有する。
幼い頃に負った怪我によって、目尻の横から斜めに入り左眉毛を横断する傷跡が残る。
容姿はその生まれに反して極めて美麗。
この二人の女は道中特に男の側に寄り添い歩んでいた二人だった。
双方が持ち前の胆力と抑えきれない感謝、そして命を救われたことで芽生えた強い慕情に任せて見知らぬ男へと猛アタックを仕掛けた。
命の危機に瀕して、その動物的な反応が刺激されたのかもしれない。
しかし、過程はどうあれ今は確かに強く強く一人の男を慕う二人の女がいることに違いはない。
二人は競うように男へと質問を投げかけては自分のことを知ってもらおうと、昼夜男と時間を共にした。
ねぇ、貴方は何処から来たの?
どうして私たちを救ってくれたの?
貴方の名前はなんて言うの?
貴方はどうしてそんなにも強いの?
私の名前?…ッ私の名前はガレリア!
そう!ガレリアっていうの。
ふふ、そうなのね。
貴方がいい名前だと言ってくれるのならきっとそうなのだわ。
どうして捕まったのか?えぇとね。
うん、私はそれで捕まってしまったの。
そうかもしれない、確かに生まれには恵まれていたけど災難だったわ。
だけど後悔はしていないの。
どうして?
だって貴方に出会えたんですもの。
ふふふ、照れてるのかしら?
まだまだ先は長いから、貴方には頼ってばかりですね。
この御恩は必ず、私の生涯をかけてお返しします。
ええ、勿論冗談じゃありませんよ。
覚悟していてくださいね!ふふふ。
これからはアンタについていくことにした。
え?いきなりどうしたって?
アンタのために生きることにしたんだ!
はぁ?自由に生きろだ?
だから!自由に生きることができるのはアンタのおかげだろう!
それにアンタは強い!
俺は今までこの大地とともに生きてきたんだ。
強い奴が偉い世界でな。
その中でアンタほど強い人を俺は知らない。
俺はそんなアンタに命を救ってもらったんだ。
俺の命はアンタが自由にして良いんだぜ。
だから。
だから、いつかアンタのためにこの命を使う為に俺をそばに置いてくれ!
え、あぁ、俺は本当に本気だぞ。
いいのか?
イイィィィヤッタァァォァ!!
え?一緒にいてもいいけど命は大切に?
そりゃアンタにもらった命だ、自分の命よりも大切にするさ!
しっかりついて来いって?
そりゃそうだ、アンタに迷惑はかけないから安心してくれよ。
ずっと一人で生きてきたんだ!
……ッッ!…そ、そうだな。
確かにぃ家族ってやつ、かも、な。
……うん。
今日からカゾク、だな。
カゾク、はずっと一緒なんだろ?
ッそ、そっか。
へへへへ…そっか家族は一緒が当たり前、かぁ。
あぁ!バルカと俺は家族!
俺たちはずっと一緒なんだろ!
あんたのために使うって決めた命だからな!
どこまでも一緒だ!
えっ?名前をつけてやる?
あ、あぁ…確かに今まで名前なんかで呼ばれることもなかったな。
俺の名前は……
ミョルン。
俺の、名前は、ミョルン…。
バルカと家族のミョルン…。
バルカのミョルン…。
////…。
二人のファナリスの女は心から男を慕い、男もまたその懐を二人には一際深く緩めていった。
旅路はまだ遠く、そのうちに当初の食料は尽きた。
狩りを健康な二人組による当番制にするかという話で、男を巡って一悶着あったのはいい思い出である。
因みに、"二人は家族"攻撃でミョルンがガレリアに見事勝利を果たした。
二つの相反する理由によって、ミョルンとガレリアの当番の日は大物が食べられると人気である。
ほのぼのとした自然に溶け込むような生活が1週間続き、ついに目的地への最後の難関である大山脈がその背中を見せ始めた。
カタルゴの東の半島中央に従い高い峰が寝そべるように広がる。
これが東の半島の東西の都市国家群を隔てている。
この山脈の東と西に存在する国家は大きく分けて二つある。
山脈を挟んで東に広がるのはアルテーナ共和都市連合、すぐ真横に七海が広がる共和制の貿易国家である。
対して西の半島北端から大峡谷までを広く支配するのが、軍事大国であるスパルタリア王国である。
最近、簒奪者が五代目の王になったが新王は極めて優秀であり、混乱が生まれることもなく、その権力基盤を速やかに築き上げたとともに、本来軍事において覇権を握っていた王国へファナリス貿易をはじめとする奴隷貿易事業の新風を莫大な利益とともに呼び込むことで、版図こそ広がっていないもののその影響力を高めに高めているという。
男、バルカによって助け出されたファナリス達が連れて行かれようとしていたのはアルテーナ共和都市連合である。
奴隷商人によると、そこから全体のうちの一部を同盟国スパルタリア王国に試しに送ることで、現在独占しているファナリス貿易の既得権益を守る為に多額で買い取るであろう新王から二重利益を得ようと企んでいたらしい。
また、一応はスパルタリアもアルテーナも同盟を組んでいるらしく、スパルタリアの二代国王とアルテーナの権力者の娘が婚姻を結んで以来、数十年に渡り両国権力者層の間は親戚の関係にあるという。
バルカとミョルン、ガレリア達の目的地であるガレリアの故郷まではもう直ぐである。
がしかし、彼らの前に立ちはだかるのは険しい山脈の生む自然の脅威だけではなかった。
古代暗黒大陸北端に広がる都市国家群。
その中の強国スパルタリアとアルーテナの二国とバルカたちとの間で繰り広げられる激動の日々は着々と近づいていた。
はい!いい感じになったかも?
次もこんな感じで進めたい!
主人公の名前が決定いたしました。
他の設定諸々も色々書いているのであんまり更新のスピードは望めません。すまん!
次も、他愛もない二人の女の子や他のファナリス達とバルカの関係やコミュニケーションなんかを描いていきたい。
この会話?セリフ?の感じよかったよ!
とかあったら感想で教えてくれるとありがたいです。
皆さま忙しいと思うから無理はなさらないで下さいね。(矛盾)