※この作品はR-18です。

チカラの器   作:ヤン・デ・レェ

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前回の続きと準備回。


統率者

未知の圧倒的なチカラを目の前にしたファナリス達の反応は僅かな差はあれども等しく恭順に落ち着いた。

 

バルカによる予想外の示威行動はガレリアやミャルン達をはじめとした彼にとっての初めての仲間達をも驚愕させたが、場を収めることとガレリアの一族による歓迎を引き出すことに成功した。

 

当初は懐疑的だったガレリアの父親など集落の長老達も、遥かな神秘を感じさせるバルカのデモンストレーションを前に考えを改め、ガレリアの主張する彼が我が民族の救世主であるという考えに賛同を示し始めた。

 

歓声に包まれながら移動し、恭しくもてなされながら集落を案内されることとなったバルカ達一行。

 

ふと空を見上げれば集落についた頃はあれほど大きかった太陽が地平線の果てに沈み始めており空は青暗く滲み始めていた。

 

青さと赤さの境界は白み、バルカはその眩しさに目を細めたが足を止めることはなかった。

 

 

 

 

騒動の後は集落の面々が速やかな負傷者の療養を願い出たため、ここまで共に歩いてきた10名のファナリス達の内4人と瀕死の奴隷商人を引き渡した。

 

残った6人とバルカはガレードナの案内に従い集落でも最も大きな館へと入った。

 

中では大急ぎで追加人数分の料理を作っている様子で香ばしい良い匂いが漂っている。

 

外見は大きな日干しレンガの建物だったが、内装は広々としているだけでなく、伝統工芸品と思われる金色に光る青銅の象や脚を防護するための立派な脛当てなどが並んでいた。

 

現地の動物とは小動物としか接触していないバルカには新鮮なものばかりでありまじまじと眺めていると、1人だけ入り口で固まっていた彼の目の前まで来ていたガレードナが中央の上座の席を勧めた。

 

食卓にも会議の机にもなるという大きな岩を削り出した楕円の卓の上座にバルカが、彼の左右にガレリアとミョルンが座った。

 

残りの4人がそれぞれ左右に2人づつ座ると最後にガレードナがバルカの反対の席に座り間もなく続々と作り立ての料理が運ばれてきた。

 

歓迎の席なのに他の長老連中はいいのか?とガレリアが問うと、ガレードナは"年寄りの苦言はこの場にいらん"といいこの場の面子だけで話を進めたいらしい。

 

他の家々からはガレリアの帰還と黒髪の救世主に対する賛辞が響き始めており、バルカが料理に手をつけたのを合図にここでも歓迎の宴が始まった。

 

長老連中のかわりにあとから後から入ってくる先ほどの若い連中は酒が入っているのか赤い顔をして歓迎の言葉を不明瞭な滑舌で叫び始めてはガレリアに諌められている。

 

緊張がほぐれ始めた頃合いにガレードナは歓迎の文句もそこそこにバルカへと問いかけた。

 

「よく此処に来て下さった。娘も救って頂き感激に絶えない。して、貴君は我らに何をお求めか?我らには何を齎してくださるというのかな?」

 

彼も酒で少しばかり気が大きくなり声も高らかで圧を感じるほどだ。

 

「具体的には勝利と独立と繁栄を約束しよう。だが、そのためには俺に率いられてもらう必要がある。」

 

「率いられるとな?それは闘えということですかな?」

 

「そうだ。俺に従い、俺と共に闘い抜くことを誓ってもらおう。俺はチカラそのものだ。嘘はつかん。勝利を得るために必要なことは単純明快。俺が駆け抜け諸君が追従するだけだ。」

 

「…それはまた簡単な事ですなぁ。しかし勝利は理解できましたが、独立と繁栄とはどういうことでしょうな。」

 

「そのためにはまず君たちファナリスが抱えている問題を教えて貰いたい。」

 

「…。わかりました。」

 

彼はファナリスが抱える問題を語り始めた。

 

始まりは十数年前、一族の中でも名のある戦士であったガレードナの耳に届いた話だった。

 

他の集落から行方知れずが出たらしいとのことだ。

 

「元々他の集落はもちろん外部の人間との交流が極端に少ない我らからしたら寝耳に水の話でした。探しても一向に見つからない中、また他の集落から行方知れずが出てしまったのです。一向に原因が分からないままに年々行方がわからなくなる者が増えていき、遂に人間による奴隷狩りだったのだとわかったのです。」

 

「だが!それを知りながらも長老連中は人間との争いを恐れて何の対策もしなかったんだ!結果として長の娘である私まで拐われてやっと戦士団を組織していざ出陣、というところで私達が帰ってきたというわけだ。」

 

父親の話の腰を折ったガレリアの咆哮が響いた。

 

彼女は先ほどすでに群衆から聞き出していたようで、先ほど目にした若い連中やガレードナが武装していた理由がわかった。

 

今まで一向に変化しなかった現状が佳境を迎えているということに興奮しているらしい。

 

「今のこの勢いを保って他の集落と協力して人間を倒すべきだ!奴らから奴隷として拐われた家族を取り戻したいのはどこも同じはずだ!」

 

ガレリアの咆哮は続き、ズカズカとバルカの前に来てそう訴え始めたのだ。

 

乱入してからも飲み続けたせいで酔い潰れていた若い連中もそうだそうだと野次を飛ばす始末だ。

 

ガレードナも止めようがないと言った様子で苦笑いしている。

 

「……周辺の地図を持ってきてくれ。」

 

「えっ?…わ、わかった。」

 

簡単なものだがないよりはマシだと思いガレリアが手作りした地図が卓上の料理をどかして空いた空間に広げられた。

 

ガレリアやガレードナをはじめとした少数からしかその価値を認められていなかったその地図を不思議そうに見る、周りを囲む集落の人々を置いてけぼりにしてバルカとガレリアが話し込んでいる。

 

四隅を石で固定した地図は動物の皮を薄く伸ばして作られており、そこに炭で描かれたものだ。

 

山、川、平原、そして周辺の人間の都市や監視所が描かれており、動物の血で目印をつけている箇所が複数ある。

 

「この赤いのは何を意味しているんだ?」

 

バルカの疑問はその赤い印だった。

 

「これか?これは一際大きな建物があったところに印をつけているんだ。高い壁に囲まれたそれはそれは大きな建物だったぞ。」

 

「俺たちが通った所は何処だ?」

 

「此処だよ。あの大きな谷(大峡谷)の近くにある都市に連れて行かれそうになったところを貴方に救ってもらったというわけさ。」

 

「ふむ。そこから山の中を通って迂回した先にこの集落があったわけだな。…ありがとうガレリア。これで勝利への道筋に一歩つながったぞ。」

 

「フッ、いいさ。むしろ私の地図が貴方の役に立つ時が来て良かった。」

 

「ん〜何か難しいことを話してるみたいだけどさ、俺達は要はバルカと一緒に戦えばいいんだろ?それともあの山になんかあんのか?それはともかく。バルカ!俺はいつでもいけるからな!」

 

すっかり集落の若者に馴染んでいたミョルンが人混みから顔を出してそう叫ぶと、彼女の後ろから初めの4人は勿論彼らと談笑していた若者達も声を揃えて雄叫びを上げ始めてしまった。

 

「…結果盛んなのはいいが、まずは英気を養おう。今日はゆっくり休んで明日は日の出と共に作戦会議だ!」

 

力自慢が始まりそうな雰囲気を察したバルカの一声でその日はお開きとなった。

 

その後まだ騒ぎ続ける飲んだくれをガレリアが鎮圧したそうな。

 

 

騒ぎ続ける若者達を叩き出した後、ここで寝るようにと案内された一室がバルカと同じで乙女らしく彼女がドギマギしたのは別の話である。

 

バルカは即座に眠ったため何も起こらなかった。

 

なお、寝返りを打つとミョルンの寝顔が…3人とも同じ部屋だったことを知ったガレリアは微かに落胆したとか。

 

 

翌日明朝。

 

早朝にも関わらず集落は慌ただしく稼働していた。

 

あるだけの武器と防具をかき集め、それらを磨き、修理し、食事を作り、老若男女等しく忙しなく働いている。

 

そんな多忙な中、一角ではファナリスの歴史上初となる本格的な軍議が執り行われていた。

 

木の机を囲んで行われているそれの中心には、バルカと無理やり復帰させられた奴隷商人が陣取り、その周りにガレードナとガレリアが立つ。

 

ミョルンは難しい話は不得意とのことで若い戦士達を鍛えている。

 

 

「山を隔てて東西に鎮座するアルテーナ共和都市連合とスパルタリア王国、アルテーナ側の中央山地の麓にあるこの集落から西に山を登る。登った先にあるのが地図上にガレリアが赤印で示してくれていた城塞だ。ただでさえ山頂付近に建てられており攻めにくいこの城塞は高い壁にも囲まれており難攻不落と言われている。だが、それは大規模な軍による尋常の城攻めおいてである。ガレードナもガレリアも城攻めなんてしたことはないだろうが、安心しろ。これは尋常な戦法じゃない。これは言わばファナリスと俺の存在あっての反則的な戦法だからだ。」

 

「バルカと私たちの存在あっての?しかしそれでも難しいんじゃないのか?私たちは複雑な行動は難しいと思うぞ。それに、平野で戦わずに態々砦を攻めるのはなぜなんだ?」

 

「確かにな。その砦は何か重要なのか?」

 

「確かに2人の意見はもっともだ。俺たちが何故態々この地図の中でも最も難易度の高いこの地を攻めるのか、だが。それは単純に拠点を得るためだ。拠点が有れば次に打って出るまでの時間を短縮できるし、何より攻守で戦術の幅が広がる。戦術を実践できるだけの練度が今はないがな。だからこそ個人戦闘力でも十二分に成立する戦法で戦果を挙げられるこの地を攻めるんだ。」

 

「むむむ。難しいな。だが、その方法は具体的には何なんだ?私達には情報も不足しているし、兵力に関して言えばこの前に山の中で見かけた騎兵の一隊よりも少ないと思うぞ。」

 

「壁を登るんだ。それに、情報に関してはこの豚(奴隷商人)から聞き出せるだけでも今は十分だ。兵力に関しては今日から三日で集める。ガレードナとガレリアには働いてもらうぞ。」

 

「か、壁を登る??」

 

「できんことはないかもしれんが……。」

 

「今は悩むな!できるかな?じゃない!できるんだ!」

 

「そ、そうか。うん、わかった。」

 

「して、我々は何をすれば?」

 

「ガレードナには俺を周辺の集落に連れて行ってもらう。ガレリアはその間の集落内の練兵と戦いの準備を頼む。」

 

「了解した。それでは準備を進めてくる故失礼するぞ。

 

ガレードナが去った後、奴隷商人も若いファナリスに拘束されたまま連行されていった。

 

俯いたガレリアへとバルカが近寄ると、彼女は顔を上げてバルカへ不安そうに問いかけた。

 

「…できるだろうか、私に。」

 

「大丈夫だ。この地図を作り上げられたのはガレリアだからだ。お前は誰よりも先見の明をもっているが、決して奢らずしかも行動力もある。練兵もとい若い戦士を鍛えるのはミョルンに任せればいい。統率に関しても問題ない、実戦になれば俺が率いるからな。頼みたいのは年寄りと女子供を安全に移動させられるような道を探して、そこを彼らがちゃんと移動できるようにしてもらうことだ。守るべきものがなければ人は崩れる。」

 

「…他の集落からも戦士を募るのか?」

 

「あぁ。少なくとも成功させられるかもしれないが、多いことに越したことはない。この豚曰く直近の敵になるであろうアルテーナとスパルタリアの兵士は屈強で統率されているらしい。練度の高さと人数の差を3日で埋めることはできない。だが、必ず3日で支度を完了させて出陣する。」

 

「なぜ3日なのだ?もっと待つこともできるはずだ。それとも何かこだわりでもあるのか?」

 

「いいや。直感だ。」

 

「直感?」

 

「あぁ。言っても信じられないだろうが、俺の身体は人類の闘争の歴史そのものだ。その歴史が俺に囁いたんだ。決戦までの猶予は3日だとな。」

 

「…なんの根拠が?いや、いい。私は貴方についていくと決めたからな。例えどうなろうとも一度は奪われた自由と生命だ。今更惜しむことは無いだろう。…ミョルンにも言ったらどうだ?彼女もきっと同じようなことを言うはずだぞ?」

 

「いいや、多分あいつは変わった反応になるぞ。ミョルンは俺よりも直感に従う端がある。賛成するんじゃないか?」

 

「ふふふ。なるほどな。兎にも角にも、私達の勝利を信じているよ。」

 

「あぁ。信じてくれ。」

 

不安を払拭したガレリアは、支度を終えて発とうとしているガレードナのもとへ向かうバルカへと明るく声をかけた。

 

「では3日後に!」

 

バルカは振り返らずに腕を掲げると、ガレードナと共に駆け出した。




私の二次創作って、言いたいことはあるけれど前置きがすっごい長い話…なんだよなぁ。
忍耐がいるなー…と自分でも思うこの頃。
なので、別に一話読み切りの二次創作作品を書かせていただこうかなと思いますですので宜しく。
気が向いたらどうぞ。

最近は特に下痢が酷くて寝込んでしまうのでどっち道不定期になりますがね。
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