※この作品はR-18です。

チカラの器   作:ヤン・デ・レェ

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昨日の続き。
思いついてパッと書くので、各スピードはまちまちです。
話の進む大体のルートだけは決めてるのよね。


切れ端山脈

切れ端山脈。

 

そう呼ばれているのはバルカ達の前に立ち塞がる、半ばほどから綺麗に隔てられ地層面を大峡谷側に晒す一千メートル級の山々だ。

 

大陸南方から続いていたであろうその背骨は途中から大峡谷によって割られている。

 

半死半生の奴隷商人によれば、この山々の中には五つほどの難所があるらしい。

 

といっても我々にとっては、だが。

 

地形的要因ではない、アルテーナの監視所兼関所と砦の存在である。

 

我々の現在位置は北端の中央から伸び大陸北端までの壁となる山脈の麓である。

 

ここから上にまっすぐ行けば目的地であるガレリアの集落だ。

 

距離で言えば山脈など通る必要がない。

 

しかし、敢えて山脈を通るのには理由がある。

 

真っ直ぐ上へと北上すれば、必ずその道中で監視所を通らなければならないのだ。

 

さらに言えば平地は遮蔽物のない砂漠を進むことになる。

 

水すらままならないのは危険が多すぎる。

 

これらの理由により、バルカ旅路は険しい山道へと向いたのだ。

 

水は豊かで遮蔽物もあり、食事になる獣も生息している。

 

無論、この山々にも監視所はある。

 

しかし何の障害もない配置の砂漠を、バルカはまだしもミョルンやガレリア達が水もなく追撃から逃れながら進めるほどの体力が残っているとは考えられないのだ。

 

地理学は戦争の上で必ず役に立つ力と言えた。

 

作戦・戦略は歴とした力だ。

 

故に悠久の争いの歴史の中で育まれた知見の集合体でもあるバルカは、現地の土地勘に疎い中でこのルートを最善であると想定した。

 

 

決断が下されれば従うのみだ。

 

 

バルカが向かう先は私の進むべき方向だ。

 

 

ガレリアとミョルンは互いに率先して恭順の意を示した。

 

それまで考えがまとまっていなかった者たちも後押しされる様に着いていくことに賛成して、今手元にある資源を確認し始めた。

 

健康なものは怪我人をおぶる者と彼らを守る者に分かれた。

 

バルカを先頭に、その左右にガレリアとミョルンがつき後続が従った。

 

山道の、あえて舗装されていない険しい道を探して歩いた。

 

麓から徐々に景色が変わっていく過程は、この様な状況でなければさぞ綺麗なことだろう。

 

空気は薄くなり、ここ数日の疲れはファナリスといえども体が重いのを誤魔化せなくなってきていた。

 

林を二つ抜け、少しひらけた場所に出たところで悪寒が走り抜けた。

 

馬の足跡だろうか、湿り気で何時もよりも焦げ茶色の大地に深々と蹄の跡が刺さっていた。

 

雨で湿った大地は何者かの存在を克明にバルカ一行へと伝えた。

 

一つだけではない。

 

前の蹄鉄痕の上から積み重なる様に、夥しい痕が斜交している。

 

整然とした規律を感じさせる様な、そんな方向性から意思が垣間見える蹄の痕からは熟練の騎兵が連想された。

 

山の麓につく1日前に聞き出した、奴隷商人の話を思い出した。

 

スパルタリア王国の新王、簒奪、騎兵、軍備、ファナリス貿易…

 

そして簒奪者故に生じた、アルテーナ共和都市連合との対立。

 

当初なりを潜めていたそれは徐々に露わになってきているという。

 

積年のライバル意識が敵意にかわれば、表面化してからの動きは早い。

 

変化の原因自体が優秀であればあるほどその傾向は強いだろう。

 

 

不味いことになった?

 

…ふむ。

 

なるほどな、それでどうするんだ?

 

スパルタリアという所の馬に乗った兵士達がここにいるかもしれないと。

 

同盟を結んできたとはいえ、ライバルであるアルテーナの領土内に新兵器が勝手に置かれている様なそれは明らかな敵対行為だろうな。

 

で、どうするつもりなんだ?

 

?怖くないのかって?

 

ん〜…そうかもしれんな?

 

アッハハハ!確かにな!

 

変かもしれんな!

 

だが、意外と怖くないんだ。

 

その時はその時だ。

 

それに……

 

 

 

ん?あー馬な!

 

まー居てもいなくてもカンケーねーだろ。

 

バルカが居るしな!

 

俺にはそれで十分だ。

 

何よりも頼もしい。

 

難しいことは分からないし、アンタと一緒にいられるなら大した問題じゃないからな。

 

心配しすぎだよ、他の奴らは俺とレガリアと男連中でちゃんと守れるからよ!

 

そーれーにー……

 

 

 

 

 

枷の無い私は強いぞ。

 

枷が無い俺は強いからな!

 

 

だから、安心して私たちを導いてくれ。

 

だからよ、心配しないで堂々と俺達をバルカの向かう先へ連れてってくれ。

 

 

 

自然の険しい道のりに削られていく体力。

 

そして、目の前には未知の脅威。

 

アルテーナの監視所とまだ見ぬスパルタリア騎兵が煙の様にバルカたちの前に立ち塞がっている。

 

だが二人の頼もしき仲間は堂々と言ってのけたのだ。

 

お前を信じている、と。

 

圧倒的不透明要素の囲繞に戦々恐々とするのはもう終わりだ。

 

未熟な感情と、熟した精神、そして自らの形を為す肉体には確かな力が脈打っている。

 

初めから失う者一つなかった男の双肩には、短い間ながら強固な絆を築いた仲間の命運が重みとして感じられるまでとなった。

 

男は背を伸ばして未開の道へと歩を進めた。

 

ガレリアとミョルン、ファナリス達はどこか眩しいそうに男の背を追うのであった。




バルカも成長していくんです。

完成などありませんからね。
何処かかけているのを足していくもんですよ。
少しずつ。
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